剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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019話 新学期、対真祖編(06) 対決!そして決着

 

 

Side ネギ・スプリングフィールド

 

 

昨日、エヴァンジェリンさんの夢を覗いてしまいましたから怒ってないかな? いや、やっぱり怒っているんだろうな。

でも士郎さん達が来てくれたおかげで助かっちゃったな。

それより風邪はもう治ったのかな?

僕は考えに没頭していたら突然目の前に壁(?)があったらしくてぶつかっちゃったけど、ぶつかったものを見てみるとそれは士郎さんの大きな背中でした。

 

「あ、士郎さん!」

「やあ、ネギ君。大丈夫だったか?」

「はい、大丈夫です」

「それならよかった」

 

士郎さんはなにかと僕に気を使ってくれるので嬉しくなります。

こういう気持ちをなんていうんでしょう? あ、そうだ!

 

「士郎さんってなにかお兄ちゃんみたいですね?」

「……いきなりなにを言い出すんだ? まあ悪い気はしないが。っと、それよりカモミールはどうしたんだ?」

「カモ君ですか? でしたら今はアスナさんのところにいると思いますが」

「そうか。ではちょっと話があるので呼んでおいてくれないか?」

「わかりました」

 

士郎さん……カモ君になんの話があるんだろう?

最近、よく二人で話していることがありますけどなにか情報交換をしているんでしょうか?

とりあえずカモ君を呼ぶことにしよう。

そして士郎さんとともに教室に入ったのですが、え!?

 

「え、エヴァンジェリンさん!? なんでここにいるんですか?」

「ひどいな、先生。なに、昨日世話になったんで出てやっただけだ。それに生徒の私が授業に出ることに不都合とかあるのか?」

「あ……そ、そうですよね。わかりました! よかったー。あ、もう風邪は大丈夫ですか?」

「ああ……だからいちいち騒がないでくれ」

 

ほんとによかったです。やっぱり姑息な手は使わないで真正面から立ち向かって正解でした。これも士郎さんのおかげかもしれません。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

ふむ、どうやらネギ君はエヴァが授業に出てくれたことが相当嬉しいのかとても上機嫌のようだ。

しかし、その誤解のような発言は毎度どうにかならないのか? 雪広なんかは「せ、世話になった?」とか呟きながらすごい顔になっていたぞ。

そこにカモミールが念話で話しかけてきたので、対応した。

しかしこちらの世界ではまかりなりにも妖精の一種であるカモミールは契約もなしに念での会話ができるものなのか? と、感じたが別にどうでもいいことなので会話に集中した。

 

《それで、士郎の旦那? 俺っちに話ってのはなんでい?》

《ああ。ネギ君はあれでエヴァがおとなしくなったと思っているが油断はできないということだ》

《やっぱり旦那もそう思うっすか?》

《ああ。なにより昨日ネギ君をエヴァの家から帰らした後、近々動くといっていたからな》

《なに!? 宣戦布告されたんすか!?》

《ああ。だからカモミールは常にネギ君のとこについていてフォローにまわって貰いたい》

《わかりやした!》

 

さて、これで戦闘になったときの事はカモミールに任されるな。

後はいつ仕掛けてくるかが重要になってくる。

ただ、一つ気がかりだといえばネギ君が先走らなければいいが……。

……それと、聞こえないようにしているつもりだろうが屋上から微小だが高笑いが伝わってきているぞ、エヴァ?

 

 

そして放課後、俺と姉さん、それになぜか楓が一緒になって寮に帰っているところだ。

 

 

「どうした楓? 鳴滝姉妹のことはいいのか?」

「その心配はないでござる。二人には今日の停電のことでお遊びはせずに部屋に閉じこもっているように仕向けたでござるから」

「一種の脅迫概念でも植えつけたの?」

「まぁそんなところでござる。それより今日は不吉な予感がするでござるな?」

「確かにな。俺も妙な胸騒ぎがしている。もっとこうエヴァとは違ったものが迫ってきているような感じだ」

「あ、それは確かに正解かもしれないわね」

「? 姉さん、何か知っているのか?」

「ええ、コノエモンに聞いたんだけど、今日の停電で一時的にこの学園都市に張られている結界が止まってしまうらしいの。それでいつものことらしいんだけどその隙に便乗して京都の刺客が化け物を嗾けてくるらしいのよ」

 

初耳な話だな。

 

