花言葉:「愛嬌」
いつも元気いっぱいでとにかくちょこまか動く(可愛い)。かなりの負けず嫌いで、戦闘勝利時に見せる渾身のドヤ顔は必見(実に可愛い)。
それでいて趣味は大人の本漁りというおませさんな一面も。お月様を見ると色々高まる(意味深)らしいので、お迎えを検討中の団長諸兄は注意されたし(棒)。
人里離れた山奥を大勢の花騎士を引き連れて歩くこと暫し。 特筆すべきところのない中堅程度の騎士団とは言え、所属するほぼすべての花騎士が集結しているとなればその眺めは中々壮観である。
その戦力だけ見るのであればどれだけ激しい闘いを想定しているのかという話だが、当の花騎士たちに命のやり取りを目前に控えた緊張は感じられない。仲の良い者同士で談笑したり移動中にも関わらず酒を呷ったりと、むしろ弛緩した雰囲気が包んでいる。
それもそのはず、今日の目的は害虫討伐ではないのだから。
やがて開けた空間に出ると、先頭を歩いていたウサギギクがこちらを振り返りつつ声を張り上げた。
「ねっ、すごいでしょ~♪ この場所、あたしが見つけたんだよ!」
言うが早いか、唐突に駆け出すウサギギク。
彼女のすばしっこさは所属する花騎士の中でもトップクラスであり、その姿はあっという間に米粒ほどの大きさになる。
きっとこの場所がどれだけの広さなのか表現したいのだろうが、残念ながらこちらの視線は頭上に釘付けとなっていた。
雲ひとつない澄んだ青空を背景に、立ち並ぶのは満開の八重桜。時折吹く風に花弁が舞う様は、形容するのが憚られる美しさだ。あちこちから上がる感嘆の声で、みなが同じ感想を抱いていることが感じられる。
「どう? どう? こんなに団長さんの役に立つ花騎士、あたしの他にあんまりいないよっ!団長さんもそう思うよね!ねっ!?」
袖を引かれて視線を下げてみると、いつの間にか戻ってきていたウサギギクが渾身のドヤ顔を浮かべていた。これは調子に乗ってる顔だ。
任務中なら適度に諌める必要があるのだが、今日くらいは良いだろう。言外に求められるまま差し出された頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めるのだった。
そう、今日この場所を訪れた目的は慰労を兼ねたお花見である。
木陰でお昼寝する者、昼間から酒盛りを始める者、こんな時まで訓練に励む者……普段の様子とたいして変わらないのではないかと苦笑しつつ、思い思いの時間を過ごしている花騎士たちの様子を眺める。
本来なら開催されるイベントが多く害虫も活発に動き出すこの時期にこれだけの数の花騎士が一斉に休暇を取るなど申請が通るはずもないのだが、先日行われた複数の騎士団による害虫討伐作戦での功績が認められたことで女王陛下から上層部に打診があったようだ。
そんな経緯で賜った特別休暇。せっかくなので希望者を募ってお花見でも……と何気なく提案してみたのだが、まさかこれほどまでに規模が膨れ上がるとは思わなかった。
おかげで当初予定していた一般向けの観光地ではスペースが足りず、危うく計画が頓挫しかけたところでウサギギクがこの場所を見つけてきてくれたのだ。
「フスゥン! もう、団長さ~ん! 他の花騎士さんだけ見てたらダメだよ!
今日はあたしを1番構わないとダメなの! 」
そんな彼女は今、こちらの膝の上を陣取っている。ぷっくりと頬を膨らませ、分かりやすく不機嫌を主張してきていた。
小柄な体を目一杯揺らすので、心配せずとも(物理的に)ウサギギクの背中しか見えない。
「あたししか見えない!?
そ、それならオッケーだよ!
もう他の人を見てたらダメだからね♪」
何やらこちらの言葉が少々ねじ曲がって伝わったようだが、彼女の機嫌は直ったようなので敢えて気にしないことにするのだった。
「さぁ始まりました第1回花騎士のど自慢!
司会進行は不肖このヒペリカムが務めさせていただきます!
参加に関する条件や事前登録などは一切なし!
乱入飛び入り大歓迎!
