剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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016話 新学期、対真祖編(03) カモ、参上!

 

エヴァと別れた後、姉さんがそいつの気配を感じるといったので、それで俺と姉さんは女子寮に急いだが、どうやらそんな事より女子寮の大浴場で何か騒ぎがあったらしい。

聞くと下着を奪う変態小動物が出たらしい。その中心にネギ君がいたらしいが一体なにをしていたんだ?

そんなことを考えていると俺でも感じられるほど近くに魔力反応がした。

とりあえずその場に向かってそいつを今までの経験の賜物ともいう手捌きで捕まえてみたが、

 

「オコジョ、か?」

「オコジョ、ね」

 

なんか白いオコジョを捕まえてしまった。それでキーキー言っているがたまに人の言葉が聞こえてくるのは幻聴か?

 

「ねえ、シロウ? こいつから微量の魔力を感じるんだけど?」

「少し現実逃避させてくれないか? 先ほどからこいつが人語を喋っているような気がしてならん」

「そう? じゃそれが本当だったら解剖してみるのもいいわね?」

「ほう? いいな。ではその後はオコジョの蒲焼で決まりかな?」

「ッ!? ひぃ!! 勘弁してくれぃ!!」

 

そこで完全にオコジョは人語を喋ってしまっていた。ふっ、ちょろいな……。

 

「やっと正体を出したか。ではこのまま学園長に強制連行と行こうか、姉さん」

「ええ、そうね。シロウ」

「ま、待ってくれい! 俺っちはネギの兄貴に用があって来たんだよー!」

「ネギ君に……? 知り合いか何かかね?」

「お、おうよ! 俺っちはアルベール・カモミールっていうんだ。これでも立派なオコジョ妖精だぜ!」

「ケット・シーと同格みたいな奴かしらね?」

「そうなんじゃないか? それじゃ学園長に連れて行くかはネギ君に会わせてから決めるとしようか」

「そうね」

「と、いうわけでカモミール。私の目を見なさい」

「なにっすか? お? ……な、なんか体が動かなくなったんっすけど!?」

「程度の低い体を硬直させる魅了の魔眼よ。さてこれで逃げられる心配はないわね」

「ああ、すまないがしばらくそうしていてくれ。確証はないうちは逃げられても困るのでな。ああ、ちなみに無理やり解かないほうがいいぞ? 神経がいかれるからな」

「経験者が語るって言う奴?」

「ははは、そうだな。あの時は本気で神経がショートするかとおもったからな。だからおとなしくしていろ。悪いようにはしないからな」

「は、はいっす……(もしかして早々に俺っちピンチ!?)」

 

それから硬直したカモミールをネギ君もといアスナ達の部屋に連れて行った。

二度扉を叩いた後、アスナが部屋から出てきた。

 

「あ、あれ? 士郎さんにイリヤさん? どうしたんですか?」

「なに、ちょっとネギ君に用があってね。少しいいか?」

「は、はい。おーいネギ? 士郎さんが用があるってよ?」

「あ、はい。なんですか、士郎さんにイリヤさん?」

 

それからネギ君が出てきたので、

 

「まどろっこしいことは後にして単刀直入で聞くが、ネギ君は人語を喋る動物の知り合いはいるかね?」

「はい?」

 

おお! ネギ君とアスナが同時に首を捻った。なかなかレアな光景だな。

 

「あ、あの士郎さん? どこか頭でも打ったんですか?」

「……失礼だな君達は。それよりいるのか、いないのか? はい」

「えっと、こちらに来てからそんな知り合いはいませんけど?」

「そう。それじゃ邪魔したわね。いきましょう、シロウ?」

「そうだな。まずは学園長に引き渡すとしようか」

「その後は蒲焼? 楽しみね。ふふふ……」

 

「ま、待ってくれ―――!!」

 

「えっ!?」

「士郎さん! 今の声は!?」

「あ―――……なんていうかアスナはきっと驚くだろう?」

「なんで?」

「悲鳴はあげないでね?」

「は、はい」

 

