花言葉「愛の喜び」「情熱」「節度」「初恋」など
私は当時まだ春庭の団長ではなかったのですが、彼女の初登場から見守っていた団長諸兄には思い入れの深いキャラクターではないでしょうか?
自分は副団長を複数人配置するタイプですが、オジギソウ、ネリネとツツジは正直別格です。(嫁枠とは別に幸せになって欲しい子はたくさんいるんですけどね。)
投稿開始から4ヵ月近く。やっと彼女の作品を投稿できました。
「本日、臨時講師としてみなさんにお話させていただく花騎士のツツジです。よろしくお願いしますね。」
わたしが挨拶を終えると、よろしくお願いします!と元気な声が返ってきました。
先生が傍らで補足説明をしてくれているのを聞きながら室内を見渡すと、好奇の視線がわたしに集まっているのを感じます。懐かしい雰囲気。違うのは当時のわたしはその視線を向ける側だったこと。
この先一緒に任務に就くことになるかもしれない。そう思うと気が引き締まります。
本当は団長様に要請があった臨時講師の任務ですが、急遽リリィウッドでの会議が入ってしまい、わたしが代役を頼まれました。
団長様や他の花騎士さんと一緒に来たことは何度かあったけど、今回はわたし1人だけ……。正直うまくできるか不安だけど『ツツジなら安心して任せられる』って送り出してくれた団長様の期待に応えられるように頑張りたいです!
ちょうど先生からの説明も終わるようなので、用意してきた教材をもう一度確認してーー
「……ツツジさんはコダイバナ奪還の最前線でも活躍されているベテランの花騎士です。学べることは多いと思いますので、気になることはどんどん質問してください。」
先生が説明を終えると、教室内が急激にざわつき始めました。
「コダイバナ奪還戦!?花騎士の中でも精鋭中の精鋭が選ばれるって噂の部隊じゃないですか。そんなに強そうには見えないのに。」
「ツツジ先輩って……もしかして学生時代に大型害虫を1人で殲滅してたっていう伝説の!?それだったら納得かも。」
『コダイバナ』という言葉に何人かの生徒さんが反応したのを皮切りに、わたしがパパとママを助けたい一心で命令違反をした出来事まで噂話が連鎖していきます(しかも、かなり尾ひれがついてるみたい……)。
「えっと、わたしはそこまですごい花騎士ではなくて……あうぅ。順番に話しますから、みなさん落ち着いてください。」
先生は静観を決め込んでいるみたいなので、わたしがどうにかするしかありません。
コダイバナ――千年前に初めて害虫が発生したとされる場所。かつては金色に輝く雄大な世界花だったようだが、今やその面影はなく、土地は荒れ果て、水や空気は汚れ、凶悪な害虫の驚異に絶えず晒されている。
世界花の加護を受けた花騎士でもこの地で戦うのは大きな負担であり、かつての貿易都市ブレーメン跡地に構えた防衛戦を維持するのがやっとの厳しい戦況が続いている。
こうした状況の打開策として期待されているのが、生命の結晶から抽出したエネルギーを蓄えた生命の苗木、生命樹の精霊(?)であるナーエである。
ナーエについてはまだ未解明の部分が多いが、成長に応じて周囲の植物に力を分け与えることができるとの報告がなされており、コダイバナの荒れ果てた大地にも世界花の力を巡らせることで花騎士の活動域を広げることが可能ではないかとの期待が高まっている。現在は有志の力を借りながら旧ブレーメン跡地付近に開拓村を建設し、経過観察が続けられている。
――『花畑計画』状況報告書より
「ありがとう、ツツジさん。ちょっと予定は変わってしまったけど、みなさんも得られるものが多かったと思うわ。」
「あはは……それなら良かったです。」
結局、妙な尾ひれがついていた出来事は丁寧に説明して誤解を解くことができたのですが、コダイバナに関する質問が多くて、急遽予定していた講義の内容を変更することになりました。
一時はどうなることかと思いましたが、これなら何とか無事に終われそうです。
「あら、リアトリスさん。ツツジさんに何か質問ですか?」
先生のその言葉に視線を上げると、1人の生徒さんが手をぴんっと挙げて発言の許可を求めているのが分かりました。
赤みがかった紫色の髪はセミロング位に伸ばされ、身に付けている白の衣装からはシンプルながら仕立ての良さを感じます。意志の強そうなちょっとつり目がちな瞳がまっすぐこちらに向けられていました。
「私、ツツジ先輩と模擬戦をしてみたいのですけれど、許可して頂けないかしら?」
「わたしと、ですか?」
突然の申し出に困惑してしまいます。さすがにわたしの判断では決められません。すると、見かねた先生が助け船を出してくれました。
「リアトリスさん、あなたが優秀な生徒であることは認めています。しかし、ツツジさんは授業の最初で申し上げた通り……」
「そうでしょうか?コダイバナ奪還戦でお話に出てきた花騎士たちは各国でも名の知れた猛者ばかり。最前線に出ていたというお話でしたが、先輩が活躍した話を聞けていません。それに失礼かも知れませんが、先輩の立ち居振舞いからは強者の風格というものを感じません。私なら一矢報いるくらいはできるかと。」
