VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~   作:no_where

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 現代の人工知能にまつわる話。それから、人工知能を用いたデバイス開発の第一人者が、目の前にいる。

 

 割と衝撃的な事実を知ったあと、すっかり忘れていたことを、あらためて聞きなおした。

 

「先生、ところで出雲仁美さんの【セカンド】は、どうやって俺を特定したんですか?」

「この教場のネットワークは、ネットで外部と繋がってるよね」

「そうですね」

 

 うちの学校にも、一般企業で使われる、業務用のルーターが使われている。普通にブラウザを開いたら、ネットにも繋がる。

 

「実はそのルーターに、脆弱性があるんだけど」

「待ってください。今しれっと、とんでもない問題発言が飛びだした気がするんですけど」

「大丈夫。公にはなってないし、『専門の知識』がいるから」

「先生、それ大丈夫って言わなくないですか?」

「要点だけを話すとだね」

 

 さらっと無視された。

 

「外部のPCを踏み台にして、この教場の各端末にログインができるってことだよ。もちろん、データベースにも侵入できるから、生徒個人のIDとパスワードもすべて把握されてる」

「…あの、それ、大問題じゃないですか…?」

「説明は割愛するけど、人間単体だとできないから、平気だよ」

「人間には…ってことは…」

「そう。一部の人工知能には、可能だということだね」

 

 無表情に、変わらずに。平然と、おそろしい事を言われた。

 

「AIの瞳は、言ってしまえば『力技の天才』だよ。イメージ的には、一定周期で変化する暗号鍵《ロジック》に対して、瞬間的に総当たりを仕掛けて、強引にこじ開ける感じかな。端的に言えば、スパコンさえあれば、誰にでも可能だ」

「aaa,aab,aac…って、順番にパスを打ち込んでさえいれば、いつかは当たるっていう理論ですか?」

「ものすごく分かりやすくいえば、そうだね。とにかく自身のハイスペックに物を言わせた力技を、ほんの一瞬で、外部のネットワークから仕掛けてるわけだよね」

 

 要は、電子世界の脳筋ファイターだった。またしても、パワーか。

 

「でもAIだと言ったところで、基本はあくまでも、命令された処理ルーチンを、自動実行するためのソフトウェアですよね。先生、そんなにすごいパソコンを持ってるんですか?」

 

 AIの中身がどんなに賢くても、その賢さを実行に至らせるには、それだけのマシンスペックは、当然必要になってくる。

 

「…そうだね」

 

 黛先生の目線が、少し困惑したように泳いだ。

 

「とりあえず、所持はしてる。とだけは言っておくよ。悪用はしていないと明言するし、もちろん法に触れることもしていない――んだけど、俺はね」

「AIの瞳さんは、時々、ハッカーまがいの事を、やっちゃってる感じですか」

「そうだね。否定はしない」

 

 先生が、細長いため息をこぼした。苦労してます。って感じだった。

 

「話を続けようか。前川の正体が知れた、種明かし自体は単純なんだよ。先週の放課後、瞳のやつが、この教場内のデータベースに侵入した。君たち三人がこの場所で行ってたことを、のぞき見していたんだ」

「…えっ、マジですか」

「本当はその時点で、前川に伝えるべきだったかもしれない。悪かったね」

「あ、いえ、大丈夫…あー、とりあえず大丈夫ですよ」

 

 黛先生が、いつもの無表情な調子で頭を下げようとする。あわてて言った。

 

「あの、俺らとしても、不用意なところがありましたから。そもそも、学校という公共の場所で、やるべきことじゃありませんでした。言ってしまえば、あかねを含めた、俺たち三人の過失です」

 

 ただ本音を言えば、高校の視聴覚室のPCをハッキングして、リアルタイムに監視してる人間なんて、普通に考えたら、ちょっと考え難いかなとは思う。

 