「俺はそんな話は聞いていないんだが?」

「拙者もでござる」

「それなんだけど、どうも今回シロウと楓はネギ同様あまり組みで緊急の事態時にだけ力を貸すことになったらしいの。それでコノエモンに自力で問いただしてみたところ『ネギ君とエヴァのもしもの時の見張りをしてくれると助かる』とのことよ?」

「学園長にしては粋な計らいでござるな」

「確かに」

「あ、それともう一つだけど、まだ西にはシロウがこちらの関係者だと知られたくないらしいのよ」

「なんでだ?」

「さあ? さすがにそこまでは教えてくれなかったわ」

「そうか。まぁ、なにはともあれ今日の夜には学園の結界が切れると同時にエヴァは動くだろう。俺もある意味すごい奴に気に入られてしまっているので自由に動けるのはいいことだ」

「すごい奴、でござるか?」

「それって、昨日のあのパペット人形のこと?」

「そうだ。エヴァの魔力が戻るということはあいつも動くということだ」

「確かに、そうね」

「人形とはなんなのでござるか~?」

 

いまいち理解していなかった楓に昨日にエヴァの家で会ったチャチャゼロのことについて説明した。

すると最初は驚いていたがエヴァの『人形使い(ドールマスター)』というあだ名を聞いて納得といった顔をしていた。

 

「と、いうわけだ。では俺はチャチャゼロとの戦闘とその後の処理を考慮して一度部屋に帰った後、見回りをしていよう。それで、姉さんと楓はどうするんだ? 二人ともどこか気づかれないところで観戦していようという魂胆だと思うのだが」

「ニンニン♪ そんなことはござらんよ?」

「そうね。余計な揉め事には巻き込まれたくないし」

 

二人はそんなことを言っているが顔がにやけている時点で説得力は皆無である。

まあ、遠坂と違ってここぞというミスはしないだろうから大丈夫だと思うが。

 

 

 

 

 

そして時は午後八時を過ぎた瞬間、一斉にすべてのものが明かりを消して暗黒がすべてを包み込んだ。

それと同時に巨大な魔力の波動がびしびしと伝わってきて気づいたときには俺の前にはチャチャゼロが立ちふさがっていた。

その手には小回りが効く鋭利なナイフ二刀が握られていてその凶悪な表情も相まって一般人が見たら即気絶物だろう。

 

「やあ、チャチャゼロ。これはまた物騒なものをもっているではないか?」

「ケケケ、コノ時ヲ待ッテタゼ。シカシソレガオ前ノ戦闘姿カ。中々ジャネエカ? ダガ、得物ガナイガ、マサカ徒手空拳デ戦ウツモリナノカ?」

「それこそまさかだ。―――投影開始(トレース・オン)

 

俺はもう何回も言いなれた言葉を唱えて両手に夫婦剣、干将莫耶を投影して身体も強化して自然体に腕をダランと垂らせてわざと隙を作り出し戦闘準備を終えた。

 

「オ?」

 

チャチャゼロは俺の考えに気づいたのか神妙な面持ちでこちらを見ている。変わっている感じはしないがな……。

 

「面白イ構エダナ? マルデ隙ダラケノヨウニ見セテイルヨウダナ」

「む。やはりエヴァの最初の従者なだけあり俺の戦法を瞬時に見抜いたか。だが、それも些細なことだ」

「マ、ソウダナ。ドンナ事ガアロウト突破シテキタ。ダカラソンナ事ハ関係ネエ。ソレニ御主人ニハ足止メトイワレテイルガ殺スナトハ命令サレテイネェ……本気でイカセテモラウゼ!」

「ふむ、ではもうネギ君とエヴァとの戦闘は始まっているということか。では早期決戦といこうではないか、チャチャゼロ?」

「ヘッ! イウナ衛宮、ジャ精々死ナネェヨウニ頑張ルコッタ! イクゼ!!」

 

その言葉を区切りにチャチャゼロは飛び掛ってきた。やはりエヴァからの魔力供給は素晴らしいものがあり相当のスピードだ。だが、

 

 

 

解析開始。状況分析。

対象、エヴァンジェリン.・A・K・マクダゥエルの『魔法使いの従者(ミニステル・マギ)』。チャチャゼロ。

チャチャゼロの持つ得物―――二本の鋭利なナイフ。凶悪な形をしているが神秘は込められていなくただ切り刻むことを重点に置かれたもの。

よって、対象の戦闘思考は自身の小柄な体系を活かしたスピード戦を重視されると判定。

こちらの迎撃手段、他数該当あり。現在手にある干将・莫耶で十分可能範囲。

状況分析終了。

よってこちらも干将・莫耶による迎撃を想定。

戦闘開始!

