一夏ちゃんに狙われた俺は、どうしたらいい? 作:銭湯妖精 島風
12月に入って久しい、ある晴れた日の事 魔法以上の愉快が降り注ぐ訳もなく寒いなぁと思いながら起床し、毎朝の事になりつつある寝癖と水の冷たさと戦い、朝のルーティンをこなす
早寝早起き規則正しい生活を是としている一夏のおかげで、最後に風邪を引いたのが、いつだったか思い出せないぐらいだ
そんなこんな下らない事を考えつつ、先日束さん自ら組み立てたコタツで溶けてる束さんを横目に、休日にやっているクイックルワイパーでの拭き掃除をしている
「んぇ・・・あれぇ? いーちゃんは?」
「なんか鈴に頼まれた事が有るらしくて、30分ぐらい前に出掛けたよ」
「そっかぁ」
どうやらコタツの魔力により うたた寝をしていたらしい束さんが、徐に俺の方を向いて聞いて来たので答えると、まだ夢心地なのか いつも以上に間延びした返事が聞こえる
これは後で今の会話を覚えてない可能性もあるな、まぁ良いけど
そんな訳でフニャフニャな束さんを横目に拭き掃除を終わらせて昼の献立をどうしようか、と思い冷蔵庫を開けるが、特にめぼしい食材が無い
「そういや昨日使ったままか、うーむ」
腕組みをしフニャフニャな束さんを見つつどうするか考える、俺1人なら買い物に行って適当な惣菜やら弁当やらを買って食べるけど、コタツでフニャフニャになってる束さんがいるからなぁ
それとなんか忘れてる気がする、特に重要では無い何かを
「忘れてるって事は重要じゃ無いって事だろうし、その内思い出すだろ、うん」
考えても仕方がないと思い、ひとまず束さんに昼の要望を聞こうと思い冷蔵庫前から束さんの方へ歩み出そうとした瞬間、インターホンのチャイムが鳴る
「誰だろ? 弾と数馬も用事だって言ってたし・・・セールか?」
確かに休日なら来る事もあるか? と思いつつ玄関に移動し扉を開けると、多少身長が減った現在の俺よりも更に背の低い銀髪の美少女が姿勢良く立っていた
数ヶ月ぶりの再会だが、相変わらず良家のお嬢様みたいだなぁ
「お久しぶりですリクさん、突然の訪問 申し訳ありません。束様はいらっしゃいますか?」
「久しぶりクロエ、束さんならコタツで溶けてる所だけど、どうかした?」
「ちょっとしたお使いです、束様に持ってくる様仰せつかっております」
「そっか、外寒いし入りなよ」
「失礼致します」
俺が招き入れると相変わらず目を閉じたままキッチリ靴を揃えてから家に上がり束さんが溶けてるダイニングへ入ってゆき、束さんの側に膝を付き
「束様、ご指示の品をお持ち致しました」
「あぁ〜クーちゃん、ありがとぉ〜〜。コタツあったかいよ〜入ってごらん?」
「畏まりました、失礼致します」
何かフニャフニャな束さんに硬い喋り方をするクロエの会話が少し面白いなぁと思いつつ、クロエに暖かい飲み物を出す為にケトルでお湯を沸かしながら様子を見ていると、クロエが束さんにコタツを進められて入るとみるみる溶けていった
やはり人間はコタツの魔力には抗えない様だ
「今ほうじ茶しかないから勘弁な」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
「わぁい、ほうじ茶だぁ」
ゆっくりとした動きで身体を起こし、ほうじ茶の入った湯呑みを手に取り嬉しそうに飲み始める束さんとクロエを見つつ俺も寒いのでコタツに入り ほうじ茶を飲む
うーん、一夏が淹れた方が美味いな・・・手順とかたいして変わらない筈なんだけど、不思議だ
「んー・・・よしクーちゃん、例の物を」
「はい、此方に」
伸びをして急にシャキッとしだした束さんと その束さんに呼応して元に戻り何か小包を取り出して束さんに渡すクロエを見て、何だろう? と思っていると
「うんうん、これで間違いないね。ありがとうクーちゃん」
「いえ、この程度 些末な用ですから」
「ふふ、そう? はい、りっくん。ハッピーバースデー」
「リクさん、Alles Gute zum Geburtstag」
と急に楕円形の茶色いケースに入った物を差し出され祝われる、何語かは分からないが、多分クロエも祝ってくれている
あーそういや、今日が俺の誕生日だったか、忘れてたな
お待たせ致しました
Alles Gute zum Geburtstagはドイツ語で誕生日おめでとうって意味です