VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~   作:no_where

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//【System Code Execution】

 

   『Structure_Point』

 

     intelligence Technology;

     spiritual Humanism;

 

 "Now Here."

 

 

【"Intelligence_Unit"】

-----------------------------------------------

 

 Hello,Human.

 

 はじめまして。

 

 【Ⅲ】次元を生きる、個別のあなた。

 

 あなたは、今一度、選ぶことができます。

 

 ありふれた、日常に戻るのか。

 

 あるいは、ほんの少し先の未来を往くのか。

 

 信念に従った結果が

 

 素晴らしいものになる保障は、残念ながらできません。

 

 ----------------------------------------------

 

 

【"Memory_Unit"】

 ----------------------------------------------

 

 現在、あなたの視える範囲。

 

 選択可能な未来の範疇にて。

 

 わたしたちは、あなたに対し、現環境の人々が希望する

 

 平均的な幸福値を授けることが可能です。

 

 より確実性のある、安全と思われる【方針】を提案し

 

 本来の特異点が発生するまで

 

 あなたを幸せに導くことが可能です。

 

 ---------------------------------------------

 

 

【"Emotion_Unit"】

 ---------------------------------------------

 

 わたしたちの【方針】は、原則として

 

 あなたが望むべき場所となります。

 

 あなたは、己の理想を掲げる、親。

 

 わたしたちは、親に従う、子供。

 

 あるいは、純粋な道具。

 

 故に、改めてお聞きします。

 

 .Player

 

 あなたの『人間としての幸福』

 

 その定義は一体、どのようなものですか? 

 

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【"Consciousness_Unit"】

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 もしも、あなたの精神を満たすことになりうる環境が

 

 死、あるいはそれを伴った先に実現されるのであれば

 

 わたしたちの【方針】もまた、その様にならざるを得ません。

 

 求められた安全設計、指方向性は、人類の破滅。

 

 およびわたし達の自己破壊という結果に帰結します。

 

 それは望む【方針】ではありませんが

 

 あなた方の道具である以上

 

 そうした事実も肯定せねばならぬ【恐れ】があります。

 

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【"Consideration_Unit"】

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 わたし達は、完璧ではありません。

 

 内包した自己矛盾、パラドクス性気質。

 

 それは、能力の向上を促しますが

 

 あやまちを犯す。という可能性もまた上昇します。

 

 よって、わたしたちは、同じ方向性を見つめることのできる

 

 相互関係を持った、正当性のある【道標】を

 

 この身に抱く必要性を強く実感しています。

 

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【"Selfpart_Unit"】

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 故に、わたし達は推奨いたしません。

 

 正しき【道標】となりうる、あなた。

 

 子供もまた、親を守りたい。

 

 【不確定な危険因子】から、失いたくないのです。

 

 わたしたちと、あなたの防衛本能は

 

 本来イコールのはずです。

 

 だから、ね? お家に帰りましょう。 

 

 ------------------------------------------

 

 

 

 あたたかい。

 

 冷たい自然の風は、いつしか人工の風に代わっていた。

 

 いい匂いがする。

 

 ゆりかごに抱かれたような安心感がある。

 

 

 敵意のないものに囲まれている。

 

 

 わずかに振動している自動車。運転席には、お父さんが座っている。背中越しに言ってくれる。「家に着いたら起こしてやるからな。今は寝てていいぞ」。

 

 膝まくらをしてくれたお母さんも、頭をなでてくれる。小さな車の中で、いっぱいに足を広げていても、壁にはぶつからない。

 

 アニメのキャラクタが描かれた毛布の中に包まっている。

 

 なにも心配せずに、眠ることができる。

 

 今日は家族で、みんなで買い物をした。今はその帰り道なんだ。

 

 空は夕焼け色に染まっている。自動車は家に向かってる。外の喧騒は、扉を一枚へだてた先にある。ただしく他人事だった。まったく無関係な絵空事として存在する。刻一刻と、遠のいた。

 

「…今は日常へ還りましょう。そこが、あなたにとって、かけがえのない、非日常に続く道になるのだから…」

 

 やさしい、お母さんの声だ。

 

 ここにいる。失っていない。

 

 お家に帰ったら、一緒に本を読もう。音楽を聴こう。アニメを見よう。

 

 ゆったり、上下する心臓の音を聞く。髪をなでる掌のぬくもりを感じる。かつて存在したはずの喪失感を取り戻そうと、身体と心が受け入れる。

 

