VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~   作:no_where

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 覚悟が決まった。格好良く言えば、そんな感じだったかもしれない。

 

「父さん、母さん、話があるんだ」

 

 家に帰ってきた俺はそう言った。一度夕飯を食べ終えたあと、自分の部屋に戻り、モバイルパソコンと、例の契約書類の入った封筒を持ちだして、一階の居間に戻ってきた。

 

「どうしたんだい、めずらしく深刻そうな顔をして」

 

 畳敷きの和室。いつも食事をしているちゃぶ台の上に、3人が定位置で座る。湯呑には、あたたかいお茶も用意されていた。

 

「祐一から、提案があるなんて、ドキドキしちゃいますね」

 

 二人の表情はおだやかだった。ある意味、俺は『良い子』として生きてきて、両親に「話をしたいから時間をください」と言ったことなんて、一度もなかった。

 

「実は今日、東京まで行ってました」

「…ん? 東京?」

「滝岡くんと、電車に乗ってどこかに遊びに行ってたんじゃなかったの…?」

「それ、嘘です。ごめん。本当は友達と、飛行機に乗って、日帰りで帰ってきました」

「飛行機って…お金はどうしたの? 往復なら、数万円はかかるはずだし、空港までも…バスかなにかで行ったんでしょう?」

「自分の小遣いでいきました。新しいPC新調するように貯めてたから。必要なら、旅費をだすって言われたけど、今回は遠慮しました」

「……誰かに会いに行っていた。ってことかい?」

「はい。この会社を立ち上げた人たちの一人に、会ってきました」

 

 少し緊張した空気が流れるのを感じていた。俺はモバイルPCの蓋を持ちあげ、あらかじめ準備していた『ネクストクエスト』の会社案内のホームページを立ち上げた。

 

「母さんは、この前会ったけど、うちの店に、竜崎さんって女の子が来てたでしょ?」

「え? えぇそうね。とっても可愛い子だったわ」

「その子のお兄さんが、この会社の偉い人で、一度来て話をしてみないかって誘われたので、お邪魔してきました」

 

 心なしか、丁寧語になってしまいながら、PCの画面を見せた。

 

「……」

「……」

 

 モニターに映るのは、千歳空港からさほど遠くない、一等地にそびえたつ高層ビルの1つだ。

 

 創立した歴史は浅いけど「近未来のエンターテイメントビジネスをカタチにする」という提言通り、ホームページのデザインからして画期的だ。

 

 なにか、新しいことをする。おもしろいことをやる。自分たちが、人々の価値観を一新させるっていう意気込みが感じられる。

 

「祐一、もしかして…」

 

 母さんが、困惑した表情で言った。

 

「こんな大きな会社の娘さんに、その…手をだして、先方にご挨拶に言ってたとかそういう……?」

「いやいやいや!! 違う違う違うから!」

「あらー、違うのー?」

 

 なんでちょっとガッカリしてるんですか。お母さん。

 

「こらこらお母さん。ちょっと焦っちゃったじゃないか。それで、先方におじゃましたのはどういう理由なんだい?」

「うん。えっと、ここ見てよ。事業内容の一文に『VTuber』をタレントに採用した配信業や、該当したキャラクタモデルを生成するアプリケーションソフトの開発、配布ってあるだろ?」

「ブイチューバー? なんだったかな、それは」

「どこかで聞いたこと、ありますねぇ」

 

 たまにニュースで紹介されることもあるから、二人も存在だけは知っているはずだった。早く本題に入りたい気持ちをおさえて、まずは、そういったところの説明を行った。

 

「……それで、まぁその、見てもらうのが、手っ取り早い…から。どうぞご覧ください」

 

 まず、西木野さんと、竜崎あかねさんの動画を見せようかと思った。けどそれをすると逆に、ハードルが爆上がりするのは確実で、

 

『――フハハハハハ!! ごきげんようっ!! LoA界、最強のプレイヤーの一人、天王山ハヤトだ!! 本日もまた、諸君らに、このオレの華麗なゲームプレイをお見せするとしよう!!!』

 

 動画を開いた。真夜中で、ヘッドホンやイヤホンの認識もしていないので、音声はかなり小さめにしてある。

 

『どこに隠れようと無駄だァ!! そこォッ! ふはは!! ダブルキル!! トリプルキルゥゥッ!!! 決まったな! 進め!! 敵コアを破壊せよ!! 我らの勝利は目前だッ!!』

 

 

 静かな空間に、音量10%の【バカ】の声が轟き叫ぶ。同時に展開されていたゲームで決着が付き『WIN!』と表示されたところで、一旦停止した。

 

「えぇと、VTuberっていうのは、だからその、映像のキャラクタを操るっていうか、動画を見て楽しむ。って遊び方が基本だから、ゲームの実況とか解説、映像上でのCGとかMV《ミュージックビデオ》の演出的な見せ方なんかと、相性がいいんだ」

 

「……」

「……」

 

 父さんと母さんは、顔を見合わせた。普段、パソコンを開くという事も滅多にしない二人だから、全然ピンと来ない。という感じだった。

 

