剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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更新します。



―――追記。

今、活動報告でこのかと刹那の仮契約のアーティファクトを考案中。
よかったら見に来てください。


046話 学園祭編・準備期間(02) 幽霊騒動と使い魔の契約

 

俺は今、非常に怒っている。今なら目の前にいる刹那と龍宮すら敵に回してもいいだろうと思う。

それはなぜかって?

その理由は時間を少し遡ることになる。

それはまた俺が教室で一人寂しそうにしている相坂と話をしていることだ。

今はHRで決まったお化け屋敷の件で話をしている。

 

『それでネギ先生、私が手を上げたら名前をいってくれたんですよ』

「そういえばあの時は本当なら相坂を抜けば5票のはずが6票になっていたな。ネギ君も気づいているのかもしれないな」

『はい、ただの気のせいだと思うんですけど…気づいてもらえたかもって思うと嬉しいんです』

「そうか。それはよかった…さて、またついて来るか? 一人じゃ寂しいだろう?」

『はい、是非!』

 

相坂はそういって俺にとり憑いた。

それから二人して歩いていると姉さんも帰りのようで一緒に寮に帰る事にした。

相坂は姉さんの帰り途中で拾ったランサーともなにやら楽しそうに会話していた。

俺と姉さんはその前を歩きながら、

 

「でも…シロウの眼もずいぶんと強力になってきたわね。私もシロウに言われるまでサヨの存在には気づかなかったわ」

「確かに…最近は強化をかけないでもずいぶん遠くを見えるようになってきたからな」

「でもサヨのことを見たら元の世界の協会の降霊科の連中は卒倒しそうね」

「そうだな。根源にいかずに世界に取り残されているからな…」

 

それで少し気が重くなったのでこの会話は終了させた。

 

「おい、士郎。この嬢ちゃん中々可愛いじゃねぇか。もし生きていたなら後十年はしたら相手にしてもいいくらいだぜ」

『はわわ…! 恥ずかしいですよランサーさん。私なんて地味で存在感も薄いですから…』

「いや、相坂は十分美形の部類に入ると思うぞ? 肌も白いしな」

『し、士郎先生…ありがとうございます』

 

そこで相坂はランサーに言われた以上に顔を赤くしていた。

はて? そこまで変なことをいっただろうか?

 

「おーおー、相変わらず無意識に女を褒めるのは得意だな。これが天然って奴か?」

「そうね。自覚していないからなお更に性質が悪いけどね…」

 

なぜかランサーはニヤニヤとしながら、姉さんは少しムッとしながら俺を見てきた。

ランサーはともかく姉さん、妙な魔力がにじみ出ているから抑えないか?

それでなぜか少し額に汗が出ていることに気づいたのでこれはいかんと回避行動を探そうと試みていると前から帰り途中なのだろうネギ君達が歩いてきた。

 

「あ、士郎さんにイリヤさんにランサーさん! 今帰りですか?」

「ああ、そうだ」

「それじゃ一緒に帰りましょうか」

「はい」

「それよりおい、ぼーず。修行ははかどってるか?」

「はい。コタロー君の方はどうですか?」

「あいつは中々筋がいいぜ。実力はまだまだだがそれでも将来はいい戦士になるぜ」

「ランサーさんが言うなら信憑性がありますね」

「そうやね、せっちゃん」

 

皆が楽しく会話しているところで相坂が俺に話しかけてきた。

だから俺も小声で話を聞いてやった。

 

「どうした相坂…?」

『はい、士郎先生達にも気づいてもらえたからもしかしたらネギ先生達にも気づいてもらえないかと思って…』

「そうか」

『はい。だから話しかけてみようかと思って…』

「そうだな。いい機会だから話しかけてみたらどうだ」

『はい!』

「士郎さん誰と話してんの?」

「ぬおっ! あ、朝倉か…驚かすな」

 

俺と相坂が小声で会話していたら朝倉がカメラを構えながら話しかけてきたのでとっさに相坂を隠すように前に出て会話を続けた。

すると「これはなにかあるな?」といった感じの好奇心の眼差しをしたのでヤバイと思いながらも落ち着いてなにもないぞと伝えておいた。

相坂は俺が朝倉の相手をしている間にネギ君達に話しかけているがどうもやはり気づいてもらえなかったらしくしょぼんとして、それから角に躓いてこけて泣いていた。

…それより幽霊ってこけるものなのか?

