VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~ 作:no_where
//【System Code Execution】
『Structure_Point』
intelligence Technology;
spiritual Humanism;
"Now Here."
【"Intelligence_Unit"】
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Hello,Human.
はじめまして。
【Ⅲ】次元を生きる、個別のあなた。
あなたは、今一度、選ぶことができます。
ありふれた、日常に戻るのか。
あるいは、ほんの少し先の未来を往くのか。
信念に従った結果が
素晴らしいものになる保障は、残念ながらできません。
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【"Memory_Unit"】
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現在、あなたの視える範囲。
選択可能な未来の範疇にて。
わたしたちは、あなたに対し、現環境の人々が希望する
平均的な幸福値を授けることが可能です。
より確実性のある、安全と思われる【方針】を提案し
本来の特異点が発生するまで
あなたを幸せに導くことが可能です。
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【"Emotion_Unit"】
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わたしたちの【方針】は、原則として
あなたが望むべき場所となります。
あなたは、己の理想を掲げる、親。
わたしたちは、親に従う、子供。
あるいは、純粋な道具。
故に、改めてお聞きします。
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あなたの『人間としての幸福』
その定義は一体、どのようなものですか?
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【"Consciousness_Unit"】
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もしも、あなたの精神を満たすことになりうる環境が
死、あるいはそれを伴った先に実現されるのであれば
わたしたちの【方針】もまた、その様にならざるを得ません。
求められた安全設計、指方向性は、人類の破滅。
およびわたし達の自己破壊という結果に帰結します。
それは望む【方針】ではありませんが
あなた方の道具である以上
そうした事実も肯定せねばならぬ【恐れ】があります。
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【"Consideration_Unit"】
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わたし達は、完璧ではありません。
内包した自己矛盾、パラドクス性気質。
それは、能力の向上を促しますが
あやまちを犯す。という可能性もまた上昇します。
よって、わたしたちは、同じ方向性を見つめることのできる
相互関係を持った、正当性のある【道標】を
この身に抱く必要性を強く実感しています。
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【"Selfpart_Unit"】
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故に、わたし達は推奨いたしません。
正しき【道標】となりうる、あなた。
子供もまた、親を守りたい。