 

 

そしてチャチャゼロの高速ともいえる袈裟斬りを干将で受け止めすかさず莫耶による反撃を打ち込む。

さらに追い討ちで膝蹴りを繰り出したがそれは瞬時に姿勢を立ち直したチャチャゼロに両方とも防がれてしまった。

それから一合、二合、三合……十合と繰り出すタイミング、様々な武術を変則的に変更しては打ち込む。

 

「オイオイ! 楽シイジャネエカ! ナンダソノ動キノ変ワリヨウハ?」

「なに、俺はどれを鍛えても二流止まりなのでな。様々な動きを取り入れながら攻撃方法をすぐさま変更して戦っているだけだ」

「ツマリ“形無し”ナンダナ? オモシレェゼ衛宮! 久シブリニ血ガ滾ッテクルヨウダゼ!」

「人形なのに血など流れているのかね?」

「気分ノ問題ダゼ! ソレヨリ突ッ込ミヲイレテイル隙ナンテ作ッテイイノカ?」

「そうだな。ではもう少しギアを入れていくとしようか!」

「ケケケ! ソウコナクチャナ! オラァ!!」

 

チャチャゼロの猛攻で一見軽そうに見えるが一撃が重い攻撃で次第にどんどん莫耶にひびが生じてきてついに割れてしまった。

 

「モラッタゼ!」

「それは―――……どうかな!」

「ナ、ニ……!?」

 

ギンッ! という響きとともに俺の手には再び莫耶が握られていてチャチャゼロの攻撃を防いだ。

どうやらそれに驚いたのかチャチャゼロは一瞬呆けた顔をしたがすぐに満面の笑みを浮かべてさらに威力とスピードを上げてきた。

 

「ハハハ! 楽シイナ、オイ! コンナ戦イハ何十年ブリカ?」

「そうか。それはよかったな。だが……次で終わらせよう。ネギ君を見に行かなければいかないからな。ハッ!」

 

俺はチャチャゼロに向かって干将莫耶を投擲した。

それをチャチャゼロは意表を突かれたといった顔をしたがすぐにそれらを弾いた。

 

「―――鶴翼(しんぎ)欠落ヲ不ラズ(むけつにしてばんじゃく)

 

だがそれでいい。所詮これは布石に過ぎない。

 

「―――心技(ちから)泰山ニ至リ(やまをぬき)

 

さらに干将莫耶を投影し再度投擲する。それもまた同じように弾かれるがうまく左右に散っていく。

 

「―――心技(つるぎ)黄河ヲ渡ル(みずをわかつ)

 

そしてまた投影。今度はチャチャゼロに接近して剣を振り下ろしたがそれはいとも容易く受け止められた。だがそれすらもブラフ。

それを気づかれないようにわざと弾かれたかのように手放しすぐに後方に瞬動で下がった。

 

 

チャチャゼロは衛宮士郎のこの不可解な行動と、まるで呪文のように発する謎の単語に疑問を持っていた。

 

 

(ナンダ? アイツハ今カラ何ヲシヨウトシテイル?)

 

 

「―――唯名(せいめい) 別天ニ納メ(りきゅうにとどき)……」

 

さあ、これで準備は整った。後は行くのみ!チャチャゼロに向かって最後の布石として干将莫耶を投影し疾走する!

 

 

(何カヤバイ! 俺ノ長年ノ勘ガ警報ヲ鳴ラシテヤガル! アイツニ次ノ手ヲウタセルナト!)