それでしょうがないなと思って今度は口の中で呪文を呟いて再度、姉さんとランサー以外に気づかれないように相坂を立たせてやった。

『ありがとうございます…士郎先生』と言われたので今度は気づかれないように口だけ動かして「気にするな」と答えておいた。

だけどそこでネギ君が相坂の泣き声に反応したのかどうかは分からないが一瞬相坂のいる場所に振り向いた。

 

「どうしたのよ、ネギ?」

「あ、いえ何でも…」

 

アスナが疑問の顔をしてネギ君に聞いているがネギ君も原因がわかっていないらしくきょろきょろと一回周りを見回した後、また普通に歩いていった。

それで希望が持てたのか相坂はなにか決意したような顔になっていた。

それを見ていた俺達は、

 

「なにか…嫌な予感がするが気のせいか?」

「いんや、これは何かしでかすかもしれねーな?」

「シロウ、乗りかかった船なんだし最後まで付き合ってあげるのよ?」

「わかった」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

…そして翌々日、嫌な予感は的中することになった。

相坂は昨日に勇気を出して学園祭準備のためクラスに残っていた皆の前に姿を出したらしいがいかんせん幽霊だから普通に考えてまともに掛け合いができるわけもなく写真も撮られて新聞に載ってしまっていた。

それで昨晩、教室にいた面々は騒ぎを起こしていてこちらに関わっている者達は、

 

綾瀬は、「あれは本物だと思います。なんというかリアリティーがありました…てっきりまたネギ先生絡みの事件かと…」

アスナは、「私もそう思ったけどね…」

このかは、「昔から出るって噂はあったんよ」

宮崎に至っては涙を流して頷くだけであり、

とうのネギ君も「幽霊は見た事がないので…」

と、言っていたので傍観していたがそろそろただ事ではなくなってきた事を俺は感じ取って対策を取ることにした。

だが、行動を起こす前に朝倉が俺に近寄ってきて、

 

「ねぇねぇ士郎さん…」

「なんだ朝倉…? その妙に暗い感じの顔は?」

「…いやね? 一昨日に士郎さんを撮った時にね、同じ写真が出てきちゃったんだ…それでなにか知ってるかなって」

 

まずい、これでは事を大きくしてしまう可能性がある。

なので無難に「知らん」と回避。朝倉がなにか疑惑の目を向けてきたがここは無視。

そしてその後、相坂を俺は冷静を装いながらも探すことにした。

 

……そうしているうちに日は落ちやっと相坂を見つけた時には新聞の記事の前で泣いていた。

誤解されたとはいえ不憫な…。

すると相坂は俺の存在に気づいて泣きついてきた。

 

『どうしましょう士郎先生! なんかすごい誤解されちゃいました!』

「う、うむ…これはさすがにまいったな。刺激するとさらに悪化する可能性が起きてくる。とりあえず相坂は俺にとり憑いていろ。なにかあったら守るから…」

『はいぃ…後迷惑かけます』

「気にするな…しかしなにやらウチのクラスが騒がしいな?少し…いやかなり嫌な予感がするが向かってみよう」

『はい…』

 

それで教室に向かってみると生徒達がなにやら胡散臭い…失礼、物騒な銃を構えていた。

そしてネギ君達もなにやら相坂の過去を調べたらしく話し合いをしている。

しかし、注目する点は何名かの持っている銃に書かれている『除霊』や『封神』といった生々しい言葉…。

それに少し眩暈を感じながらも、

 

「…君達は一体なにをしているのだね?」

「あ、士郎さん。ちょうどいいね。士郎さんがいれば百人力だよ」

「朝倉、これは一体なにをしようとしている…?」

「まぁまぁ、すぐにわかりますって。それじゃうちの秘密兵器を投入するよ。宮崎!」

「は、はい!」

 

なぜ宮崎が秘密兵器なのだろうか? そう思い俺は宮崎の方へと向いた。途端、血の気が引いた。

宮崎がなにをしようとしているのかは分からんが人の心を読むアーティファクトを出している。

これは…やばい!

そう思った時には、遅かった。

 

「相坂さん…あなたが出てきた目的はなんですか?」

 

反応してはいけない! とも言えず相坂は宮崎の言葉に反応してしまった。

そして案の定、宮崎の日記には断片的な言葉しか映らず写真のように悪霊っぽく絵が映ってしまっていた。

宮崎はそれですぐに「この人は悪霊です!」と叫んでしまい事態がさらに悪化した。

 

「くっ! 相坂、逃げるぞ!」

 

俺は混乱の声があちらこちらから響く中、小声で話しかけたが混乱してしまっていて俗に言うポルターガイスト現象を起こしてしまっていた。

やばいやばいやばい!!