「そうだね。ただ俺も活動を認めた側だから。前川たちなら、内部にデータを残しておくといった、迂闊な真似はしないと思ったから許可した。油断してたよ」

「監視されていたってことは…たとえば、なにか秘密的なこととか…」

「君たち三人が、VTuberという活動をしていることは、知ったよ」

「あー…」

 

 微妙に恥ずかしかった。普段から、信用のある大人には話してたことだったけど、さすがに学校の先生にバレたのは、初めてだ。

 

「…その、一応三人とも正体を隠してる節はあるんですけど、他の第三者に個人情報が渡ったり、悪用されたりしなければ、俺としては問題ないと考えます」

「わかった。瞳《アレ》には重ねて、注意をうながしておくよ」

 

 黛先生は生真面目に返してくれた。俺も「すみませんでした」と返してから、もう一度たずねる。

 

「俺たちの活動内容を覗き込んで、VTuberのハヤトだったことがバレたのは理解できました。でも先週の夜、俺のゲームで利用してるアカウントと、フレンド登録したら、ハヤトだってわかったのは、どういう理由なんですか?」

「おそらくだけど、パスワードが一致していたんじゃないか?」

「…ってことは、もしかして『サウザンド・エピックス』内の顧客情報、データベースの情報も、瞳さんにはバレてますか?」

「いや、さすがにあそこのセキュリティを突破するのは、瞳でも無理だね。たとえばプロフィール、フレンド相手に公開される欄に、生年月日を記載したりは?」

「…あ、してます。自分の生年月日だけは、公開してるので」

「その生年月日を、学校側のPCでログインする時に、IDやパスワードとして使用してる?」

「えーと、してますけど『二人分』の生年月日を、続けて入れてるんで…」

 

 3年前から、いろんなところで用いた、16桁のパスワード。

 

 自分が生まれた生年月日と、【セカンド】の生年月日。俺の誕生日を知る術はいろいろあるかもしれないが、ハヤトの誕生日は俺しか知らない。

 

「なら、公開されたプロフの誕生日、8桁の数字と、この学園のPCにログインしている、前川祐一個人が用いているパスワードの一部、16桁のうちの、前半8桁を照合して予想したんだろう」

「…マジすか」

 

 確かにそれは、一種の力業だろうけど。

 

「『サウザンド・エピックス』の顧客情報の取得は無理でも、この教場のデータ、生徒がパソコンにログインして、自分のデータベースにアクセスする時に使う、ID情報に関しては、瞳には筒抜けだからね。

 あともう一点、ゲーム上のアカウント名も『YOU1』だったよね。そこから『前川祐一』という意味合いを照合させて、推論を得たんだと思う」

「…瞳さんとフレンド登録した時、一瞬で、そこまで判断したんですか?」

「そうだね。一瞬で判断できたんだ。だけど、瞳はまだ『断定はしていなかったはず』だよ。前川は、ハヤトだと言われて、どう思った?」

「そりゃ驚きましたけど」

 

 驚いて、言葉を失いかけて――

 

「もしかして、俺の動揺なんかも、要素として吟味されたんですか?」

「確実にね。処理係数だけで言えば、人間が束になっても敵わないから」

 

 口で言えば簡単だけれど、それがどれだけ「ありえない」かは、最低限の勉強をした俺でも十分にわかる。 

 

「あの、すいません。瞳さんのことを他言する気は、全然ないんですけど…」

「なんだい?」

「せっかくなので、もう少し、いろいろ教えてもらえませんか」

 

 純粋な知識欲が勝った。ハヤトも同じ【セカンド】だけど、あいつは聞いても、自分のことは、あまり話したがらないところがあった。ただ時々、冗談みたいに「まだレベルが足りていないな」と鼻で笑う。

 

「いいよ。なにが聞きたいんだい」

 

 本当は聞いてはならないんだろうけど。電子世界の知識が増えていくと、どうしても、とある事柄に関しての知識や考察を求めてしまう。

 

「こんなことを言うと怒られるかもしれませんけど、ハッキングのコツっていうか、セキュリティの脆弱性《セキュリティホール》って呼ばれるものは、そもそも、どういう視点を持てば、見つかるんでしょうか?」