姉さんがアスナのことを説得しているうちに俺は先ほど捕まえた珍獣を鞄から取り出して、ネギ君の目の前に出してみた。

 

「こいつはネギ君の知り合いかね?」

「ひ、久しぶりっす……ネギの兄貴……」

「君は……カモ君!? どうしてここに! って、いうかなんで固まっているの?」

「それにはとても深い事情がありやして……」

「怪しいオコジョだったから私が魅了の魔眼で動きを封じているだけよ」

「もう解いてもいいんじゃないか。姉さん?」

「そうね。もう動いてもいいわよ」

 

姉さんの指を鳴らすと魔眼を解けたのか直後にカモミールはネギの胸に泣きついていた。

ネギ君はそんなカモミールを慰めていたが、やはりアスナは硬直していた。

 

「アスナ? おい、アスナ。大丈夫か?」

 

少し目が虚ろだったので揺さぶってみたらやっとこっちに戻ってきたらしい。

そしてなぜかカモミールとネギ君の間であった昔話を聞かせてもらい、今回助けに来たらしいとのことだ。

 

「そうだったのか。疑って悪かったな、カモミール」

「いいってことよ、旦那」

「っと、そうだったな。紹介が遅れたな。俺は衛宮士郎。一応こちらの関係者でネギ君の補佐をしているものだ」

「私は衛宮イリヤよ、カモミール」

「士郎の旦那にイリヤの姉さんか。よろしくっす。それよりお二人ともかなり強いみたいっすね?さっきの魔眼といい只者じゃないっすよ」

「そんなにすごいものかしら?ただの魅了の魔眼なだけだけど」

「いえいえ! 魔眼持ちってだけですごいっすよ!」

「そうなんだ。じゃシロウもきっとすごいのね?」

「え!? 士郎さんもなにか魔眼を持っているんですか!?」

「魔眼と言えるかは不明だが、俺は眼に魔力を集中させ強化することで最高4キロ先は見渡すことができる。だが、ただ魔力を集中させるだけなんだかられっきとした魔眼とは程遠いだろう?」

「……いや、普通に魔眼の域っすよ、それ? って、いうかなんすか、それ!?」

「そうよ、士郎さん! こっちのことはよく知らないけど4キロ先までってどのくらい距離があるかわかってるんですか!?」

「承知しているが?」

「ほんとうにすごかったんですね、士郎さん……」

 

そこらで賛美されているようだが俺は特に自慢しているわけでもないので話を先に進めることにした。

 

「ところでカモミール。ネギ君になにか用があったのではないか?」

「おおっとそうだった! 士郎の旦那の話でうっかり忘れていたぜ! 兄貴! 見たところちっとも進んでねぇみたいじゃねぇか?」

「え? なにが?」

「パートナーっすよ! パートナー! “立派な魔法使い(マギステル・マギ)”には“魔法使いの従者(ミニステル・マギ)”が一人くれぇいなきゃカッコがつかないっすよ!?」

「う、うぅう……それがね。今、探しているところなんだよぉ……」

「それは好都合だったっすね。それじゃそれは俺っちに任せてくだせぃ!」

「え? それってどういうこと?」

「実は兄貴の姉さんに頼まれて助っ人に来たんっすよ! それでさっき風呂場で調べてみたんすけど中々いい素材だらけでしたよ」

「ん? 風呂場……」

「どうした、アスナ?」

「まさかあんたさっきの……!」

 

さっきまだ俺たちが帰ってくる前のことを聞いてみたのだが、やはり勘違いしていたのかネギ君を風呂場に連れて行って逆セクハラまがいなことをされていたらしい。

しかもそこにカモミールが乱入してきて次々とみんなが着ていた水着を脱がしていったとか……

 

