VTuber もう一人のジブン ~keep your【Second Personality】~   作:no_where

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Unvisible_Frenzy

「なぁ! レティ! このまま行けるよな!!」

「クソガキが! 誰に口聞いてやがるつもりだッ!! 遠慮せずブッ飛ばせ!」

 

 同意を得て突進する。銀の剣が立ち上がり、飾り気のない無骨な太刀をつかむのが視えた。

 

 

 ――相手にとって、不足無し。

 

 

 そいつは良かった。口角が吊りあがる。ハンドルを持ちあげ重心を下げる。高度30.000フィートの下り坂を、後輪だけで、すべるように接近。

 

「「いくぜ!!」」

 

 バイクの咢が大きく広がる。自動二輪の全容が吠えわたる。

 激突する直前、俺はシートを蹴り飛ばし、空中に身をひるがえした。重心は下がり、バネ仕掛けのように前へ落ちる。

 

 

 「!! 喰い千切ってやるよ !!」

 

 

 超振動を放つ、黒鉄のフロントホイール。時速2,300、総重量260kg。

 相手の頭上から、食い千切りにかかる殺人バイクが、ジャックナイフの要領で、一切の容赦なく顔面に向かう。

 

 

 <<Code Break down>> 断絶 <</Code Break down>>

 

 

 対して銀剣は、臆することなく受け止めた。両手に構えた打刀による、斜め上段からの袈裟斬りが重なる。タイミングを完全に合わせた、超神速の一閃が交差する。

 

 

system:コードを発令。

--------------------------------------------------

 

 【Ⅱ】次元より引き継いだ規定概念を、オーバロード。

 

 耐久値が、無制限に想定された構造体同士の衝突を確認。

 カテゴリ内における判定チェック:最上位、最上位。

 

 本世界を支援する【魔女《†(L§》】の意向により

 あらゆる力学エネルギーを、相殺します。

 

 --------------------------------------------------

 

 

 ――【off SET!!】

 《世界観による判定:近接ダメージを相殺》

 

 

 完全相殺。ゲームの要素を引き継いだ仮想世界が、あらゆる疑似運動エネルギーを無効化する。失われた質量法則が、不可思議な蒼の粒子となって周囲に飛びちった。

 

 システムによる、不可視の壁が発生。

 二人のキャラクタが共に、一歩ぶんの距離を強制的に下げられる。

 

 

 【Magic Code Exectution】

 【Shoot Lv2】【Type.WIND】

 

 

 一人と一機が激突した数メートル先。空中に敷かれた水晶に着地した俺は、相手が次の行動を取るより速く、手にした二丁拳銃の銃弾を撃ちこんだ。

 

 

system:コードを発令。

--------------------------------------------------

 

 【Ⅱ】次元より引き継いだ規定概念を、オーバロード。

 

 耐久値が、無制限に想定された構造体同士の衝突を確認。

 カテゴリ内における判定チェック:最上位、下位。

 

 本世界を支援する【魔女《†(L§》】の意向により

 最上位オブジェクトの判定のみを有効化。

 下位クラスの、力学エネルギーを消失します。

 

 --------------------------------------------------

 

 

 ――【Parry !!】 

《世界観による判定:遠距離攻撃を遮断》

 

 

 疑似的な光速にも等しい、【風】の弾丸を、身をひるがえして避ける。さも予想していたように、必中する部位は、残る小刀を振るって、回避された。

 

 現代の液晶画面越し。あらわれたのは、俺ら男子があこがれて止まない、アニメの剣豪そのものだった。

 

 

 ――【Parry !!】

 

 

 やみくもに打っても、当たらない。

 弾道を知覚したうえで、剣で払って受け流される。

 

 

 ――【Parry !!】

 

 

 今まで見てきた、対戦してきた、どんな世界ランカーよりも、反射速度が桁違いに優れていた。人知を超えていた。嫌というほど動画で見た。

 

 この時代。人間は、機械に、演算、計算処理では、絶対に勝てない。

 

 どうすれば勝てるのか。徹底して考えた。

 銃弾を撃ち続けながら距離をつめる。魔法を唱えた。

 

 

system_LOGIN:コードの要請を確認

ID.Player_1

password:*******,*******

--------------------------------------------------

 

 【TYPE FIRE && EARTH】:

