剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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040話 悪魔襲来(前編)

 

エヴァの別荘で一日を過ごした一同は雨が降る中、どうやって帰るか思案していたので俺が人数分の傘を投影して帰してやった。

なんでこんなものまで…という問いは当然聞こえてきたが傘も立派に武器にカテゴリーされると説明すると皆を驚愕させた。

しょうがないから傘をどうやって武器に使うか説明してやった。

主に刺突…いや、メイスに分類されると。

古菲はそれを聞いて納得顔をして「いい勉強になたネ」と言っていた。

それとこのかと刹那にはバゼットからもらったとある加護の礼装であるピアスをあげた。

少しでもこれで二人に彼の英霊の加護があることを祈って。

 

「さて、やっとうるさい奴等が帰っていったな」

「楽しそうでしたが? マスター」

「しかし刹那達が少しばかり顔色が悪かったから理由を聞かれたときはあせった…」

「でもセツナ達はなんでもないといってくれたからよかったわね、シロウ」

「それよりあいつら二人はもうぼーや達と同格の目で見ないほうがいいぞ、士郎…?」

「わかっている。元は俺の不注意だったがあんな地獄を見せた責任は取らなくてはいけない…そのために二人にあのピアスをあげたんだ」

「その発言をどう取るかで聞こえが悪くなるな。忘れるな。あいつらはもう立派なお前の従者なのだぞ?だからしっかりと鍛えてやれ。面倒だが近衛木乃香の方は私も力は貸してやろう」

「そうよ。だから責任なんて感じる必要はないわ、シロウ」

「そうか………むっ?」

「どうし………んっ?」

 

俺とエヴァはふとなにかの気配に反応したがそれはすぐに消えてしまった。

気のせいではないと思うが…

 

「どうしたの、シロウにエヴァも?」

「いや、気のせいだ。気にするな」

「俺もそうだ。どうやら昔の記憶を見たせいでいつも以上に敏感になっているようだ」

「? そう、それならいいけれど…どうせなにか侵入したとかとでもいうんでしょ二人とも?」

 

っ!? やはり姉さんは気づいていたか。まぁ、俺が気づけるのだから当然といえば当然なのだが。

 

「平然と事実を述べるな。始末が面倒ではないか…」

「本当のことだからしょうがないじゃない? でも、すぐに気配は消えたわね? 不気味だわ…」

「どうせ低級な奴等だろ? 私の警備範囲外だから他の魔法使いが対処するだろう」

「それなら構わないのだが、この肌に纏わりつくような不快感はなんなんだ?」

「本当にどうしたの? シロウにしては落ち着きがないわよ!」

「俺にもわからないんだ。だが、なにか放っておいたら大変なことになると俺の直感が告げている…少し、でかけてくる」

 

俺は聖骸布の外套を羽織って姉さん達の制止の言葉も聞かずに家を後にしようとした。

それで姉さんも俺一人だけじゃ心配らしく一緒に着いて行くというのでエヴァには先ほど感じた気配の方を任せ雨の中を姉さんとともに駆けていった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 近衛木乃香

 

 

一緒の内緒をしたせっちゃんと別れた後、ネギ君とカモ君、アスナと一緒に部屋へ戻ったんやけど…どうにもやっぱり士郎さんとイリヤさんの事が気になってしかたあらへん。

士郎さん達の体験したことはウチとせっちゃんの心に刻まれた。

だからもう迷う必要はないと思う。士郎さん達に着いていくって。

でも、やっぱりウチは何度も泣きそうになってまう。

エヴァちゃんには同情はするなといわれてもこの気持ちはやっぱり抑えようがあらへん。

きっとせっちゃんもウチと同じ事を思っているんやろな?

 

 

『士郎さんの心をイリヤさんとともに護りたい』って…

 

 

アーチャーさんの呪文詠唱はとても悲しいもの…そんなものを士郎さんに唱えてほしぃない。

そんなことを考えていたらアスナがウチに何度も話しかけてきていることに気づく。

 

「もうっ…どうしたのよ、このか…? やっぱりネギの記憶を見て疲れちゃったの?」

「ち、違うえ? ただ、ぼうっとしていただけやから心配せんといて、アスナ」

「そう? ならいいんだけど…さっき、ネギの奴もどこかに飛び出していっちゃってどうしちゃったんだろうね?」

「え…」

 

ネギ君が理由もなく飛び出していくことはあらへん。もしかして…!