 

「気づいたか。だがもう遅い! ――――両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら ともにてんをいだかず)……!」

 

最後の呪文とともに俺の持っている干将莫耶にまるで惹かれあうかのごとく、四方八方に弾かれた合計6本の干将莫耶が夫婦剣の特性『お互いに磁石のように引き合う』の効果で一斉にチャチャゼロに襲い掛かる。

 

「ナニィッ!?」

 

俺の最後の攻撃を今現在防いでいるチャチャゼロは手を出すことができず無理やり体を捻り一時離脱しすべてを弾こうとしていたが、すぐさまに俺は一つの忌まわしい記憶である赤い布を投影して、

 

「―――私に触れぬ(ノリ・メ・ダンゲレ)

 

と、いう言霊を発してチャチャゼロを拘束した。そしてすぐに全投影品を解除した。

しかし、ほんとうに拘束にかけては天下一品だな、この布は……。

 

「ナ、ナンダコノ布ハ!?」

「……マグダラの聖骸布。こと拘束にかけてはずば抜けているものだ。さらに強化も施してあるから抜け出すのは容易ではなかろう?」

「ンダトッ!? ク、クソー! 抜ケ出ソウトシテモ力ガデネェ!?」

「ではお前としては興ざめかもしれんが先に行かせてもらうぞ、チャチャゼロ」

 

そして俺はマグダラの聖骸布で拘束したままチャチャゼロを置いていきネギ君達が戦っているだろう巨大な魔力の塊のような場所に向かった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

──Interlude

 

 

衛宮士郎が立ち去った後、その場に拘束されて残されたチャチャゼロは負けたことや逃げられたことにより一時呆けていたが、すぐにその気分が裏返り残酷なほどの笑いの表情を浮かべた。

 

(……ケケケ、衛宮……今回ハオ前ニ勝チヲ譲ッテヤル。ダガ! 次ハモウアンナ技ハ通用スルトハ思ウナヨ? 覚悟シテオケ! ケケケ!)

 

と、心の中で高笑いを上げているとそこに二つの気配を感じて見てみるとそこにはイリヤと楓がいた。

 

「あ~、やっぱりシロウはこれを使ったのね」

「拘束してそのまま置いてくとはなかなか士郎殿も肝が据わっているでござるなぁ~」

「ナンダ、衛宮イリヤカ。ドウデモイイガコレ解イテクンネエカ? 気持悪クテショウガネエ……」

「今回はもうシロウには手を出さないことが約束できるなら解いてやってもいいわよ?」

「アア、ソンナコトカ。ソレハ余計ナ心配ッテヤツダ。

今回は油断シタトハイエ負ケハ負ケダカラナ。ムシカエシハシネエヨ。

ソレニモウ少シデ御主人ノ魔力モ切レル。

ダガ久シブリニ暴レラレル事ガデキタンデ文句ハネェ」

「あきれた。とんだ戦闘狂ね、あなた? ま、いいわ。それより決着を見に行きたくない?」

「オ! イイナ、ソレ。ソレジャ頼ムゼ?」

 

チャチャゼロはケケケと愉快に笑いながら楓に抱えられて一緒に士郎の向かったほうへと飛び去っていった。

 

 

 

Interlude out──

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side ネギ・スプリングフィールド

 

 

アスナさんとカモ君が僕を助けてくれたエヴァンジェリンさんと茶々丸さんから見えない隠れた場所にいるんですけど。

 

「あ、兄貴と姐さん! 早く魔方陣のなかで仮契約を! でねぇとエヴァンジェリンの奴に気づかれちまう!」

「ちょ! も、もう少し待ってー!」

「……サーチ完了。マスター、ネギ先生達はあそこに隠れている模様です」

「そうか! ふん! 正式な仮契約を結ぼうとしているらしいがそんな隙は与えんぞ!

リク・ラク・ラ・ラック・ライラック……氷の精霊17頭。集い来たりて敵を切り裂け。『魔法の射手・(サギタ・マギカ・)連弾・(セリエス・)氷の17矢(グラキアーレス)』!」

「きゃああああ―――ッ!!?」

 

あ、まずい! エヴァンジェリンさんが魔法をうってきた! 詠唱もしている時間も障壁を張る時間もないし! どうしよう!?

 

停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!」

 

だけどそのとき、すごく遠くからなのか響いてくるような声と同時にエヴァンジェリンさんの放った17矢と同数の剣の群れがすべて命中して打ち払った。

 

「なに!? 私の魔法が相殺されただと!」

「解析結果、マスターの放った魔法と同数の剣が当たって相殺された模様です」

 

「……ふう、危機一髪といったところだったな」

 

エヴァンジェリンさんが困惑している中、その声の主は赤い外套をたなびかせながら僕達の前に立っていてくれました。

 

「「士郎さん!」」

「士郎の旦那!」

「無事だったようだな。間に合ってよかった」

「衛宮士郎!」

「なんだ、エヴァ?」

 

僕達が助かって胸を撫で下ろしているとエヴァンジェリンさんが怒っているような声をあげた。え? なにかしたのかな?

