剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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012話 脱出!このかの異変?

 

 

 

Side 桜咲刹那

 

 

士郎さんは果たしてご無事でしょうか? とりあえず目的地には着いたのですがそこにはでかい大穴が空いていてもしかしたらお嬢様達は落ちてしまったのでは?

そんな二つの多大な不安を抱いていると、

 

「遅くなった、刹那」

「士郎さん! ご無事でしたか!」

「ああ、どうやら敵ではなかったので話を少し済ませてさっさと来た。まあ、ただ一つ言えることは奴は俺にとってある意味天敵ともいえる存在だったというところだ」

「士郎さんでも勝てないということですか?」

「いや? そうでもない。性格的に絶対合わないというだけだ。ただ自惚れてはいないが―――……手段を選ばなければ確実にやれるだろう?」

 

瞬間、戦慄が走った。手段はどうこうとしていつも温厚な士郎さんからこんな言葉が簡単に出てくるとは思っていなかったからだ。

やはり士郎さんはこちらの世界の人間、しかもかなりのプロと再確認できるものだった。

 

「それより刹那、この大穴はなんだ?」

「わかりません……私が来たときにはすでに空いていたものでして。もしかしたらお嬢様達はこの穴の底に落ちてしまって……!!」

「落ち着け、刹那。あせっても解決の糸口は見つからない。それとその心配は皆無のようだぞ?」

「え? それは一体……?」

「なに、先ほどの人物はこの図書館島の管理をしているものと言っていた。そしてネギ君や姉さんを含めて全員は無事だということを教えてもらった。真実とは限らんがな?」

 

士郎さんは苦虫を噛み潰したような表情になりながらそのことを伝えてくれた。

その謎の人物との間に一体なにがあったのでしょうか?

 

「……とりあえず信じてみる方針でいくとしよう。で、だが……どうするか? 落ちてみたとしてうっかりネギ君達と鉢合わせになっても困るものがある。今、どういうわけかみんなはこの地下の底で勉強をしているらしい」

「……は?」

「だから勉強だ。学園長がきっと来るだろうと予測してこの地下に勉強道具や食事といったものはあらかた揃えておいたらしい。

しかも俺たちが助けに来ることもなくテスト前日には確実に脱出させようという段取りはすでに出来ているらしい。

教えてくれたあいつも癇にさわる奴だったが、学園長もなかなかの曲者のようだ。今にでも一発殴りに行きたい気分でいっぱいだよ」

「そうですね。私も少しながら怒りがこみ上げてきました」

 

だが、士郎さんも学園長の性格を理解しているようで私と一緒にため息をつくことしかしなかった。

 

「まあ心配に越したことはないからな。俺達は違う道を通りみんなの様子を伺っていることにしよう」

「ですが地図ではそのようなものは一切……あ」

「理解したか?」

 

そうでした。士郎さんの解析能力はずば抜けてすごいのでした。

その証拠にこの広い祭壇から地下に通じているらしい隠し通路を発見していた。

 

「ではいくとしようか」

「はい」

 

それから士郎さんが発見した隠し通路を通り光が見えてくるとそこには地下とは思えないほどに光が溢れている広大な空間が広がっていた。

そして目を凝らしてみればなぜかある黒板の前で遭難したというのに勉強に励んでいるお嬢様達がいた。

 

「ふう……ひとまずは安心したといっておこうか。奴には嫌だが感謝だけはさせてもらおうか。しかし話しには聞いていたが、いまいち理解に苦しむ光景だな。こちらとは違い事情も知らないはずだというのに遭難しているという意識はないのだろうか?」

「ですが元気そうで安心しました」

「ま、そうだな。ん?」

「どうかしましたか?」

「少し待て。今姉さんが俺の気配に気づいたらしく念話を飛ばしてきている」

 

そう言って士郎さんはイリヤさんと会話をしているようだった。

それにしても仮契約もしていないのに念話が出来るなんてすごいですね。

いや、士郎さん達の世界では方法は違うのかもしれませんね。

 

「……了解した。刹那、姉さんから話があるらしい。隠れた場所で落ち合うことになったから着いてきてくれ。気配は消していけよ? ネギ君はともかく楓には気づかれそうだからな」

「確かに……わかりました」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

人目のつかないところに俺と刹那は隠れながら進むとそこには姉さんがいた。

なぜか俺の予備のコートを羽織っているのはこの際は気にしないことにした。

 

「わぁー! シロウ、私を迎えに来てくれたのね。お姉ちゃんとってもうれしいな!」

「わかった。わかったから思いっきり抱きついてこないでくれ…」

「いいじゃない? 姉弟の仲で減るものでもないんだし」

「そうだが……っと、そうだ。この騒動の原因は分かっているとして姉さん、あれは一体なんなんだ?