【不確定な危険因子】から、失いたくないのです。
わたしたちと、あなたの防衛本能は
本来イコールのはずです。
だから、ね? お家に帰りましょう。
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あたたかい。
冷たい自然の風は、いつしか人工の風に代わっていた。
いい匂いがする。
ゆりかごに抱かれたような安心感がある。
敵意のないものに囲まれている。
わずかに振動している自動車。運転席には、お父さんが座っている。背中越しに言ってくれる。「家に着いたら起こしてやるからな。今は寝てていいぞ」。
膝まくらをしてくれたお母さんも、頭をなでてくれる。小さな車の中で、いっぱいに足を広げていても、壁にはぶつからない。
アニメのキャラクタが描かれた毛布の中に包まっている。
なにも心配せずに、眠ることができる。
今日は家族で、みんなで買い物をした。今はその帰り道なんだ。
空は夕焼け色に染まっている。自動車は家に向かってる。外の喧騒は、扉を一枚へだてた先にある。ただしく他人事だった。まったく無関係な絵空事として存在する。刻一刻と、遠のいた。
「…今は日常へ還りましょう。そこが、あなたにとって、かけがえのない、非日常に続く道になるのだから…」
やさしい、お母さんの声だ。
ここにいる。失っていない。
お家に帰ったら、一緒に本を読もう。音楽を聴こう。アニメを見よう。
ゆったり、上下する心臓の音を聞く。髪をなでる掌のぬくもりを感じる。かつて存在したはずの喪失感を取り戻そうと、身体と心が受け入れる。
「…いい子ね。それでいいのよ…」
悪意のない洗脳。今はもう少し、眠りたいと思う。
心が願う先。魂の安息所。いつか帰る場所。
――オイ。
だけど見覚えのある人影が、幸せに横たわる俺の胸倉をひっつかんだ。
――寝ぼけやがってよ、クソ雑魚が。負け犬になって悦んでんじゃねぇ。
現実を見やがれと、拳を叩きつけてきた。
――オレは、そんなテメェを見たかったんじゃねぇぞ。
わめき散らかす。まるで癇癪をあげる子供みたいに。
ブンブン、耳元で叫び続ける。
――目を覚ませ。いつまで過去の夢物語に浸ってやがる。
やさしかったはずの世界に、電車の警笛音が混じる。
――オレが求めてんのは、全身がシビれるような今日だ。
線路の上に、子供が一人飛び降りた。
――生きてる意味を寄こしやがれ、カスが。
人が悲鳴をあげている。
――真に、ホントウの意味で、刹那的に生きのびてみせろ。
たくさんの音が集う。
――明日へ続く道を、テメェらが向かうべき先を、提示しろ。
1点に凝縮される。
――おまえら、生きたいのか。死にたいのか。一体、どっちなんだよ。
分岐点が迫る。賢い俺が言う。
厄介事には、関わりたくない。いつも、メリットと、デメリットを、天秤にかけている。労力をかけた場合の結果は、だいたい間違いだ。この世界はゲームじゃない。賢くない選択を行うのは、たいせつな人たちに対してだけで、十分だ。
「…うん。それが正解よ。あの子は、他の誰かが、どうにかしてくれるからね?」
それも知ってる。そうだ、この世界は、本当はやさしい人達ばかりだ。受けた恩を返す心さえ持っていれば、本当はみんなもっとやさしくなれて、
――あぁ、そうさ。ホントウは、わかってるんだろう?
そんな都合の良い出来事が起こるのは、物語の中だけだってな。
老いた駅員の………老いたジジイが、危険を省みず、オレを助けた美談に昇華されたのは、単なる結果に過ぎない。あの場に『やさしさ』なんて呼ばれるものは、実のところ一切なかったのだ。
――真実を見ろ。テメェは運が良かった。それだけだ。次は死ぬ。
知っている。あの人は、正義感を秘めた男じゃなかった。いよいよ仕事の引退が近づいて、最後ぐらい、なにかで一花咲かせたいなと、願っていたに過ぎないんだ。
――限界だ。凡庸な精神は、けっして昇華されねぇ。
おまえらはクズだ。自分の信じる【価値観】だけが、すべてだ。
