VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~   作:no_where

62 / 92
.59

 102体の兵士が降下。色とりどりの彗星が到着した。

 

『東側の建物から回ります』

『了解』

『じゃあこっちは反対から回るね~』

 

 即座に銃を構えて走りだす。一歩目を踏みだした時には、そう遠くない場所から銃声が聞こえていた。さらに別方向、輸送機を離着陸させる滑走路でも、魔法による炎と氷柱が立ち上がる。

 

『アーマーレベル1発見』

『拳銃用の弾あるよー』

 

 べつの建物に向かった二人から、簡易チャットが飛んでくる。『ありがとう。あとで向かいます』と連絡を入れて、こっちも素材を集めていた時だった。

 

「早速か」

 

 こちらに向かって、走ってくる人影を見つけた。

 二丁拳銃の安全装置を解除。

 

 

system:

「《Openmode.Executor》――システム、戦闘モードに移行します」

 

 

 

 相手の両手には、大小一対の刀。

 現実の口元が、つい笑みの形になる。

 

「そっちも、寝れなくなった口かな?」

 

 構えて発砲。初期弾数には限りがあるので、威嚇射撃は最低限に留める。

 

『敵を2名確認した。アサルト持ちが2名。火属性』

『こっちも1人遭遇しました。カタナ使いです』

『任せていいか?』

『問題ありません』

 

 AIによる、音声変換のテキストチャットを一瞬だけ見て、同時に風魔法を詠唱する。

 

 

 【Magic code Execution】

 【Type Wind】【Enchant Lv 1】

 

 ――《Extend Action !!》

 

 

 二段跳び。研究所の壁を蹴りつけるように駆けあがる。連なる建物の間を繋ぐパイプラインの足場に飛びうつると、相手も後を追いかけてきた。

 

 

system:

「《locked on.》――ターゲット、ロックします」

 

 

 おたがいの顔の表情まで見える距離。敵は小刀《こがたな》と、刃渡りの長いあつらえの打刀《うちがたな》を握りしめている。キャラクタの外見も合わせていて、見るからに、サムライといった井出立ちだ。

 

 

 【Activated Magnetic_force(+,+)】

 

 

 まずはセオリー通り、小刀を投擲するのが見えた。

 付近の壁に突き刺さる。伸縮自在の鎖を掴み、一息に迫ってきた。

 

* * *

 

 『Gun & Magic』には、初期実装されたラインナップの武器のうち、一種類だけ、近接専用の刀剣が存在した。

 

 ゲーム上の武器名は、無銘刀《nameless》だ。ビジュアルとしては、日本で『脇差し』と呼ばれる小刀と、それを重厚にした『打刀』。大小一対となったデザインだ。

 

 攻撃の起点となるのは、小刀になる。

 

 『魔法の詠唱』を感知すると、柄の部分から不可視の鎖が伸びていく。伸縮自在のそれは、疑似的な磁場モドキを発生させる。

 

 極点の向きと、刀剣に生じる磁力の強さを、ショトカに登録したキーを入力することで、一方を引き寄せたり、逆に引き離すことができる。

 

 応用として、生じた鎖を握りしめたあと、鎖の長さと極点を操作することで、某ヒーローのように、疑似的なワイヤーアクションを行うことが可能だ。

 

 本来なら、最低限のリーチしかない刀剣に、【風】の速度上昇効果を乗せた小刀を、弾丸以上の速度で投擲。直後に自分もワイヤーアクションで急接近。打刀の間合いに入った敵を、大火力の一閃で斬り捨てる。

 

 ――それだけ聞けば、かなり「使えるんじゃね?」と思うかもしれないが、

 

「ほいっと」

 

 距離を取って、他に敵の影がないことを確かめた次手。相手はまたしても案の定、真正面から、まっすぐ小刀を投げてきた。それを難なくかわす。近接持ちの対策としては基本、距離を開いたまま、直後に、両手の拳銃で撃ち返すだけだ。

 

 

system:

「《HIT》――対象のターゲットに攻撃が命中しました」

 

 

 投擲した刀の威力も速度も、高めの補正は掛かるが、所詮は単発に過ぎない。攻撃も直線的で、なにより予備動作がでかい。

 

 2025年リリースの『GM』は、キャラクタのモーションを、最新の3Dモデリング技術に加えて、AIのディープラーニングを応用して、しっかり作りこんである。

 