今朝のHRで行方不明になっていることが騒ぎになっていたのでとりあえず鎮めてから刹那と共に来たのだが、……脱出することも考えずに勉強をしているなんて気が知れないぞ?」

「いいんじゃないかしら? 落ちた当初沈んでいたみんなをネギは必ず脱出できますからと勇気付けてそれまで勉強をしましょうと言い出したのよ。

私も最初はそんな暢気なとは思ったのだけれど、みんなもそれに賛同したんで、私は一人で脱出口を探していたのよ。それよりシロウ? 原因はわかっているってどういうことかな~?」

 

そこには初見ならそこらの男共なら振り向くだろう極上の笑みの姉さんがいたのだが、少し血管が浮き出ていてあからさまに怒りを露わにしているギンノアクマがいた。

それに少し怯えながらもこのいきさつを姉さんに伝えたところ、

 

「ふーん? やっぱり犯人はコノエモンだったのね? 帰ったらどうしてくれようかしら……?」

「と、とりあえずそれは置いておいて姉さんは今はまだ自然に振舞っていてくれないか? 俺たちがここにいるのは隠しておきたいからな」

「わかったわ。あ、でも一人は無理かもね」

「やっぱり気づかれてしまったか?」

「そのようですね士郎さん」

 

俺たちはその人物が隠れている先を向くと楓が出てきた。

 

「イリヤ殿を探していたでござるが、士郎殿に刹那もいたでござるか」

「ああ。お前たちを探しに来たのだがどうやらその様子なら心配は皆無だったようだな?」

「そうでもござらんよ? これでも脱出口をイリヤ殿とともに探す班を担当しているので。それよりやはり士郎殿は只者ではなかったでござるな? 姿でわかるでござるよ?」

「まあ裏のことは知っている」

「ところで楓。お嬢様たちは大丈夫なのか?」

「ん―――……平気でござるよ?あれで結構ここでの生活を楽しんでいるでござるからな」

「少しそれも問題な気がするが、ひとまずもう出口に続く道は発見済みだから時を見て脱出するがいい」

「え!?」

「ほんとでござるか!?」

「さっすがシロウね。もう発見できたの?」

「ああ。あそこに見える滝の裏側に非常口がある」

 

俺が指差した方向に楓が向かうと驚いた表情をしながら戻ってきた。

 

「確かにあったでござる……というより普通に非常口という表示がされていたなど……盲点でござった」

「ちなみにまだここで過ごしていても構わんぞ? ここなら勉強するにあたってはよい環境だと思うからな。それに、そのうち学園長がなにかしら動きを見せるだろう?脱出計画はできているらしいからな」

「あいあい。わかったでござるよ。それでイリヤ殿はよいとして士郎殿と刹那はどうするでござるか?」

「そうだな。俺たちはここまで来る隠し通路の途中になぜか設置してあった部屋でことが起きるまで待ちながら勉強することにするか? 刹那も勉強しなければならんだろう?」

「そう、ですね。お嬢様達が見える範囲の場所でばれずに済むのならそれで構いません」

「そうか……刹那。俺から一つ言っておくがいつかは決着はつけることだ。このかも寂しい思いをしているからな」

「……わかっています。いつかはきっと」

「ほう? これは珍しいものを見たでござる。刹那がこんなに素直になるなんて……」

「う、うるさいぞ楓! さあ行きましょう、士郎さん!」

「わかった」

 

後ろでは姉さんが悪戯そうな、そして楓もニンニン。とかいって二人とも実に嫌な笑みを浮かべていたことは、今の刹那には話さないほうがいいだろう?