「それで、えっと…この『天王山ハヤト』っていうのが………俺、です」

「えぇっ、祐一!?」

「ハイ」

「あらあら、そうなの? でも声が全然違うわよ?」

「それは、この『ネクストクエスト』が提供してるアプリ【セカンド】の機能で、リアルタイムで音声を変えるボイチェン機能があって……」

 

 俺はそういった諸々のことを説明した。実際のアプリもスマホで起動して見せる。画面上のハヤトは、フキダシを表示させて『お初にお目にかかります』なんて言っていた。

 

「へぇー。最近のエーアイさんは賢いのねぇ」

「まるでちょっとしたSFだね」

 

 二人がそう言ったところで、今度は【桜華雪月】の映像を流した。俺のモノとは違う、本物の技術者集団によって作られた、最上級のMVが流れ、さすがに二人も、これには感心していた。

 

「すごいわねぇ。こっちの猫みたいな、黒いお洋服の女の子が、この前遊びにきてくれた、竜崎さんの妹さん?」

「そう。それでもう一人の子が、これも内緒にしてほしいけど、うちのクラスの女の子」

「えっ、すごい偶然じゃないの。どうしてわかったの?」

「いや俺が気づいたんじゃなくて。向こうが、俺のハヤトに気づいて、声をかけてくれて、それで今回の話に繋がったっていうか」

「…祐一、お母さん、わかっちゃったわ」

「へ?」

「つまりこういうことなんでしょう? 学校でいちばん可愛い優等生の同級生と、他校のお金持ちのお嬢様。わかっちゃったわ~」

「違うよ。コレほんと、全然そういう話じゃないから」

「あらあら、そういう話にした方が、世間一般のお母さんを自称するお母さん的には、需要がありありのありよ~?」

「母さん、ごめん。ちょっと戻ってきて? 俺の話進めさせて?」

 

 全身から、ほわほわした雰囲気を漂わせる母さんを、ひとまずこっちの世界に戻して、また話を進める。

 

 肝心の、西木野さんから持ちかけられた、VTuberコラボの件。

 それを報酬の発生する『仕事』として提示された件。

 

 父さんと、母さんは、おどろきながらも、うなずいてくれた。そして、書類の文面を二人で確認した。

 

「祐一、ひとつ、質問してもいいかい?」

「いいよ、父さん」

「おまえの話を聞いていて思ったが、この…VTuber? としての活動を、大人の『仕事』として引き受けたいと思った、一番の理由を聞かせてくれるか」

 

 湯呑に口を付けながら、父さんが聞いてきた。

 静かに、落ち着いて、確信を突いてきた。

 

「……ごめん、それはちょっと、話せない」

「話せないのかい? どうして?」

「なんていうか、それは…企業秘密だって、言われたから」

「ふむ。察するところ、お邪魔した先で、14歳のおまえが興味を惹かれるような物を見たか、あるいは、貴重な話なんかが聞けたりしたわけだな」

「…うん」

 

 父さんは、とても、鋭い。

 

 すでになくなった、父さんのご両親――つまり、養子である俺とは、直に血の繋がりのない、じいちゃんと、ばあちゃん――その二人から、この店を継ぐ前は、父さんもまた東京の大手証券会社で、働いていたらしい。

 

 

『――僕は実家に帰ることにしたよ。なにもかも、遅すぎたけど、もう、こっちで仕事をしようという気にはなれなくなった。両親が騙された借金を返したら、貯金もほとんど無くなった。それを恨む気持ちはなくて、ただ――後悔だけが募るんだ』

 

 

 母さんから、そんな話を少しだけ聞かせてもらったことがある。

 

「祐一、お母さんからも、質問1ついいかしら」

「うん。いいよ」

「えぇとね、ブイチューバー? お母さんには、よくわからないけど、このハヤト君のことを、わたしや、お父さんには、黙ってたわけよね。それにはなにか、理由はあるの?」

「…それは、単に恥ずかしかったっていうか…変なことをやってるって思われて、心配させたくなかったし…」

「つまり、親である僕らに対して引け目があったということだね」

「……」

 

 俺はうなずいた。

 

 もう一人のジブン。前川祐一《俺》が作り上げた、VTuber。

 新しい技術によって生み出された半身。天王山ハヤト。

 

 

 

【 オレが、おまえという名の世界を、広げよう 】

 

 

 

 ほんの一時。束の間のあいだ。

 誰にも、何者にも縛られず、自由で、正直で、純粋な存在。

 

 だから『ハヤト』は、他の誰とも繋がらない。それでいい。

 

 『そういうものだ』と、他ならぬ俺自身が決めていた。『そうでなくては自由ではなくなってしまう』とも感じていた。でも、

 

 

 

【 これがおまえの玉座か。オレには少々窮屈だな 】

 

 

 

 今日初めて、他ならぬ俺自身が、雁字搦めの鎖で縛りあげていたのかもしれないと思えた。

 

 一見すると、無関係な遠回りかもしれない。けどどれだけ回り道をしてでも、俺は新しく、これからの生き方を見つめ直したいと考えたのだ。アイツと、アイツのセカイを信じて。もう一度。

 

 だけどそれは、今は口にはできない。それにあの世界の可能性は、他ならぬ【俺たち自身】にしか、まだ分からないのだと思う。

 