もうこの際周りは混乱しているのだから錬鉄魔法を使い無理にでもここから連れ出そうと試みようとしたが、

 

除霊銃(じょれいガン)発射(ファイア)―――ッ!!」

 

誰の命令かも知れない大声が上がりそれは俺の前でなぜか放心状態になっている明石に放たれ俺はとっさに明石を守り直撃を受けてしまった。

 

「がっ、ぐっ……」

 

なんて威力、だ…物理攻撃力も入っていたのか?

意識が朦朧とする中、相坂に目で逃げろ! といって俺は地面に倒れた。

このかやネギ君達があわてて駆け寄ってくるがここで気絶するわけにはいかない。

だから即座に俺は鞘に魔力を流して回復を試みる。

その間にもカモミールに依頼を受けたらしい龍宮と刹那が相坂を追っていく光景が見えて……なぜかそこで俺の中でなにかが外れる音がした。

 

属性、付加(エレメントシール)“風王”(エア) ……魔力、装填(トリガー・オフ)――全魔力装填完了(セット)……」

「え!?」

「士郎さん!?」

 

クラス中が混乱している中、俺の行動を気づいたものは駆け寄ってきたネギ君、アスナ、このか、朝倉、ほか関係者数名…遠見でエヴァに茶々丸。

それならば遠慮はいらないだろう…。なぁ、衛宮士郎?

心の中でささやき声が聞こえてくる。

相坂は俺が守るといったのだ。ならば責任を持って守ってやろうではないか。

工程を速やかに済ませていき風属性の魔剣を身に纏う。

そして俺は何もなかったかのように立ち上がり自分でも分かるくらいの暗い声で、

 

「彼女は悪霊などではない…寂しがりやでただ友達が欲しいだけの善良なこの3-Aのクラスメートだ…それだけは伝えておく」

 

…そう、それだけ伝えれば十分だろう。俺は風の属性効果である魔力放出と瞬動を併用し一瞬で教室から飛び出して刹那達が追っていった場所に向かった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side ネギ・スプリングフィールド

 

 

士郎さんは怒りを顕わにしながらそれだけ伝えるとまるで風が吹いたかのように一瞬で教室から姿を消していた。

やっぱり、さっきの日記内の『友達』っていうのはそういうことだったんだ!

僕ももっと早く気づいていれば…!

そこに師匠(マスター)が話しかけてきた。

 

「…士郎の奴はここに来た時からすぐにアイツの存在に気づいて暇さえあれば話し相手になってやっていたんだよ。アイツは今まで誰にも気づいてもらえずにずっと独りだったからな。お人好しの士郎の奴はそれが放っておけなかったんだろうな?」

「そんな…! 今までそんな話一度も…」

「話せるわけないだろう? ただでさえ幽霊なんて存在は珍しいものだからな。オカルトなどの話題に使われるのが目に見えている」

 

師匠(マスター)はそういってため息をついた。

 

「あかん! せっちゃん達をすぐに止めな!」

「ネギ君! いくよ!」

「朝倉さん…! はい!」

「一つだけ伝えておこう。今の士郎は少し感情が不安定だ…どうにかしろよ? あの二人が消される前に…」

 

不安要素全開の言葉を残して師匠(マスター)はまた教室の端の椅子に座っていた。

でも、それだとお二人が本当に危ない!

僕は朝倉さんと一緒に教室を飛び出した。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

頭の中がすべてクリアになっていっている。

ただ一点に“相坂を助けろ!”という信号だけがチカチカと光っている。

今の脚力なら二人を追い抜くことは苦ではないだろう。

見えた…!

相坂はもうすでに追い詰められていて逃げ場を失っている。

ならば二人よりも早く、速く、疾く…!

そして俺は相坂の前に姿を置いた。

それに刹那と龍宮は驚いた表情をしていたが今は思考外だ。

すぐに錬鉄魔法【風】を解いていつも相坂用に使っている錬鉄魔法【霊】に変換して体に纏い、泣いている相坂の頭を撫でてやった。

それで落ち着いたのかどうかは定かではないが泣き止んだので、俺は思考外に外していた二人を睨んだ。

 

「さて…どうしてこういう事態になったのかはこの際どうでもいいがクラスメートを殺そうとするのはよくないぞ?」

 

即座に投影できるように右腕を中空に上げた。

しかしどうにも感情が制御できていない。このままこの黒い感情に身を任してしまったら俺は…どうなってしまうのか?