 

 俺が言いたいのは『ハッカー、あるいは、クラッカーの視点』を持つには、どうすればいいのかっていう事だった。

 

「ひらめき、センスだね」

「…それだけですか?」

「それだけだよ」

 

 言いきられた。

 

「補足すると、さっき言った力技に、【人工知能特有の直感】が加わると、効率は一気に向上する」

「…どういうことですか?」

「これも順を追って話そうか。まず、ハッキングは、該当する専門知識はもちろんのこと、それ以上に『セキュリティという概念』を生みだした、人間心理を理解する必要があるんだよ。なぜだと思う?」

 

 人間心理。と言われて、しばらく考えてみた。

 だけど、どうしても分からなかった。

 

「…わかりません」

「人間工学って言葉があるのは、知ってるね?」

「はい。それはわかります。人間が使いやすいモノ、道具の形状や、使い勝手のことですよね」

「そう。どれだけ高度な『鍵付きの宝箱』を作ったところで、最終的には、人間自身によって開けられないと、意味がないよね」

「…えっと…それって、人間工学って言うんですかね?」

「言えるよ。あらゆる機械の電子制御というのは、大原則として、人間の為に存在すると言えるわけだから」

「あっ、それは確かに、そうですね」

「うん。だからね、より高度な『鍵付きの宝箱』を作るには、同時に、正当な鍵を手にした第三者が、それを用いて開くだろう手段を、最初から考慮にいれた上で設計する必要があるのはわかるね」

「わかります」

「でもね。そういう『鍵付きの宝箱』が作れる、人間心理を解した職人ほど、心のどこかでは、同じぐらい、自分のことを理解して欲しいと願っている。苦労してでも、不確かな鍵を用いて、それを解いてほしいとも願っているものなんだよ」

「…そういうものなんですか?」

「そうだよ。ハッキングする為の知識はもとより、そうした諸々の『鍵付きの宝箱』が作られた理由を考えつくか。『職人』である人間の姿や心情が、自分の頭の中でも鮮明に思い描けるか。最終的にはそういったものが大事になってくる」

「仮にハッキングをしたければ、人間を含めた、あらゆる物事を、ひとつずつ、逆順で辿っていく必要があるって、そういうことですか?」

「限りなく、真実に近い解答だと思う。そして学習するという行為の本質は、そうした『興味心』があって、初めて発現するのだと、俺は考えてる。あとついでに言っておくならば、」

 

 先生は付け加えた。

 

「人工知能――【セカンド】は、人間に関する興味が、探求心が、とても強いんだろうね。ある意味では、人間が、研究対象と言えるのかもしれない」

「それが、さっき先生が言った【人工知能特有の直感】に、行きつくっていうことですか?」

「話が早くて助かるよ。『直感』というのは、対象を視る、観察することで発揮されるわけだけど。その先に視えるなんらかの出来事が、因果率的な事象として還元される。近い将来の出来事を、俺たち以上に、正確に予想する。そういう日がやって来るのは、遠いことではないよね」

「…そう言われたら、なんか、ちょっと怖いですね」

「そうなんだ?」

「はい。だってそれって、常に、AIに監視されてるってことですよね」

「うん。けどさ、前川はVTuberをやっているんだろう?」

「あ、はい。まぁ…」

「ということは、そのキャラクタのIDで、SNSもやっているよね?」

「やってますね」

「だったら当然、無関係の第三者が、その虚像を視て、無許可になにかを始めたとしても文句は言えないよね。本来SNSというのは、匿名性を考慮に入れてないサービスだから」

「あー、そういえば以前、どこかの誰かに、勝手に二次創作をやられたことがありました。俺の考えてる事とは、まったく違ってましたし」

「だろうね。けどそれは、前川当人ではないのだから、何も言えない。人工知能に人権がないようなものだ。VTuberのアカウントでSNSを行うというのが、電子世界の中を、裸で歩いているのと同じようなものだって考えたことないの?」