「祐一、ひとつだけ、聞かせてほしい」

 

 そして、父さんがこぼした。

 

「おまえにとって、この家は、重荷かい?」

「……それ、は……」

 

 

 いつの日か。

 

 

「違うよ、父さん、そうじゃないんだ…」

 

 

 俺が『自由だ』『正しいんだ』と信じていたはずの事が『不自由だ』『間違っている』と感じる未来が、やってくるかもしれない。

 

 

 【VRの散髪屋】の中で。そんな風に思ってしまったんだ。

 

 

 熱意が人を動かす。感情だけで先走った想いが、時にその色を白にも黒にもひっくり返す。それは、自分自身さえもが対象だ。

 

「祐一。おまえの話をさえぎるようで悪いけど。いいかな」

「……あ、うん」

 

 父さんの声で我にかえった。そして初めて気づく。父さんの雰囲気が、いつもと異なっている事に。

 

「申し訳ないが。父さんは、今おまえがしてくれた話、まったく意味がわからなかったよ」

「………………」

 

 

 あぁ。

 

 

「お母さん」

「あっ、あらあら。はいはい。なんですか?」

「母さんも、同じだったんじゃないか? 祐一の話、いまいち、要領を得なかったんじゃないかい?」

 

 

 つらい。 

 

 

「……そうねぇ。なにもかも、寝耳に水で驚くしかないっていうのはあるけれど…企業秘密っていうのかしら? お邪魔した会社の先で、なにか特別な経験をした。だから、お仕事として引き受けたいと思ったって言われてもね、確かに、わたしにはピンとこないというか……」

 

 

 わかってもらえないことが。

 

 

「そう。たとえばだ。祐一がとつぜん、音楽に目覚めたとして。そのキッカケが、今までに、見た事も聞いたこともないようなジャンルのものであったとする。その演奏家に憧れて、音楽の道を志したいと思いました。そういうことなら、賛成するかはさておき、ひとまず、僕らにだって、感覚として理解ができるんだよ」

 

 

 伝わらないことが。交わらないことが、

 

 

「そうねぇ。気を悪くしないでほしいんだけど、お父さんも、お母さんもね、祐一の話してる内容に関して、具体性がまったく視えてこないって感じなの」

 

 ひどく悲しかった。二人が顔を見合わせる。母さんは、いつもと雰囲気が違う俺に対して、慎重に、言葉を選ぶように言った。

 

「だから、そもそもね。なんて答えたらいいか、分からないの」

「うん。そういう事だね」

 

 父さんの口から、長い長い、ため息がこぼれた。俺に返せる言葉なんてあるはずもない。口を噤んで、正座した膝上においた、両方の拳を、キツく握りしめることしかできない。

 

「祐一、べつにね。おまえのやりたい事を否定しているつもりはない。ただ、おまえの言ってること。伝えたい気持ち。そういったのが、父さんたちにはわからない」

 

 湯呑をかたむけた。ごとん、と、ほんの小さな音ですらも、なんだかひどく大きく聞こえてしまった。怒られているんじゃないかと怖くなった。

 

「…まぁ、結論だけを言ってしまうのならば。祐一は今日、隠してきた秘密をうち明けた。その内容を両親である僕らが認めたうえで、書類にサインして、印を押すかどうかを決める。要するに、この話はそれだけのことだ」

 

 ――それだけのこと。

 

 父さんの言葉が、叱責する目的でないのは理解していた。だけどむきだしになった感情が、不必要に高ぶった神経が、反射的に『嫌だ』と声をあげはじめた。

 

「そして判断を口にするには、材料が不足しすぎている。父さんは、祐一のやりたいことを応援してやりたい気持ちはあるが、仮に悪い大人に唆されている。というのであれば認めることはできない」

「……二人に、迷惑をかけるつもりは、ないよ…」

「うん。僕たちの息子は、そういうことをしない子だってよくわかってる。だけど、今見せてもらった動画なんかを見ても、僕たちにはやはり、ピンとこない」

「そうね。べつに、ブイチューバーとして、活動して、お金をもらうのは、まぁ良いかなと思うの。ただそれを今すぐにやらなきゃいけない。その内容が、他の女の子二人と、ゲームの大会で上位に入ることです。っていうのは、どうなのかしら? って気がするのよね」

「そうだね。こういうと反感を覚えるかもしれないが、祐一はまだ学生だ。来年は高校受験もひかえている。そしてたかがゲームとはいえ、仕事として引き受けるからには、相応の時間を使うはずだ」

 

 たかが、ゲーム。

 

「もし条件を満たせなければ、失うものも多いだろう。親としては、そうした事実を自他ともに見て、痛感してきているからね。そんな気持ちを打ち明けるなら、ゲームは趣味の範囲に留めて、祐一にはこれからも、ブイチューバーは個人の趣味という形で続けて、学業に集中すべきなのではないか、と思う」

 

「……」

 

 話は、完全に平行線だった。こんなことは初めてで、どうしたらいいか分からない。きっと二人も同じだったに違いない。

 

(……あぁ、嫌だな………めんどくさいな………)

 

 まるで意味のない時間が過ぎている。誰にも有益でなく、よさそうな妥協案や代案なんてものは、そもそも存在しない。

 