「……姉さん、やはりこいつは」

「ええ。蒲焼じゃ物足りないわ。どうせなら魂を人形に移すなんてどうかしら?」

「ひぃ!? 怖いっすよ旦那たち! それに魂を移すって一体なんのことっすか!?」

「なに、姉さんは魔眼以外にも色々な力を使えてね。一時的に意識を別のものに移す術を使えるんだ。……例えばこの無機質なテーブルとかな」

「いやっすよ! 完璧に呪い系じゃないっすか!? それに士郎の旦那の目がまるで鷹の目のようで、本気じゃないっすよね!?」

「くくく……冗談だ、カモミール。だが、姉さんはどうかはわからんがな?」

「そうね……?」

 

そこでなにやら俺達の声が聞こえたのか、脱衣場の方から、

 

「アスナー? なんか騒がしいようやけどなにか―――……」

「こ、このか!?」

 

なんとバスタオル姿のこのかがでてきて来た。

ネギ君はあたふたしていて、アスナはすごい騒いでいて、このかはフリーズ、カモミールは「おおっ!?」とか言っている。

とうの俺は瞬時に姉さんに目を塞がれたので今周りではなにが起こっているのか言葉でしか感知できない。

 

「……姉さん、とりあえず目を塞いだままでいいから外に出よう。アスナ、収拾頼んだ」

「は、はい! このか、しっかりしなさい!!」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 神楽坂明日菜

 

 

「だ、大丈夫よ、このか! 士郎さんは目を塞がれていたから見てないわ!」

「でも! でも、ウチ恥ずかしいわ! 士郎さんにもしかしたら部屋をバスタオル姿で歩くふしだらな子なんて思われたらどないしよう!?」

「だ、大丈夫よ! 士郎さんはそんなこと考える人じゃないからきっと!」

 

(なぁなぁ兄貴?)

(なに、カモ君?)

(もしかしてこのかの姉さんって士郎の旦那のこと……?)

(僕はよくわからないからアスナさんに聞いてみたらどうかな?)

 

「ネギ!!」

「は、はい!」

「とりあえず今起こったことは忘れなさい! 追求なんてしたら怒るからね!?」

 

ああ、もう! このかもなんてタイミングで出てくるのかな?

涙目ですっかり顔もゆでだこのように赤くして逆上せてるし……。

とりあえず落ち着いてきたけどまだ顔は赤いなぁ……。

そこでやっとカモのことに気づいたのか気分を一転させて服を着てみんなのところに持っていってしまった。

知っているっていうのも考え物ね? なんかもみくちゃにされているけど私には奴は喜んでいるようにしか見えないわ。

 

「僕、これ飼っても大丈夫ですか?」

「いいんじゃない?」

「それじゃイリヤさん達に知らせてくるねぇ?」

「その心配はないわ、マキエ」

 

まきちゃんが管理人室に行こうとしていたがさっき帰っていったはずのイリヤさんがその場にいた。士郎さんは先に帰ったのかな?

 

「ペットはこの寮では飼っても大丈夫だとパンフレットに書かれていたからしっかりと飼うのよ、ネギ?」

「はい! ありがとうございます、イリヤさん!」

「それとそこのオコジョ? 変なことしたら実行するから覚えておきなさい?」

「キー……(イエスマムッ!!)」

 

イリヤさんの赤い目に睨まれて直立姿勢で敬礼までしている。そこまで怖かったのね?

 

「ところで士郎さんはどうしたんですか?」

「ああ、先に帰らしたわ。コノカがまた赤くなっちゃったら大変だしね」

「あの、やっぱり気づいてます……?」

「ええ。コノカはシロウに好意を持っていることは知っているわ。安心しなさい? 別に邪魔する気はないから」

 

そういってイリヤさんは管理人室に帰っていった。

よかった……これで一つだけ不安要素は消えたわ。

でも、終止イリヤさんは怖い笑みを浮かべていたのは気のせいだと思いたいな。

それと士郎さんはまた何も知らずにお仕置きされちゃうのかな?

それからカモの奴はこのかの事は諦めてくれたのはいいが、なんか本屋ちゃんに照準を合わせているようで、ネギもなんかまんざらでもなく顔を赤くして部屋を飛び出していった。

まあ、今はさっき会ったエヴァンジェリンさんも当分は手は出さないって言ってたから大丈夫かな?

