一夏ちゃんに狙われた俺は、どうしたらいい? 作:銭湯妖精 島風
俺がどうするか悩んでいる間に束さんは真面目な表情をして入口の扉を開け店内に入ってゆく、その背中を追い俺も店内に入ると鈴の両親が驚いた表情をして俺達を見ていた
「やぁやぁ、なんだか束さんにとって重要な話をしている様だから勝手に入らせて貰うよ?」
と束さんは珍しく有無を言わせないオーラを纏い言う・・・本当に珍しい、束さんは基本的に余程不愉快にならない限り楽しそうな表情とオーラを崩さないのだ、そんな人が珍しい事に有無を言わさないオーラを発している
そんな束さんに戸惑っているのか
「さて・・・どっちが病気?それとも二人ともかな?」
困惑の雰囲気を無視し束さんは我関せずに問いかけを辞めない、この辺りの何事にも物怖じしない束さんの性格が羨ましく感じる
「・・・俺だ、少し前に受けた人間ドックで引っ掛かって再検査と精密検査を受けたんだ、その結果・・・癌だとさ、末期寸前らしい」
「ふぅん・・・そっか」
「あ、あの・・・鈴には?」
「・・・伝えていないわ、言ったらあの娘は何をするか分からないもの」
「もう俺には時間が残されていない、今から治療しても完治の可能性は限りなくゼロ、延命治療になるかどうか・・・って所らしい、だから2人には親類縁者のいる中国に戻って欲しい・・・のだが」
「貴方を残して戻れる訳がないでしょう?鈴には貴方が、父親として、そして師として必要なのよ」
俺と束さんがいるのに構わずに口論に近い事を始める2人、それぞれの意見は筋が通っている、楽音さんは余命少ない自分より美鈴さんと鈴の為に未来を選んで欲しい
美鈴さんは諦めるのは早い、解決策を模索しよう、と言っているのだ・・・互いが互いを思い言っているのだからどちらの意見も甲乙つける事は出来ない
「延命治療にも膨大な額の金が掛かるんだぞ?未来のある鈴に金を掛けてやりたいんだ、俺は」
「それでは鈴は喜ばないわ、あの娘ならそのお金で貴方を生かす事に使うと言うわよ」
大分熱くなってきている2人、折れたらダメな事があると2人は分かっている、分かってしまっている
「・・・2人共黙って、私がどうにかする。私ならどうにか出来る」
ずっと黙っていた束さんは一喝して、そういうが俺を含めてポカンとしてしまう、なぜならそう簡単な事なら、こんなに2人が揉めたりしないなだから
「ただし、相応のリスクと対価と覚悟が必要だという事を事前に了承してもらう必要があるし、治療法も今は明かせない」
とはいえ、束さんはやると言ったらやる人だ、信用できる
束さんの言葉を聞き2人は数秒顔を見合わせた後、軽く頷き
「束ちゃん、このままでは死ぬだけ、失敗しても死ぬだけ、覚悟はできてる、リスクも承知の上だ。だが対価とは?やはり金かい?」
楽音さんは真面目な表情で束さんを真っすぐと見据え尋ねると
「私の基本スタンスはギブアンドテイク、与え与えられる関係である事、そして対価についてなんだけど、私ってば余裕で50mプールを万札で満杯にする遊びできちゃうから今更いらない、だから私が求める対価は・・・瑞鳳の経営権の譲渡と2人の生涯雇用保障確約だよ」
と束さんはニコッと笑み言うが俺にはイマイチ理解が出来ていないので2人を見ると困惑した表情をしている
「あー・・・うん、嚙み砕くね?瑞鳳の経営権の譲渡は、オーナーを楽音さんから私にするって事、次に譲渡に伴い楽音さんと美鈴さんには私に雇われて貰う形になるよ、福利厚生諸々の管理もこちらで受け持つし、療養中も給料保障もする、基本的にはこれまで通りに生活してもらうよ」
そこまで聞いて俺は思った、何がギブアンドテイクだ、あまあまな事言ってるじゃないかって
まぁ俺の解釈が間違ってなければ、なんだけどねぇ
ほんと束さんには敵わないわ
お待たせいたしました
鈴のお母さんの名前が分からなかったので、捏造してみましたw