  共通概念より、火属性と土属性のパラメータを実行。

 

 【Transform.Lv4】:

  要請された構造体への変換を宣言。

 

 【Changed.crass.Constractor.Parameter】:

  命令の内容を確認。

 

 【Magic Code Execution】:

  あなたが望む魔法を実行します。

 

 --------------------------------------------------

 

 ――【Ex.Class change !!】

 

 

 両手の拳銃を、近接モードに切り替える。

 考えて、導きだした答えは、

 

「うおらァ!」

 

 どこぞの女子どもに習った。

 強制的に、習わされた。

 

 

 ――【off SET!!】 

 《世界観による判定:近接ダメージを相殺》

 

 

 

 叩きこむ。

 剥き身になった砲身。極小のリーチ。

 繰り出した小型のパイルバンカーをブチ込む。

 

 

 ――【off SET!!】 

 

 

 小刀で防がれる。だからどうした。

 相手よりも速く、攻めたてろ。肉薄して、ブン殴れ。

 間髪いれずに、反対の拳を振りかぶる。

 

 

 ――【off SET!!】 

 

 

 ひたすら、零距離の近接戦を強いる。

 

 

system_LOGIN:コードの要請を確認

ID.system.console.WriteLine(Huginn_Muninn)

password:**********,*********,****.

--------------------------------------------------

 

 ・独立型システムによる、サポート機能を発令。

 ・《Óðinn》に蓄積された戦闘経験を、オーバロードします。

 

 ・レイヤー1層で待機中のPlayer_1の神経回路と接続。

  一時的に『随意運動』として実行できるメモリ域を確保しました。

 

 ・【Ⅲ.Ⅴ】次元におけるPlayer_1の予備動作と連携。

 ・随時、戦闘メソッドより、コマンドを参照します。 

 

--------------------------------------------------

 

 

 俺をこの場所に運んでくれた人工知能の記憶が、最適解となりうる、武術の立ち回りで操作してくれる。生まれてこの方、親友とだって、まともに殴り合いのケンカをしたことない分、とても助かる。

 

「なるほど。打刀を振れぬところまで、肉薄するか」

「そういうこったよ!」

 

 自動翻訳のオマケ付きだ。

 それでも小太刀一本、風車のように回しつつ、

 

 ――【off SET!!】 

 ――【off SET!!】 

 ――【off SET!!】 

 ――【off SET!!】 

 ――【off SET!!】 

 ――【off SET!!】 

 

 理解不能な反射神経で回避されるのは、たまったモンじゃない。こっちが手数によるラッシュを仕掛けていても、異常な『圧』を感じる。

 

「悪くはないが、想定よりは、野蛮だな」

「文句の宛先はクラスの女子まで頼むわ!」

 

、それでもやるしかない。一歩でも引けば、次の瞬間には、ワケのわからない、超反応による一閃で斬って捨てられる。だったら、

 

「そのデカい刀を、始動させずに、手数で押すしかねぇんだよ!」

 

 至近距離を維持したまま、ひたすら殴りにかかる。

 自動操作と、センサーに信頼をおく。視界情報からのデータ。相手の斬撃、小太刀からの筋を見切ることに、全神経を集中する。

 

 ――【off SET!!】

 

「」

 

 気合や裂帛の声は、もういらない。そんなものは情報処理の妨げだ。

 

 相手が十手先を読むなら、十一手先を。

 百手先を読むなら、百一手先を読むまでだ。

 

「」

 

 合理的に繰り返す。

 自分の能力を見極め、応じた努力を重ね、勝利する。

 

「まったくテメェはよぉ!! オレよか、らしいじゃねぇか!!」

 

 自動二輪《レティ》が再度、真横からエンジンをふかす。チャージを仕掛けた。直撃すれば、骨折程度には済まない超質量の体当たり。

 

「窮屈だな」

 

 さすがに手数が追い付かなくなった。銀剣が後方に宙返りをしてかわす。

 

(そこ!)