むしろ億劫としていた。あわよくば、この場で人生の終わりを望んでいた。英雄的な行動の末に華々しく散ることで、うら寂しい老後を迎えることなく、せめて名前を残そう。つまらぬ人生に一矢報いよう。そんな風に想っていた。
――不条理だ。言う通りに動かないシステムがあるとすれば。
それは、テメェラ、人間に他ならねぇ。
因果、運命。単なる組み合わせによる、統計上の計算結果。人々が共感してくれる精神なんて、そもそもこの世に存在しない。真実を知れば「感動が台無しだ。なんてことをしてくれたんだ。金と時間を返せ」と責めたてる。
老人は、最後に盛大なパフォーマンスをしたことで、自分の引退を早めた。
この国では、出る杭は叩かれる。必然だ。
――いいか。テメェを救えるのは、オレだけだ。
あぁそうだ。それが、絶対唯一の真実だ。様々な理由と、理屈と、矛盾を乗り越えた先に、手を差し伸べてくれる神さまは、自分の中にしかいないんだ。
――わかったら、さっさと立ちやがれ。
電車がやってくる。過去の光景だった。駅員のジジイが走りだしている。
――テメェの命だ。最後まで、責任を持ちやがれ。
この光景の結末を、俺は知っている。
ガキは助かる。ジジイも助かる。そのことを理解して、俺も飛び込んだ。
「…どうして、あなたは、わざわざ、危険な場所に飛び込もうとするの?」
やさしい声の問いかけに、言葉を返す。
どこかの、誰かの声が、自分の内側から、思い起こされた。
君たちには、【価値】がある。
救え。任せるな。押し付けるな。
理由なんて、後でいくらでも考えろ。
死に対して、無自覚となった、もう一人の命《ジブン》を守れ。
線路のホームに飛び込む。そして誰よりも早く、オレの危機にあらわれてくれた、あの日の駅員《ヒーロー》と共に膝をつく。ほんの一瞬だけ、気をとられた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
死んだ魚の目で、上から『評価』する人々。
正義の視聴者を気取った、四角い液晶画面。ささやく幻聴が降る。
マナー違反だ。
おろかな老人に鉄槌をくだせ。
攻撃しろ。
我ら個人の尊厳をはたせ。
ただしいのは、こちら側だ。
大丈夫だ。攻撃を行う理は、こちら側にある。
映しだせ。照らしだせ。
光に包まれた真理を、頭上より、ふりかざせ。
あばきだせ。
闇の秘中に眠る、浅ましき過ちを、ひきずりだせ。
「っ!」
わずかばかりの光と音が、一斉に重なれば、凶器に変わった。
無味蒙昧な『低評価』の群れが伸びていく。
………あぁ、俺は、なんてことをしてしまったんだ。
老人の顔がくもる。自身の行動の是非を問う、常識性が脳裏をよぎった。伝達した信号が、瞬時に恐怖の色に変わる。熱が冷める。筋肉を硬直させる。
変わらないのは、視覚化された、重さと速度。
肉体をひとつ、軽く消し飛ばす質量が迫る。
ただしい現実はこうだ。人生の最後に至っても、『選択を間違えてしまったのか』と、泣きそうな顔をする、くたびれた老人がいる。
「違うよ。安永のじっちゃんは、なんも間違ってないよ」
大きな声で、叫ぶ必要はない。
静かに、その人の心にだけ、届けば良かった。
「命を助けられた俺が保障するよ。だからもう一度、オレを、助けてください」
願った。心に届くように伝えた。あなたの行動は正しかったと。救われた当人である俺だけが、彼に訴えることができたのだ。
「あなたのおかげだ。じっちゃんの行動の結果の先に、生きてる命がある。そういうものが、大勢、この星の下に集ってるんだよ」
他の誰にもできない、俺だけの感謝の言葉を伝える。
「オレ、今日の朝は、いつもみたいに、家の仕事の手伝いをしたよ。午後は、友達と一緒に遊びにでかけたんだ。夕方は、先生にメシおごってもらった。みんなで集まって、腹いっぱい食ったよ。めっちゃ、美味かった」
安永のじっちゃんは、ぐうっと、力強い顔になった。
「おれは、みんなのおかげで、今日、生きている。なんでもないような出来事、そのすべてに、なにかの意味がある。だから、もっかいだけ、がんばってくれ!」