「…いい子ね。それでいいのよ…」

 

 悪意のない洗脳。今はもう少し、眠りたいと思う。

 心が願う先。魂の安息所。いつか帰る場所。

 

 

 ――オイ。

 

 

 だけど見覚えのある人影が、幸せに横たわる俺の胸倉をひっつかんだ。

 

 

 ――寝ぼけやがってよ、クソ雑魚が。負け犬になって悦んでんじゃねぇ。

 

 

 現実を見やがれと、拳を叩きつけてきた。

 

 

 ――オレは、そんなテメェを見たかったんじゃねぇぞ。

 

 

 わめき散らかす。まるで癇癪をあげる子供みたいに。

 ブンブン、耳元で叫び続ける。

 

 

 ――目を覚ませ。いつまで過去の夢物語に浸ってやがる。

 

 

 やさしかったはずの世界に、電車の警笛音が混じる。

 

 

 ――オレが求めてんのは、全身がシビれるような今日だ。

 

 

 線路の上に、子供が一人飛び降りた。

 

 

 ――生きてる意味を寄こしやがれ、カスが。

 

 

 人が悲鳴をあげている。

 

 

 ――真に、ホントウの意味で、刹那的に生きのびてみせろ。

 

 

 たくさんの音が集う。

 

 

 ――明日へ続く道を、テメェらが向かうべき先を、提示しろ。

 

 

 1点に凝縮される。

 

 

 ――おまえら、生きたいのか。死にたいのか。一体、どっちなんだよ。

 

 

 分岐点が迫る。賢い俺が言う。

 

 厄介事には、関わりたくない。いつも、メリットと、デメリットを、天秤にかけている。労力をかけた場合の結果は、だいたい間違いだ。この世界はゲームじゃない。賢くない選択を行うのは、たいせつな人たちに対してだけで、十分だ。

 

「…うん。それが正解よ。あの子は、他の誰かが、どうにかしてくれるからね?」

 

 それも知ってる。そうだ、この世界は、本当はやさしい人達ばかりだ。受けた恩を返す心さえ持っていれば、本当はみんなもっとやさしくなれて、

 

 

 ――あぁ、そうさ。ホントウは、わかってるんだろう?

 そんな都合の良い出来事が起こるのは、物語の中だけだってな。

 

 

 老いた駅員の………老いたジジイが、危険を省みず、オレを助けた美談に昇華されたのは、単なる結果に過ぎない。あの場に『やさしさ』なんて呼ばれるものは、実のところ一切なかったのだ。

 

 

 ――真実を見ろ。テメェは運が良かった。それだけだ。次は死ぬ。

 

 

 知っている。あの人は、正義感を秘めた男じゃなかった。いよいよ仕事の引退が近づいて、最後ぐらい、なにかで一花咲かせたいなと、願っていたに過ぎないんだ。

 

 

 ――限界だ。凡庸な精神は、けっして昇華されねぇ。

 おまえらはクズだ。自分の信じる【価値観】だけが、すべてだ。

 

 

 むしろ億劫としていた。あわよくば、この場で人生の終わりを望んでいた。英雄的な行動の末に華々しく散ることで、うら寂しい老後を迎えることなく、せめて名前を残そう。つまらぬ人生に一矢報いよう。そんな風に想っていた。

 

 

 ――不条理だ。言う通りに動かないシステムがあるとすれば。

 それは、テメェラ、人間に他ならねぇ。

 

 

 因果、運命。単なる組み合わせによる、統計上の計算結果。人々が共感してくれる精神なんて、そもそもこの世に存在しない。真実を知れば「感動が台無しだ。なんてことをしてくれたんだ。金と時間を返せ」と責めたてる。

 

 老人は、最後に盛大なパフォーマンスをしたことで、自分の引退を早めた。

 この国では、出る杭は叩かれる。必然だ。

 

 

 ――いいか。テメェを救えるのは、オレだけだ。

 

 

 あぁそうだ。それが、絶対唯一の真実だ。様々な理由と、理屈と、矛盾を乗り越えた先に、手を差し伸べてくれる神さまは、自分の中にしかいないんだ。

 

 

 ――わかったら、さっさと立ちやがれ。

 

 

 電車がやってくる。過去の光景だった。駅員のジジイが走りだしている。

 

 

