VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~ 作:no_where
「それじゃ、クロちゃん。わたし達が今日遊ぶゲームのこと、紹介お願いできますか?」
「…ん、わかった。今日遊ぶのは、世界中で人気のある、eスポーツの代表ジャンルとも呼ばれている『moba』だよ。タイトルは、」
「レジェンド・オブ・アリーナ。通称、LoA」
世界が暗転する、演出。
パッ、と。
ひみつ基地を模した仮想現実《シアター》の一角に、スポットライトのような、円形をした照明が宿った。
光と影。
世界に降り立つ。
「ごきげんよう。諸君」
ひるがえしたるは、漆黒の外套。裏地は赤。
特徴的な姿勢で立つ。右にはめた白手袋で、仮面に手を添えた。
「人生を謳歌しているか?」
とつぜん現れた上での、挑発的な物言い。
「繰り返される毎日。己が眼が宿す現実に、潤いはあるか?」
居丈高。皮肉。
どうせそんなことはないのだろうと、断定するような。
「その口元が日々つぶやくのは、一体どのような事柄だ?」
挑戦的な、言葉の数々。
「今日、生きる意味はあるか? 明日を生きる価値があるか?」
そしてまた、自らにも問いかけるように。
「諸君らの命の値札、今日の人間の価格は、いくらだ?」
右手で仮面を取り、現れた『素顔』で、不敵に微笑んだ。
「【最強】の称号には、いったい、どれほどの価値がある?」
左手を優雅に回し、深々と、一礼してみせる。
「夢を見ることを忘れた者たちよ。
遠き過去にのみ、心捕らわれた人々よ。
今こそ語ろう。
やさしき悠久の黄金。
在りし想いに等しき世界があることを」
双方向性。二律背反。逆向きのベクトル。
表と裏。黒と白。
「貫くような閃光。鋭き熱量と鋼の如き白銀の威容もまた
如何に素晴らしきものであるか。
このオレが、証明してご覧にいれよう」
ふたたび、男は歩きだした。
「今日は、特別な一日になる」
用意された、自分専用の座に掛ける。
手前の机に仮面を置いて
「ここが【世界の中心】だ。現在の最先端だ」
頬杖をついて、足を組み、
「さぁ、かかってくるがいい。無味乾燥な人間たちよ。
俺たちが相手だ。せいぜい、楽しませてくれたまえよ」
* * *
――あぁ、コレだ。
わたしが夢見た、望んだ片鱗が確かに存在する。
「ハヤト、なんだかいつにも増して強気ですね」
「これがアイツの素だよ」
あふれだす喜びが止まらない。
「今日のハヤトは、間違いなく【最強】だ」
心が躍りだす。
「最高だ。そのプライドごと、オレが切り刻んでやる」
「あとはマッチングするかどうか、ですね」
「するさ。なぁ、ロリ?」
確信を得て、遠方にいる奴に呼びかける。
「僕ちんに聞かれてもね~、神のみぞ知るってやつじゃない?」
「クク…んなもん、最初からいねーって知ってんだろ。少なくともこの世界には、どこを探したっていねーよ」
「? どういうことですか?」
「気になるなら、ロリに直接聞いてみな」
「えっ、生理的にイヤなので結構です」
「だってよ。ロリ」
「傷つくなァ」
オレたちは嗤う。
「ロリ、ついでにもうひとつ、聞いといてやるぜ」
「はいはい、なんだーい」
「テメェ、ズルはしてないよな?」
「してないよ。ボクたちの能力はまぎれもなく、キミ達に準拠しているのさ」
「それならオッケーだ」
「…だから、どういうことなんです?」
「さっきも言ったろ。ロリに直接聞いてみろって」
「お断りします」
ハルが即答する。声だけの存在はもう一度「傷つくわぁ」と言って笑っていた。
「あっ、そろそろマッチングモードに移動しそうですね」
「いくか」
これ以上なく、最高の気分だった。
* * *
一戦目、二戦目。共に勝利した。
仮想現実のひみつきちの中を「GG《Good_Game》!!」という称賛のメッセージが飛び交って、花吹雪のエフェクトが咲く。
「残すところ、あと1戦となったな」
少し水を飲んで休憩している間に、改めて自分たちの成績、および順位を確認した。
Team『V-Tryer』:
69戦61勝8敗 暫定順位53位。
【KING】の称号を獲得できるのが、上位50チームのみということで、本当にギリギリ足りてない。
あと1勝すれば、間違いなく、取得圏内には入る。ワンチャン、他の上位チームが敗北して、繰り上がりになる可能性もなくはない。
「フッ。愚問だとはわかっているが、一応、聞いておこう。最後の1戦、どうする?」
「いくでしょうとも!」
「んー、やるしかないってやつだねー」
三人とも、引く気は皆無だった。世界に渦巻くコメントも、最高潮に盛り上がっている。視聴者の一体感が増し、加速する。
「いいだろう。では、共にいこうか。諸君」
スマホの充電と、回線の調子を確かめたあと、ふたたび『フェスティバルモード』を選択する。
【対戦相手を探しています…】
少し、時間が掛かった。すでに俺たちはランカークラスの位置にいるうえに、最終日のこの時点で、残る試合を消化していないチームはけっして多くないからだ。しかし、
「…決戦に相応しい舞台は整えてやったぞ」
俺は確信していた。
「さぁ、かかってこい」
【対戦相手が見つかりました】
『V-Tryer』 VS 『All for one』
69戦61勝8敗 69戦69勝0敗
Rate:2390 Rate:2573
53位 1位
【キャラクターピック画面に移行します】
*
来た。
まるで示し合わせたように。
単なる乱数による調整を、操作された運命だと信じる。
おろかな人間たち。
システムに則った法則であると知りながら、それでもごく稀に、本当に、この世界には、人間の意識を超越した『なにか』が存在しているかもしれないと思ってしまう。
巡り合わせ。運命。この瞬間にしか、ありえなかった。
感慨という名の幻想。
中途半端な知恵を獲得した生命が拠り所とする糧。
テメェらの生は、勘違いの連続だ。
どうしようもない、日々を経過するために。偶然に期待して、かろうじて、生きている。死なずにすんでいる。
本当に、楽しそうな顔しやがってよ。
せいぜい楽しんできな。myself.