ウチの不安をよそにアスナの背後になにかが迫っていて叫んだけど一緒にウチも飲み込まれてしもうた。

 

 

 

 

 

…そして、目を覚ましたときにはウチはなにかの水の檻の中に閉じ込められていてのどか、ユエ、クーちゃんに朝倉さんもなぜか裸で一緒にいた。

理由を聞くとお風呂の間に捕まったという。

周りを見ればせっちゃんとアスナ…それに那波さんもウチ達とは別に捕まっていた。

ウチは急いで士郎さんに伝えようとポケットからカードを取りだそうとしたけど肝心なことに机の上に置いていたのを忘れとった。

せっかく士郎さんの力になろうと決意したいうのに…ウチ、情けないわ。

近くにいる小さい子達がいて、

 

「一般人が興味半分に足突っ込むからこーゆー目に遭うんだぜ」

 

と、笑いながらいっとる。違うと叫びたかった…でも、今はその通りだから言葉が出てこんかった。

…ウチ、やっぱり役立たずや。

しばらくしてアスナも目を覚ましてネギ君と京都で見た男の子―――のどかが言うには小太郎君って名前らしい―――が一緒になって助けに来てくれたんやけど…

士郎さんとイリヤさんは、どうしたんやろ…?

しばらくして小太郎君は分身してスライムの子達と戦ってネギ君はヘルマンというおじさんに魔法を目くらましに放って、

なんや小さい瓶をかかげて、

 

「僕達の勝ちです! 封魔の瓶(ラゲーナ・シグナートーリア)!!」

 

と、叫んだんやけど。それは拒否反応をして代わりにアスナが大声で叫びをあげた。

なにがあったんや!?

それでヘルマンのおじさんは急に語りだした。

 

「ふむ…実験は成功のようだ。放出型の呪文に対しては完全だ。私も本気でいこう。さあネギ君、これで終わりな訳あるまい?

ああ、衛宮士郎という危険因子だが今頃は彼女等とは別の私の配下が数人相手で仕掛けているころだろう。彼らは双方ともに無口だがその実力は相当のものだ。彼が勝てることか……」

「なんやて、おっさん!? もう一回いってみぃ! 士郎の兄ちゃんがそう簡単に負けるわけあるかい!?」

「そうですよ!」

 

ネギ君と小太郎君が即座にヘルマンさんの言葉を否定した。

ウチも士郎さんの強さは十分わかっとる! だから、無事でいてな。士郎さん! イリヤさん!

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

俺は雨の中、飛び出して姉さんを片手で抱えながら悪寒がする方へと駆けていった。

そして着いた場所はネギ君の試験の場所でもあった世界樹広場の大階段…

そこにはそれぞれ黒衣を羽織っていてまだよくわからないが二人の人…らしい人物が立っていた。

 

「お前達は何者だ? この学園に無断で入ってくるとは…」

「………」

「………」

 

二人は黙りこくっていて余計奇妙さを醸し出している。

 

「…ねぇシロウ。あいつらなの? 変な気分にさせた奴らって…」

「いや、違う。今はそんなものは感じない…だが、やつらも油断できない相手だ。おそらく人外の類…」

 

そういった途端、二人は無言で動き出した。しかもいきなり人の皮を破り本来の姿なのだろう…

片方の背の高い奴は悪魔化したと同時に手に持っていた黒鍵のような黒塗りの細い剣が腕に取り込まれたがのように融合している。

そして、もう片方の拳銃を持っていた奴も悪魔化で銃身が大きく広がり大砲のようになっていた。

なるほど、どうにも解析できなかったのは体の一部というということが原因だったわけか。

 

「悪魔、か…しかし、」

 

―――投影開始(トレース・オン)

 

すぐに干将莫耶を握り姉さんもまだ自分用の杖ができていないのか小さい杖を取り出した。

 

「姉さんは援護を! 俺が奴らを足止めする!」

「わかったわ!」

 

俺が地を蹴って走り出したと同時に刃の腕を持つ悪魔が俺に飛び掛ってきてそれを同時に打ち合わし、後方担当の悪魔はそのでかい砲身から魔力弾を何度も放ってくるがそれを姉さんが魔法の射手(サギタ・マギカ)をその数を集束させてすべて防いでいる。

見れば砲身の悪魔は俺より姉さんを標的にしているようだ。

そして俺には剣持の悪魔…俺たちを分断させるつもりのようだ。

姉さんもそれがわかっているようで最大限に警戒をしている。

だが、この程度ならセイバー達サーヴァントに比べればまだ遅い方だ。

いって27祖には及ばない死徒クラスだろう。

 

「■■■■■■――――――――ッ!!」

 

と、突如剣を持っていた悪魔は人間にはわからない咆哮を上げた。

同時に俺へと叩きつけてきていた剣筋が格段に上がった。

それによって先ほどまでの機械的な動きに容赦がなくなりまるで暴走しているかのように我武者羅に剣を振り出した。

 