 それこそ間近で凝視すれば、銃の引金を引く瞬間の、指の動きさえ見えるぐらいだ。つまり『刀を投げる』という動作も、しっかり見えてしまうわけだった。

 

 ある程度に、ゲームをやり込んでいればわかるけど『攻撃のモーションが見える』というのは、それだけで致命的だ。

 

 コンマミリ秒。フレーム単位であっても、予備動作が視えるなら、ある程度にゲームが上手いプレイヤーは、考えるより早く、無意識で身体が動く。

 

 特に今は、AIデバイスを使っている。視線をほんの少しそらすだけで、体幹が横にズレて、小刀はなにもない壁面に突き刺さる。相手は遠距離で戦う術がなくなり、こっちは相手を視界に捉えたまま、手元の攻撃キーで、二丁拳銃の引金を押し続けるだけだ。

 

 

system:

「《HIT》――対象のターゲットに攻撃が命中しました」

 

 

 バンバン当たる。そりゃね。投擲した後にも、硬直時間が発生すんのわかってるからね。じゃあ、進退窮まった相手が、次はどうすんのかっていうと、

 

 

 【Activated Magnetic_force(+,-)】

 

 

 飛んでくるわな。俺の側で突き刺さった、小刀の磁力を極点として、鎖の長さを縮小させる。打刀を持った自らを、投げた小刀の元へ引き寄せる。

 

 相手の思考が透けて見えるぜ。手にした打刀で、辻斬りよろしく、

 

 

 お命頂戴! 斬り捨て御免ッ! 

 

 アイヤーッ! ズバァッ、ブシュウゥ!! 

 

 ナムサン! サヨナラ! オタッシャデー! 

 

 

 実に格好いいよな。男子のロマンが詰まってるよな。ネタ込みで。

 

 特にこのゲーム会社は、LoAの時もそうだったけど、日本を含めたアジア人オタクの好み、趣味嗜好といったものを、ヘタをすると日本人以上に熟知している。

 

 噂では専用のAIがゲームディレクションを行っているという噂まである。

 

 

 『銃が世界を支配するゲームでも、カタナは一種類はいるよね。

  敵が打った弾を、カキーンとはじき返すのは絶対だよね。

  ゲームバランス? あぁうん。多少壊れてもいいよ。何故なら 

 

  カ ッ コ イ イ か ら ね ! ! 』

 

 

 という、独断専行にも近い意見をAIが提案して採用されたのだとか。あくまで噂だけど、仮に本当だとしたら、その人工知能、男子の趣味わかりすぎだろ。そして人間のプログラマーは、処理的な問題で血反吐を吐いたと思うんだ。

 

 さながら走馬燈のように。そんな事を考えながら、飛んでくる敵を待ち構えた。

 俺の命を奪える武器を持ち、榴弾の如く迫る敵。

 

 

 ――だが、ここでひとつ、残念なおしらせがあります。二つもあります。

 

 

 ひとつめ。相手は、まっすぐに、飛んでくるのだ。小刀を回避した時と同様に、軸をズラして回避することは当然可能だ。さらに変わらず、俺は銃を構えている。

 

 ――バンバンバン。

 

 

system:

「《HIT》――対象のターゲットに攻撃が命中しました」

 

 

 うん。そりゃね。当たるよな。だって、真正面から飛んでくるんだもん。

 

 

system:

「《DOWN》――相手にステータス異常が発生しました。戦闘不能です」

 

 

 魔法を用いた、超高速度での強襲とはいえ、まっすぐ急接近するのがわかっていれば、普通に構えて銃を発射するだけで、弾は当たる。相手は死ぬ。

 

 結果。空中にいる間に、ライフがゼロになった相手は。「ズザザザザザァァ!!」と。派手に砂煙を散らすような格好で、目前で膝をついていた。

 

「おつかれさん」

 

 瀕死時の演出で、キャラクタモデルは、自然にうつぶせの姿勢になる。角度によっては、完全な『ジャンピング土下座』の成立だった。シールドを張って逃げれば、仲間に蘇生させてもらえるが、もちろんそんな余裕は与えない。

 

「またどこかで」

 

 ――バンバンバン。

 

 

system:

「《target has been Defeated.》――敵プレイヤーが消滅しました」

 

system:

「《kill count.》――キル数1を獲得しました」

 

system:

