VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~ 作:no_where
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バトルロワイヤル。バトロワ系というジャンルで一括りにされる事もある。
『魔女』によって新規構成された世界概念上にて
2010年後半より、その知名度の価値を向上させたもの。
初期の作品は、輸送船から無手で降り立ち
物資を拾い集めながら戦闘をするスタイルが主流だった。
続編が制作されるごとに、内容も更新、洗練されていく。
構造領域【NΩ〈-2025】上にて発表された『G&M』では
初期装備と属性魔法をあらかじめ選択しておくことで
降り立った直後でも戦闘をすることが可能となる。
また『レベル』の概念も実装されており
敵プレイヤーの撃破など、特定のアクションに応じた行動を
することで経験値が入手できる。ポイントの振り分けで
自身の武器や魔法属性を強化可能。
銃の種類は、現実と、ゲームの世界観に準拠したものを選べるが
中には特殊なものも用意されている。
近接専用の『刀剣』もまた、一種類だけ用意されていた。
//return.
* * *
ゲームと呼ばれる、この次元領域の人間たちが作った、仮想世界。
場所を指定して降り立ったポイントは、かつての戦場の名残りを思わせる、荒野の原風景が広がっていた。
アレが意図しているのか、そうでないのかは知れないが、どちらにせよ、感傷的に過ぎる。そして周辺には、一時の友軍である二名を除き、数多の影も降り立っていた。
『102名のプレイヤーのうち、50人近くが集結してるな』
『おかしいね、ここ、そんなにプレイヤーが選ぶ場所じゃないと思うんだけど』
『誰のせいだと思っている』
リアルタイムで配信を追っていたに違いない。こちらがゲームを開始する光景は、別世界にいる人間たち、おおよそ350万人に視られていたのだから、『狙い打ち』は、十分に可能なはずだった。
『貴様のくだらんパフォーマンスが効いたらしいぞ。獅子身中の虫め』
『ひどい言い掛かりだ。でも僕のフォロワーなら、味方に回ってくれるんじゃないかな』
『そんなつもりは、微塵も無さそうだぞ』
仮想現実用に作られた者どもが、一斉にこちらに目を向けた。全員がその手に銃を持ち、わざわざ離れた場所にいる、己に向かって距離を詰めた。
『おやおや。どうやら虚栄心に満ちた連中ばっかり、集まったみたいだね』
『…どうせ貴様の【能力】が発動して、こうなったのだろう。こっちの相手は己がやる。貴様はさっきの子供の御守りでもしていろ』
『了解だ。おたがい、身の丈にあった仕事をしようじゃないか』
仮想的な一つの肉体《キャラクタ》。
意識を二つに分離して、外殻たる『器』を、己が操作する。直後、立ち止まっていた一点に、あらかじめ示しあわせたような、集中砲火が重なった。走って回避するが、連中も当然ながら距離を詰めてくる。
『さすがに数が多いな。一度退くか』
【magic code Execution】 【Type_WIND】
『銀の剣』が、魔法を詠唱。
両手に掴んだ直刃の刀剣が、外部から、非常識なエネルギーを注がれたように、あわい翡翠色に輝きはじめる。
――ジャラン。
柄の部分に『意識せねば触れることのできない』、魔法の鎖が浮かび上がる。疾走を一旦解除する。その場にて、二刀一対の片側のみを握り、遠心力をかけるように、半身を手前に引き寄せた。
【Enchant Level 1】
『視点』を上向きに変更。先には、無人となった軍事施設があり、その上層には、レーダーの役割をはたす尖塔の一角が見えている。
【Activated Magnetic_force(+,+)】
手にした【風】の刀剣、および繋がる鎖に【磁界性】を付与。
しっかりと刀の一方を握りしめたまま。
遠心力を利用して、鎖で繋がるもう一方を投擲する。
【Extend Action !!】
――ジャラララララララララララッ!!
一方の刀剣が、一直線上に飛翔する。
二対を結んでいた鎖も、際限なく伸びはじめた。
【風】【射程延長】【磁石の特性】
人間どもが作ったルール。大多数の認識における、属性。
『ゲーム』の世界。共通の認識、非常識な【価値】。
それらのパラメーターが組み合わさって、科学とは対極の『魔法』を作りだす。
――ガキンッ!!
投擲したもう一方の刀剣が、数キロ先の劣塔に突き刺さった。残る一方の手で魔法の鎖を握りしめる。
【Activated Magnetic_force(+,-)】
磁界性の条件を変更。プラスとマイナス。NS。
――ジャラララララララララララッ!!
今度は逆に鎖の長さが縮小される。ゲームの世界が、演出された物理計算を呼び起こし、己の両足が地面から浮いた。白銀色のプラグスーツをまとったキャラクタの全身は、放たれた刀剣の元に吸い寄せられる。
遥か上方の塔に突き刺した、直刃の根本が迫る。
キャラクタである自身もまた、壁に激突する寸前に、さらに視線を反転させた。強引に向きを変える格好で、両足を曲げる。
――ドンッ!