経験上、遠坂だったらガンドをぶっ放してくるだろうしな。刹那はなにをしでかすかはわからん。

 

「そうそう、食事の件だが隠れて全員分作っておくからくつろいでいていいぞ?」

 

俺はそれだけ伝えて刹那とともに隠し部屋に入っていった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

……それから時間的に一日半くらい経ってみんなが水場で遊んでいるところを、学園長がレイラインみたいなもので操作しているゴーレムが動き出して騒ぎを起こしていた。

 

「時間が迫っているとはいえ、今仕掛けるのは作為あっての行動か? あの変態爺め……」

「そうですね。少し灸を添えねばいけません」

「だが、ネギ君も動揺しているとはいえ……」

 

 

「くらえ!魔法の矢!」

「僕の魔法の杖を使えば……」

 

 

と、魔法の言葉を連発している。

 

「あれは、さすがにないだろう?」

「あ、あはは……苦笑いしか出来ませんね」

「魔法を封じていることが幸いしたな。アスナや姉さん、楓以外は威嚇としか思っていないようだからな」

 

《シロウ!》

「! 姉さんか?」

《手順どおり脱出するわ。援護をお願いね》

「了解した。では刹那、姉さんから合図があったのでばれないようにいくとしようか」

「はい!」

 

それから一同は魔法の本をちゃっかり会得しながら逃げていって脱出口に入っていった。当然ゴーレムに扮した学園長も追いかけていったが、俺たちも少し後から追いついてみるとそこは螺旋階段になっていてネギ君たちはなぜか問題が表記されている扉を次々と解いていきながら上へと進んでいた。

だが本気で魔法の本を取り返したいらしい学園長は螺旋階段の壁を削りながら追いかけていく。

そしてその揺れにさらされたのか運悪くこのかの地面が崩れた。

 

「このか――――!!?」

『フォッ!? しまった!』

「お嬢様!!」

 

螺旋階段の底に落ちていくこのかにみんなは叫んだ!

 

「刹那! 俺が行く! 見つからないように後から来てくれ!」

「は、はい! お嬢様のことをお願いします!」

 

刹那の頼みに答えて俺は身体強化を施して垂直の壁を何度も踏んで跳躍していきながらこのかを抱きかかえた。

 

「え!? 士郎さん? なんでここにおるん!?」

「説明は後だ。口を塞いでいろ、このか。舌を噛むからな」

「は、はいな!」

 

それからまた跳躍してもうエレベーターに到着していた面々の前に降り立った。

 

「士郎さん!?」

「老師!?」

「し、士郎さん!? なんでここに?」

「行方不明の君たちを探しに来たんだ。なんとかこのかを助けることはできたが……もう少し自重したまえ。それとその本は俺が元の主に返しておく。だから先にみんなは地上へ戻っていてくれ」

「で、ですが……!」

「ネギ君、そのようなものを使っても所詮インチキにしかならない。だから今日までまじめに勉強をしていたのだろう? だからみんなも自分の実力を信じてテストを受けるんだ。では姉さん、後は頼んだ」

「わかったわ、シロウ。足止めお願いね」

「任された……ふっ、あいつの言葉を思い出したよ。足止めをするのはいいが……別にアレを倒してしまっても構わないのだろう、姉さん?」

「……本当に皮肉な台詞とかあいつに似てきたわね。ええ、構わないわ。思いっきりやっちゃいなさい、シロウ」

「わかった。では期待に応えるとしよう。ではネギ君、また地上で会おう」

「は、はい。士郎さんも気をつけて!」

 

そしてネギ君たちはエレベーターに乗って地上へと上っていった。

 

「士郎さん!」

「来たか刹那」

「はい。お嬢様を助けていただき感謝します」

「気にするな……で? いいかげん正体を現したらどうですか学園長?」

『フォッフォッフォッ……やはりばれておったか』

「当然じゃないですか。そのゴーレムからは学園長の魔力が感じますからね」

「学園長? 自分の孫であるお嬢様を危険な目に合わせた責任は感じているでしょうね?」

『わ、わかっておるぞい。反省しとるよ』

「そうですか。でしたらいいのですが」

『それより士郎君。このかを助けてくれてありがとうの』

「当然のことをしたまでですよ。まあこんな話は後日にするとしまして、覚悟はいいかね学園長?」

『フォッ? そ、それはまさか!?』

「そのまさかですよ、学園長。あのハンマーです。幸い今は本体ではなさそうですからそんなに痛みはないでしょう。俺もそろそろ怒りたい所ですので……底に落ちて反省してください!」

 

俺は渾身の力を込めてハンマーを叩き落した。

 

『フオオオォォォォォ――――…………』

 

学園長の声は地下に落ちていきながらもドップラー効果で響いてきていた。

ついでに魔法の本は一緒に地下に落としておいた。どうせ拾うだろうからな。

 

