剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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053話 文化祭編・開催1日目(03) 錬鉄魔法専用武器完成

 

 

武道大会も終わりそれから俺はエヴァに許可を取り別荘に来ていた。

ネギ君達も来るそうなので一緒にいくことになった。

その際、小太郎は「別荘ってなんや?」と言ったのでおおまかに説明をしてやったらなぜかネギ君に「ずリーぞ!」とか吠えていた。

そこで皆が別荘の下の浜辺で中夜祭で取れなかった睡眠をとった後、訓練や遊びをしている中、俺はなにを思ったのか自身の新しい武器を創作するために鍛冶場に入っていた。

今は炉に火も入れていないので室内温度はそれほどでもなく姉さんやランサーも一緒にその場にいた。

 

「こんなときに自分の新しい武器を作るなんてよくやるわな」

「まぁそういうな。これでも結構深刻な問題なんだ。錬鉄魔法を使用するときにどうしても同じ投影武器は相対して瓦解してしまう。

だからそれに耐えうるものを作らなければいけない…武器のベースは当然干将・莫耶だ。これはいわば俺の体の一部といっても過言ではない。

そしてそのままのスペックを維持させながらさらに手を加えていきたい。そこで姉さんとランサーになにか助言をもらいたいのだがどうだろう?」

「シロウの理想スタイルは錬鉄魔法を執行しながらも投影武器を同時に使いたいってところよね…難しいわね」

 

さすがの姉さんも今回は少しお手上げ気味のようだ。

 

「投影する武器になにかしら守りの概念を埋め込んでみたらどうだ? 錬鉄魔法に耐えうるほどの神秘のこもったもんをよ」

「確かに…錬鉄魔法はさしてランクの高いものを体に取り込むわけではないから、神秘はより強い神秘で押さえ込んでしまえばいいってことか」

「そーいうこった」

「でも、守りの概念を干将莫耶に埋め込むって言っても相当のものよ。

シロウの最強を誇る守りは『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』だけど変化させて同化させるとなるとリスクが高すぎるわ。

ものが剣と盾じゃ相性が悪すぎるわ」

「しかしそうなると熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)以外にはあまり俺の剣の丘には守りの概念武装は少ないぞ」

「そうねぇ~………あ。ねぇ、ただ守りの概念があればいいんでしょ?」

「あ、ああ…そうだな」

「あるじゃない。熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)を越える最強の防御を誇る概念武装が」

「マスター、さすがにそんなもんねーだろ?」

「いえ、あるわ。ランサーが知らないのはしょうがないとしてシロウはとても重大なものを見逃しているわ。しかもそれは剣ととても相性が抜群な」

「まさかとは思うが…」

 

姉さんがなにを言いたいのか分かった気がする。

確かに最高の概念武装だ。

これを干将・莫耶に同化させれれば凄まじい物ができるぞ。

 

「そう。私達の体にも埋め込まれている世界最高とも言える聖剣の鞘…『全て遠き理想郷(アヴァロン)』よ。

これは結界宝具としては最強といってもいい代物だわ。なんせ私達の世界の五つの魔法すら寄せ付けないものなんだから。これの概念を組み込めば高ランクの錬鉄魔法の反発すらもきっと防げるはずよ」

「なんかそれだけ聞いてっともう魔改造じみてきたな? ま、とりあえず試してみたらどうだ、士郎?」

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

俺は目をつぶり自身の心象世界に意識を沈めていった。

そして剣の丘に立ち、黄金の太陽が照らしどこまでも広がる赤い荒野を見回して干将・莫耶と全て遠き理想郷(アヴァロン)を見つけて自身の前に呼び出す。

この世界では自身がすべて。理などあてはまらない。ゆえに不可能なことではない。ならばやってやろうではないか。

 

 

―――同調開始(トレース・オン)

 

「――――基本骨子、解明、分解」

「――――構成材質、解明、分解」

 