足裏を壁面にぶつけて、劣塔に着地。
この『ゲーム』の仕様では、落下ダメージなるものが存在しない。
利用できるものは、すべて利用する。
残る一方の刀剣も突き刺す。自身の位置情報を固定化。
ゲーム世界特有の計算式の条件を達成。質量値、抵抗値、衝撃値は『おおよそ無視』できることが、この6年間で判明済みだ。
架空の演算結果が弾きだされた、仮想世界の先で眼下を睥睨する。
別世界にいる男の影が笑った。
「仕方ないな。よし、みんな。悪者退治といこうぜ」
豆粒のような大きさの人間たちが、こちらを見上げ、各々の銃を構えている。三人一組のチームではあるが、全員が味方というわけでは当然ない。だというのに、全員が裏で示し合わせたように、『ヒーロー』を狙っている。
【Your team member has been defeated !!】
同時に、逃げ遅れたチームメンバーが一人、敗退したログが流れた。
ほんの少しだけ視線を逸らし、メンバーの『HP』を確認する。
「ホープ! どうしよう! 敵がいっぱいきたよ!?」
残る一人は無事だ。HPはしっかり残っている。
「僕は大丈夫だよ。ご心配なく。ケビン、君は適当な建物に隠れて、レベルアップに必要な物資《アイテム》を集めといてくれるかな。僕は、自覚のない、ご面倒な方々のお相手をさせてもらうからさ」
両手の刀剣を引き抜く。直後、遠距離用ライフルの銃弾が、己のいた壁面を穿つ。耐久力無限の構造体を意味もなく傷つけた。
「あぁそうだ。忘れていたよ。よければ、チャンネル登録よろしくね」
見張り台に着地。変わらず、高低差によるダメージは無い。交戦するターゲットを設定。先ほどと同様に、二本の刀を磁界の極点として再展開。
【Magic Code Execution】
距離を詰める。もう一人の己が、「それ、ワイヤーアクションみたいでカッコいいよね。動画映えもするから、優先的に使っていこうぜ」と、意味不明なことを言っていた移動動作で飛び交う。気楽か。あと戦っているのは、己だ。
――視点変更。
建造物の壁に足の裏が付くように、位置を反転。
――視点集中。
天地が逆さまになった大地に立つ敵を見据える。
――跳躍。
三角飛びをする要領で、壁を蹴る。
――着地。
間髪入れずに対象を睨む。
――疾走。
瞳孔の収縮を認めた、デバイス内の人工知能が判定。
system_operator:
【《locking on.》――ターゲット、ロックします】
――直進。接近。
両手に大口径のライフルを構えた敵の喉元へ。
「ヤロウッ!」
『敵』からの応撃。視線を逸らして射線を避ける。が、システム上の乱数値によって、付与された『散弾値』が、身を逸らした座標に向かってくる。
正面から距離を詰める場合。刀剣の攻撃圏内まで接近する以上、絶対的に避けられない弾丸が迫る。それを、
system_operator:
【《Parry.》――攻撃の回避に成功しました】
『耐久度無限』の刀を振るい、直に、銃弾との座標値に重ねることで無効化する。敵の銃弾を、剣で斬り捨て受け流す。といった事象が、この世界に関しては、理論上可能だ。
system_operator:
【《No Damage.》――ダメージはありません】
仮想世界。高速インフラが浸透した、マイクロ秒以下の遅延しか発生を認められない領域で、さらに踏み込む。この先を見極めて当然だというように、成し遂げてみせる。
「まず、一つ」
剣の間合いに入る直前、相手は銃を構えたまま、棒立ちになっていた。弾切れだ。あせった様子で弾倉を変えようとするが、もう遅い。
斬リ捨てる。
system_operator:
【《CRITICAL HIT》――ターゲットへの攻撃を確認しました】
【《DAMAGE COUNT 352》――HPの最大値まで残り48ポイント】
逆胴狙いの斬撃判定を食らわせ、反対の刀で上から突き刺す。
system_operator:
【《DOWN》――想定されたステータス異常が発生しました】
瀕死状態。攻撃はできず、味方からの蘇生を待つのみの状態。さらにあと一撃を見舞えば倒すことができたが、
【Activated Magnetic_force(+,+)】
代わりに、べつの方角へ剣を投げた。
鎖が伸びる。今度は短い距離をおいた壁に刺さり、即座に魔法を唱える。
【Activated Magnetic_force(+,-)】
鎖が縮小。直後、
system_operator:
【《target has been defeated.》――敵プレイヤーが消滅しました】
無差別に飛来した銃声が突き刺さる。瀕死状態のプレイヤーだけが、その銃弾をまともに浴びて絶命する。敵味方関係なし。ただ『有名ランカーに一泡吹かせたい』と願う、有象無象のギャング崩れのような人間たちが集まってくる。
「悪いけど、1対多は、もっとも得意なんだよ」
『…戦っているのは、己だがな…』
連携もなく、ゲームで勝ち残る気概もない。単に数で押し寄せるだけ。誰一人として気づいていなかった。自分たちが、この男にとって、体の良い、撒き餌にされていることに。
強者など、どこにもいない。
こうなってはもはや、己は淡々と、自分の仕事をこなすだけだ。
* * *
system_operator:
【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
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【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
* * *
system_operator:
【《target has been defeated》――敵プレイヤーが消滅しました】
system_operator:
【《kill_count》――45人目のプレイヤーキルです】
――確かにそれは、コミックアニメの主役《ヒーロー》だった。ティーンエイジャーたちが妄想してやまない、架空のヒーローが、モニター1枚を隔てた先に実在していた。
:ヤバイヤバイヤバイ!! ホープ強すぎんじゃん!!!