しかし、リアトリスと呼ばれた生徒は先生の発言に被せるように発言すると、今度は睨むような視線をわたしにぶつけて来ました。
「先輩も、まだ准騎士になってもいない後輩にここまで言われて悔しくはないのですか?それとも、余裕のつもりですか?私、こと戦闘に関しては准騎士どころか現役の花騎士にも劣らない自信があるんですのよ?」
自信満々な彼女を羨ましく思う。私はまだ、自分の力に自信なんて持てないから。でも……
「まったく、あの団長様の代理だと言うから期待していたのに、この程度の花騎士がくるなんて……」
でも、団長様からの期待には応えられる花騎士でありたいから。
「分かりました。模擬戦、受けて立ちますよ。」
「勝手なことをして申し訳ありません、先生。」
「いえ、彼女に関してはこちらの落ち度です。こうなることは予測できていましたから。巻き込んでしまってごめんなさい、ツツジさん。」
場所は騎士学校内の訓練所。彼女、リアトリスさんは前に臨時講師で訪れた際に団長様をいたく気に入ったようで、今日の講義をたいへん楽しみにしていたみたいです。
「大丈夫です。巻き込まれるのは慣れてますから。」
何度も謝る先生にそう言って、訓練所の中央で棍のような武器を構えたリアトリスさんと向かい合いました。
「魔法使うならもう少し離れた位置からの開始でも構いませんよ、ツツジ先輩?」
「ここで大丈夫ですよ。時間もありませんから。」
「……っ!後悔しないでくださいね。」
魔導書を取り出すわたしに対して飛んでくる軽口は流して、油断なく構える。彼女も口の割には油断なく棍を構えているので、ただ感情に流される人では無いようです。
「両者、準備は良いですか?」
審判を務める先生の言葉に、相手から目を離すことなく頷いて応じました。一瞬の静寂……。
「……始め!」
合図と共に彼女が地を蹴って距離を詰めてきました。棍の先がまっすぐわたしに向けられーー次の瞬間には目の前に魔力で形成された槍の先端が迫っていました。有効範囲をずらした隠し玉。ギリギリでかわすことには成功しましたが、2撃目は無理そうです。
「……もらった!」
勝ちを確信した表情。刃の形成速度、初撃から無駄のない切り返しどちらからも努力の後が見受けられる渾身の2連撃。でも……
「っ!そんな……」
わたしの魔法が一瞬早く完成したことで、手元から弾かれた槍に一瞬意識を奪われ、致命的な隙をリアトリスさんが晒します。
模擬戦はこうして一瞬の内に幕を閉じました。
「団長様、報告書をお持ちしましたよ。」
翌朝、報告書を届けに執務室を訪ねると、団長様は既に書類仕事の真っ最中でした。机の端には昨日の会議の報告書の他にも、明日出発する害虫討伐任務の作戦資料に多くの追記がされています。もしかしてら、昨日の会議から帰ってきてそのまま寝てないのでしょうか?
「ツツジか。昨日はせっかくの非番だったのにすまなかったな。何事も……無かったわけないよな?」
「あっ、酷いですよ団長様。わたしだって何も起きずに任務を終えられることだって……たまにはありますよ?」
あの後、リアトリスさんから再戦を申し込まれたり、再び質問責めにあったり、帰り道でボーっと歩いていたらサーカスの興行に巻き込まれたり……。
「……すまん。でも、こうして無事に報告書も提出できたってことはどうにかなったんだろう?」
わたしが落ち込んでいるのを見て、団長様が励ましてくれます。
「……はい!それに巻き込まれたこと全部が悪いことばかりじゃなかったですし。」
「そうか。騎士団に来た時は、目の届く範囲にいてくれないと心配で仕方なかったものだが、1人で任務を任せられるくらいに成長したんだと思うと感慨深いな。」
「確かに巻き込まれたことに少しずつ対処できることも増えて来ましたけど、それもこれも団長様が導いてくれたおかげですよ。」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいよ。週末からまたコダイバナでの任務があるだろ?体調管理はしっかりな。」
団長様の言うとおり、コダイバナの環境は特殊だから、開拓村の整備が進むまで不慣れな花騎士を派遣できないので、経験のある人員が交代で駐在する必要があります。団長様は別の任務があるので、今回は一緒には行けません。だけどーー
「今回は一緒には行けないが、帰ってくるくらいには休暇をもらえるように調整しておくから、体には気をつけるんだぞ。」
「そのままお返ししますよ団長様。疲労で倒れたりしないでくださいね。」
リアトリス
花言葉「燃える思い」「向上心」など
本連載初のオリキャラ。年齢不詳の原作キャラクターたちだし、整合性とかそこまで気にして投稿してないので適当に原作キャラクターの誰かでも良かったのですが、せっかくなので。
そのうち原作で登場したりするのかな(遠い目)