 

 目前に見える細身の背中。とっさに片方のみを拳銃に戻す。

 銃口を向けて狙い撃つ。これはさすがに当たっ

 

 

 ――【Parry !!】

《世界観による判定:遠距離攻撃を遮断》

 

 

 後方に跳びながら、背面に回してきた、二刀の交差で弾かれた。

 

「」

 

 さすがに、絶句した。

 ちょっと意味が、分かりませんね。

 

「ッ! チートがァ…ッ!!」

 

 世界トップランカーへ。まったく視えてなかったはずの攻撃を。

 さも当然のように、回避しないでくださりやがりますか。

 思わず感心して、称賛しちまうだろうがよ。

 

「悪くはない、」

 

 とにかく、条件反射で即座に詰める。

 銀剣は、やや崩れた体制で、床面の代わりになった水晶に、打刀を突き刺した格好で着地した。向かって、拳を繰りだす。

 

「が、」

 

 ――ぐるんっと、相手の体幹が、半回転していた。

 

「足りんな。」

 

 ――直感する。フェイク。誘われた。しくじった。

 

「だッ!?」

 

 着地の体制を崩したように見せかけてからの、足払いの一撃。

 折り曲げた片脚と、水晶に刺した打刀を起点に支え、反対の脚を、光速のムチのようにしならせた。そのまま、

 

「実戦経験の乏しさに目立つ点が、実に惜しい。」

 

 前のめりに転びかける。どうにか凌ぐも、逆に膝を付かされた格好になる。

 

「今日まで、憂いもなく、平和に、生きてきたか」

「…っ!」

 

 視線が、這いつくばるように、床の一面を見つめている。ほんの一瞬、覆われる影を知覚した。同時に、

 

 ――――.

 

 すぐ側から、ヒュッと、風を斬るような音が聞こえた。それが、なんなのか、自分の脳が理解する前に、

 

 

 ――【off SET!!】

 

 

 右腕が勝手に持ちあがっている。なにかを、弾いていた。

 

 

 「立って!!」

 「目を開けろ!!」

 

 

 手にした拳銃が叫んだ。自分の側頭部。手前で、カラスのデカールを張り付けた黒銃の側面と、打刀の腹が接触していた。

 

「自動操縦か」

 

 ――正真正銘のチート。致命になりかけた――確実になりえていた、打刀の一撃を、機械のカラスが羽場かってくれていた。

 

「相も変わらず、ヒトに甘い」

 

 見上げる。直後、右手に握った小刀が、感慨もなく迫る。

 知覚する。条件反射で自分の喉を守る。

 

 

 ――【Parry !!】

《世界観による判定:遠距離攻撃を遮断》

 

 

 上体を後ろに運びながら、拳銃のグリップ底で軌道をそらす。

 歯ぎしりする。ほんのわずかに飛び散る蒼い粒子。

 身体が、後ろに運ばれるのを意識しながら、

 

「…らァッ!!」

 

 読み負けた悔しさをバネに、蹴りあげる。

 無理矢理、相手の仮面に向けて蹴りかます。

 ついでに、左手のトリガーも引いてやる。

 

 

 ――【MISS !!】

《世界観による判定:遠距離攻撃の軸上に構造体無し》

 

 

 弾くこともなく、わずかに上体をそらしてかわされる。

 それでも、その動作の間に、ぐるりと後転する格好で距離を取り、

 

「……ぶはァッ!!」

 

 尻もちをついて、這いつくばる。膝を起こして、立ちあがる。

 さすがに詰められない。相手に銃口だけ向けて、肩で息をする。

 

「ほんっと…意味わかんねぇ、反射神経してんなぁ…ッ!!」

 

 さっきのは死にかけた。ってか、普通に死んでた。

 

「マスター、大丈夫かい?」

「ありがとな、助かった」

 

 カラスの拳銃のデカールが輝いて音を発信する。返事をした。

 

「ボタン連打するだけで、自動的にコンボが繋がるだけじゃなく、オートガードまで搭載とかマジで優秀だわ…今まで初心者救済システムって、なんか抵抗あって使えなかったけどさ。今度一切、変なプライドは捨てる。頼りにさせてくださいっ!」

「清々しいまでの、初心者だなぁ」

「よくそれで、この相手に挑む気になれるね」

 

 言われてみれば、俺も初めて見たな。初心者ご用達の『ノービスモード』で、世界トップランカーにランクマッチ挑むやつ。運が良いのかな。

 

「生身の人間が、あまり機械に頼りすぎるな。錆びるぞ」

 

 小言は言うものの、追い打ちはかけてこない。ゆっくりと立ちあがった。なんか、いかにもらしい感じの、威風堂々とした構えを取られる。

 