 完全に無駄な時間。俺の中の【大人】が言う。

 

 あきらめろ。どうせ、分かってもらえやしない。

 べつの道を探せ。日を改めろ。いったん引け。

 

「祐一、この話はまた今度ということでは、ダメかい?」

 

 そうだ。父さんの言う通りだ。べつに今である必要はない。VTuberとして仕事をするのだとしても、次の機会を待てばいいじゃないか。

 

「そうよね。また時間のある時にでも説明してもらえれば、祐一の言ってることがわかるかもしれないものね」

 

 あぁ、正論だ。母さんも話を切り上げたがってる。あきらめきれないのなら、今から入念に計画すればいい。その日のことをしっかり考えて、両親を説得する材料を1つずつ探していけ。

 

 今のうちに積み上げていけばいい。最初から上手くいくことなんてありえないのは、他ならぬ俺が知っているだろう。そうすれば今日の失敗も、後で生きてくる――

 

「………ぅるさいっ!」

 

 声がもれた。母さんが、驚いた顔をしている。血の気がさぁっと引くのを感じた。

 

「そうね、ごめんなさい」

「ち、ちがっ、今のはっ、母さんに言ったわけじゃ…っ」

 

 声が詰まる。あぁ、情けない。みっともない。俺はさっきから、なにをやっているんだろう。だんだんと、自信が揺らいでくる。

 

(…やっぱり、間違ってるのかな…)

 

 少なくとも、もっと良い方法はあったはずだ。こんな勢いに任せたやり方は柄じゃない。考えることはたくさんあった。時間がたりないのなら、べつの機会に回すべきだった。

 

 でも、

 

「お父さん、お母さん」

 

 違うんだ。

 

「…わがままを言ってるのは分かってます。理屈が通ってないのも承知してます。けど、今回だけは、俺のやりたいように、やらせてもらえないでしょうか…」

 

 頭を下げる。

 

 機会は、今しかないのだと思ったから。

 

「…この話を断ったら、俺はこの先も、しんどい生き方をしないといけないと思うんです。自分の人生に自信がもてない。生きる意味を見出せない。そんな風に思うんです」

 

 今この時のように、ただ時間が流れるなかで、

 無意味な生を実感するだけ。

 

「だから、お願いします。二人には、俺が言ってることも、話の内容も、ガキの戯言にしか聞こえないのも承知の上です。でも、俺にとっては大事なんです。どこかに、繋がっていると思うんです」

 

 大げさかもしれない。だけどここで頭を下げることを辞めてしまったら、いつの日か、俺は一生後悔する。もう一人のジブンの横に立ち、胸を張って笑うことができない。そんな気がした。

 

「……祐一」

 

 重苦しい時間が横たわったその先に、父さんの声がした。

 

「父さんの正直な気持ちを話そう」

「……うん」

「ガッカリしているよ。久々に、心の底から、失望した」

「あなた!」

 

 のんびりした母さんが、めずらしく、とがめた声をだす。それを手で軽く制してから、父さんは続けた。

 

「だってなぁ。本当にわからないんだよ。祐一の言ってることが、まったくわからない。この『VTuber』とかいう被り物を着て、スマホのゲームに声をあてて、単なるお遊びだろうゲームの動画を見て面白がったり、喜んだり、ましてやそれでお金を稼げるなんていうわけだろう。実際にこうして動画を見せられても、良さがまったくわからないんだよ」

 

 否定した。俺たちが『良い』と思っているものを、すべて正直に「わからない」と言いきった。

 

「老いたんだなぁ、僕は」

「…………え?」

 

 はぁ~あ~と。

 

 父さんは、とてつもなく大きなため息をこぼした。

 

「8年も同じ家で過ごしてきた、息子の言ってることが、皆目さっぱり分からんとは情けない。父さんだって、若い頃はロッケンロールの道を目指して、自分の親と大げんかしたというのにね」

「……え?」

「高校生の時だったかな。実の親をね、ブン殴ったよ。『なんでこのロックがわからねぇんだ!!』って意味不明なことを怒鳴り散らしながら殴り合ったよね。とても今の祐一のように、理知的に頭を下げるなんて真似は、できなかった」

「…………あの、父さんって証券会社の社員だったんじゃ……?」

「そうだよ。亡くなった『おまえのじいさん』からね。音楽で身をたてる気持ちが本気なんだったら、一流の大学入るぐらい余裕だろうがって煽られてね。結果的に合格して、ロッケンロールは、大学の途中でやめちゃった」

「あらあらまぁまぁ、その話、お母さんも初耳ねぇ」

「お母さんと出会った頃は、会社の仕事をバリバリこなす自分が超カッコイイと思ってた時期だったからね。もうロックなんて聞かず、しっとりしたジャズとか聞いてたし」

「うふふふ。あの頃のお父さん、上から下までブランド品一式でガチガチに固めてて、気取ってたわよねぇ」

「若かったからねぇ。今思えば、恥ずかしいよ」

 

 父さんが「いやはや」なんて言って笑う。

 

