一夏ちゃんに狙われた俺は、どうしたらいい? 作:銭湯妖精 島風
リク視点
「言い訳はある?」
北校舎裏で気絶した先輩の横に正座させられ仁王立ちした一夏に見下ろされ尋ねられる
あれ?一夏がメッチャ怖いなぁ・・・
「もう一度聞くけど、言い訳はある?」
怖いので一夏と目を合わせないでいると一夏から感じる覇気が倍増し、再度問いかけられる
「・・・なにについての言い訳をしろと?」
「今の状況に陥った件について、だよ」
恐る恐る聞くと一夏は覇気を纏ったまま言う、あぁ・・・俺が先輩の告白を断りにきた事じゃなくて、危険を承知で一夏を優先して無茶したから怒ってるのか、多分
「今、お前が第一に考えないといけないのは自分の事、だろ?だから何も言わなかったんだよ。言ったら自分の事を後回しにするだろ?お前」
「・・・私の事よりリクの方が大切だよ」
俺の言葉に一夏が返答する、その答えを聞き俺の判断が間違っていなかった事を確信する
そう、一夏はいつも自分より他人を優先する癖みたいなのがある、それは一夏の良い所であり悪い所だ
成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗であり聖人の様な人格者、大抵のことはそつなく熟せる超人染みた人間
そんな性質故に一夏は誰かを頼る事に慣れていない、何せ大抵は自己解決出来てしまうのだから
だからこそ、俺は一夏に今回の件を伝えなかった
「見込みが甘かったのは認めるけどな?まさか対話が出来ないと思わなかった」
「もう、私が見つけなかったらどうするつもりだったの?」
「ナイフ奪って無力化するつもりだったけど?」
覇気を纏うのをやめて一夏が尋ねてきたので、実行予定だったことを伝える
「ふぅん、まぁ妥当かな?うん」
一夏は納得したのか分からないが相槌を打ち徐に落ちているナイフを拾い上げガン見し始め、少し怪訝そうな表情をする
「どうした?」
「このナイフなんか違和感を感じてさ」
俺は立ち上がり一夏の前に立って尋ねると、一夏はナイフの刃をマジマジと見ながら答え、刃に指を当てて
「ツルツルすぎる・・・まさか」
「一夏、おま・・・え?」
一夏は人差し指をナイフの刃に当てたまま少しナイフを動かしたので、一夏を咎めようとするが、一夏の人差し指から血は出ておらず無傷だった
「・・・やっぱり、これ刃が付いてないよ。多分偽物だこれ」
「・・・なんでだ?」
俺達は気絶して地面に倒れたままの先輩を見て考える
考えられるのは、先輩はナイフが偽物だと知らなかった、これは充分考えられる。どうもこの先輩は思い込みが激しかったし
次に脅すだけが目的だった、いやまぁ・・・普通に襲われたんだけどね、うん
あとは、なんか思惑があったとか?・・・うん、わからねぇ
「・・・ねぇ、いい加減起きていいかな?土とお友達するの飽きて来たんだ」
先輩は急に起き上がり、そう言いながら一夏に蹴られた場所を擦る。それを見て俺達は少し警戒しながら先輩から距離を取って様子を伺う
「ありゃりゃ、警戒されちゃった。まぁアレの後だしね、それが正解だよ君達」
先輩は胡坐で座り直しカラカラ笑う、なんかさっきと雰囲気が違うんだけど・・・
「え、えぇっと・・・先輩?もう襲わないですよね?」
「あぁ勿論だとも、もうやるべき事、目的は達成されたからね?なかなか真に迫っていたろ?ボクの演技は」
「演技?」
なんだ、この先輩は・・・何のために大がかりな事をしてんだ?いやマジで
「そう、演技。詳細は話せないんだけど、一芝居打って欲しいって依頼が有ってね。ボクは演劇部で去年の文化祭で劇をしたんだけど・・・興味なかったか、残念」
先輩は肩を竦めて言う、誰だよそんな依頼した奴・・・
「じゃぁ、私に蹴られたのも?」
「うん、あえて蹴られた。気絶したフリ上手かったでしょ?あと後輩を唆したり不幸の手紙錬成したりラブレター製作したり、下準備は大変だったよ?」
先輩はニっと笑み言う、それを見て疲れがドッと溢れてきて少し気が遠くなる
「織斑ちゃん、君は良い友達を持ったね、誇ると良い」
「私には勿体ないぐらいの親友です」
先輩は一夏を見てそう言い微笑み、一夏は先輩に返答し笑む。2人とも美少女だから絵になるなぁ
「栗田くん、織斑ちゃんを大切にしなよ?お姉さんと約束だぞ?」
「はぁ、善処します。はい」
俺の返事が気に入らなかったのか先輩は一夏に、こんなのが良いのか?とか言っている、この先輩・・・結構失礼な人だ
まぁなにはともあれ、これで問題解決・・・だよな?
お待たせしました
さてさて、依頼主は誰何でしょうね?←