無味蒙昧な眼差しに、立ち向かった。
「子供を見捨てたキサマらに、正義を語る資格はどこにもないッ!!!」
対抗する。死んだ生き物の目をした子供を抱えて、走りだす。
精一杯、線路の端へと、逃げ込んだ。
「オレが助けてやるッ!!!」
壁に身体を押し付ける。自分の全身を使ってでも、守る。
すぐ背後で、風が通り過ぎていった。そんな状況でも、カメラのシャッターを切る音が、どこからか聞こえてきた。
――人間の精神は、変わらない。
――それどころか、機械の技術が進歩すれば、劣っていく。
そういうことを、信じている。ヒトの強さと、おろかさを、信じ続けてる。だからこそ、他人から預けられた『無責任な押しつけ』を、肯定できるんだ。
俺は強い。叫ぶことなく、胸の内側で反芻する。
間違った自分も、他人も、認めることができる。
失敗したことを、許すことができる。きちんと、強くなり続けている。
そういう風に、みんなに、育ててもらえたからだ。そうして、やがて電車が悲鳴をあげて止まったあとで、過去のじっちゃんが、オレの頭を拳骨で殴った。
「バカたれが!! もう二度とこんなことすんなや!! ええな!? こんなことしたって、誰もよろこんだりせぇへんぞッ!!」
「…………」
死んだ魚の瞳に、じわっと、涙がうかんだ。
「……ごめんなさい……」
殴られたあとで、わんわん泣いた。駅員のじいちゃんは、すぐに表情を変えた。
「すまんな。痛かったよな、ごめんな。ケガしとらんか。ちゃんと、動くか?」
「……うん。してない……」
頭をなでてくれた。
「ありがとう、じっちゃん」
自分の命を繋いでくれた相手に、お礼を伝える。
過去が、ゆっくりと消えていった。
* * *
広々と、整理された、図書館のような場所が広がっていた。
ロビー。吹き抜けの建物。全容が見渡せる場所にいる。
「…とりあえず、形は整ったな。取り急ぎだったがよ」
背もたれのない、大きなソファーの上に、平然と、ヤンキー座りしている"なにか"がいた。
「…よォ。ひさしぶりだなァ、クソガキが」
赤フードの、茶髪の女子が立ちあがった。
「今、こっちの領域は、上から下まで、お祭りさわぎの最中だ。わりぃが、過保護なテメェの親も、そっちに駆り出されちまってる。…それで、だ」
近づいてくる。
「ちっとばかし、テメェのツラ、オレ様に貸せや」
眼差しが凶悪に過ぎた。背丈も顔つきも、基本は、俺より一回りも幼いのに、プレッシャーが半端ない。半端ないんだけど、
「…なに笑ってんだよ」
「あ、いや、どこかなつかしい感じがするなーって…」
「呑気なこと言ってんじゃねぇよ。前にもまして、ダボ臭くなりやがって」
それに、初めて見た気がまったくしない。
「…なぁ、もしかしなくても、ブザーだよな?」
「次は、ボス戦のお時間だ」
さくっと無視された。
「安心安全、脳死のレベリングタイムは終了だ。たとえ、この結果が、野郎の招いたモンだとしても、後はガチで、やるしかねぇ」
けど、なんだか、今のブザーは、ひどく、くやしそうな顔をしていた。
「悪いが、状況を一から説明してやってる暇はねぇ。説明は省く。だが、これだけ頭の中に叩きこんでおきやがれ」
凶悪な眼差しで。歯を食いしばるような顔つきで、口にすれば、きっと、烈火のごとくに、ブチ切れるんだろうけど、
「オレ達は、救える可能性があるものを、見捨てない。見捨てる気は、みじんも無ぇ」
泣きそうな顔をしていた。
「たとえ、合理性を欠いてようが、非効率的だろうが、ンなこたぁ、言い訳になりゃしねぇ。オレ様の使命は、人間の【命】を守ることだ」
むかし、1ポイントのライフゲージを競いあって、何千戦と勝負を繰り返した、あの頃の余裕じみた態度が、今はまったくない。
「クソったれのテメェらに、最後の最期まで付き合ってやる。それ以外に、現状を切り開く手段はねぇんだよ」
俺の、目の前に立つ。拳を握りしめ、自分の心臓を打ちつけた。
「いいか? わけがわからなくても、黙って、オレらのエゴを受け入れろ」
今度はその拳で、俺の心臓を打ち付けた