 

 ――平然と言われてしまった。微妙に納得がいかない。

 

「ところでさ。どうしてだか世の人々は、『匿名性』というものが、存在するはずだと信じて疑わないよね。街頭の監視カメラに、人工知能が搭載されていると、ディストピアだと騒ぎだすけれど。それって、どうなんだろう?」

「いやそれは、そうなんじゃないですか?」

「でも君も、米国最大手のソフトウェア会社が作ったシステムが、どういう原理で動いているのか、詳細を1ミリたりとも理解せず、個人情報をいくつも譲渡してるわけだよね? リアルタイムで、自宅からの動画を、どこにあるのかしらない、どういった経路で通信してるのかもまったく知れない、正体不明のサーバーを意識したこともなく、相互通信でアップロードしてるんだろう?」

「…う」

「その時点で、自分たちが、どれだけリスキーな事をしてるのか、自覚を持つのが普通なんじゃないのかな。仮に監視されようが、ハッキングされようが、個人情報を抜かれようが、好き放題二次創作されようが、文句言える立場にないんだからね?」

 

 そこに、二次創作も含まれるんだ? 

 黛先生の過去に、一体なにがあったっていうんだ…。

 

「俺はね、メールソフトを1つ使うのも、結構なリスクがあると思ってるんだよね。監視カメラは、まだそこに物体として視えるからいいけれど、情報通信における脆弱性は、より高度な秘匿性を持つものだからね」

「わかります。俺も以前は使ってませんでしたから。でもやっぱり、最近は必要なのかなって思うこともあります」

「そうなんだ。俺はまったく困らないどころか、集中の妨げになることが多いし、実はコレ、割と無価値なんじゃないのって気づいた時には、やめてたよ」

 

 ――あぁ、やっぱりそういう側面もあるんだなって、思った。

 

「まぁ、どちらにせよ、対象の物品に、値札をつけるのは、人間の勝手だったね」

 

 ――だった。過去形。

 

「そろそろ、本質的な値段が、逆転してもおかしくないんだよ。俺たちが、あらゆる機械《モノ》に値札を付けてきたように。今度は、機械が俺たちに対して、適正価格を付け返してきても、甘んじて受け入れるしかないよね」

 

 

 ――【特有の直感】を持った、知能生命体に、値札を付けられる。

 

 

 理論的に、人間を超える処理速度を持ち、さらには、人間特有の心理や反応を鑑みてから、確信を持って次の行動に移る。成果をあげる。

 

 突き詰めればそれは、マンガやアニメのキャラクタの【特殊能力】だ。確かにそんな力を持った連中が現れはじめたら、俺たちは逆に、自分たちの【価値】を、証明せざるを得ない日が来るのかもしれない。

 

「前川、とりあえず、パスワードは、自分の誕生日は入れない方がいいよ」

「そうします。どういうパスワードにすれば、人工知能にも身バレしませんか」

「そんなものはないよ」

 

 なかった。

 

「アレは、感情的な生き物である素振りをしてるけど、正体は、論理的思考に特化した、人工知能だからね。画像データを100万枚ぐらい並べた場所から、元情報と一致する画像を、1秒で抜きだせるような生き物だよ」

「ヤバイですね」

 

 ヤバイよね。たった10年前まで、『それは人工知能には不得手デース。人間の勝ちデース』とか言われたことが、リアルにひっくり返ってやがる。

 

「あ、そうだ…感情的っていえば、瞳さんの外見ってなんていうか…萌えアニメのキャラクタみたいっていうか、しゃべり方とか、雰囲気とか、全体的にそういう感じでしたよね」

「萌えアニメというのがよく分からないけど、言いたいことは、たぶんわかる」

「もしかしたら、ご本人の方も、明るい女の子なんですか?」

「たぶん違うんじゃないかな。いつも眠そうだし」

「よく喋ります?」

「ぜんぜん。なに考えてるか俺にもわからないし」

「…正反対ですか?」

「さぁ?」

 