 

「チャチャゼロはどうした!? お前の足止めに向かわせていたはずだぞ!?」

「そんなに怒るな、エヴァ。別に殺してなどはいない。ただ身動きできなくさせただけだからな」

「そうか……ではない! では貴様は今の私の魔力がしっかりと行き渡っているチャチャゼロを倒したというのか!」

「そうだが。なかなか強かったぞ……今は簀巻きになっているがな。それよりネギ君にアスナ、なにかやることがあるのだろう? 早く済ませたらどうだ? その間、足止めはしよう」

「あ、ありがとうございます!」

「では、いくぞ!」

 

そして士郎さんは駆けていった。

 

「ふっ! 図に乗るなよ! 今度は私自らが倒してやろう。茶々丸!」

「イエス、マスター! 失礼します、衛宮先生」

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」

 

エヴァンジェリンさんが契約執行を行い茶々丸さんが士郎さんに向かって駆け出した!

その間にエヴァンジェリンさんは魔法を唱えているようだ。

そして双剣を携えた士郎さんと茶々丸さんはすごいスピードで攻防を繰り広げている!

 

「す、すご……!」

「やっぱただものじゃねぇっすね、士郎の旦那は……」

 

僕だけでなくアスナさんやカモ君もすごい驚いているようだ。

 

「ふっ! やるな衛宮士郎。だがもう私の詠唱は終わっている!受けてみるがいい!氷爆(ニゥエス・カースス)!」

 

その瞬間、さっき僕に放った魔法とは名は同じでも威力も桁違いなものが士郎さんに放たれた!

茶々丸さんも撤退しているようでもう遠慮なんて言葉はない。

だというのに士郎さんは両手の剣を消すとその場に立ち尽くして動こうとしない! なんで!?

だけどそんな考えは士郎さんの次の行動でかき消されてしまった。

 

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)ーーーー!」

 

 

士郎さんが手をかざしてその言葉を叫んだ瞬間、七つの光り輝く花弁が咲き誇った。いや、あれはよく見れば盾のようだ。

そして二、三枚割れてようやくエヴァンジェリンさんの魔法が収まったのかそれが消えた。

 

「なっ!? あれを防いだというのか! 満月ではないとはいえ全盛期の力を取り戻している私の魔法を!」

 

僕も驚いた。あれはもうここら一帯を破壊してしまうのではないかという威力が込められていたから。

そのとき、カモ君が声を上げて、

 

「兄貴! 魔方陣が書き終えましたぜ! 今のうちに!」

「うん! アスナさん!」

「わかっているわよ!」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

エヴァの魔法をなんとか防ぎきったがさすが最強を名乗るだけはあるな。

アイアスの盾が三枚も割れてしまった。

そして次の行動に移ろうとしたら後方から光が溢れてきた。

どうやら仮契約とやらが済んだようだな。

 

「では、役者も揃ったようなので俺は下がることにしよう」

「待て! さっきの魔法はなんだ!? それにまだ決着はついていないぞ!」

「時がくれば教えてやろう。それとこれはもともとネギ君とエヴァの決闘だろう? 脇役は下がっていることにするよ」

 

俺はエヴァに背中を見せながらネギ君達のいる場所に向かうと、

 

「士郎さん、ありがとうございます……このお礼はいつかします」

「ありがと、士郎さん」

「なに、気にするな。では俺は下がっているから後は任せたぞ?」

「はい!」

 

 

そして後ろに下がり観戦しようと腰を下ろしたらカモミールが肩に乗ってきた。

 

「おおおおお!! 士郎の旦那! すごいじゃないっすか! なんすか、さっきの魔法は!? エヴァンジェリンの魔法を完全に防ぎきってましたぜ!?」

「まだ秘密だ。だが切り札の一つとだけ伝えておこう」

「ほうほう、切り札とな? さっすが旦那すね」

「今はその話はあとにしよう。今はネギ君達の戦いを見守る。そうだろ?」

「その通りっすね」

 

それでカモミールと観戦をしていると二人の魔力が高まる感じがして、

 

来たれ雷精、(ウェニアント・スピリトゥス・)風の精(アエリアーレス・フルグリエンテース)!」

来たれ氷精、(ウェニアント・スピリトゥス・)闇の精(グラキアーレス・オブスクランテース)!」

 