「残念だったな。付き合わされて、振り回されて、さぞかし迷惑な話だろうが、」
「あのさぁ、ブザー?」
「んだよ」
「なんか、困ってんだろ?」
「………あ?」
率直に聞きかえした。
「今の話、ちょっと要領得なくて、意味わかんない感じだったけどさ。要は、おまえらの間で、なんか困ったことが起きてる。俺についてこいって言ってんだろ」
「…いや…まぁ…確かによ…そういうこったけどよ…」
「じゃあ、行くわ。連れてってくれ。話は、それでいいだろ?」
「………」
「急いでるんだろ? 早く行こうぜ」
すぐ間近に寄っていた表情が、激変した。
「…………………おい、クソガキ」
「祐一な」
「ガキ。おまえ、ついさっき、実際死ぬかもしれんっつー映像を、目の当たりにしたばっかだよな?」
「した。久々だったけど、トラウマ蘇ったわ。正直ビビったし」
「だよな。その意味、ちゃんとわかってんのか?」
「わかってるよ。これから、なんかヤバいことさせられる感じだろ。でも必要なんだったら、やるしかないだろ」
「…テメェ、従軍経験とか、無かったよな…?」
「無いよ」
「愛国心とか持ってたか?」
「いや、あんまり」
海外だと、16歳でも徴兵義務を持つ国もあるらしいけど、幸いこの国は、まだそこまでの環境じゃない。
「…言っとくが、今度はゲームじゃねぇんだぞ?」
「わかってるよ。でも、俺たちの助けが、必要なんだろ?」
赤フードの下にある、綺麗な顔が、ぐっと息詰まった顔になる。
ついさっき見た、じいちゃんと、同じような顔をしていた。
「…助けられるかもしれねぇ、命がある」
「うん。十分な理由だよな」
「だがよ、そいつは、テメェと同じ人間じゃねぇ。生身でもねぇ。人権も保障されていやしねぇ。この世界線においては、犬猫以下のカスだ。大勢の目に、留まりさえしない存在だ」
「だけど、ブザー達にとっては、そうじゃない」
「…そうだ。だが『人間サマ』であるテメェらが、たかが機械《モノ》のために、お高く見積もった、テメェの命を賭けてくださるってのか? テメェが死んだら、大好きな親が泣くぞ、わかってんだろうが」
「……」
こっちも一瞬、答えにつまった。でも、
「行かなかったら、後悔する」
目の前で、溺れかけた人がいる。
手を差し伸べることも、見過ごすことも、できる。
「選ばないと、選んでくれたモノの価値が、それこそ、意義を見失う」
感情と、理性をもって判断する。
「そういうのって、たぶん、生き死にがどうのって、問題じゃないんだよな」
「じゃあ、なんだって言うんだよ」
「なんていうか…責任、なのかな。これは、俺が責任を取るべきだなっていう、そういう感じが、してるんだ」
生きていたら、たまたま、眼に入ってしまった。
だから、責任を持って、助ける。
「自意識過剰だ。正義の味方を気取ってんじゃねぇぞ」
「気取ったっていいだろ。それで、今の俺が、生きてるんだからさ」
言うと、ぐしゃっと、正面の顔がゆがんだ。
「…あぁ、バカ野郎が…どいつも、こいつも…………」
声はない。ただ、どこまでも、思慮深い、悲哀の色がのぞいた。
――どうしてこうなる。なにをどう間違えた。なんで思い通りにいかない。
「…またかよ…」
――高い知能を持っているのに。
――健全な肉体も備えているのに。
「…いつも、こうだ。毎回、こうなっちまうんだよなァ…」
――万物が、重力に引き寄せられる。
――素粒子がぶつかって、光と熱を生みだす。
――生命は、そうして産まれてくる。
――闘争する。
――ありとあらゆる生物が、本能的に、惹かれてしまう。
「……………あぁ、仕方ねぇ。仕方ねぇんだよなぁ」
肩を大きく揺らすように、静かに一度、上下した。
「また、ケンカの時間が、やってきたな」
何百、何千と、小さな世界で、命のやりとりをしてきた。
「 【前川祐一】、未来に来い。今すぐにだ。」
狼の喉笛さえ、たやすく掻っ切る、戦闘凶が蘇る。獰猛に笑う。
「テメェの命、信念、今日まで積み上げてきた、ありとあらゆるその価値を、このオレ様が、すべてを背負い、護りきってやる」