一夏ちゃんに狙われた俺は、どうしたらいい?   作:銭湯妖精 島風

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ムスカリ

 

あの後、演劇部の部室で梶田先輩達との別れを惜しみ門出を祝う歓送会を行った、当たり前の事だが、梶田先輩以外にも上級生が居たので、キチンと挨拶はしておいた

 

まぁ梶田先輩が1番付き合いが深かったのは間違い無い

 

 

そんな訳で先輩達を送り出した後は特出した事も起こらず、無事3学期を終業する事が出来た

 

春休みに入り数日、新学期への準備をしなければならないのだが、そんな事は後回しにして、俺達は空港へ来ている

 

 

「・・・皮肉なぐらい晴れね」

 

 

「そうだな」

 

 

展望エリアで鈴と並んで離発着する飛行機を眺めながら会話をする、心なしか鈴の声色が硬い

 

一夏と束さんは美鈴さんに付き添い搭乗手続きの手伝いをしているので、今は俺と鈴の2人しか居ないので、鈴が弱気なのは俺しか分からない

 

 

「不安か?」

 

「まぁ・・・そうね、ヤル気だけは有るけれど・・・この不安は何度経験しても慣れないわ」

 

 

「新天地への、か」

 

 

あんまり見ると蹴られそうなので、横目でチラッと見るだけに留めて鈴の顔を見てみると、小5の時に転入してきた時と似た表情をしていた

 

そりゃ緊張もするし、不安にもなるだろう

 

4年も掛けて築いた生活を捨てて、再び真っさらの状態から築き上げなければならないのだから

 

「でも、まぁ・・・言語から習得して友達作るよりはマシなんじゃないか?」

 

 

「ふふ、そうね。少なくとも言語は不自由しないわね」

 

 

俺の言葉に鈴は軽く笑い同意する

 

「アンタにも世話になったわね、ありがとう」

 

「なんの事かサッパリ分からねぇな」

 

「そうゆう所よリク、アンタも一夏程ではないけれど影ではモテてたんだから」

 

「ちょっと、何言ってるか分からない」

 

 

突然 鈴に感謝され本気で何の事かが分からずに言うと、マジで意味不明な事を鈴が言う

 

 

「だから、アンタは一夏が根回ししてなかったら告白されてた可能性が有ったって言ってるのよ、分かった?」

 

「おい、何で今このタイミングで言った? 何それ知らなかったんだけど!?」

 

「あら、言う訳ないじゃないの、忘れたのかしら? アタシは一夏の味方なのよ? 一夏が不利になる事をする訳ないじゃない」

 

 

俺の方を向き俺に指を突き付けて言う鈴に向き直り鈴に抗議すると、鈴が胸を張りドヤ顔で言ってきた

 

「ナイスミドル!!」

 

「アンタ、今・・・余計な事を思ったわね?」

 

コイツ、無い胸を張ってドヤ顔しおって、と思った瞬間 俺の脚にミドルキックが炸裂し膝をつく俺を見下し覇気を纏いながら鈴は言う

 

なんで分かんだコイツ、サイコメトラーか?

 

「4年も一緒に居たのよ? アンタが考える事ぐらい手にとる様に分かるわよ」

 

 

「そりゃどうも」

 

 

鈴は溜息を吐いて言う、多分本気なら脚の骨折れてたな、と思いつつ立ち上がり

 

「4年か、なんかあっという間だった気がする」

 

「そうね、一夏のお人よしで色々とやったけれど、楽しかったわ」

 

 

「はは、それは違いない」

 

4年前、鈴が転入してきた日、日本語が全く出来なかった鈴をイジメようとした阿保共をシバきに行った一夏を追って俺も参戦したっけ

 

そのあと先生やら親やらに怒られたけど後悔はしてない、話せば分かる? 対話で全て解決出来る? そんな事は夢幻、幻想だ

 

武を用いないと解決出来ない問題は山程ある、言葉で、対話で、信念で平和になるならば、この世に犯罪なんで起こらない

 

 

「あの日の事は覚えてるわ、不覚にも一夏に惚れてしまって秒で失恋したけれど、アンタには感謝してる」

 

「俺は当たり前の事をしただけだよ、まぁ結局一夏が先に突撃してったしな」

 

 

肩を竦めて鈴は言い、俺も肩を竦めて返答し時計へ目をやると、そろそろ移動しないと行けない時間になっていた

 

「そろそろ美鈴さん達の所に行くか」

 

「そうね」

 

俺達は並んで合流場所へ向かい歩み出す

 

「たまには帰って来いよ?」

 

「えぇ必ず、アンタは一夏を泣かすんじゃ無いわよ?」

 

「分かってるって」

 

「一夏を泣かしてごらんなさい? アタシがアンタを殺すわ」

 

「だから、何でそんなに過激なんだよ?!」

 

 

そんな締まらない雰囲気で俺達は会話をする

 

これで良い、俺達はこれで良いと思う

 

湿っぽいのは俺達ぽくない気がする、いつもみたいにバカ話して、また明日って言って鈴を見送る、そんなぐらいが俺達らしい、そんな気がする

 

行って来い鈴、俺はお前が成功すると確信してるぞ?

 

 






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