* * *
system:
【ダイスロールを実行】
【キャラクター取得の先行が『All for One』に決定しました】
【チーム『V-Tryer』は使用禁止キャラクタを選択してください】
【有効時間:30秒】
マッチング画面。今のゲーム環境に強いヒーローと、相手の得意なヒーローを使えなくするように『バン《BAN》』する。
個別プレイヤーへの対策をするなら、オレがもっとも得意とする『スカーレット』を封じるのが上策だろう。
「風見さん、こっちのターンは、リンディスを封じたらいいですよね?」
「まぁそうなるわな」
「ピック候補は、ブザーちんが次点で得意なジャングラーからでいいのかな?」
「たりめーだろ。おまえらは後回しだよ」
「はい。後回しで全然いいですっ」
「はいはい。信者乙~」
そうこう言ってる間に、バンできる有効時間が減少していく。
「…あれ? 迷ってるんですかね?」
「みてーだな」
なにか他のことを警戒してるのかと、若干訝しんだ。すると、
【タイムオーバー。禁止されたキャラクタはありません】
【チーム『All for One』は、キャラクタを選択してください】
「おやおやおやぁ? まさかの時間切れ?」
「回線トラブルでも起きたんですかね?」
「……いや……」
自分の口元が、ひどく歪むのを感じた。
「おいロリ。先手譲ってやる。テメェが選びたいの取れ」
「およ、いいのかい、ブザーちん?」
「おう」
「じゃあ遠慮なくぅ~」
【キャラクタ『キュベレー』が選択されました】
【続けて、使用禁止キャラクタを選択してください】
「リンディスですよね?」
「いや、なにもしなくていい」
「え、でも…」
「いいから。だまってオレの言う通りにしろ」
「はい。わかりました」
「信者乙」
【タイムオーバー。禁止されたキャラクタはありません】
【チーム『V-Tryer』は、キャラクタを選択してください】
【キャラクタ『セイバー』が決定されました】
「…これ、もしかして」
「あはっ! お好きなのどうぞ。だってよ」
【チーム『All for One』は、キャラクタを選択してください】
「ハル。取りな」
「承知しました。そういうことでしたら」
【キャラクタ『アテナ』が決定されました】
【続けて、使用禁止キャラクタを選択してください】
―――――。
【タイムオーバー。禁止されたキャラクタはありません】
【チーム『V-Tryer』は、キャラクタを選択してください】
【キャラクタ『シャナ』が決定されました】
―――――。
【チーム『All for One』は、キャラクタを選択してください】
【キャラクタ『スカーレット』が決定されました】
【続けて、使用禁止キャラクタを選択してください】
―――――。
【タイムオーバー。禁止されたキャラクタはありません】
【チーム『V-Tryer』は、キャラクタを選択してください】
【キャラクタ『リンディス』が決定されました】
―――――。
【チーム構成が決定しました】
『V-Tryer』
↑↑↑HAYATO↑↑↑
リンディス
Sorano_Sakura
セイバー
Clock Snow
シャナ
『All for One』
xxXBuzzER-BEateRXxx
スカーレット
loli is justice
キュベレー
Fujiwara
アテナ
【以上の6名で、ゲームを開始します】
「さぁ諸君。フィナーレだ! いくぞッ!」
「うん、みんなで勝つよ!」
「んん…いっちょやったりますかぁ」
「いくぜ! 勘違いした偶像共の目を醒ましてやるッ!」
「…貴女の指令を遵守します」
「いいねいいねぇ、アガってきたよぉ~!」
【レジェンド・オブ・アリーナの世界へ、ようこそ】
【両チームのミニオン展開まで、あと5秒】
【GAME is START】
【to All Brave Heroes. glory of victory in your futures!!】