剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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034話 エヴァによる修行風景

 

 

ネギ君の弟子入りテストから数日後、場所はエヴァの家から近くにあるなにやら遺跡のような場所で小規模ながらも結界が張られており、そこでネギ君と姉さんの修行が行われていた。

別荘を使えば良いと言ったがまだ奴には早いと言い捨てられた。

それでなぜか俺も修行に参加するらしい。どうやら俺の血が目当てらしいが勘弁してもらいたい。

 

「よし。ではまずぼーやとイリヤ、二人とも始めてみろ」

「はい!契約執行!180秒間!ネギの従者『神楽坂明日菜』『宮崎のどか』!」

「ええ。契約執行!180秒間!イリヤの従者『衛宮士郎』。そしてシロウの従者『近衛木乃香』『桜咲刹那』!」

 

ネギ君の契約執行によりアスナと宮崎の体に薄い魔力が纏われた。

姉さんも同時に執行し俺を経由してこのかと刹那も姉さんの魔力を身に纏った。

なるほど。これなら一般人よりは確かに力は上がるだろうな。あくまで常人以上程度だが。

そこでさらに、

 

「次に対物・魔法障壁を全方位全力展開!」

「はい!」

「ええ」

「さらに対魔・魔法障壁を全力展開後、3分持ち堪えた後に北の空へ魔法の射手199本を放て!」

 

それによってネギ君と姉さんの手から魔法の射手が同時に放たれ空には光の粒子が結界に当たり飛び散っていた。

そして姉さんは自分の魔力を完全にコントロールしていてまだ余裕綽々だが、ネギ君は使いすぎた反動で気絶していた。

 

「ふん、この程度で気絶と話にならん! イリヤを見習ってもう少し努力するのだな!」

「しかし、姉さんはいつのまにここまで魔法を…しかも俺を経由してこのかと刹那にまで流すとはすごいな」

「ふふん。私にかかればこの程度は朝飯前よ♪」

 

それからエヴァはネギ君に向けて師匠としてだるそうに、且つきつく言葉を交わしていたが、ネギ君の気合が入った言葉で少しばかりたじろいで「私のことは師匠と呼べ…」と小さく呟いていたので思わず俺は口元が上がるのを感じていた。

そこにエヴァは目ざとく気づいて、

 

「ええい! 士郎、そこで笑うな!」

「しかしな…なぁ?」

 

俺は誰に問うでもなく言ってみた。

それでエヴァはいい度胸だという顔になって、

 

「…そうだな。そういえば士郎。あれから新しい技法の完成度はどうなっているんだ?」

「ん? まぁ…そこそこ安定はしてきたがやはり宝具級は身に余るものがあるな」

「ならば一度宝具級を取り込んでみろ。どれくらい負担があるかこの私が見てやろう」

「……絶対に俺の苦しむ姿が見たいだけだろう?」

「まぁそういうな。一度きりだけだから私にも見せてみろ」

「だ、そうだが……姉さん、許可はしてくれるか? ギアスで縛られているから出来ないのだが…」

「もう…しょうがないわね。本当に一度だけよ?」

 

姉さんは強制魔術(ギアス)を一時的に解いてくれたらしく体が少し軽くなった。

そこで前々から見たがっていた面々が見学をしだしていた。

 

「ついに見せてくれるアルね? 楽しみネ」

「そうですね。士郎さんはなにを取り込むのでしょう?」

「きっと旦那のことだからすんげーモノに決まってるぜ!」

「少しドキドキします」

「宝具というものは…とても興味をそそられるです」

 

あちこちから何か言っているが、あまり期待しないでもらいたい。

失敗したときの反動はすごいものだからな。

だから程ほどのものにしといた。

 

「…まぁいい。ではやるか。――投影開始(トレース・オン)

 

俺は剣の丘から一本の日本刀を引きずり上げる。

そしてそれを形にする段階で、

 

「――変化、開始(トレース・オン)ッ!」

 

魔力の塊に変換させ固定化、そしてそれを握り締めて体に流し込んだ。

 

魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)!」

 

そして俺の体にはある刀の概念と魔力がそのまま纏われた。

その俺の魔力の急激な増加にわかるものは目を見開いていた。

だがエヴァはなにやら不満げに、

 

「なんだ士郎。もっと派手なものを取り込んだと思ったが案外普通のものを取り込んだな」

「そうでもないさ。これでも蓄積された年月はそれなりにあるものを取り込んだつもりだ。そうだな…言うより見てもらったほうがわかりやすいな。ネギ君、少しいいかね?」

「え? あ、はい。なんでしょう」

「君の今のところ最高の呪文である『雷の暴風』を全力で俺に放ってくれ。無論容赦などなく…!」

「「「「「「え!?」」」」」」

 

俺の言ったことに皆は目を見開いた後、すぐに否定の言葉を言ってきたがエヴァは面白そうに、

 