「ごめんな、祐一。本心では、おまえのやりたい事を認めてやりたい気持ちはあるんだよ。だけど、分からないものは仕方ないんだ。その事実が、本当に、父さんをガッカリさせている」

 

 父さんは、また湯呑を傾けた。ぽつりと「すっかり冷めてしまったなぁ」なんて言う。

 

「自分の子供のことが信じられない。素直に応援できない。それ以上に不幸なことって、なかなかないものだな。この歳になっても、僕の人生は、後悔の連続だよ。そうだ、お母さん」

「はいはい、なにかしら? お父さん」

「どうやら息子は、ずっと一緒に暮らしてきた、親代わりの僕たちよりも、信用のできる相手を見つけてしまったらしい。それって、くやしい事だと思わないかい?」

「あらあら、そうねぇ…」

 

 母さんは目を閉じた。その瞼の裏で、言葉を探しているように、じっと沈黙を守り続けたあとに、ぽつりと言った。

 

「ねぇ祐一。竜崎さんという方は、どういった方なの?」

「…えっ、えぇっと…」

 

 37歳の変なおじさんです。椅子マニアです。テンションの波が激しめです。――とはとても言えない。なにかせめて、もうちょっと印象の良い情報は無かっただろうか。

 

 俺は頭をフル回転させて考えた。

 

「…確か、小学生の時から、路上でギター持って、弾き語りしてたって、言ってたかな」

「小学生で弾き語り…?」

「それ日本の話なの? 海外の話じゃなくて?」

「らしいよ」

「その人、今いくつなんだい?」

「37歳だって」

「っていうことは、平成元年…いや、昭和の終わりぐらいの生まれかな…」

「あらあら、お父さん、わたしも昭和生まれですけど、日本の路上で、小学生がギター持って弾き語りしてるのなんて、見た事も聞いたこともないわよ?」

「僕も昭和生まれですけど? まぁこの歳まで生きてきて、街中で小学生が一人、ギター持って演奏なんて見た事がないねぇ」

「俺も最初は例え話なのかなって思ったけど、なんかガチっぽかったよ。そうだ。確か、封筒の……」

 

 思いだした。契約書の入った封筒。

 赤い、花びらのシール。

 

 

『――その小さな花が、あの日からずっと、僕の道を照らしてくれているんだよ』

 

 

「これ、赤い……なんだっけ……すいーとぴー…?」

「赤いスイートピー!」

 

 母さんが、ぱんと両手を合わせて、食いついた。父さんも、ちょっと驚いている。

 

「とっても素敵な歌よね。お母さんファンだったわ~」

「もしかして、松田聖子さん? 年代的に30代の人が知っているか微妙じゃないかな…ましてや当時は、小学生の男の子だったんだろう?」

「確かにこの歌の良さがわかるのは、大人になってからかもしれないわね」

「お客さんからのリクエストだったって」

「へえ…じゃあ、もしかしてその人も、祐一みたいな子だったのかしら」

「どうして?」

「祐一も、うちに来てからは、必死に、毎日家のお手伝いをしてくれていたからよ」

「そうそう。僕たちからは、はやく大人になりたくて仕方がない。生きる術を身に着けたいんだと、そんな風に見えていたよ」

「……うん」

 

 確かにそうだった。竜崎達彦さんの家には当時、偶然ギターが置いてあって。俺の側にはハサミと、それから美容師として働く両親がいた。

 

 ――想いを寄せれば、ふと、夢で聞いた声を思いだす。

 

 

 なにも迷うことはない。

 膨大なる思考の闇を解き放て。

 

 

「父さん、母さん、聞いて」

 

 

 幾憶もの夜が、どれだけ圧縮して押し寄せようとも。

 オレ自身がその境となり、キミを護ろう。

 

 

「俺は、散髪屋の息子として、生きていくのは、嫌だ」

 

 

 キミの痛みは、もうキミだけのモノに留まらない。

 心の赴くままに、信念と共に在れ。

 

 

「だって、続けられないから」

 

 

 伝わるさ。

 

 

「――父さん、母さん。俺はさ、この家に引き取られてすぐの頃は、きっと、またなにかあれば、捨てられるかもって思ってた」

 

 

 伝える。

 

 

「うちは、そんなに裕福な方じゃないし、散髪屋は、どんどんチェーン店ができて、普通のお客は、回転率を優先して、みんな単価が安い方に行っちまうだろ」

 

 

 ぜんぶ。今日。

 

 

「うちは、親切な常連さんが多くて、そういう人たちが、頻繁に通ってくれるけど。だけどみんな、もういい歳だろ。これから先も病気にならず、元気に通ってくれる保障なんてないだろ?」

 

 

 言えないことがあるのなら。

 

 

「実際、寝たきりになって、店に顔をだせなくなった人もいるだろ。自分がそうならずとも、常連のじいちゃんたちのご両親は、満足に健康体でいられる人の方が少なかったりするだろ?」

 

 

 俺の気持ちを、正面から、ぶつける。。

 

 

「去年、友重のじいちゃんの家に、俺たちも、お線香だけ、上げにいかせてもらった事が、あったじゃん?」

 

 

『――あぁ、裕坊も来てくれたんか。すまんなぁ』

 

 

