花言葉「逆境に耐える」「苦難の中の力」等
隙あらば土下座をしようとするのは実花を見れば想像できなくもないのですが、某湖畔の子みたいにお仕置きを期待してるような描写があったり、お◯しょ疑惑(本人は否定)があったり、果てはお◯様パ◯ツ発言(団長により諸説あり)まで……もはや公式が面白がって詰め込んだとしか思えないネタっぷりですね(苦笑)
就業時間を過ぎて薄暗くなった城内。
見慣れた扉の前に立ち、ノックを1つ……これといった反応はないようです。
ただ、ドアノブに手をかけてみても鍵が掛かっている様子はありません。
忙しい時は気付いてもらえない場合もあるので少し悩みましたが、ちょっとだけ様子を見るくらいなら問題ないでしょう。
できるだけそ~っと。
あぁ、でも仮にお仕事中だとしたら、こんな粗相をしてしまったわたくしに、団長さまはどんな魅力的なオシオキをしてくださるんでしょうか?
昨年の秋頃、この執務室で偶然見かけた1冊の書籍『実践・花騎士へのお仕置き術』。
あの時は内容を拝見することは叶いませんでしたが、もしかしたらその一端がここで……コホン。
湧き上がりかけた衝動を咳払い1つで追い出しながら、ゆっくり扉を開けていきます。
いかに魅力的と言えども、団長さまのお手を煩わせるわけにはまいりません。
忙しそうなら素直に身を引きましょう。
扉が開いていくと共に広がっていく視界。
いつも作業をなさっている執務机には、広げられたままの書類と花瓶が1つ。
ですが、その先に人影はありません。
少し、ほんの少し残念ですが、現在は外出中のようでした。
団長さまの休日のスケジュールは取り合いになると伺いましたので、本日はベルガモットバレーの伝統文化“”土下座”を引っ提げてお願いにきた次第です。
わたくしも元は貴族と言われる家系で生まれた身。世間の常識に疎い部分があることは自覚しておりますが、当時仕えていた小作人からお願いする時や許しを請う時には“土下座”が1番と聞き及んでいます。
“必ずしも希望が通るとは限らない”ともおっしゃっていましたが、元々競争率の高いこと。
断られたのであれば、それは神さまに捧げている毎日の“お願い土下座”が足りなかったというだけです。
……とは言え、まだお仕事が残っているご様子ですし、今回は日を改めることに致しましょう。
そうして踵を返したまさにその時でした。
「あれ、団長いないんだ?」
開けっ放しになっていた扉の影から1人の女性が顔を出しました。
茶色の髪を一房だけ伸ばしたサイドテールに、赤みがかった瞳。 直接話したことはありませんが、背負った棺桶が印象的な花騎士。
お名前は確か……イトスギさん?
「えっと、ローマンカモミールさん……だっけ? 時間があればで良いんだけど、ちょっと頼まれてくれないかな」
キョロキョロと執務室を見回した後、彼女は申し訳なさそうな視線を向けてきました。
団長さまに用事みたいですが、わたくしと同じくタイミングが悪かったのでしょう。
「これの修理を頼まれたんだけど、専門外だから時間かかっちゃって……
代わりに渡してもらえると嬉しい」
そう言ってイトスギさんが手渡してきたのは、1本の万年筆でした。一目で高級品だと分かる木製の万年筆。
彼女はこれから討伐任務が控えているようで、それだけ言うと執務室を後にして行ってしまいました。
特段急ぎの用事があるわけでもありませんし、頼まれた以上は団長さまの帰りを待つことにしましょう。
イトスギさんが立ち去った後、とても多くの花騎士さんが執務室を訪ねて来ました。
わたくしと同じように休日のスケジュールを確認しに来られる方が1番多かったかしら?
思ったより帰りが遅れているのも、もしかしたらどこかで他の花騎士さんたちに予定を聞かれていたりしているのかもしれませんね。
噂が本当だったことを確かめられたのは収穫でしたが、これはやはり団長さまとの休日を過ごすのは一筋縄では行きそうにありません。
手持ち無沙汰になってきたので、せめてものお手伝いにと広げられたままの書類を整理しておくことにしました。
執務机にはイトスギさんから預かった物の他にも数本の万年筆が並べられていましたが、どれもが高級品……というわけではないようです。
同じくらい高価だと思われる逸品もあれば、比較的安価で買えそうな量産品まで様々……ですがある一点、長い間大切に使い込まれていると分かるのが共通していました。
彼女は専門外とおっしゃっていましたが、それを感じ取ったからこそ、時間ギリギリまでかけて修理を請け負ったのでしょう。
万年筆に限らず、目に映る備品のどれもが大事に扱われてきたのが良く分かります。
そして、団長さまが最も大切にしていることが読み取れるのが、わたくしが今拝見している書類の束でしょう。
内容は先日行われた討伐任務の報告書なのですが、ページの大部分は怪我人を出した地点の戦況分析に当てられていました。
その隣には、先程イトスギさんが出発した討伐任務における作戦指示書の写し。
どちらもギリギリまで加筆修正された跡があります。
ここまで一生懸命になれる人だからこそ、多くの花騎士たちに慕われている。
きっと団長さまなら、その隣に立つ“恋人”も、末永く大事にしてくださるでしょうから。
……ガチャン
物思いに耽っていると、何やら硬質な音が聞こえた気がします。何やら水が溢れるポタポタという音も……
そう言えば、今の書類だけ拾い上げたときの抵抗が大きかったような……
◇◇◇
訓練のスケジュールについて相談を受けていた花騎士を見送り、執務室への道を引き返す。
思えば、ちょっとした気分転換のつもりが随分な遠出になってしまった。
幸い急ぎの仕事は済ませてあるのだが、イトスギに頼んでいた万年筆は諦めるしかないだろう。
ただでさえ専門外の品物の修理を頼んでいたところだと言うのに、突然舞い込んだ討伐任務を宛がわれてしまったのだ。
彼女の性格なら頼まれた仕事は済ませているであろうことは容易に想像できる。しかし、部下とは言え女性の部屋に入り込んで中を物色するわけにもいくまい。
ようやく帰りついた執務室の扉を開くと、これまた予想外の光景を目の当たりにすることになった。
「罰ならなんでもお受けします
どうかお許しくださいませ……」
それは見事な土下座であった。
以前教えて貰った土下座の極意……手と膝(はドレスに隠れて見えないが)はきっちり揃え、額は床に押し付けるように下げられている。
最初は慌てたものだが、彼女の背後に見える濡れた床と割れた花瓶の破片がその理由を物語っているのは明白だった。
本音を言えば特別高価な品ではなく、誰かからの貰い物というわけでもないので彼女に怪我が無いようなら気にすることではないのだが、ローマンカモミールほどの美女に“何でも”と言われれば悪戯心が芽生えるのは男の性というものだろう。
都合良く手近なところに置いてあった紐を手に取り、彼女を後ろ手に縛り上げる。
「団長さま!? わたくしを縛ってなにをなさるおつもりですの?」
突然の行動に恐怖の表情を浮かべたローマンカモミールに心が揺らいだものの、その表情の奥に隠れた感情が最後に残った理性の欠片を破壊した……これから行われるオシオキに対する“期待”である。
割っちゃった花瓶は帰還したイトスギが直しました。
( =^ω^)
ということで、ローマンカモミール回です。
勘の良い方なら序盤読めばオチ分かっちゃうんじゃないかな……とビクビクしながら書いた寝室直前秋桜。
限定期間終わったのに嫌がらせか?とか、3週間どこほっつき歩いてた?とかいう意見はすべて覚悟の上(´∀`)b