「よしわかった。ぼーや、師匠命令だ。やれ!」

「ええ!? でも…!」

「士郎もああいっているのだからやってやれ。少しでも手加減したら容赦せんからな?」

「うぐっ…はい。でも、本当にいいんですか、士郎さん?」

「ああ、構わないからさっさと頼む。ああ、それと刹那…」

「はい、なんでしょう?」

「以前に話した逸話を今見せてやろう。宝具というものはなにも派手さだけではないということを証明する」

 

俺はそう告げた後、後ろに数歩下がって魔法が飛んで来るのを待った。

それでネギ君も覚悟を決めたようで詠唱を開始した。

それに合わせて俺も拳を水平に構え、

 

「『雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)』!!」

 

魔法は放たれた。それで一同も後のことを考えてしまったらしく悲惨な顔をしたが俺は構わず手刀をそれに勢いよく振り下ろした。

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side  桜咲刹那

 

 

なっ!? まさかあれは!

ネギ先生の魔法がまるで士郎さんの手により掻き消されて…いや、文字通り手刀によって真っ二つに切り裂かれた。

 

「え? え? な、なんで…!」

「嘘ぉッ!? ネギの魔法がただの手刀で切られちゃった!」

「正直言ってありえねーだろ!?」

「士郎…貴様、なにを取り込んだんだ?」

 

魔法を放ったネギ先生は当然、アスナさんやカモさん。エヴァンジェリンさんですら驚きの表情をしていた。

だが、私は士郎さんがなにをその身に宿したのかすぐに理解した。

 

「以前…といいますと戦国時代の九州の武将、立花道雪の逸話ですね」

「そうだ。立花道雪のエモノの名は『千鳥』…過去の歴史で『雷神』とまで評されたほどの人物だが呼ばれた理由は使っていた刀によるものが大きい…」

「なんだ、それは? どんな奴かは知らんが…」

「エヴァは知らなかったか。立花道雪の刀は別名『雷切』…落雷時に千鳥を持ってして雷を切り裂いたという逸話があるほどの名刀。よって先ほどのものはその概念武装を身に宿したからできた芸当だ」

「はっ、なるほど。その概念でぼーやの雷の魔法を切り裂いたわけか。つくづくお前には驚かされる。ではそれを纏っていれば雷系の攻撃はほぼ切り裂けるわけだな」

「そうなるな。使える回数に限りはあるが…むしろ、場所や状況を指定しないなら千鳥そのものを投影して使ったほうが効率はいいかもしれないな」

「つまりは投影と取り込みで相性がよい奴と悪い奴があるというわけか」

「そうなるな。それよりまだ装填魔力が残っているらしいから発散する。残しておくと少し後遺症が残るからな」

 

士郎さんが明後日の方向に手をかざした途端、魔力が迸って魔法の射手のように手の平くらいの純粋な魔力弾が打ち出されていった。

それらは結界に当たり消滅していくが一向に減る気配が見えないのでさすがに士郎さんも痺れをきらした様で、

 

「…面倒だ、姉さん結界の強化を頼む」

「わかったわ。でも本当に燃費が良いんだか悪いんだかわからないわね? 長期戦では有効そうだけれど…っと、出来たわよ、シロウ」

「わかった。では…魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)一転集中(コンセントレート)発射(ファイア)!!」

 

両手の間に凝縮した魔力弾を作り出しそれを結界めがけて放った途端、ネギ先生の雷の暴風もかくやと思うほどの雷の放出が巻き起こり結界を揺らした。

それだけ魔力が体内に残されていたのか、それとも士郎さんの実力なのかは定かではないが正直に凄いと感じてしまった。

そして士郎さんは「――同調解除(トレース・カット)」といって魔力放出を停止した。

士郎さんがすべてを終わらせたと同時に今まで黙って見ていたお嬢様や皆さんは目をキラキラさせながら士郎さんに駆け寄っていった。

それで私も便乗することにした。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side  衛宮士郎

 

 

むぅ、少々力を見せすぎたか…皆から凄い目で見られているな。あまり俺も多用はする気はないのだが。

だがそこでなにやらネギ君が、

 

「あ、あの士郎さんに師匠(マスター)!」

「なんだ、ネギ君?」

「どうしたぼーや、急に改まって?」

「はい。まず士郎さんに聞きたいことがあるんですけど竜を倒せるような剣もなにか持っていますか?」

「ふむ、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の剣か…そうだな。

有名どころで言えば、

北欧神話の英雄ジークフリートが魔竜ファーヴニルを倒す際に使用した魔剣『バルムンク』。

聖ジョージの竜殺しの聖剣『アスカロン』。

日本神話でいうなら有名なのはやはり素戔鳴尊(スサノオノミコト)八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を倒す際に使用した神剣『天羽々斬(アメノハバキリ)』。

……他にもあるが上げるのならこの三つが断トツでトップだろうな」

「……貴様、そんなものまで投影できるのか?」

「できないことはない。しかしどれも高位ランクの宝具…特に神剣である『天羽々斬(アメノハバキリ)』を投影するものなら回路が悲鳴を上げて悪くて一時的に焼ききれて回復に時間を有するだろうな」

「ま、当然のリスクだな…」

「そうね。さすがに神剣クラスはシロウの負担がすごいから。でも今の日本に竜が現れるところなんてないでしょう?」

「そうだな。魔法世界なら話は別だが…それでぼーや、なんでそんなことを聞く?」

「はい。ドラゴンを倒せるようになるにはどれ位修行すればいいかと思いまして…」

「「「………は?」」」

 

突然なにを言い出すかと思えば竜を倒せるくらいとは…ネギ君、君はなにをとち狂ったことをいっているんだ?