「では、帰るとしようか、刹那」

「……え? はい。あの、学園長は大丈夫でしょうか?」

「平気だろう? あの祭壇から落ちて無事だったのだから」

「いえ、そうではなくてあのような鈍器で殴ってはさすがに……」

「それも無問題だ。このハンマーはもともといつもこのかが学園長を思いっきり叩いているトンカチがもとになっている。だから絶対に重症は負わない設計になっている」

「そうですか。なら安心です」

「まあ俺としては気は晴れたが姉さんはきっと俺以上のことをするだろう。血の雨が降らなければいいが……」

「そ、そうですね」

「それで刹那はどうする? 俺はもうしかたがないとして、まだ刹那は姉さんと楓にしか知られていないからな」

「私は……士郎さんの後で向かいます」

「そうか。無理はするんじゃないぞ? では、先にいっている」

「……はい」

 

俺はエレベーターに乗り刹那より先に地上に向かったが、まだあの様子では刹那の心のわだかまりは当分取れそうにないな。

なにかきっかけがあればいいのだが。まあまだ時間は十分にある。喧嘩ではないがいつかは正面きって話し合える仲になってもらいたいものだ。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side ネギ・スプリングフィールド

 

 

なぜ士郎さんがあの場所に駆けつけてくれたのかはわかりませんが士郎さんのおかげでこのかさんが助かったんですからよかったです。

ですが士郎さんとは別にもう一人だれかいたような気がしたのは気のせいでしょうか?

士郎さんが戻ってきたら聞いてみることにしましょう。

そう考えているとエレベーターが上がってくる音がしてそこから士郎さんが出てきました。

 

「士郎さん! 大丈夫でしたか?」

「ああ、ネギ君か。大丈夫だ、あの石像は地の底に落としておいたからな」

「そ、そうですか……」

 

それにしてもこれが士郎さんの戦闘姿……イリヤさんのときも感じたのですが士郎さんが着ると別格なほどにすごい力を感じます。

 

「さて、この件はテストが近いので今は放置しておきたいが、やはり釘をさしておくとしよう。怒りはしないがまずはみんなに心配をかけないようにすることだ。クラスの者たちはたいそう心配していたからな」

「ごめんなさい士郎さん……」

「謝るアルヨ」

「すみませんでした」

「ごめんなさいです」

「反省するでござる」

 

みなさんは次々と謝っています。僕も反省しなきゃ。

それを聞いて士郎さんも許してくれたのか笑みを浮かべていた。

 

「あ、あんな……士郎さん?」

「ん? どうした、このか?」

「さっきな……ウチを助けてくれてありがとうな。ウチ、あのときほんまにもうダメかと思うたんやけど士郎さんのおかげで傷もあらへん…」

「そうか……それはよかった」

 

士郎さんは条件反射なのでしょうか? とても優しい笑みを浮かべてこのかさんの頭をくしゃくしゃとなでていました。

それでこのかさんも顔を赤くしていました。あんな姿は初めて見ます。

 

(ねえねえ、アスナさん?)

(なに、ネギ?)

(あんなこのかさんは初めてみるんですけど?)

(……実は私もよ。士郎さんのあれはかっこよかったからもしかしたら、かもね?)

(なにがもしかしたらですか? 僕はよくわかりません)

(やっぱりまだお子様ね)

(む! なんか馬鹿にされた気がします)

(気のせいよ。それよりイリヤさんの様子がおかしい―――……ひっ!?)

 

アスナさんがなにか言いかけたところで突然悲鳴をあげて、それでイリヤさんを見るとなにか黒い空気が膨れあがっていました。正直言って怖いです。

 

「シ・ロ・ウ? またなのね?」

「ん?なにがだ……って、なにか怖いのですが姉さん?」

「ふふふ……これは後でお仕置きね?」

「な、なんでさ!?」

 

……なにか士郎さんがすごい震えているのが見て取れます。口調もなぜか変わっていますし。

 

「と、とりあえずみんなは早く寮に帰るんだぞ? そして明日は遅れるんじゃないからな!? では俺は先に帰っている!」

 

それだけ伝えて士郎さんは世界新は出しているのではないかというくらいの猛ダッシュをして先に帰っていった。

そしてそれを追いかけるようにイリヤさんが士郎さんと同速度で走っていきました。……確かイリヤさんは補助系でしたよね?

まあそれはそれとして翌日の期末テストもなんとか間に合ってなんと信じられないことに2-Aが学年1位をとることが出来ました。

これで士郎さんとともに四月から正式に教師になることができます。

……それで、その肝心の士郎さんですがなぜかやつれていましたがきっと聞かないほうがいいんでしょうね。

後、学園長も包帯だらけでちょっと不気味でした。

 

 

 




はい。このかにほの字が点灯しました。

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