「っ!(なんて重い攻撃だ!)」

 

すぐに干将莫耶にひびが入り両方ともに砕けた。だが伊達に長年付き添ってきたわけではない。

もう俺の体の一部とも言えるすべての戦をともにした我が宝具。

工程などもう幾度も繰り返した…だからもう時間は一瞬、砕けてすぐに俺の手元には新たな干将莫耶を握られている。

そして迎撃を再度繰り返す。

砲撃の方も姉さんが担当していて押されている感じはまるでしない。

だが、なにかおかしい。

そう、仮にも相手は悪魔だ。この世界ではどうかは知らないが彼ら二人の攻撃は実に真っ直ぐすぎる。

悪魔とは人の恐怖の具現体…ならばそれ相応に相手の態度も悪に徹しなければいけないと以前に遠坂の講座で聞いた事がある。

ならば彼らの動きはなんだ? 戦い方は確かに力強くネギ君の過去のような勢いは確かにある。

だがそれでもどこか一歩遠慮しているような…そう、まるで俺と姉さんの力量を試しているような…。

それを思った途端、先ほどまで微塵も感じなかった不快感がまた俺を襲った。

俺は悪魔の剣を干将莫耶を交差させ受け止めて、即座に足に魔力を流し強化して脚力を増強し砲撃の悪魔めがけて回し蹴りを決めて姉さんのところまで後退した。

 

「ど、どうしたのシロウ?」

「奴等の動きがおかしい…まるで俺達を試しているような感じがする」

「そうね。でもシロウなら…」

「いや、おそらく彼らは本気ではない。なにか…縛られているような違和感がした。そして…先ほど急に不快感がまた俺を襲ってきた」

「えっ!?」

 

姉さんが驚きの声を上げた次の瞬間、二体の悪魔はまた咆哮を上げた。

だが、その叫びはどこか悲しいものを感じさせる。

見れば二体とも焦点があっていない目から血を流している。

そして俺たちに向けて僅かながら口を開き、

 

「…コロ……テ………」

「カ………リ、タイ…」

「「!?」」

 

僅かに悪魔から聞こえてきた言葉が俺達二人を震撼させた。

悪魔だというのに俺達人間に救いを求めてきたのだ。悪魔としてのプライドはあるだろうに、そこまでしてなぜ彼らは救いを求めてくる…?

だから周りの注意に疎かになっていた。

気づいた時には俺達の前に黒鍵が何本も飛来してきていた。

どうにかそれを干将莫耶で払い落とすことは出来たが悪魔二体はそれも叶わず黒鍵に貫かれていた。

しかし、俺の思考は貫かれた悪魔達より、飛来してきた黒鍵のほうに向かれていた。

そして頭がいきなり警戒を鳴らし始める。

不快感がいっそう高まる…そこで俺は、この不快感にはなぜか覚えがあると直感した。

気づいた時には貫かれて判別不可能な悲鳴を上げている二体の悪魔の後ろにさらにもう一体顔まで隠す黒衣の格好をした奴がいた。

そいつはゆっくりと悪魔達に刺さっている黒鍵を握ってさらにぐりぐりと捻じ込むように動かす。

それによって悪魔達はまた悲鳴を上げる。それはもう殺してくれといっているような、そんな叫び。

 

「い、いや…!」

「貴様、やめろ! 彼らは貴様の仲間ではないのか!?」

「仲間…? ふむ、私も確かに悪魔だが彼らを仲間と思ったことは一度もない…」

「な、に…? どういうことだ…」

「簡単なことだよ、衛宮士郎…」

 

俺の名をいったそいつの足元から突如として黒い泥のような沼が出現し串刺しのままの悪魔を泥に飲み込んでいく。

その泥を見て俺は、いや姉さんも目を疑っていた。

 

「彼らは私の魔力の糧なだけだ。友などという生ぬるい感情は持ちようなどあるまい?」

「なぜ、貴様がその泥を使える…?」

 

俺は思考がこんな時だというのに少しフリーズしている。

そしてそいつは嘲笑うかのように笑い出し、

 

「まだ気づかないか、衛宮士郎?…いや、気づかないふりをしているといった方が正しいかね?」

「なにを、言っている…? 貴様は何者だ…」

 

自分でも今の言葉に覇気がないことを自覚できる。それほどに今俺は動揺している。

 

「ならばもっと馴染みの言葉を言えば気がつくか? なぁ、エミヤの後継に聖杯の少女よ」

 

そいつはそんなことをのたまった。

 

 




さて、登場しました悪魔はダレデショウ……?

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