エヴァも怒りを顕わにして「アホかーーーッ!!」と鉄拳制裁を食らわした後、説教を永遠と繰り返していた。

姉さんもさすがに呆れが入っているのかやれやれとかぶりを振っている。

それでなにやら知っていそうな素振りをしていて現在「何の話?」と言っているアスナに説明している綾瀬に事情を聞いてみた。

 

「綾瀬、ネギ君はいきなりなぜあんなことを言い出したんだね?」

「そうよ。今時あんな話をするなんて…ゲームじゃあるまいし」

「あ、はい。とても信じられない話でしょうが…」

 

そして俺と姉さん、アスナは先日に綾瀬と宮崎がネギ君達と一緒にナギさんの手がかりを見つけてそこに向かったら巨大なドラゴンが潜んでいて襲われたという話を聞いた。

それを聞いてアスナはなにかしら怒った表情をしていまだ説教を受けているネギ君を無言で睨んでいた。

二人の間でなにかあったのだろうか?

 

「……しかし、よく脱出できたものだな」

「そうね。シロウならどうにかできそうだけど今のネギじゃ普通に負けるでしょ?」

「はい。茶々丸さんに助けてもらったのでなんとか脱出することができたです…そうです! 士郎さんなら!」

「悪い、綾瀬…俺はドラゴン退治には協力はする気はない」

「ど、どうしてですか!? 士郎さんなら倒せるかもしれないでしょう?」

「その気があればな…だがな、綾瀬。一つ聞くがドラゴンを倒すという事はどういう意味かわかるか?」

「え…? そ、それは…」

 

綾瀬はなにやら考えているが回答に至らないようだ。

当然だ。もとは魔法も裏の世界も知らなかったただの中学生なのだから。

 

「それじゃユエ、一つ謎かけをするわ。そのドラゴンを人間に置き換えて考えて見なさい。そうすればすぐにシロウの言っている意味が分かるわ」

「人間に置き換える……はっ!」

「わかったようね…そう、ユエは今とても軽はずみな発言をしたわ。倒すということはイコール殺すということよ。それもただ偶然そこに暮らしているドラゴンの住処に押し寄せて…それじゃただの殺人者と同義よ。

だからシロウは協力はしないといったのよ」

「わ、私はなんて愚考な事を言って…!」

 

綾瀬は姉さんによって現実を突きつけられて相当参っているようだ。

さすがに俺も見ていていい気はしないので綾瀬の頭に手を置いて、

 

「わかればいいんだ、綾瀬。そうすればお前はこれを教訓にまた一つ人間的に成長できる…ただ俺が言えることは理由もなき争いからは何も生み出さないということだ。そして変わりに残るのは悲しみ、憎しみ、恨み…上げたらキリがないがたくさんある。だがお前はそれを未然に防げたんだ」

「ですが。わ、私は…」

「自分で言ったことがそれほど重みになるのならその重みをずっと胸に抱いていた方がいい。そうすれば過ちはきっと回避できる。そしてそれから倒す以外に新たな解決案を導き出すんだ」

「倒す以外の選択…」

「そう、殺さずともいい選択を…」

 

それから綾瀬は少し元気が出たのか俺と姉さんに何度もお辞儀をして宮崎達とともに寮へと帰っていった。その横顔からは先ほどの影はなくなっていたので安心した。

 

「…人を諭すようになるなんて成長したわね、シロウ?」

「いや、ただあのような姿は見ていて気持ちがいいものではないからな。俺のただの我侭だ」

「ふふ…でもいいじゃない。さっきまでのユエの顔は後悔で一色だったからシロウの言葉はきっと届いたわ」

「そう願いたいものだな。さて、後問題は…」

「そうね」

 

俺達と綾瀬が会話している間になにかしら騒動があったのかネギ君とアスナが口げんかをしている。

止めようと思ったがネギ君は女性にとって禁句ワードを連発してしまいハマノツルギ(ハリセン状態)を発動…ネギ君の防御魔法もぶち割って吹っ飛ばした後、そのまま立ち去ってしまった。

しかし、ぶち割るってどういう構造をしているんだ、あのハリセンは?確かに魔力を無効にする効果があるから別段出来ないことでもないが…

 

 

それからその場に残っていた俺達とこのか、刹那、カモミール、そしてヘロヘロのネギ君はエヴァに呼び止められて家に連れてかれた。

 

 




夕映はなんといいますかこの時はまだまだ魔法世界の現実を知らない状態ですからね。

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