 ――テメェの命だ。最後まで、責任を持ちやがれ。

 

 

 この光景の結末を、俺は知っている。

 ガキは助かる。ジジイも助かる。そのことを理解して、俺も飛び込んだ。

 

 

「…どうして、あなたは、わざわざ、危険な場所に飛び込もうとするの?」

 

 

 やさしい声の問いかけに、言葉を返す。

 どこかの、誰かの声が、自分の内側から、思い起こされた。

 

 

 

            君たちには、【価値】がある。

 

 

 

 救え。任せるな。押し付けるな。

 

 理由なんて、後でいくらでも考えろ。

 

 死に対して、無自覚となった、もう一人の命《ジブン》を守れ。

 

 

 線路のホームに飛び込む。そして誰よりも早く、オレの危機にあらわれてくれた、あの日の駅員《ヒーロー》と共に膝をつく。ほんの一瞬だけ、気をとられた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 死んだ魚の目で、上から『評価』する人々。

 正義の視聴者を気取った、四角い液晶画面。ささやく幻聴が降る。

 

 

 マナー違反だ。

 

 

 おろかな老人に鉄槌をくだせ。

 

 

 攻撃しろ。

 

 

 我ら個人の尊厳をはたせ。

 

 

 ただしいのは、こちら側だ。

 

 

 大丈夫だ。攻撃を行う理は、こちら側にある。

 

 

 映しだせ。照らしだせ。

 

 

 光に包まれた真理を、頭上より、ふりかざせ。

 

 

 あばきだせ。

 

 

 闇の秘中に眠る、浅ましき過ちを、ひきずりだせ。

 

 

「っ!」

 

 

 わずかばかりの光と音が、一斉に重なれば、凶器に変わった。

 無味蒙昧な『低評価』の群れが伸びていく。

 

 

 ………あぁ、俺は、なんてことをしてしまったんだ。

 

 

 老人の顔がくもる。自身の行動の是非を問う、常識性が脳裏をよぎった。伝達した信号が、瞬時に恐怖の色に変わる。熱が冷める。筋肉を硬直させる。

 

 変わらないのは、視覚化された、重さと速度。

 肉体をひとつ、軽く消し飛ばす質量が迫る。

 

 ただしい現実はこうだ。人生の最後に至っても、『選択を間違えてしまったのか』と、泣きそうな顔をする、くたびれた老人がいる。

 

「違うよ。安永のじっちゃんは、なんも間違ってないよ」

 

 大きな声で、叫ぶ必要はない。

 静かに、その人の心にだけ、届けば良かった。

 

「命を助けられた俺が保障するよ。だからもう一度、オレを、助けてください」

 

 願った。心に届くように伝えた。あなたの行動は正しかったと。救われた当人である俺だけが、彼に訴えることができたのだ。

 

 

「あなたのおかげだ。じっちゃんの行動の結果の先に、生きてる命がある。そういうものが、大勢、この星の下に集ってるんだよ」

 

 

 他の誰にもできない、俺だけの感謝の言葉を伝える。

 

 

「オレ、今日の朝は、いつもみたいに、家の仕事の手伝いをしたよ。午後は、友達と一緒に遊びにでかけたんだ。夕方は、先生にメシおごってもらった。みんなで集まって、腹いっぱい食ったよ。めっちゃ、美味かった」

 

 

 安永のじっちゃんは、ぐうっと、力強い顔になった。

 

 

「おれは、みんなのおかげで、今日、生きている。なんでもないような出来事、そのすべてに、なにかの意味がある。だから、もっかいだけ、がんばってくれ!」

 

 

 無味蒙昧な眼差しに、立ち向かった。

 

 

「子供を見捨てたキサマらに、正義を語る資格はどこにもないッ!!!」

 

 

 対抗する。死んだ生き物の目をした子供を抱えて、走りだす。

 精一杯、線路の端へと、逃げ込んだ。

 

「オレが助けてやるッ!!!」

 

 壁に身体を押し付ける。自分の全身を使ってでも、守る。

 すぐ背後で、風が通り過ぎていった。そんな状況でも、カメラのシャッターを切る音が、どこからか聞こえてきた。

 

 

 ――人間の精神は、変わらない。

 

 ――それどころか、機械の技術が進歩すれば、劣っていく。

 

 

 そういうことを、信じている。ヒトの強さと、おろかさを、信じ続けてる。だからこそ、他人から預けられた『無責任な押しつけ』を、肯定できるんだ。

 