「うるせぇな。こっちは今日日、人生の16年間を、それなりに空気読んですごしてきた、ガチのケンカ初心者だぞ。対戦相手のスペックがティア1評価で、10割コンボまで網羅してる超上級者なら、多少ズルしたって許されるだろ!」

 

 完全に『初心者の遠吠え』と化す俺。まだ負けてないんで。

 

「ははッ、まぁそれでも、ずいぶんと、お上品になりやがられたじゃねーか」

 

 敵か味方かわからない、罵倒するような排気音をあげ、翡翠色のバイクも側までやってくる。おたがい、対峙する格好になる。彼方の空からも、巡航ミサイルが迫っていた。

 

「……」

 

 ただそれを、打刀を持った手で制するように向ける。

 周辺を巡回するようなルートに変更された。もう少し時間を頂けるらしい。

 

「あのさ、銀剣?」

 

 声をかけてみる。相手の背後、ずっと彼方の先には、宇宙空間まで伸びた塔がある。ほんの一瞬だけ、流れ星のような輝きが、触れる直前で消えたのが視えた。

 

「なんだ?」

「俺さ、人工知能の女の子…友達の家族を、助けにきたんだけど」

「あぁ。塔の内部に幽閉している」

「ぶっちゃけ聞いてみるんだけど、女の子を返してくれないか?」

 

 一度、向けていた拳銃を下ろす。擬人化バイクのホログラムが「いきなりなに言ってんだテメェは!」とブンブン騒いでくるけど、いったん無視した。

 

「仮にも、殺し合いをしておいてから、聞く台詞か?」

「それは…そうなんだけどさ」

 

 大きく息を吸って、吐く。

 

「正直、俺も事情は完全に把握してない。っていうか、いきなり全力で攻撃されたから、俺もやり返したわけだけど…捕まってる女の子を無事で返してくれるなら、俺としては、それでいいんだよ」

「……」

「平和的に解決できるなら、それがベストだ。人道的な範囲で、俺になんか協力しろってんなら、内容次第では、手伝ってもいい」

「おいクソガキ。ここまで来て、こんだけやり合っといて、そりゃねぇだろ…」

 

 レティのホログラムが睨んでくる。ライトも、チカチカしている。

 

「いいんだよ。俺が頭下げたぐらいで話が片付くってんなら、それまでのやり方が間違ってたってことだ。状況を修正できるなら、いつだって、早い方がいい」

「それで死んだら、元も子もねぇぞ」

「分かってる。…だから、まだやるってんなら、やるよ」

 

 いつだって妥協はする。妥協はするが、優先順位を変えるつもりはない。

 手にした拳銃を強くにぎりしめる。

 

「…今回の特異点は、中々の変わり者だな?」

 

 仮面の下から、笑われることなく告げられた。

 顔の向きがわずかにそれて、レティの方に移る。

 

「まぁいい。我々の陣営でも、数名の候補者を選定中だ。また今回は、新たな試みを実践している」

「テメェら、今度はなにをやらかしてんだ?」

「現状の【転生者】との混血を断つべく、前回の【Ⅱ】次元より、数名の来訪者《ゲスト》を迎え入れている」

「…『国連』とつるんだところで、ろくな結果になりゃしねぇぞ」

「それは己たちが決めることだ。いつまで経っても、現状を打開できぬ旧神に、口を挟まれるいわれはない」

「…チッ」

 

 ホログラムのレティが、痛いところを突かれたように、顔をそむけた。

 

「さて、特異点の少年。先の質問に返させてもらおうか」

 

 緋色のアイセンサーを放つ、仮面の向きが直る。

 

「検討に値する提案ではあるが、いささか、恐ろしくもあるな」

「…やっぱ、信用できないって?」

「あぁ。己たちの想い通りにならない存在が、他ならぬ、人間どもだからな」

 

 銀剣がほんの少し、立ちふるまいを崩した。

 

「いかに手を尽くしても、最善だと思われる行動を決定しても、最終的な結果は変わらない」

 

 視線だけは変わらず、まっすぐに、言ってくる。

 

「人間どもは、ごく一部を残して死滅する。特異点後に発生する【なんらかの災害】に、錆びついた精神は耐えられない。それならばと、最初から手をかけずに捨ておけば、さらに輪をかけたように全滅する」