 町内会長をやっている、友重のじいちゃんの奥さんが亡くなったのだ。その日、じいちゃんが、泣きそうに、笑い顔を浮かべてた。普段のじいちゃんを知っていると、本当につらかった。

 

 

『――最後まで、頑張って、よぉ生きたよ。えらかったわなぁ。最後までワシらのこと、覚えてくれたまま逝きよった』

 

 

「その日から、だんだんと。俺が、なんとかしなくちゃって、店を継がなくちゃいけないって思いが強くなってた。でも、本当に本当のことを言うとさ。このまま個人商店をやっていっても、いつかはダメになっちまうんじゃないかって、思う時があるんだよ」

 

 

『――ワシも、いつまで持つかのう。あぁ、いらんこと言うてしもうたの。わはははは。大丈夫じゃよ』

 

 

「常連のじいちゃん達は、いつかはみんな歳老いて、死んじまうんだ。今チェーン店に通ってる人たちは、なにか大きなキッカケがない限り、安い店に通い続ける。それで、いつか、父さんも母さんも、死んじまって、じゃあ、俺はどうなるんだろうって…一人でもこの店を守れるのかって、ずっと先の事を考えていくと、不安で、怖くて……」

 

 

 【夜】がやってくる。 

 

 もしかしたら【間違っているんじゃないか】と思ってしまう。

 

 二律背反だ。

 

 正義も、悪も、必要に迫られるから、存在しているだけ。大差はない。本当の【正しさ】は、いったいどこにあるんだ。

 

 大人たちは言う。折り合いをつけて、生きるんだ。

 

 じゃあ、教えてくれよ。

 

 【俺たち】が、確実に生き残れる方法を示してみろよ。ヒトの良心に則った上で、なにを犠牲にして、なにを守れば、あんたらは満足できるか言ってみろ。

 

 ぐるぐる、ぐるぐる、同じところを、回っている。

 

 それに、答えはないんだよなんて。

 

 俺にとっては【死】と同義だ。

 

 『がんばって生きなさい』なんて言うんじゃねぇ。

 

 本当は、大人たちの方が、その答えを見つけられず、惰性で生きていて『死にたい』なんて呟いてんだろうが。

 

 この世界の先は、もしかしなくても、詰んでいる。

 その答えは、もしかしなくても、正しい。

 

 

「――だから、本当に、苦しくて……どうすればいいんだよって、悩んでて、でも!」

 

 

 

 【オレが、おまえという名の世界を、広げよう】

 

 

 

 仮想世界の散髪屋。そんな、ヘンテコなものが出来てしまったら、寝たきりのじいちゃん達だって、いつか通えるようになるかもしれない。滅入った気分を、楽しくできるかもしれない。

 

 若い人は、もう一人のジブンの髪型を変えるのに夢中になって、通ってくれるかもしれない。お金の支払いだって、仮想マネーや、投げ銭のシステムを持ち寄れば、なにかしら収益を上げられる形が実現するかもしれない。

 

 年老いた両親を残して、遠くへ行かずとも。この家で、そういう商売ができたなら、これからも3人で、あたたかいごはんを食べて、生きていくことができるかもしれない。

 

 

「俺の中の想像力が、今日、すげー広がったんだよ! それは、VTuberじゃなくて、もっと先にあるかもしれないけど、その起点の1つは、確かにここにあるんだって、思えたんだよ!!」

 

 

 生きていたいと願う気持ちが、今日、あの場所で、大きく、豊かに、広がったんだ。

 

「俺は『散髪屋の息子』ってだけで、終わりたくない!! 誰かの役にたちたい。そして、その誰かっていうのは、俺が大好きな人たちだよ。その気持ちだけは変わらない!!」

 

 そしてもしかすると、今日はじめて、その大好きな人たちのなかに【オレ】自身を含めることも、できたんだ。

 

 

「俺の言ってること、わけわかんねーよって、二人が思うのは当然だと思う! だけど俺は引きません!! この話を引き受けたいと思ってます!! なんでかっていうと、俺が将来【生きるための道標】になると信じてるからっ!!」

 

 

「わかった」

 

 

 父さんが言った。

 

 

 湯呑を傾ける。「あぁ、もうからっぽだ」と、独り言のように口にした。

 

「祐一、1つ、父さんからのアドバイスだ」

 

 ふっふっふ。と両肩を揺らして、口にした。

 

「大都会の、大きな会社で、他人から信用される条件。話を持ち掛けてもらえるには、なにが必要か知っているかい?」

「…………知識?」

「違うな。人前で、裸になることだよ」

「…………………はい?」

「宴会の席で、一緒に裸踊りを踊ろうぜ。おまえも脱げよ。とか言われた時に、ためらわず服を脱げる男が偉くなれるんだ」

「…………………………えーと…?」

 

 なに? 父さん、なにが言いたいの?