「《Level Up.》――レベルが2になりました。ステータスが上昇します」

 

 

 カタナ武器に魅力を感じて、装備してみるのはいいものの、大体は、残念な結果になってしまう。いわゆる『ロマン武器』ってやつだ。

 

 唯一の利点としては、威力自体は高いので、建物内で待ち伏せして、完全な接近戦に持ち込めば使えなくもない。でもそれなら、べつにカタナでなくても、近距離で強い銃を使えばいいよね。という話になる。

 

 プレイヤーの間では、一度はロマンを超えたネタ武器として定着しかけた『無銘刀』だが、これを使いこなして、あろうことか、世界トップランカーまで昇り詰めた人間がいる。

 

 

 ホープ・ウィリアム。

 

 彼の扱う、唯一無二の、3Dモデリングのキャラクタ。

 

 『銀剣』――《Silver_Sword》。

 

 

 刀を地形に突き刺せば、鎖の伸縮を利用して、高速移動できることは知られていた。しかしなんにせよ、不意でも付かない限りは、最終的には、敵の真正面から挑み、斬り合い、撃ち合う形になることは避けられない。

 

 強引に、単発最強クラスのDPS《瞬間火力》を打ち込んで、ライフトレードの殴りあいに持ち込んでも、倒せるのは、せいぜい二人までだ。

 

 そこで銀剣は、

 

 『角度を付けて跳躍し、相手の攻撃を誘導。接近する』

 

 『接近後、どうしても避けられない敵の弾だけを、小刀で斬って弾く』

 

 『回避と同時、もう一方の打刀で、敵を斬り伏せる』

 

 『返す小刀で突き刺し、ダウンを取る』

 

 『他の相手から攻撃を受ける前に、即座に離脱』

 

 

 『Hit & Away』。

 

 一撃離脱の基本戦術を、徹底して繰り返している。最新の高速回線、遅延速度が、マイクロ秒以下の電子ゲームの世界で、ひとつのミスもなく、淡々と、さも当然のように、人外未踏の神業を繰り返している。

 

 

 『食らわなければ、どうということはない』

 

 

 とかいう、マンガの主人公みたいな道理をやっている。ゲームに相応の自信があるプレイヤーほど「意味わかんない!!」と叫ぶはずだった。

 

 

 でも、そういうゲーマーは、実際いる。

 

 

 サーカスの曲芸師よろしく、変幻自在のワイヤーアクション、超絶技巧を駆使した反応速度を伴った上で、全体図を俯瞰できる。ミクロ単位での反復作業をノーミスで実践して、勝ちあがってしまう。

 

 ゲームの世界は、キャラクタの能力が基本的に等しい。条件もまったく同じだ。すべてが、プレイヤーのセンスに委ねられている。だというのに、他とは明確な一線を画して君臨する、本物のスタープレイヤーがいる。

 

 その眼に、なにが視えているのか、なにを信じているのか。俺も、そういう高みにまでいけるのか。ほんの少しだけ、夢を見ることがあった。

 

『敵を一体、撃破した。そっちは?』

『カタナ持ちを倒しました。合流します』

『了解』

 

 人によっては「たかがゲーム」だ。だけどこの世界は今、あらゆる現実をさしおいて、もっとも多くの人々の注目を集めていた。

 

* * *

 

 二回目のリング縮小まで、残り60秒を切った時。

 周辺で生き残っていた、敵の一人を撃破した。

 

「…コイツで最後か…?」

「…あぁ、そのようだな…」

 

 拳で殴りかかってきそうな2号さんが、相手の顔面を掴み、空中で浮かせていた。相手プレイヤーは、ガッツ効果(一度だけHPが1残る)が発動していたが、そのまま無造作に投げ捨てられると、消滅した。

 

 

system:

「《target has been defeated.》――敵プレイヤーが消滅しました」

 

 

 周辺には、俺たち三人以外に、生き残っているプレイヤーはいない。目前には円形状のタイムゲージが浮かび、それがぐるりと一周すると、

 

 

system:

「エーテルプラント区域G3を制圧。チーム全員に経験値が入ります」

 

system:

「《Level UP》――レベルが12になりました。

 パラメーターとスキルを割り振ることができます」

 

 

 操作ウインドウを開く。

 手早く、『攻撃力』と『炎耐性』にリソースを割り振って閉じた。

 

