花言葉「雄々しい」
製鉄所という春庭では稀少な男だらけの環境で生まれ育った
それ故に男勝りなところも多々見受けられるが……
ハロウィンまで数日と迫った騎士団の詰所
今年も騒ぎに引き寄せられた害虫の討伐依頼をはじめ、催しに訪れる各国要人の警護や当日配るお菓子の準備と大忙しな日々が続いていた。
いかに花騎士が常人離れした身体能力を持っているとはいえ、さすがに疲労の色は濃い。
そろそろ巡回に当たっている部隊も帰ってくる頃合いだし、試食を兼ねた小休止の用意も整いつつある。
調理場の方から漂ってくる甘い匂いに気付いた者たちが色めき立つのを何とか制し、こちらも各所へ指示を飛ばしつつ方々を駆け回るのだった。
「団長、この荷物はこっちで間違いないか?」
小休止を終えて活気を取り戻した少女たちの中にあっても一際威勢の良い声に振り返ると、視界一杯の荷物の奥から声が聞こえて来るではないか。
それは確か数人で分担することになっていたはずだが……と考えるのは後回しにして、(見えているのか定かではないが)仮設の組立式テーブルの上を指し示すと彼女ー花騎士のソテツは涼しい顔で抱えていた荷物を指示した通りの場所へと下ろす。
「小さい頃から親父たちの荷物運びを手伝ってるから、こういうのは得意なんだ。
任せてくれ」
弓使いらしい線の細さながら、よく鍛えられた腕に力瘤を作って見せるソテツ。
彼女の父親はかつて製鉄所を営んでおり、害虫の襲撃を受けて廃業後も元従業員と共に炭鉱夫として働き続けているバリバリのガテン系である。
だが、ここまで気合いが入っているのはそれだけが理由ではないだろう。
なぜなら彼女は……
「それに、何て言ったってハロウィンのお祭りだからな。
こんな私でも気兼ねなくお菓子が貰えて最k……」
と、それまで饒舌に語っていたソテツが辺りをキョロキョロと窺い始めた。
ソテツが現れた時には注目の的だったが、今はそれぞれ自分の作業に戻っているようだ。
一通り辺りを見回してからホッと息をつく姿に苦笑がこぼれる。
「むっ、なんだその視線は。
団長にはもうバレているとは言ってもやはり…な?」
そう、生まれ育った環境からか男っぽい言動の多いソテツではあるが、実は甘いものや可愛いものに目がないのだ。
こちらとしては親しみ深くて良いと思うのだが、本人的にはカミングアウトするには勇気が足りないとのことなので言いふらすような真似はしていない。
もっとも、何名か薄々感づいていそうではあるが。
普段は快活で勇猛果敢な少女のしおらしい姿に、素直な感想が口をついて出る。
「か…かわいい!?
私をからかってるのか、団長。
もういい、私は作業に戻るからな!」
突然の大声に、1度は離れていた注目を再び浴びながら走り去るソテツ。
その顔は耳まで真っ赤に染まっていた。
ハロウィン当日
花騎士たちの頑張りのおかげで何とか無事に準備を終えることができた。
前日までの疲れは残っているが、詰所を訪れた子どもたちが楽しんでくれれば些末なことだ。
もっとも、こちらとて仮装(狼男)の上にお菓子を携えて先程から待ち構えては居るのだが、子どもたちはみんな花騎士たちの元へいってしまったので現在は暇をもて余してさえいる。
まぁ、騎士団の団長と言えど戦場で華々しい活躍を見せる彼女たちと比べればこんなものである。
……寂しくなんてないぞ。
「トリック・オア・トリート
お菓子をくれ、団長!」
手持ち無沙汰のため警備(という名目で)辺りを見回っていると、元気な声に呼び止められた。
振り向くと、うさぎのきぐるみがお菓子のたくさん入った籠を提げていた。
苦笑しつつ子どもたち用とは別に用意していたお菓子を籠の中に入れる。
可愛らしく頭を下げるうさぎのきぐるみだが、端からみればお菓子を配る花騎士の仮装というのは明らかな訳で。
「「「うさぎさんだ~!!」」」
子どもたちが即座に反応し、うさぎさんもというさぎのきぐるみを着用したソテツへと駆けていく。
彼女もまた今まで抱えていた籠をこちらに預けると、どこから取り出したのか配布用のお菓子が入った籠に持ち替え受け止める姿勢を取る。
なお、かなりの勢いで飛び込まれた様に見えたが、お菓子一つ溢すことなくびくともしていないのはさすがだ。
付き添いで来ていた親御さんに注意されて半べそをかいている子どもとそれを宥めるソテツの様子を微笑ましく眺めながら警備( )を続けるのだった。
「いや~、ハロウィン最高!」
後始末が終わり、戦利品(テーブルいっぱいに積まれていたはずがほぼ無くなってしまった)を口に放り込んだソテツはご満悦の様子だ。
場所は彼女の私室。
ところ狭しと飾られた“うさぎさん”グッズ。
少女チックな部屋を満たすのはお菓子の甘い香りと、それとは別の甘い匂い。
どうやら、こちらが残務処理を終えて部屋を訪れるまでの間に一風呂浴びたらしい。
さて、どうして自分がここに居るかだが…話は単純で部屋の主にお呼ばれしたからである。
その主はと言えば…名残惜しそうに最後のお菓子を口に放り込むところだった。
訪れる沈黙。
正直に言おう、下心が無いわけではない。
シチュエーション的にも勘違いという線は薄いだろう。
ただ、誘われた側の立場として一言待つのが道理…そんな逸る気持ちを見透かされたのか、ソテツが遂に口を開く。
「団長、なんか鼻の下が伸びてないか?」
ほえ?
思わず間の抜けた声が出た。
「実はハロウィン限定のうさぎさんグッズが手に入ってな。
是非とも団長に見てもらおうと思って…い、今持ってくるからちょっと待っててもらえるか?」
顔を赤くしながら立ち去る彼女の後ろ姿をポカーンとした表情で見送る。
しばらく状況を理解するのに時間を要したが、正気に戻ると同時に頭を打ち付けたい衝動に駆られ、自分の部屋ではないことを思い出して踏み留まる。
我ながら、なんて情けない顔をしているんだとツッコミたくなるあり様だ。
取りあえず、彼女が戻ったら謝罪しなくてh
「……どう、かな?」
そこに居たのは紛うことなく“うさぎさん”だった。
頭の上で揺れる白くて長い耳を引き寄せて顔を覆い、恥ずかし気に体を震わせる姿。
トップスとパンツに分かれた衣裳は引き締まった腹部を大胆に晒しており、モコモコとした生地から伸びる手足のラインも均整が取れていて美しい。
思わず見惚れていると、覚悟を決めたのか顔を隠しながらだが言葉が続く。
「い、今の私はお菓子を持っていないからな…
団長にトリック・オア・トリート何て言われたらまぁ、うん…」
「え、えっちな悪戯でも
今は夜だし…時と場合としtっ…むぅ!?」
尻すぼみになっていく言葉を皆まで聞くことなく、そこで理性の糸は切れた。
な、何とかハロウィンイベント中に書ききった……
じゃぶマイ後からネタ考え始めたのに遅筆にも程があるやろ
(ノ∀`)
まぁ、元からそんなもんやけど(おい
ちょっとずつリハビリしていかんとな