花言葉「優雅」「幼心」「優しい心」等
団長になって間もない頃、ピックアップの22連報酬目当てで回したらまさかの武器穴&スキルレベル全解放した娘なので、虹で戦力が整うまでの主力として長らくお世話になりました。
そんな彼女に感謝を込めて
バレンタインの活気に包まれた商店街を小柄な花騎士と歩く。
先日まではチョコレートの在庫確保を急ぐ商隊が依頼してくる護衛やら貿易路の害虫討伐などの任務で忙しくしていたが、当日ともなれば手作り用のチョコレートを買い求める客も少なく、在庫を捌くのに必死でこれといった依頼はない。ウィンターローズで開催されるお祭りに何名か派遣要請が出ていたが、それ以外は自分達のように人通りの多い箇所を巡回して回るくらいだ。
「この時期はあちこちからチョコの香りが漂って来ますね団長様。」
何の気なしに歩いていると隣を歩く花騎士、コデマリが機嫌良さげに語りかけてきた。水色の髪をツインテールにしたその愛くるしい出で立ちは、小柄な身長と相まって年齢を幼く見せている。その手にはいつの間にかチョコレートをたっぷり使った焼き菓子が握られている。
自分も気を抜いていたとは言え、仮にも巡回任務の途中なので本来はあまり誉められたことではないのだが、彼女の場合は事情が特殊なので多少は許容することにしている。
食べたもののほとんどを魔力に変換する特異体質で、まだ赤ん坊だった時にひもじい思いを味わったのが原因らしい。満腹時は極限指定クラスの害虫ですら圧倒するほどの頼りになる存在なのだが、花騎士としての力を発揮し続けるにはあまりに燃費が悪いらしく、手持ちの食糧が切れてしまうと途端に弱気になってしまい、自分で食べ物を摂取することさえ危うくなってしまうほどだ。騎士団本部内でも油断していると食糧を切らして餓死寸前の彼女が目撃されるせいで、食糧を持ち歩くのが習慣化してしまった。
「もぐもぐ…んぐっ…あっ!これは初めて食べる味ですね。とっても美味しいです!このお菓子を売ってたお店は…よし、次の休日にでも行ってみましょう。団長さんも一緒に行きませんか?」
期待の眼差しを送ってきているコデマリには悪いが、その申し出は断らざるを得ない。甘いものが嫌いという訳ではないが、しばらくチョコレートは口にしたくないのが本音だ。
「そうですか…。」
だが、想像以上に落ち込んでいるコデマリを見て、ヨーテホルクに新しくできたカフェではどうかと代替案を出す。
「えっ、良いんですか!?近い内に行きたいとは思っていたんですが、団長様から誘ってもらえるなんて。」
提案は受け入れてもらえたようなので一安心だ。
しかし食べる量に関しては今さらだが、よく飽きないものだと思う。
コデマリはここ数日、同僚の花騎士が食べきれなくなった試作品のチョコレートを大量に譲り受けていたはずだ。それを平らげてなお、今日もこうして大量のチョコレートを食べ続けている上に次の休日まで食べに行こうとしていたとは恐れ入る。
彼女は手当たり次第に露店に立ち寄り、気に入ったチョコレートやお菓子を購入していった。巡回と言っても、付近の害虫は商隊からの依頼でほとんどが討伐されているので、その後も何事もなく時は過ぎていった。商店街を行き交う人の姿も疎らになってきており、在庫を捌き切った商人たちも店仕舞いを始めたので、こちらも報告を終えて帰途につく。
その途中、今日は自分との巡回任務で良かったのか?と彼女に問いかける。
当の本人は首を傾げているが、ウィンターローズの任務に彼女が志願しなかったのは正直に言って意外だった。
国が絡んで開催しているお祭りとなれば、こちらとは比較にならない規模だろう。そちらに参加した方が楽しめたのではないか?と。
「はぁ……。」
しかし、返ってきたのは盛大なため息だった。
「こっちの方が良いに決まってるじゃないですか。何たって団長様と一緒なんですから!この任務、1日団長様を独り占めできるからって行きたがる人多かったんですよ?」
そう言うや否や、正面から抱きついてきた彼女に唇を奪われる。仄かな苦味と甘さが口の中に広がる。
「本当は団長様に渡すはずだったチョコレートを我慢できずに食べてしまったので、ここで売ってるものを渡すつもりだったんですけど、団長様、チョコはもういらないみたいですね?」
店の誘いを断ったときに必要以上に落ち込んでいると思ったらそう言うことか。
「何も渡さないと言うわけにはいきませんし……。ですから、その…代わりに、わた、私を食べませんか!?」
……彼女は今何と言っただろうか?あまりに衝撃的な展開に思考が停止する。だが、彼女の言葉を頭が理解する前に反射的に身体が周囲を警戒する。今の発言、彼女の見た目的に誰かに聞かれていれば憲兵に通報が行きかねない。
幸い、誰かに聞かれた様子は無さそうだが…、
「やっぱりこの身体でこんなこと言われても魅力なんて感じませんよね…。私的には結構勇気を出したつもりだったんですけど…。」
こちらからの返答がないことに不安を感じたのか、しばらく食べ物を口にしていないコデマリがネガティブ思考を起こしかけていることも合わさってあらゆる意味で不味い。
この後、自力で動くこともできなくなったコデマリを抱えつつ持ち歩いていた予備の食糧を与え、誤解を解いた後に彼女を美味しく頂いたのは言うまでもない。
余談だが、姿こそ見られなかったもののコデマリの発言を聞いた者は複数人いたようで、しばらく憲兵による不審者への注意喚起がされたとか……。
何とかバレンタインに間に合った……。
相変わらず団長視点にするとメインのはずの花騎士の影が薄いような……。
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