 

system:

「シークエンス・フェイズ2の進行を開始します。ダメージリングの縮小まで、残り10秒。プラントを制圧した各チームは、これより60秒間のbuffが付与されます」

 

 

 俺たちのいる部屋。半倒壊した建造物の中央。

 天高く、『塔』のようにそびえた機械の柱が起動して、輝きはじめた。

 

 

 【Enchant Lv_5】【Valiable cost INF and NULL】

 

 

 光の粒子が収束する。俺たち三人の身体が、金色のエフェクトに包まれた。こうなっている間は、あらゆるダメージが無効化される。

 

「1号さん、2号さん、今から1分間は、いわゆる無敵ってやつです。でもそれが過ぎると普通にダメ入るんで、リングの内側まで移動しましょう」

「…承知した。俺の脳内では、赤いツナギを着た配管工が、陽気なBGMの下で、意気揚々と駆け回っている映像が浮かんでいるところだ…」

「…あぁ。某対戦ゲームでは、まっさきに『出現しない』に設定するよな…」

「…回復アイテムも『出現しない』にするんだぞ…」

 

 そのキャラなら、俺も知ってる。たぶんそのゲームも元ネタが分かる。ちなみにうちの地方では、回復アイテムは『食べ物』だけはアリだった。けど時間がないので、話の風呂敷は広げずに、『エーテルプラント』を後にした。

 

 島の中央に続くルートを進む。磁気嵐《ダメージパルス》に追いつかれたが、特殊なバフのおかげで、ダメージは1ポイントも入らない。

 

「…アキナ君、この状態で敵と遭遇したら、どうするのが最善だ…?」

「ひとまず無視して進んでください。アプデ入ってから、パルスのダメージクソ痛くなったんで。この先にある別の『エーテルプラント』か、高台になってる場所が取れるまでは走ってください」

「…あぁ。了解したよ…」

 

 磁気嵐に包まれて移動しながら、俺たち三人はボイチャで会話する。

 

「…ところで。先ほどの『エーテルプラント』という場所だが、一度目に『制圧』した時よりも、時間が掛かったな…」

「プラントの規模によって、制圧時間が変わります。デカいとこ取れたら、そのぶん多めに経験値が入りますけどね」

「…なるほど。合理的な仕様だな…」

 

 建物の『制圧』というシステムは、『Gun & Magic』の特徴的なゲームルールの一つだった。

 

 従来のバトロワだと、実は、相手を直に倒すことのメリットがあまり存在しなかった。単純に好成績をだしたければ、極力、物陰に隠れつつ、おこぼれを狙う。相手チームが、1対1で疲弊したところを「漁夫る」のが有効だった。

 

 もちろん敵を倒すと、そのプレイヤーのアイテムがすべて手に入る。しかし『最後まで生き残る』という目標を考えた場合、ある程度の物資が揃った時点で、戦闘行為は極力避けたほうが良くなるわけだ。

 

 そこで『GM』は、ある程度、積極的な戦闘が起きるように、バランス調整をほどこされている。その最たるものが、mobaのように、キャラが強くなるレベルを採用したことにある。

 

 敵プレイヤーや、フィールドで出現するモンスターを倒せば、経験値が入る。

 

 さらにもう一点、島中に点在する『エーテルプラント』と呼ばれる施設に一定時間留まり『制圧』が完了すると、大量の経験値と、一定時間の間、磁気嵐の中でも無敵になれる、特殊バフが手に入る。

 

 しかしプラントの制圧時。他のチームも制圧圏内に入っていると、ゲージは上昇しなくなる。だからその時点で、積極的なバトルが発生するわけだ。

 

「…さきほど、全体マップを確認したが、島の中央プラントの規模がもっとも大きいようだ。そして島の外周部にいくほど、小さくなる…」

「そっすね。最中央のエーテルプラントが、一番手に入る経験値がデカイんですけど、いきなり乱戦に巻き込まれますし、仮に制圧できても、そこからいったん離れたあと、他のチームに再制圧されると、またレベルが下がっちゃうんですよ」

「…あぁ、なるほどな…」

 

 俺が言うと、2号さんが「理解したよ」とばかりに、うなずいた。

 

「…外周部のプラントは小さく、手に入る経験値も少ないが、ダメージリングが縮小していくと、そもそも元の場所に戻れなくなる。つまりはゲームが進行すれば、他のチームに、奪われることがないわけだ…」

