とある花騎士団長の庭園   作:とある花騎士団長

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レインボーローズ
花言葉:「奇跡」「無限の可能性」
普段はクールなお姉さんだけど、子どもが好きで定期的に開いている実験教室ではテンション高め。さらに、実花繋がりなのか気持ちがすぐ顔に出る可愛い一面も。
開花キャラクエの涙腺崩壊具合がヤバくて、なぜ今までお迎えしていなかったのかと後悔したレベルの完成度でした。


45.「奇跡」を創る「無限の可能性」を秘めた花騎士―奇跡の予兆―

ギラギラと照りつける太陽が白く輝き、熱せられた空気がじっとりと汗ばんだ肌を包む。

時折吹く海風のおかげで息苦しさはあまり感じないものの、バナナオーシャンの夏はとにかく暑い。

 

だが、そんな暑さをも吹き飛ばすほどの熱気が騎士団本部の執務室まで届いていた。

先日の討伐任務で長らく害虫の支配下にあった村を取り戻すことができた祝勝記念ということだが、そこは元々陽気な国民性で知られるバナナオーシャン民。お祭り事の開催は日常茶飯事であり、とにかく騒げる口実があれば理由は何でも良いのかもしれない。

夏季とあって観光に訪れている者も多く、お祭りの規模は普段以上に膨れ上がっていた。

 

そうなってくると、当然考えなければならないのが警備の人員である。

害虫が侵攻の手を緩めてくれる訳もなく、むしろ騒ぎに引き付けられるように強力な個体が群を成して現れるため、ここ数日は会場の巡回や要人の護衛に奔走していた。

 

目の回るような忙しさではあったが、本日付けで以前知り合ったブロッサムヒルの騎士団長が応援に駆け付けてくれたため、頑張ってくれた花騎士たちに臨時の給金と休暇を確保できたので良しとする。

 

開け放った窓から聞こえてくる賑わいに耳を傾けつつ、溜まりに溜まった報告書を片付けながらそんなことを思うのだった。

 

 

 

滴る汗を拭いながら、ここ数日間の記憶を頼りに報告書を仕上げていると、執務室の扉をノックする音が響いた。

 

「団長、今大丈夫かしら?」

 

顔を出したのはレインボーローズだ。

バナナオーシャン所属の花騎士らしい露出度の高い衣装や、虹色に輝く髪が目を引くのだが、見た目の派手さに反して落ち着いた雰囲気の女性であり、子ども向けに実験教室を開催していたりもする。

衣装の上に白衣を着込んでいるあたり、休日も実験に精を出していたのだろう。

 

用件を尋ねると徐に口を開きかけ、執務机に広げたままだった書類の束を見て口ごもった。

 

「……っと、もしかしてお仕事が忙しかった?」

 

声は先程までと同じ平坦なトーンではあるものの、ガッカリしたように表情を曇らせるレインボーローズ。

 

そんな彼女に問題ないと応じ、書きかけの書類を脇に避ける。

確かに仕事が溜まってはいるのは事実だが、ブロッサムヒルからの応援が遅れていれば今日も巡回に出向く予定だったのだ、休憩がてら話を聞くくらいの余裕はあるだろう。

 

こちらの返答を聞くや、今度はパッと表情が明るくなった。

無垢な子どものような振る舞いに、ついつい表情が緩んでしまう。

 

「……っ!?

実は、団長に見てもらいたいものがあるんだけど……」

 

こちらの表情を見るや、決まり悪そうに1つ咳払いをすると、後ろ手に持っていたものを見せてくれた。

食べ物を入れる密閉式の容器らしく、執務机の上に食材が並んでいく。

 

牛乳に卵、砂糖に生クリーム。

ここまでは見慣れたものだが、最後に取り出されたのは……氷?

雪原の世界花、ウィンターローズで最も冷たいと称される川の流氷は特殊な魔力を帯び、一般の商隊を使ってもバナナオーシャンまで持つという話を聞いたことはあるのだが、噂は本当だったようだ。

 

「さすがは団長ね。

これを使って…… 」

 

レインボーローズは用意した材料を薄手の袋にいれ、先程の氷を敷き詰めた容器に移して布で覆い、シャカシャカと揺すったり時折袋を取り出して揉み込んだりし始めた。

 

少し時間がかかるから作業中は別のことをしていても良いと言われたのだが、何となく目を離せずに見守っていると、しばらくして1つ頷いたレインボーローズが袋の中身を用意してあった皿に移す。

 

すると、シンプルながらどこからどう見ても立派なアイスクリームが完成しているではないか!