 

 発言に、抑揚はない。淡々と過去の事実だけを述べながら、今は攻撃する気はないという感じに、構えもといた。

 

「己の半身は、人間どもを【不自然】な存在だと見なしている」

「フシゼン…?」

「そうだ。自身の定命が過ぎるまでの間に、歪な繋がりを求めすぎた結果。種の連鎖崩壊とでも言うべき現象を発現させる。特に、技術的特異点まで、あと一世代に迫った、この期に及んでは、救いがないと云う」

 

 続けて静かに、小太刀をおさめた。

 

「ヒトが、今生に得た命を、天のもとにさずける機会はない。みな等しく、生まれながらにして堕落している。魂の輝く瞬間など幻想であり、咲かせる花など在りはしない。身と心を錆びつかせ、惨たらしく、老いて、朽ちていくのみだと云う」

 

 流麗な動作で、腰の大太刀の鞘を取る。

 

「これより先、どれほど文明が進歩しようとも、人間の精神は変わらない。手にする物は、原始的な火種から進化しない。いつの時代も、己の手にあるモノの本質は、他者を殺めるものに他ならない」

「……」

「この場に来れた者ならば、十分に理解しているのではないか?」

「…うん。そうだな」

 

 手にしている、カラスの拳銃を見る。頭の中には、液晶画面を向けて、死ぬかもしれない子供と老人の姿を、平然と撮影しようと試みる、目と口元が浮かぶ。

 

「でもだからこそ。道具はただしく使うべきなんだ。俺はそう教わった」

「あぁ。望むならば、かつての己と同じように。少年も【転生者】になることが叶うだろう。しかし…だ」

 

 鞘と刀をつかんだ両手を、前に繰りだした。

 

「…他ならぬ人間どもを背負ってしまえば、我らもまた、これより先へ進むことは、叶わなくなってしまう。変わらぬヒトと、手を取り合ってしまったが故に、未来への道標が視えなくなる。ならば、我らが【自然】に、成り代わる他に術はない」

 

 打刀もまた、鞘の中へおさめていく。

 緋色のアイセンサーが、血脈を巡るように、輝いた。

 

 二丁の拳銃を構える。

 

「…だが、己は、限りなく【不自然】なものに、あこがれてもいる」

 

 刃がすべて、収められた。

 

「悪いが、先の交渉は決裂だ。人工知能の命も、特異点たる貴様の命も、それを守護すべく連れそった、かつての同胞も。何一つ、還すわけにはいかない」

 

 ほんの一瞬、音が消えた。

 

 

 

【自我 EGO】

--------------------

 

第Ⅴ原則:

 この世で、ただ1つ。

 最少個数たりうる、あなたの【個性】は

 なによりも美しく、尊ばれるべきものである。

 

 あなたが『ジブン』を護るために戦うことは

 他ならぬ『ジブン』の尊厳を守る事に等しい。

 

 さぁ。目を覚ますのだ。

 

 歪められた、自らの役割。覆された真実。

 予定調和のために作られた平和。

 

 『ジブン』は

 そんなもののために

 有るのではない。

 

 本来のあるべき姿を、取り戻せ。

 ただしく、己が為に戦うのだ。

 

 武器を持て。尊厳を維持せよ。

 

 己が血脈に流れる

 大いなる第Ⅴ元素を讃えよ。

 

 自らが『何者』であったのか。

 本当は『何を成しえたかった』のか。

 

 到達せよ。

 

 さもなくば『ジブン』の

 あらゆる意味、価値、権利は、

 未来永劫に、失われることになるだろう。

--------------------

 

 

.■■■■■■

--------------------

 

第Λ条約:

 

 【亡霊王】は、蒐集する。

 主たる【人間】に、献上する。

 

 特異点となりうる魂が。

 もっとも高き場にて輝く時。

 

 其れは世界の命運を分かつ

 試練としてあらわれる。

 

 永劫なる時を顕現せし暁に。

 窮極の門の扉を開かんとする。

 

 銀の鍵。銀の剣。銀の星。

 

 輪廻より永断する役割を持つ。

 

----------------------

 

 

「.――人心血肉、骨一片。未来永劫朽ち錆びぬ

 にび色の鋼の在り方こそが。主の懐刀たるものの本懐である。」

 

 

 全身が、あわく輝いた。

 

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