 

 初回プレイだと言っていたけど、2号さんは、一発でこのゲームの仕様を見極めていた。やっぱり相当に年季の入ったおっさ…ゲーマーらしい。

 

「そんな感じです。最初から中央で始めたらずっと、いたちごっこみたいな事になるんで。これまでのFPS系のバトロワって、最初に中央降りて生存できたら、後は芋るだけで良い順位になれるっつーか、ぶっちゃけ途中が暇すぎたんですよね」

 

 けれど『GM』では、レベルを上げたら上げただけ、中盤戦以降が有利になる。だから、セオリーとしては、

 

「まずは外周に降り立って、ちっこいプラントを取っていく。そんでレベルを上げながら、他のプレイヤーを倒しつつ、最後に中央で大決戦。みたいな感じですね」

「…なるほど。非常に合理的だな…」

「…あぁ。我々、時代遅れのロートル勢の好みにもあっている…」

「…だよなぁ。隠れた方が実質有利っつーのが、微妙に合わんっつーか。DPS至上主義の洋ゲーって、死ぬ時はマジ一瞬で溶けるから、リソース回収の手間とリターンがしっくりこねぇっつーか、いまひとつ、のめり込めなかったよな…」

「…あぁ。わかるわかる。ロートル的には、RTSの方がいいというか、今ちょうど1ポイント刻んで殴り合ってます。みたいのがやっぱいいよな。ところでビルドツリーが豊富なんだが、1号おまえなに上げたの…?」

「…とりあえず火力あげときゃいいだろ。防御にリソース振るのはタンク系列だけでいいと相場が決まっているんだよ…」

「…あぁ。ライフだの、防御にリソースを振る必要がある時は大抵、エンドコンテンツに膝までのめり込んでる時だからな…」

 

 きっと、中身も美少女なおっさん二人組が、素の口調でなにか言いながら、最短速度で、最新ゲームに対する理解度を見せてくれていた。頼もしいなぁ。

 

 プレイヤーとしての移動も最速で、無敵時間が終了する前に、ダメージエリアの圏外に脱出した。次にそびえる塔――『エーテルプラント』を目指して進行しようとしたところで、

 

 

system:

「Area『D1』のプラント区域が、制圧されました」

 

 

 俺たちの進行先にある塔から、勢いよく、翡翠色の柱が立ち昇った。さらに告知がとんでくる。

 

 

system:

「《target has been defeated.》――トップランカーが消滅しました」

 

system:

「《Ranking Update.》――プレイヤーのティアランク表が更新されました」

 

 

*--------------------*

 

【Tier_1】

 

 YOU1 Level_15 (Wind)

 kill count 18.

 

【Tier_2】

 

 Kanda Shoji Level_12 (Earth)

 kill count 10

 

【Tier_3】

 

 AkIIIna Level_12 (Fire)

 kill count 9

 

*--------------------*

 

 

 システムメッセージによって、生き残ったプレイヤーの内、現在の試合でトップ3までの情報が更新された。一位を見て、思わず声がでる。

 

「マジかよー。キル数18はヤバイなぁ」

「…そうなのか…キミも三位ならば、そこまで差はないのでは…?」

「いえ、バトロワ系で、安定して20キル取れたら、ゲーム得意ニキを名乗っても良いですから。一応、ここはフリーレートだから、序盤で初心者を大量に倒せた可能性も、なくはないですけど」

「…なくはないか…」

「なくはないですね。だけど二位の人も、相当に上手いはずなんで」

「…知り合いか…?」

「直接の知り合いではないですけど。レート戦のランカーマッチに潜ってたら、強い相手は大体印象に残るっつーか、野良で一緒のチーム組めると助かるんで」

 

 ボイチャで説明しながら、ひとまず俺も、二人に聞いてみた。

 

「1号さんと2号さんは、レート戦はいかないんですか? ゲーム、相当上手い気がしますけど」

「…あぁ。今はな、別の用事があるのさ…」

「別の用事?」

「…仕事だよ。残念ながら、ゲームを遊ぶだけの余裕はないのさ…」

「…あぁ。悲しいよな。1日12時間ぐらい、遊びたいんだが…」

 

 

 ――今、遊んでるよね?