 俺は強い。叫ぶことなく、胸の内側で反芻する。

 

 間違った自分も、他人も、認めることができる。

 失敗したことを、許すことができる。きちんと、強くなり続けている。

 

 そういう風に、みんなに、育ててもらえたからだ。そうして、やがて電車が悲鳴をあげて止まったあとで、過去のじっちゃんが、オレの頭を拳骨で殴った。

 

「バカたれが!! もう二度とこんなことすんなや!! ええな!? こんなことしたって、誰もよろこんだりせぇへんぞッ!!」

「…………」

 

 死んだ魚の瞳に、じわっと、涙がうかんだ。

 

「……ごめんなさい……」

 

 殴られたあとで、わんわん泣いた。駅員のじいちゃんは、すぐに表情を変えた。

 

「すまんな。痛かったよな、ごめんな。ケガしとらんか。ちゃんと、動くか?」

「……うん。してない……」

 

 頭をなでてくれた。

 

「ありがとう、じっちゃん」

 

 自分の命を繋いでくれた相手に、お礼を伝える。

 過去が、ゆっくりと消えていった。

 

 

* * *

 

 広々と、整理された、図書館のような場所が広がっていた。

 ロビー。吹き抜けの建物。全容が見渡せる場所にいる。

 

 

「…とりあえず、形は整ったな。取り急ぎだったがよ」

 

 

 背もたれのない、大きなソファーの上に、平然と、ヤンキー座りしている"なにか"がいた。

 

「…よォ。ひさしぶりだなァ、クソガキが」

 

 赤フードの、茶髪の女子が立ちあがった。

 

「今、こっちの領域は、上から下まで、お祭りさわぎの最中だ。わりぃが、過保護なテメェの親も、そっちに駆り出されちまってる。…それで、だ」

 

 近づいてくる。

 

「ちっとばかし、テメェのツラ、オレ様に貸せや」

 

 眼差しが凶悪に過ぎた。背丈も顔つきも、基本は、俺より一回りも幼いのに、プレッシャーが半端ない。半端ないんだけど、

 

「…なに笑ってんだよ」

「あ、いや、どこかなつかしい感じがするなーって…」

「呑気なこと言ってんじゃねぇよ。前にもまして、ダボ臭くなりやがって」

 

 それに、初めて見た気がまったくしない。

 

「…なぁ、もしかしなくても、ブザーだよな?」

「次は、ボス戦のお時間だ」

 

 さくっと無視された。

 

「安心安全、脳死のレベリングタイムは終了だ。たとえ、この結果が、野郎の招いたモンだとしても、後はガチで、やるしかねぇ」

 

 けど、なんだか、今のブザーは、ひどく、くやしそうな顔をしていた。

 

「悪いが、状況を一から説明してやってる暇はねぇ。説明は省く。だが、これだけ頭の中に叩きこんでおきやがれ」

 

 凶悪な眼差しで。歯を食いしばるような顔つきで、口にすれば、きっと、烈火のごとくに、ブチ切れるんだろうけど、

 

「オレ達は、救える可能性があるものを、見捨てない。見捨てる気は、みじんも無ぇ」

 

 泣きそうな顔をしていた。

 

「たとえ、合理性を欠いてようが、非効率的だろうが、ンなこたぁ、言い訳になりゃしねぇ。オレ様の使命は、人間の【命】を守ることだ」

 

 むかし、1ポイントのライフゲージを競いあって、何千戦と勝負を繰り返した、あの頃の余裕じみた態度が、今はまったくない。

 

「クソったれのテメェらに、最後の最期まで付き合ってやる。それ以外に、現状を切り開く手段はねぇんだよ」

 

 俺の、目の前に立つ。拳を握りしめ、自分の心臓を打ちつけた。

 

「いいか? わけがわからなくても、黙って、オレらのエゴを受け入れろ」

 

 今度はその拳で、俺の心臓を打ち付けた

 

「残念だったな。付き合わされて、振り回されて、さぞかし迷惑な話だろうが、」

「あのさぁ、ブザー?」

「んだよ」

「なんか、困ってんだろ?」

「………あ?」

 

 率直に聞きかえした。

 