我こそはという者は名乗りを上げろぉ!」
ややあって、広場全体に響き渡る声が静寂を打ち破った。自分が企画したものではない。
きっと有志によるものだろう。
「むっ、1番をかけた闘いとあればどんな勝負でも逃げるわけにはいきませんね」
「ほほう面白い、その勝負受けて立つ! ペポが!」
「ランタナちゃ~ん、勝手に私の名前で登録しないでよぉ……」
「ぷはー!もっと酒持ってこ~い!えっ?今手上げたでしょって?良く分かんないけどやってやろうじゃない!」
その場のノリと勢いも手伝って、何名かの花騎士が参加を表明する中、ウサギギクがこのようなイベントを見逃すわけがない。
「こんなに目立てるイベント、参加しない手は無いよね! 団長さん、あたしが優勝するとこちゃんと見ててね!」
気合い十分に立ち上がるウサギギクだが、花騎士の中には様々な職業を兼業している者も多い。
チラッと眺めて見ると、演奏や演劇を専門とする者も多く参加するらしい。優勝はさすがに難しいのではないか? そんな忠告が彼女の耳に届くことはなく、いつの間にか順番待ちの一団にその姿を確認する。忙しない子である。
しかし、そんな朗らかな空気に水を差す輩が乱入してきた。
「カカカカンパパパパァァッァァァイッ!!」
「モモモモイッパパパァァァァァァイッ!!」
酒に酔っているかのようにフラフラと蛇行しながら迫り来る害虫の群れ。どうやら楽しげな雰囲気に釣られて来たようだ。しかし……
「乱入飛び入り大歓迎とは言いましたけど害虫はお呼びじゃありませんよ!
お祭りを邪魔するなら容赦しません!」
「酒に呑まれて他所様に迷惑をかけるなんて……酔っぱらいの風上にもおけないわね」
突然の戦闘ではあったが、こちらは一般の花見客ではなく花騎士の一団である。守る対象もおらず存分に力を振るえるこの状況で苦戦などあり得ない。
「楽過ぎて何か退屈~。フスゥン!」
結果、最後の害虫がチリと消えるまでほとんど時間はかからなかった。
「ま、負けてないよ!あたしはまだまだ本気じゃなかったもんね!」
害虫討伐を無事に終え、再開されたのど自慢大会から戻って膝の上に舞い戻ってきたウサギギクの第一声がこれである。表情がコロコロ変わる彼女を見ているのは実に面白い。
「あっ、団長さん今笑ったでしょう!あたしは団長さんの1番になりたくて本気で頑張ったのにさ。フスゥン!フスゥン!」
おっといけない。
すっかり機嫌を損ねてしまった彼女を宥めるべく、 後ろから抱き締めた上で頭を撫でてやる。
「ふ、ふ~んだ。あたしは怒ってるんだからね!このくらいじゃ許してあげないんだから!」
耳まで真っ赤に染めたウサギギクであったが、今回はこれだけでは許してもらえないらしい。
どうしたら許してもらえるだろうか?
耳元で囁くと熟考した様子の後口を開く。
「じゃあ、執務室の本棚に隠してあったオトナな本に書いてあった……むぐぅ!?」
何とか核心部分を語られる前に彼女の口を塞ぐことに成功する。それ以上はいけない。
誰かに聞き耳をされてはいまいかと辺りを警戒していると、強引に拘束を脱したウサギギクが言い募る。
「ぷはっ!むぅ~、じゃあ、1日デート!今日みたいに皆でじゃなくて2人きりの!あたしが満足するまでだからね!」
今日休んだ分の書類も溜まっているだろうし、2人で日程を合わせてとなると……そんなことを頭で考えてはみるものの、即答以外の選択肢はこちらに用意されていない。
苦笑と共に頷きを返すと、ウサギギクが満面の笑みを浮かべた。
なお、途中で撃退した害虫の別動隊が近くで開催されていたイベント会場にも襲撃をかけていたらしく、噂伝いに撃退の件があっという間に広がると休暇中にも関わらずイベントの被害を最小限に抑えた立役者として勲章を授かることになるのだった。
どうやら約束を果たすタイミングは想定より早まりそうである。
えっと、最後に作品を投稿したのは……ぐはっ(吐血)
しばらくはブランクがキツそうだけど少しずつ前のペースに戻していきたい願望
何か周りのキャラ濃くしすぎたかな(苦笑)
次回があったらもっと活躍させて上げたい子です(書くとは言ってない)。
てか、結局花見らしいことほとんどしてねぇや……