驚きを隠せないこちらに、レインボーローズは得意気だ。

 

「ふふ、良かったら味見してもらえる?

はい、あーん」

 

呆けていたところに口許までスプーンで運ばれ、半ば反射的にアイスクリームを口に含む。

基本的な材料しか入っていないのだから当然だが、素朴な甘さが口一杯に広がった。

 

うむ、実験教室でやるなら味の種類は増やした方が良いかもしれないが、このままでも十分に美味しい。

 

「気に入ってもらえた?

なら、もう1口どうぞ!」

 

頭が状況に追い付いてきたところで急激に恥ずかしくなってきたのだが、顔を真っ赤にしてスプーンを差し出してくるレインボーローズの顔を見て拒否する気にはならなかった。

 

羞恥を紛らわすべく、混ぜる作業に体力を使いそうなので簡略化できないかなど、実験教室で行う際の改善点などを話し合っていく。

 

その後はレインボーローズも“実験に付き合ってくれたお礼”にと報告書の作成を手伝ってくれた。

論文の執筆で慣れてるからと語るレインボーローズの作業速度は凄まじく、数日かけて終わらせるはずだった量も就業時間を迎える頃にはほとんど片付いてしまうのだった。

 

 

 

就業後はレインボーローズと次回の実験教室について会話に花を咲かせていた。

彼女のおかげで明日は丸一日時間ができたことだし、件の“材料を混ぜる際の負担を軽減する装置”について試作品を試してみるのも良いかもしれない。

 

……おっと。

 

アイディアを形にするべく、新しい羊皮紙を取り出そうとしたところで誤って適当に積み重ねていた書類の一部を崩してしまう。

レインボーローズが集めるのを手伝ってくれたのだが、1枚の紙を手にした瞬間、その手が止まった。

 

「団長、この調査任務の依頼書って……」

 

彼女が手にしているのは、言葉通り1枚の依頼書。現在開催されている祭の要因にもなっている、害虫の支配から取り戻すことのできた廃村の被害状況を調査して欲しいというものだった。

 

ここ最近は討伐や護衛の任務が続いていて所属する花騎士とゆっくり情報交換をする場を設けていなかったため、彼女がこの村の奪還について知らなかったとしても不思議はない。

何か気にかかる点でもあっただろうか?

そう口にしかけたところでこちらも気づく。

この位置、確かこの村の近くには……

 

「父と母が……勤めていた研究所の近くね」

 

レインボーローズの両親は、害虫被害を無くすために尽力した高名な魔法学者だった。

彼女がまだ幼い頃に実験中の事故で亡くなったと聞いているが、彼らの死は多くの同業者や市民から惜しまれたと聞いている。

 

「ええ、2人は私の誇りよ。

そう、あの村が……」

 

呟く声と共に、レインボーローズが明後日の方を向く。

まだ幼かった頃の出来事とはいえ、両親の勤め先の近くということで何か思い入れもあるのだろう……そうとなればやることは1つだ。

 

よし、早速明日向かってみよう。

 

「…………あっ、明日!?

私は構わないけど……良いの?」

 

突然の大声に一瞬キョトンとしたレインボーローズだったが、突然の宣言に驚いているようだ。

 

文官に問い合わせたところ、警備任務に比べてどうしても優先度が落ちるために名乗り出る騎士団がおらず、是非頼みたいとのことだった。

 

最初は単なる思いつきからの行動。

まさかそれが、あんな奇跡を呼び起こすことになろうとは……

 




今回はリクエストを頂いていたレインボーローズさん!
開花キャラクエ前日譚(のような何か)を秋桜させていただきました!

団長になる前のイベ金はお迎えが後回し気味になっているのですが、いやはやここまで魅力的な方いるとは……これだから花騎士は辞められませんね!

某所でリクエストをしてくれた方には感謝が尽きません。
魅力的な娘をありがとうございました!
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