 

「祐一、おまえ、今から服脱いで、裸踊りしたら、その書類にサインして印鑑も押してやるぞ。と言われたら、やれるか?」

「………………………」

 

 父さんの目は、マジだった。

 なんだか画伯チックに、キラーンと光っている。

 

 

「どうした? 息子よ。俺は散髪屋の息子に収まる器なんかじゃねぇとのたまった、おまえの覚悟はその程度なのか?」

「…ッ!!」

 

 ちなみに俺は、10歳の頃から、風呂には一人で入ったし、自分の部屋を与えられ、そこで布団をしいて眠っていた。

 

 しかし家族ならではの『脱衣所でうっかりエンカウント』が発生することはあるが、その程度のハプニングでも、思春期たる俺のハートは、恥ずかしいという気持ちで振り切れるほどだ。

 

「――――いいぜ、脱いでやるよ」

「パンツもだぞ。わかってるとは思うが、ズボンのことじゃない」

「あぁ。トランクスのことだろ。バカにするなよ」

「脱いだら、踊るんだぞ」

「いいぜ。去年文化祭で覚えた、マイムマイム踊ってやんよ」

 

 引けない。

 

 ここで、引いてたまるかってんだよ。

 

 そして俺は、上着のボタンに手をかけて

 

 

「やめなさい。バカ男子」

 

 

 とっても冷静な母君の声が、さえぎった。 

 

「もういいでしょ。っていうか、あなた。実は最初から認める気しかないのに、話を楽しんでるだけでしょ」

「…………え?」

「いやぁ、お母さんには敵わないねぇ」

 

 相変わらず、のんびり笑った。湯呑を傾ける「あ、もうない」。

 

「父親としてはさ、こういうイベント、一度は楽しんでみたいじゃないか」

「普通は、たいへんだって聞きますけど」

「そのたいへんさが、僕らの息子にはまったくないんだ。逆に不安になってくるじゃないか」

「気持ちは分かりますけど。だからって、だいじな一人息子を、煽る様な真似はやめてくださいよ」

「だけどそのおかげで、今日は祐一の気持ちがよくわかったじゃないか。というわけで、祐一。その書類には同意しよう。やりたいことも認めよう。休みの日も、祐一がやりたい事をやりなさい。ただし、1つだけ条件をつけてもいいかな」

「…条件って?」

 

 父は、やはり息子の裸踊りをあきらめきれていないのだろうか。一瞬そう思ったけど、

 

「いつでも構わない。この責任者の『竜崎達彦』という方に、一度会わせなさい。他の子供たちよりも、大人びた息子の価値観というものが、僕らには視えずとも、十分に成長した、大人の目と口を通じていれば、なにかわかるかもしれない」

「そうね。それが一番だと思うわ」

 

 母さんも同意した。

 

「祐一、竜崎さんに、連絡を取ることはできるの?」

「あ、うん。連絡先はもらってる」

「じゃあ、ご足労をかけることになるけれど、いつでもいいから、一度うちにいらして、両親と話をしてもらえるか聞いてみて」

「そうだね。先方にはご足労いただくことになるから、時間はこちら側が都合をつけますと添えてみてくれ。頼めるかい?」

「わかった。じゃあ、連絡してみる」

「そうしなさい。えー、では、初の前川家会議は、解散ー」

「ふふ。おつかれさまでした」

 

 父さんが、結局最後まで、のんびりとした感じでいった。俺はなんだかすごく疲れて、立ち上がることもままならず、

 

「……二人とも、ありがとう……」

 

 もう一度、頭を下げた。

 

* * *

 

 定休日の月曜日。つまり翌日の夜には、竜崎さんが「はいはいはい、参りましたよー!」と、マジでやって来た。

 

「今日ね、ちょうど都合で地方に行く予定があってね。これは行くしかないでしょ、今でしょ! って思った。ただ明日には東京に戻ってないといけないから、ごゆっくりお話はできそうもなくて、まことに申し訳ない」

 

 

祐一:

「竜崎家は、兄妹そろって、行動力が異常だと思う」

 

そら:

「あー、わかるー。どっちも、猪突猛進タイプだよねぇ」

 

あかね:

「で? 結果は?」

 

 

 真夜中、俺たちは、スマホのグループ通信を使って、だらだらと喋っていた。

 

 

祐一:

「完璧。竜崎さん、父さんと母さんに、めっちゃ気に入られてた」

 

あかね:

「愚兄はなにをやらかした?」

 

祐一:

「エアギター」

 

そら:

「え、えあぎたー?」

 

祐一:

「うん。最初は真面目っぽく話してたんだけど、途中で昔の歌手、松田聖子さん? の話になって」

 

祐一:

「じゃあ一曲、よろしければ歌わせてくださいって。ギターを持ってるポーズして、歌いだした」

 

そら:

「うわー、なにそれ、超見たかったー」

 

あかね:

「身内の恥」

 

祐一:

「いや、そんなことないよ。正直マジで上手かったし」

 

 本人はおどけて、陽気に冗談めかしていたけれど。それでも歌を口ずさみはじめると、ふと一瞬、視えたのだ。

 

『――僕に1週間、時間をください。

 必ず覚えてきますから。

 来週、この場所で、同じ時間に、弾かせてください』

 

 寒い街角で、だいぶ弦の緩んだ、古ぼけたギターを持って、歌っている。足早に進んでいく人たちの中、たった一人の、小学生の男子が、自らの声帯を振るわせて、直に歌い届けている。

 

 立ち止まっているのは、歌をリクエストした女性が一人だけ。足を止めて、耳を傾けている。

 

 少年が、赤いスイートピーを、歌いおわった。

 たった一人の女性の拍手が、ぱちぱちと、響いた。

 

 

祐一:

「とっても、素敵だったって、母さんも、父さんも褒めてたよ」

 

あかね:

「たまには愚兄の奇行も役に立ったか」

 

そら:

「あーちゃん、本当に竜崎さんに対して厳しいね」

 

あかね:

「普段の振る舞いが悪い」

 

そら:

「えー、あーちゃんが言う? それ言っちゃう~?」

 

あかね:

(お? やんのか? あぁん?)