―――変化開始(トレース・オン)

 

それら二つの宝具に神経を集中させ、それらは光を放ちゆっくりと形を崩していく。

それからさらに、

 

「――――基本骨子、接続開始」

「――――構成材質、接続開始」

「――――制作技術、接続開始」

「――――成長経験、接続開始」

「――――蓄積年月、接続開始」

 

…よし、うまく二つの異なる工程を接続するところまでは成功。二つの光が線を結び始めた。

ここからが正念場か。

 

 

――――全工程、接続開始……エラー。異なる宝具の拒絶反応発生。

再接続開始。再度エラー。

エラー部分を補強、強化し足りない部分を埋めることに成功。このまま接続続行。

拒絶反応増大。宝具、『干将・莫耶』が『全て遠き理想郷(アヴァロン)』に押しつぶされる可能性アリ。

『干将・莫耶』の存在維持を第一優先に継続。

全て遠き理想郷(アヴァロン)』を魔力の塊に変換。それを『干将・莫耶』に流し込む作業開始。

膨大な情報量により『干将・莫耶』の欠損を確認。決壊の可能性アリ。

補強、補強、補強、補強、補強、補強、補強、補強、補強、補強。

十度の補強により欠損部分、修復完了。

強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化、強化。

さらに十度の強化により存在強度を上昇。

流し込み作業再開。『全て遠き理想郷(アヴァロン)』のすべての情報を『干将・莫耶』に上書き完了まで残り時間―――……

二つの宝具の適合を確認。融合作業に移行。

融合に成功。現在飽和状態にありすぐに形を成さなければ危険。

形状を『干将・莫耶』をベースに再構築。

再構築完了。

 

 

 

宝具情報

宝具名  :干将・莫耶 ver.全て遠き理想郷(アヴァロン)

ランク   :C-→Bに上昇。

種別    :対人宝具

 

 

・ 夫婦剣の引き合う効果、継承完了。

・ 詠唱によるオーバーエッジ化、継承完了。

・ 従来の対魔力・対物理上昇機能、継承完了。効果増大。

・ 全工程、継承完了。

・ 追加効果1、風王結界(インビシブル・エア)及び風王鉄槌(ストライク・エア)が使用可能。

・ 追加効果2、副産物で治癒能力追加。

・ 追加効果3、錬鉄魔法に耐えうる強度を確保。

 

 

――――新たな宝具と確認。剣の丘に登録完了。

 

 

 

 

 

「――――全工程、投影完了(トレース・オフ)

 

武装が完成したことにより俺は心象世界から意識を浮上させてその手に新たな干将・莫耶を握った。

それからは今までと違って力強さがみなぎってきている。

 

「出来、たな…」

「わわっ! シロウ!」

 

俺はそう言うと体から力が抜けて倒れこもうとしていたがそこでランサーに助けられた。

 

「すまないランサー…」

「いや、気にすんな。それよりマジで新しいものを作っちまったから驚いたぜ! これならアイツを越すことも出来るんじゃねーか?」

「いやいや、まだこれくらいで追いつけたら苦労はしない。それよりとにかく完成したからよかったな」

「それでどういったものができたの?」

 

姉さんが目をキラキラとさせて聞いてきたので俺は先ほど出来たばかりの新しい干将・莫耶を渡した。

そしてその魔力内包量に姉さんは驚いた。

それから先ほど解析して分かった新たな能力を説明した。

 

「不可視能力もついたの…? それじゃ錬鉄魔法【風】を使用して魔力放出も使ったらまるでセイバーみたいじゃない?」

「セイバーには及ばない…アレは彼女だからできた攻撃方法だ」

「それよりおい、俺と一勝負しねーか? 大会前の慣らし運転も大事だろ?」

 