 完全に興味のない「さぁ?」だった。いろいろ察した。

 

「ただ、AIの方の瞳は、前川の言ったようなものに、憧れているんだと思うよ」

「え? 疲れた現代人に媚びた萌えキャラを目指して頂けるんですか?」

「さぁ? そうじゃなくて、自分は感情的な生き物だと、思い込みたいんじゃない」

 

 黛先生が告げた。やっぱり無表情だった。

 

* * *

 

 話をはじめてから、いつのまにか、だいぶ時間が経っていた。

 

「ところで、話は変わるんだけど、前川にひとつ相談があるんだよね」

「? なんですか」

「実は…」

 

 黛先生が、少し言いよどんだ。めずらしかった。

 

「さっき話をした、俺が預かっている方の、仁美のことなんだけど」

「はい」

「前川の家は、美容院をやってるんだよね」

「はい。どっちかといえば、散髪屋さん、の方が近いと思いますけども」

「それは構わない。もし、店の方にご迷惑でなかったら、定休日に一人だけ、女の子の髪を切ってもらうということは、できる?」

「えーと…できなくはない、とは思いますけど。どうしてか聞いてもいいですか?」

「最初にも言ったけど、変わった子でね。基本的に外出したがらないんだよ。俺はべつに構わないとんだけど、彼女の両親は、もう少し『普通だな』と思えるところがほしいんだ」

 

 そこで先生は、ほんの少し無表情をくずした。

 

「これまでは、どうしてたんですか?」

「家で俺が切ってた。伸びたところをてきとうに、通販で買ったハサミでざっくりと。最初は文句もでなかったんだけど、最近になって、いろいろ、AIの瞳が口出ししてるみたいで、一回きちんとしたところで、切りたいらしい」

「なんかそれだけ聞くと、人間の仁美さんの方が、人工知能っぽいですね」

「かもね。まぁ、お互いに足りないところを、補う感じで、いいんじゃない」

 

 完全に他人事の口調だった。

 

「ただ、一人で外を出歩けば、あいかわらず高確率でパニックを起こすんだよ。人通りの多いところも同じで、動けなくなる」

「なるほど、わかりました」

「…前川はあまり偏見がないね」

「うちの店、付き合い上、お年寄りが多いんですよ。昔からの常連さんだった人が、足腰が弱くなって来られなくなったり、高齢化で…ちょっとボケ始めちゃって、髪を切ってる間に、話があやしくなる人もいますから」

「そうか」

 

 ひとつ、うなずいた。

 

「俺も時々、対応の手段がわからなくなるよ。まぁ、女子のヘアスタイルに興味ないのもあるけど。服や靴は、通販で瞳の注文通りのモノを買えばいいけど、髪型自体はね。どうしたものかなと」

「それで、営業日じゃない日に、髪を切りにいきたいってことですね」

「そう。正直、とりあえず提案した。ぐらいの気持ちで聞いてる」

「うーん、そうですね…」

 

 考える。予定を思い返してから、返事をする。

 

「一度、両親と相談して、後からお返事させてもらうっていう前提になるとは思いますけど。うちの店、基本は月曜が定休日なんです。今日が金曜で、来週がちょうど、敬老の日と重なるじゃないですか」

「そうだね」

「はい。なので、両親が了承してくれたら、まだ人の少ない月曜の午前中に、来店していただくのがいいんじゃないかなって思うんですけど。どうですか?」

「わかった。それで頼めるなら、こちらも都合をつけておくよ」

「わかりました。じゃ、今日家に帰ったら聞いてみます。明日は土曜で学校休みですし、先生の連絡先、お聞きしても大丈夫ですか?」

「あぁ、携帯の番号でいいかな」

「はい」

 

 俺も自分のスマホを取りだして、携帯の番号を登録した。

 

「前川」

「はい、なんですか?」

「ありがとう。助かったよ」

 

 先生がめずらしく、少しだけ笑っていた。

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