って、なんかまたネギのお姉さんからエアメールが着ているわね?

 

「あ、姐さん! そのエアメールは俺っちが預かっとくっす!」

「わ、わかったわ」

 

カモはエアメールを私から預かると急いで部屋を出て行った。なにか怪しいわね?

それで私はつい気になってエアメールを探してみたんだけど……なによこれ!?

ほんとは悪いことをして逃げてきたんじゃない! しかも罪状が下着泥棒に、二千枚!?

 

「ふ、ふふふ……すぐに探し出さなきゃ。このままじゃ何も知らない本屋ちゃんが犠牲になっちゃうわ」

 

それからネギ達を探していたらなにか寮の裏手でなにやらネギと本屋ちゃんがあのエロオコジョの策略によって契約寸前までいってるし!?

すかさず私はエロオコジョを押しつぶした。そしたら魔方陣?も解けたみたいで本屋ちゃんは気絶してしまったらしい。

 

それでネギにこいつの真実を伝えてカモを問い詰めたら、無実の罪とか何たらで妹のために下着を盗んでいたというが、結局は下着泥棒には変わりないじゃない?

そしてカモは意外に素直に出頭するとか言っていたのだがネギは、

 

「知らなかったよ、カモ君がそんな苦労をしていたなんて!わかったよ!僕が君の事をペット(使い魔)として雇うよ!」

「兄貴―――!!」

 

……なんか、感動というより喜劇を見てるみたい。まあ、いいんだけど。

でも、ほんとにこんな奴部屋に置いといて大丈夫かしら? はぁ~……先行きが不安になってきたわ。

それで翌日になったらなんか私達の下着が消えていてエロオコジョを見つけたら下着を毛布代わりにしてやがりましたよ。

やっぱり後で士郎さんとイリヤさんに相談してみようかな?

私は怒りながらもこのかとネギ(+エロオコジョ)とともに学園に向かっていったんだけど、そこにはエヴァンジェリンさんと茶々丸さんがいた。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side エヴァンジェリン・A・K・マクダゥエル

 

 

お、朝からぼうやがいるな? ちょうどいい、少しからかってやるか。

 

「おはよう、ネギ先生」

「え、エヴァンジェリンさん!?」

 

ふふふ、やはり警戒してきたようだな。そうでなくてはな。

 

「今日もまたサボらせてもらうよ。いや、ネギ先生が担任になってからタカミチのときより楽になったよ」

「ううぅ……」

「お? 杖を出してきたな。こんなところで魔法を使ってもいいのか? ばれるぞ? それに勝算はあるのか?」

「うっ!?」

「そうそうタカミチや学園長の力は借りないほうがいいぞ? また被害が出るからな」

「……では、俺なら構わないのだな?」

「ぬっ!? この声は衛宮士郎か!」

「俺のことを忘れてもらっては困るな?」

 

突然現れたと思ったらいきなり私の襟首を掴んで教室まで連行しようとしてやがる!

 

「今日は授業は受けてもらうぞ?」

「よせ! 離さんか衛宮士郎!?」

「ははは、そんなことが許されると思っているのか? 学生は勉学が仕事のようなものだろう」

「どうせ私は受けてもまた繰り返してしまうんだからいいんだよ!」

「そんな言い訳は後で聞いてやろう、エヴァ。さもなくば椅子に縛り付けてでも受けさせるぞ?」

「ぐぐぐっ! 茶々丸! 私を助けろ!」

「楽しそうですね、マスター」

「楽しくなどない! ええい離さんか衛宮士郎!?」

「はっはっは。……離すものか」

 

さも楽しそうに笑いやがる……結局、私は教室まで連行されてしまった。

しかし、衛宮士郎につかまる前に見たオコジョは……まさか昨日逃がしたやつか? 厄介だな。

 

 

 




誰か目線で話を書くのは楽だなぁ……と当時は思っていました。今もか。描写が大変な時とかありますから。

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