暴走寸前での感情に歯止めがきかない! この、ままでは…

だが、そこで俺の体から力が一気に抜けた。

正確には魔力をごっそりと吸われたような感じだ。最低限無くなっている。

一応助かったがそんな事ができるのは恐らく一人…

 

「…まったく、シロウったら人の命が消えるかもしれない事態になったらすぐに飛び出す癖はどうにかしなさい!」

「そうだぜ。感情を制御できなけりゃ戦場では即死が待ってるからよ」

「姉さん…それにランサー。すまない…」

 

どうやら俺の異常を察知したらしく二人は来てくれたらしい。感謝しなければいけないな。

そして俺はうつぶせに倒れながらも殺気を向けてしまった刹那達にも謝罪した。

それに刹那と龍宮も「いえ」といっていた。龍宮はどうかは知らないが刹那は少し後悔気味だったので後でもう一度謝っておこう。

そしてそこにネギ君達がやってきて状況がわかっていないがとりあえず落ち着いたことを確認して相坂にネギ君と朝倉は友達の件で「僕(私)でよければ」と言って話は丸く収まった。

 

そして俺の方はもう暴走しないことを確認したらしく姉さんが魔力を戻してくれた。

それで立ち上がり関係者の皆にはすまないと謝り、それで気まずい雰囲気もなくなって一日は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

…余談だがそれ以降さらに俺は相坂に気に入られて取り憑いて寮まで来るようになった。

ランサーと会話するあたりの光景を見てなんかサーヴァントっぽくなってきたな。

それを話すとランサーは納得して、姉さんは後で内容は知らないが相坂に試したい事があるとか言っていた。

それでなにをするのか聞いてみると、

 

「サヨをシロウの使い魔にするわ」

「え゛…?」

『使い魔、ですか…?』

「そうよ、サヨ。それならもう一々シロウに取り憑くこともないし…いえ、使い魔だから同じようなものね。とにかく場所に限定されないで動けるようになるわ」

『わぁ、それは嬉しいです…』

 

姉さんはそう言いながらも場所を俺の工房に移して魔法陣を描いていた。

しかし媒体となるものはどうするのだろうか?まさか前の世界で出会った死神の使い魔である猫のように動物の死骸を使うわけもいかない。

それを伝えると、

 

「そうね…エヴァの人形を使わせてもらうのはどう?」

「あの真祖のお嬢ちゃんが素直に渡すとも限らねぇぜ?」

「ランサーの言う通りね。それじゃとりあえず今はまだ実体化は後に伸ばして手っ取り早くパスだけでも繋いじゃおっか? 幸いシロウはサヨに触れるんだから私が共感魔術を執行するからレイラインが繋がるまで抱き合ってなさい」

「え…えっと、それは~…」

「………(……体は剣で出来ている、体は剣で出来ている、体は剣で出来ている……)」

 

相坂は声がしどろもどろになりながら顔を赤くしている。

俺も目を瞑って平然を装いながらも心の中では世界に繋がる呪文を呪詛のように唱え続けていた。

 

「…ごめんなさい。変な意味に聞こえたわね。ただ肌を触れ合っているだけでいいから」

 

それを聞いて安心したからまだ顔が赤い相坂と手を合わせて指定された魔法陣の上に立った。

…しばらくして相坂との間に俺の回路が繋がっていく感じがして姉さんが「終わったわよ」といった時には相坂とパスが繋がっていた。

別に一般の魔術師のように使いをさせるつもりはないが念話が出来るのは便利だな。

相坂もなにか体が軽くなったといっていたので自縛霊の呪いから開放されたのだろう。

その後、相坂は嬉しそうな顔をしながら空を浮遊していた。

 

「でもよかったわ。サヨの魂が根源に帰っていなかったから魂が一段階上に昇華していたから今回は成功したものだしね」

『根源、とか昇華、とか意味はよくわかりませんけどありがとうございます…!』

 

こうして相坂はまだ今までのように霊体のままだが俺の正式な使い魔となった。

 

 

 




さよちん、士郎の使い魔になる。
学祭が終わったら色々と手を尽くしたいですね。

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