:神プ
:人間やめてる。
誰もが銃を使って闘争を繰り広げる中。たった一人、時代遅れの武器を駆使して、群がったプレイヤー達を、一人ずつ仕留めていく。
開始10分。ゲームに参戦したプレイヤーの半数近くを、たった一人で壊滅させて、彼だけが生き残っていた。魅せプレイというレベルに留まらず、配信の熱量は、登録者の数と共に激増していく。
「さてと、あらかた片付いたかな?」
辺り一面には、プレイヤーがそこで死んだことを示す、アイテムストレージの山ができていた。
「まぁ、僕が本気をだせば、ざっとこんなものだよ」
めずらしく、調子にのった素振りをみせる。油断を誘っていた。あと一体、自分の背後、視覚となる物陰に立って、こちらを狙っているプレイヤーがいることにも気づいていた。
「それじゃ、遠慮なく、アイテムを頂くとしようかな。ご愁傷様」
地面に落ちたストレージに近づく素振りをみせる。意識の外、おそらく残る一人が、銃の引金に指をそえただろう、感じた時だった。
【CRITICAL HIT!!】
【Enemy Player has been Deferted!!】
致命的なダメージを受けて倒れる。口角を吊り上げるのを耐えていた。
「ホープ、だいじょうぶ!?」
リアルの音声通信。チームを組んだ少年が「隠れていろ」といった場所からでてきて、走ってくる。彼のキャラクタは、見るからに少年たちが好みそうな、赤い髪がトゲトゲに逆立った、マシンガンを構えたガンナーだった。
「えっ、マジか、今のは危なかったな…まだ敵の生き残りがいたんだね」
「うん!! 僕がやっつけたよ!! 隠れたところにアイテムいっぱいあったからね。銃をアップグレードして、後ろから、頭バーンッてしてやった!!」
「あぁ、見事なもんだぜ。ケビン」
最後の敵が倒れたのは、位置的には、彼の真後ろだ。
逆に言えば、この少年に対しては、完全に背中をさらす格好にもなっていた。おまけに狙撃を狙っていたから、身動きもしていない。ゲームが下手くそなんだという少年からしてみても、十分に『良い的』だった事だろう。
「グッドキル。キミのおかげで助かったよ。ありがとう」
「うん! でもホープの方が凄かった!! すごいよ!! 一人で45人もやっつけるなんて!!!」
「なんてことはないさ。それに、これから50killチャレンジが達成できるかは、さっきの一撃のおかげだと言ってもいいんだ。キミこそ、自分を誇るべきだよ」
「うんっ!!!」
自分の夢。今もっとも世界中で憧れの一人と言っても過言じゃない、スタープレイヤーに褒められた。大勢の人たちの前で、大活躍できた。
「ケビン、コメント見えるかい? 僕の方だと、君を称える声で埋まっているよ」
「ほんとう!? うれしいな!!」
少年の分身が、銃を持って、本当に幸せそうに笑った。
「あっ、でもあいつら、ぜったい配信を見てたリスナーだよ! だってみんなチームを組んでるはずなのに、全員ホープだけ狙ってたもん!!! 卑怯者だ!! ゆるせない!!!」
流れるコメントが、いっせいに、少年の言動に賛同する。純粋な熱と怒りに後押しされた者たちが「アンチざまぁ!」「登録解除しろよ!」といった攻撃的な言動に変わり始めた。
「まぁまぁ、おたがい無事だったんだから、そのぐらいにしておこう。それよりも、ケビン。次も僕がピンチになったら助けてくれよな」
「わかった、まかせて!! ぼくがホープを助けるよ!!!」
「あぁ、とても期待しているよ」
魔法の剣を鞘に戻す。もう一人の彼があざ笑った。
『――いつも思うが、良心は痛まないのか?』
『良心だって?』
現実で配信中の彼が、自然なスマイルを浮かべる。
『亡霊王。キミは、ユーモアを解するセンスにも長けてるよな』
彼は同時に口にする。現実と、ゲーム。
二つの世界共々に目を向けて、別々に発信した。
「さぁ、行こうぜ。この世界は、僕たちのものだ」
『良心なんてもの、この世界の、どこにも在りはしないさ』