「なっ! ありゃ兄貴の現時点で精一杯いっちゃん強い魔法じゃねぇか! しかもエヴァンジェリンも同種の魔法を使ってやがる!」

「では打ち合いか。これはすごいことになるぞ」

「確かに!」

 

そんなことをカモミールと話をしている間にも二人の詠唱は進んでいく。

 

雷を纏いて(クム・フルグラティオーニ・)吹きすさべ(フレット・テンペスターズ・)南洋の嵐(アウストリーナ)!」

闇を従え(クム・オブスクラティオーニ・)吹雪け(フレット・テンペスタース・)常夜の氷雪(ニウァーリス)! さあ、来るがいいぼうや!」

 

 

雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!!」

 

ほぼ同時に放たれた二人の魔法はぶつかり合いお互いに負荷を耐えている。

だがネギ君のほうがやはり押されているようで少しずつ顔色が悪くなってきている。

そしてこれはもうやばいと思った瞬間のことだった。

 

「ハ、ハクション!」

 

あろうことかこんな時にネギ君はくしゃみをしてしまった。

だが一度その威力を受けた俺だから言えるがそれが切欠で増進剤となったらしく、なんとエヴァに魔法で競り勝ってしまった。

そして服も消し飛んだのか裸で空中にエヴァは浮いていた。

 

「くくく、やるな……さすがサウザンドマスターの息子だ。だがまだ……っ!?」

「マスター! 予定より停電の復旧が早まりました!」

「なに!? ええい! このような大事なときに! うきゃ!?」

 

エヴァは学園の結界が復活したのか電気が走ったみたいにしびれたようで下の川に落ちていった。

しかしそれはなんとかネギ君が飛び込んで助けたようなので安心した。

 

「ふむ、俺が助けなくても大丈夫だったようだな」

「そのようっすね?」

「だが、これでエヴァもおとなしくはなるだろう。ではカモミール、少し俺は用事があるのでネギ君達とともに先に帰っているがいい」

「あー……士郎の旦那? その用事って」

「今は聞かないのが華だ。特にアスナなんかは腰を抜かしそうだからな」

「わかりやしたっす」

 

カモミールが俺の肩から飛び降りネギ君達の方へ向かっていってエヴァとなんやら一方的な口喧嘩になっているようだが今は気にしない方針で用事を片付けるとしよう。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

「それで、だ。姉さんに楓はいつまで見学しているつもりだ? 後、チャチャゼロもなぜそこに?」

 

俺はあえてネギ君やエヴァが気づいてなかったアーチの上の方へ目を向けると案の定三人はいたのだった。

 

「私が“観戦しない?”っていう提案で一緒に着いてきたのよ。安心して、シロウ。今はエヴァの魔力も切れているみたいで動けないみたいだから」

「マア、後デ御主人ニ怒ラレソウダガイイモノヲ見サセテモラッタゼ、シロウ」

「ん? 先ほどまでは苗字だったが今は名前で呼ぶんだな?」

「二人モ衛宮ガイタンジャイチイチメンドクセエダロ?」

「……なるほど」

「それより士郎殿? 先ほど拙者に学園長から連絡があったのだが……」

「言わなくてもいい。あれを見れば一目瞭然だ」

 

そう楓にいって俺は橋の入り口方面を見るとそこには結界が再起動する前に侵入してきた妖怪どもが押し寄せてきていた。

その数は最低でも見積もって100体くらいいるだろう。

 

「アー……マダ動ケタラ奴等ヲ挽肉ニシテヤル所ナンダガ……」

「まあそう気を落とすな。では姉さん、楓。後始末といこうか」

「ええ、わかったわ、シロウ」

「わかったでござるよ、士郎殿」

 

そして俺は剣群を、姉さんはアインツベルンの知識と遠坂仕込みのフィンの一撃であるガンドを、楓は分身と十字手裏剣をそれぞれ駆使して一気に妖怪達を殲滅したのだった。

これにて桜通りの吸血鬼事件は幕を降ろすことになった。ネギ君の勝利という形で。

 

「あ、そうだ♪ エヴァって負けたのよね? それじゃ後で慰めてあげなくちゃね。ふふふ……」

 

……そして最後に“ぎんいろのあくま”は密かに微笑むのだった。

 

 

 




これにて真祖編は終了になります。

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