ランサーは新しい玩具でも見つけたかのような表情で俺に詰め寄ってきた。

しかもまさに獣といった目をしていたので冷や汗を一滴流した。

とにかく俺達は鍛冶場から出て皆がいる場所に向かうとそこではネギ君と小太郎が特訓をしていてアスナ達はそれを見学していた。

俺は一声かけてネギ君達に場所を譲ってもらいランサーと対峙した。

ランサーは普段着から鎧姿に服装を変えてゲイボルクを構えた。

さて、始めようとしたときに水着姿のエヴァが近寄ってきて、

 

「…なんだお前ら? ランサーはともかく士郎、お前は武道大会の前に体力を消耗させるつもりか?」

「エヴァか。いや、錬鉄魔法に耐えうる武装が出来たんでランサーに慣らし運転を手伝ってもらうことにした」

「ほぅ…それは面白いな。いいものが見れるかもしれん。ぼーや達もよく見ておけ。いい勉強になるぞ?」

 

あまり面白いものでもないのだがな。

とりあえず新しい干将・莫耶を投影して錬鉄魔法【風】をまとって準備を完了させた。

ランサーも気づいたのか戦闘体勢に入った。

そしてやはりランサーが先に動いた。

俺もそれにすぐに反応して地を蹴った。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮イリヤ

 

 

最初は準備運動だけだといったけど…もう二人とも真剣になっちゃっているわね。

それもそっか。シロウはともかくランサーは殺す、殺さないでいえば限りなく殺す戦いをしているから。

二人はもうそれは人ならざるスピードで剣戟を繰り返している。

 

「はっ! おもしれーじゃねーか! あの夜以上の動きしてるぜ!?」

「だがまだまだ干将・莫耶と錬鉄魔法との連動率が荒いし基本骨子の想定もまだ甘い。もっと研鑽をつむべきだな…」

「そーいうな! 俺の急所を狙った突きをことごとく砕けず防いでいるその武器は今までのより遥かに出来はいいぜ! そらよ!」

「お前に褒められるとは光栄だな…はっ!」

 

…もうシロウはアーチャーを越えているのかもしれない。

英霊エミヤはもとの世界で成ったシロウの果ての姿。

それに反して今のシロウはもうこの世界に馴染みつつある。私もそうだけど。

抑止力も存在しないこの世界ではシロウは守護者になることもきっとない。

だから後は私達がシロウを独りにしないよう心がけなきゃ…。

最果ての丘の上なんかに行かせないんだから!

 

「…おいイリヤ。物思いに耽っているのもいいがそろそろあいつら二人を止めろ…。剣戟音がやかましくてたまらん」

「俺モ参加シテイイカ…?」

「はわー…まったく見えへん。士郎さん達ほんまにすごいな、せっちゃん」

「そうですねお嬢様。私もおぼろげでしか見えません。まだまだ精進が足りませんね…」

「ホントすごいわねー…士郎さんにランサーさん」

「やっぱり士郎さんと最初に当たらなくてよかったかも…」

「なに言うとるんや、ネギ! 士郎の兄ちゃん達は今の俺の目指す道の一つやからむしろ当たった方がよかったで!?」

「目指す目指さない云々はいいとして…あの二人ホントに人間か…? あ、ランサーの旦那は英霊か。しかしそれとタメはる士郎の旦那がおかしいのか?」

 

そろそろ周りも騒がしくなってきたので私は二人を無理やり止めていったん終了させた。

…その時のランサーの恨みのこもった眼差しは後味が悪いからすぐに忘れることにしよう。

それとネギ、私はエヴァからある指輪をもらった。(ちなみにコノカとシロウもその後にもらったという)。

なんでも杖を使わなくてもこれがあれば魔法が発動するという優れものらしい。

……あ、そういえばまだ私専用の杖がなかったわね? 学園祭が終わったらシロウに作ってもらおう。

そしてそれから別荘での一日を有意義に過ごさせてもらった私達は二日目の学園祭へと足を運んだ。

 

 

 




干将・莫耶がパワーアップしました。

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