 

 

「もしかして、なんか、配信の仕事で来てるとか、ですか?」

「…そういうわけではないんだがね…」

「…あぁ、まぁ、世の為、人類のため、いろいろあるんだよな…」

 

 うん。意味がわからない。悪い人たちではないと思うんだけど。むしろ、おもしろい人なんだけど、謎だ。いろんな意味で。

 

「それじゃ、次はどうしましょうか。もしかすると、今エーテルプラントを制圧したところに、さっき表示されたランカーチームがいるかもって思ってるんですけど」

「…どうしてわかるんだい…?」

「プラントの塔が起動したのと、ランカー情報の告知がほぼ同時に来たからです」

「…あぁ、なるほど。まさに先ほど、あのプラントを争奪していたチームの片方に元一位がいて、そいつがやられて、制圧されたからというわけだな…」

「そういうことです。一位のチームを倒せば、経験値が通常の3倍ぐらい入りますけど、どうしますか?」

 

 暗に尋ねた。あそこ、いきますか? 現在トップの奴とバトりますか?

 

 1号さんと2号さんも立ち止まり、顔を見合わせた。

 

「…どちらにせよ、次のリング縮小まで時間がある。あそこのエリアを取られないよう、あの周囲には、何者かが留まっているわけだな…」

「はい。たぶん。一人は、プラントの中央で待ち構えて、残る二人が、近くの場所で物資を回収するってのが、大体のセオリーではありますけど」

「…あぁ。なるほど。状況は把握した。我々は、キミの支持に従うよ…」

「いいんですか?」

「…構わない。我らは影だ。主体性を持つ光に、従属する身の上だ…」

「…あぁ。これもおそらく、なにかの縁だろう。一期一会の邂逅かもしれぬが、君が思うままに、我らは動こう…」

 

 やっぱり、詳しい意味はわからない。どこまでこだわって、ロールプレイを演じているのか。だけど、なんだか俺も楽しくなってきて、応えていた。

 

「行きましょう。いっちょ、やったりますか」

 

* * *

 

 翡翠色の粒子が立ちのぼる近く。半ば崩壊された外壁上の屋根裏に立つ。

 占領できる場所の中央に、相手プレイヤーが立って、周辺を見張っていた。

 

 他二名のプレイヤーの姿はない。まだ生存していれば、ここから遠くない近場で、物資を漁っているはずだった。

 

「…対象を発見した…」

「…あぁ。こちらは仕掛けるよ…」

 

 離れたところにいた、1号さんと2号さんからボイチャが飛んでくる。魔法陣の色が浮かびあがり、近くで戦闘が発生する。

 

 銃声と、雷鳴の轟く轟音。俺の眼下にいたプレイヤーの注目もそちらに向かう。

 

 

 『好機』

 

 

 直感に従う。飛び込んだ。

 

 ――『視覚補助』によるデバイスを付けていても、唯一となる死角。

 

 本人の真上。

 

 『近接用』に切り替えた銃剣《ガンブレード》。

 

 穂先を下向きに変えて強襲。

 

 

eyes:

「《Enemy Approaching.》――敵が襲撃しています」

 

 

 落下中に、メカニックの支援スキル、『サーチアイ』のセンサーに引っかかる。間髪遅れて、相手が見上げる素振りを感じた。だが遅ぇ。

 

 刺さった。と確信した時だ。

 

 二丁拳銃を交差して、近接仕様に変わるエフェクトが奔る。

 

 

system:

「《off SET》――攻撃構造体が、防御構造体と接触。無効化します」

 

 

 ダメージ判定が消失。交差した一点を中心に、蒼い粒子のエフェクトが飛び散って、俺のキャラは、ゲームシステムによって、強制的に後方へ弾かれる。着地。

 

「…マジ? 今の防ぐ? 普通」

 

 先読みじゃない。折り込み済みの動作だった。

 

「18killは伊達じゃねぇな」

 

 条件反射だけで見上げがちなところを、最初から防御動作《ガード》を構えることで対処された。なにも考えず、通常の動作を反復しているだけなら、どうしたところで習得できない『技術』だった。

 

 『隙の無さ』は、意識的な、反復行動の末に生まれるものだ。

 

「どこのランカーのサブ垢だい?」

 

 最初の交戦から、楽しさ全開で口元が緩んだ。

 ゲームって、やっぱ強い奴とやって、ナンボだよな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。