 

そら;

(いいぜ。かかってきな!)

 

祐一:

「二人とも、スタンプでバトんのやめてください」

 

祐一:

「とにかくそういうわけで、契約書は無事に、両親の同意を得た上で、竜崎さんに渡されました」

 

そら:

(おめでとう!)

 

あかね;

「祐一は今後も、ハヤトの活動を続けるのね?」

 

祐一:

「うん。例のコラボの件もそうだし。個人でも今まで通り、配信していこうと思ってる」

 

そら:

「では、ハヤト先生。来週から開催される『フェス』の件につきましては、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますねー」

 

あかね:

「狙うは【KING】の称号」

 

祐一:

「それな。ところで『フェス』の新モードは、二人とも確認した?」

 

そら:

「『連盟戦』ってやつだよね。3人専用のパーティだけ、参加可能なんでしょ?」

 

あかね:

「『3バ専用の対戦モード』だから、きっと、レベル高い」

 

祐一:

「そう。それと公式の知らせでさ、俺もさっき気づいたけど、そのモードで【KING】の称号を取得したチームは、LoA公式が開催する、日本大会の参戦権が得られることが、決まったらしい」

 

祐一:

「ちなこの大会、去年の賞金総額は3千万で、優勝したチームは、さらに翌月の世界大会に出場できます」

 

祐一:

「世界一のチーム認定されたら、優勝賞金額1億ドルです」

 

そら:

「ドルで1億円!! すごい、がんばらなきゃだね!!」

 

あかね:

(呑気か? 頭お花畑か?)

 

そら;

(いいぜ。かかってきな!)

 

祐一:

「だから、スタバんのやめて? 女子、仲良くして?」

 

祐一:

「でもとりあえず、あかねさんの言ってることも間違いでなくて」

 

祐一:

「いまもっとも人気で、知名度もあって、優勝賞金額が1千万超える大会にでられるかもってことで」

 

祐一:

「今度の『フェス』は、ガチ勢がスタンバってる。メンバー募集も熱いらしいんで、実質プロレベルの3人チームと当たることも、覚悟しといて」

 

そら:

「わかったー。祐一くん、あーちゃん、がんばろうね!」

 

あかね:

(足をひっぱるなよ?)

 

そら;

(いいぜ。かかってきな!)

 

祐一:

「身内で争うのやめて。それで『連盟戦』は事前登録が必要なんだけど、チーム名は【V-Tryer】でいい?」

 

あかね:

「異議なし」

 

そら:

「あーちゃん発案という以外に、わたしも意義なし!」

 

祐一;

「はいはい。それじゃ『LoA』のゲーム立ち上げてな? フェスの連盟戦登録タブクリックして、開いた画面で待っててな? 登録申請すっから、ケンカせず座ってろな?」

 

 なんだか竜崎さんの気持ちが、少しわかってしまった気がする。まぁ変なおじさんが理想像になるかはさておき、俺は手順通り、チーム登録モードの画面に移動する。

 

 うっすらと、ゲームのBGMが流れるなか、表示された注意事項にざっと目を通す。

 

 

(ご注意)

 今回のフェスティバル・アリーナでは、従来通りの『レーティングマッチ』か、固定された3人でのみ対戦が行える『連盟戦』の、どちらか一方にのみ、参加できます。

 

 また『連盟戦』に参加されたチームの内、上位0.1%以下の成績をほこる証である【KING】の称号を得たチームは、来年の冬から春にかけて開催を予定されている、LoA日本全国大会への参戦権が与えられます。

 

 ぜひ、あなたの信じる仲間と共に、

 新たな世界の頂きを目指してみてください。

 

 

 フレンド登録から、二人の名前を呼びだし、登録を行う。

 

 

参加希望先のモード:『連盟戦』

チーム名【V-Tryer】

 

 

キャラクター01:

 

↑↑↑HAYATO↑↑↑

【KINGx5】

【GRAND_MASTER】

 

 

キャラクター02:

 

Clock_Snow

【QUEENx3】【ROOKx2】

【DIAMOND_B+】

 

 

キャラクター03:

 

Sorano.Sakura

【Platinum_C】

 

 

 ――以上の3名で『連盟戦』に登録しますか?

 認証は、チームの3人全員が合意キーをタップした場合のみ、実行されます。その場合、今回の『フェス』終了まで、参加登録を取り消すことはできません。

 

 表示された分岐。

 自分たちの意思で選択する。

 

 【合意する】

 

 ――チームの登録が完了いたしました。

 

 ご参加、ありがとうございます。

 『フェス』開催当日を、楽しみにお待ちください。

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