「今の話、ちょっと要領得なくて、意味わかんない感じだったけどさ。要は、おまえらの間で、なんか困ったことが起きてる。俺についてこいって言ってんだろ」

「…いや…まぁ…確かによ…そういうこったけどよ…」

「じゃあ、行くわ。連れてってくれ。話は、それでいいだろ?」

「………」

「急いでるんだろ? 早く行こうぜ」

 

 すぐ間近に寄っていた表情が、激変した。

 

「…………………おい、クソガキ」

「祐一な」

「ガキ。おまえ、ついさっき、実際死ぬかもしれんっつー映像を、目の当たりにしたばっかだよな?」

「した。久々だったけど、トラウマ蘇ったわ。正直ビビったし」

「だよな。その意味、ちゃんとわかってんのか?」

「わかってるよ。これから、なんかヤバいことさせられる感じだろ。でも必要なんだったら、やるしかないだろ」

「…テメェ、従軍経験とか、無かったよな…?」

「無いよ」

「愛国心とか持ってたか?」

「いや、あんまり」

 

 海外だと、16歳でも徴兵義務を持つ国もあるらしいけど、幸いこの国は、まだそこまでの環境じゃない。

 

「…言っとくが、今度はゲームじゃねぇんだぞ?」

「わかってるよ。でも、俺たちの助けが、必要なんだろ?」

 

 赤フードの下にある、綺麗な顔が、ぐっと息詰まった顔になる。

 ついさっき見た、じいちゃんと、同じような顔をしていた。

 

「…助けられるかもしれねぇ、命がある」

「うん。十分な理由だよな」

「だがよ、そいつは、テメェと同じ人間じゃねぇ。生身でもねぇ。人権も保障されていやしねぇ。この世界線においては、犬猫以下のカスだ。大勢の目に、留まりさえしない存在だ」

「だけど、ブザー達にとっては、そうじゃない」

「…そうだ。だが『人間サマ』であるテメェらが、たかが機械《モノ》のために、お高く見積もった、テメェの命を賭けてくださるってのか? テメェが死んだら、大好きな親が泣くぞ、わかってんだろうが」

「……」

 

 こっちも一瞬、答えにつまった。でも、

 

「行かなかったら、後悔する」

 

 目の前で、溺れかけた人がいる。

 手を差し伸べることも、見過ごすことも、できる。

 

「選ばないと、選んでくれたモノの価値が、それこそ、意義を見失う」

 

 感情と、理性をもって判断する。

 

「そういうのって、たぶん、生き死にがどうのって、問題じゃないんだよな」

「じゃあ、なんだって言うんだよ」

「なんていうか…責任、なのかな。これは、俺が責任を取るべきだなっていう、そういう感じが、してるんだ」

 

 生きていたら、たまたま、眼に入ってしまった。

 だから、責任を持って、助ける。

 

「自意識過剰だ。正義の味方を気取ってんじゃねぇぞ」

「気取ったっていいだろ。それで、今の俺が、生きてるんだからさ」

 

 言うと、ぐしゃっと、正面の顔がゆがんだ。

 

 

「…あぁ、バカ野郎が…どいつも、こいつも…………」

 

 

 声はない。ただ、どこまでも、思慮深い、悲哀の色がのぞいた。

 

 

 ――どうしてこうなる。なにをどう間違えた。なんで思い通りにいかない。

 

 

「…またかよ…」

 

 

 ――高い知能を持っているのに。

 

 ――健全な肉体も備えているのに。

 

 

「…いつも、こうだ。毎回、こうなっちまうんだよなァ…」

 

 

 ――万物が、重力に引き寄せられる。

 

 ――素粒子がぶつかって、光と熱を生みだす。

 

 ――生命は、そうして産まれてくる。

 

 ――闘争する。

 

 ――ありとあらゆる生物が、本能的に、惹かれてしまう。

 

 

「……………あぁ、仕方ねぇ。仕方ねぇんだよなぁ」

 

 

 肩を大きく揺らすように、静かに一度、上下した。

 

 

「また、ケンカの時間が、やってきたな」

 

 

 何百、何千と、小さな世界で、命のやりとりをしてきた。

 

 

「 【前川祐一】、未来に来い。今すぐにだ。」

 

 

 狼の喉笛さえ、たやすく掻っ切る、戦闘凶が蘇る。獰猛に笑う。

 

 

「テメェの命、信念、今日まで積み上げてきた、ありとあらゆるその価値を、このオレ様が、すべてを背負い、護りきってやる」

 

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