剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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061話 文化祭編・開催2日目(08) 衛宮家族

 

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

さて、出てきたはいいもののこれからどうするか?

そういえば姉さんが早乙女に魔法がばれたらしいことを聞いていたんだったな。

合流しようとも思うがどこにいるのか聞いていない。

迷ったな。

 

「シロー、どこー?」

「ん? 姉さんか?」

「え?」

 

だがそこにいたのは小さい姿の姉さんだった。

魔法薬で小さくなっているのか?

しかし、

 

「あの、あなたは誰?」

「は? えっと、俺の名は衛宮士郎というものだが…」

「え!? そうなの?」

「あ、ああ…」

 

小さい姉さんはなにか考え込んでしまった。

 

「そうなんだ。お兄ちゃんの名前も衛宮士郎っていうんだ。私の弟も同じ衛宮士郎っていうんだよ。偶然だね」

「そ、そうか(もしかしてこちらの世界の姉さんなのか?)」

「私の名前はイリヤスフィール・フォン・E(エミヤ)・アインツベルンっていうの。さっき姉さんっていっていたけどお兄ちゃんのお姉ちゃんももしかして?」

「あ、ああ。名を衛宮イリヤという」

「そうなんだー。こんな偶然もあるんだね!」

「そうだな。ところで君は弟を探しているのかね」

「うん」

「これもなにかの縁だ。俺も探すのを手伝おう。これでもここ麻帆良の教師だからな」

「いいの?」

「ああ」

「ありがとー、お兄ちゃん!」

 

お兄ちゃん、か。懐かしい響きだな。

 

「ではその弟の特徴を教えてくれないか?(まぁ大体予想はつくがな)」

「うん。赤毛の髪をした男の子なんだよ。後、目も私と同じで赤いよ」

「(やはり)そうか。では探すとしようか。その…」

「イリヤでいいよお兄ちゃん」

「そうか。ではいこうとしようイリヤ」

「うん!」

 

どう探すか検討しているとイリヤが私に話しかけてきた。

 

「今日はね、お父様とお母様とシロウの四人で遊びに来ていたんだけどシロウが勝手にどっかいっちゃったの」

「そうか。しかしそれではイリヤはどうして一人でいたんだ? もしかして君も迷子なのか」

「いいえ、ちゃんと近くにお母様達は待っていてくれてるわ。私が探しにいくってダダをこねたの」

「ならばすぐに見つけて安心させてあげねばな」

「うん、そうだね」

 

この世界では親父は生きていて前に聞いたイリヤの母、アイリスフィール・フォン・アインツベルンも存命。

そしてこの世界の俺は目も同じ色ということから実の兄弟。

羨ましい事だな。

実の親子になっているのか。

 

「でもこう人だかりが多いと探しづらいね」

「ならば肩車をしてやろうか」

「いいの!? それじゃしてしてー!」

「よし」

 

無邪気なものだな。こういうのも新鮮味があっていいものだな。

そう思いながらもイリヤを肩車させてあげる。

 

「わぁー、すごい高いね。よく見渡せるわ」

「それはよかった」

 

そうしてしばらく肩車をしながら探していると、

 

「あー! 見つけた!」

「どこだ?」

「あっちよ!」

「よし、では少し早く動くがいいか?」

「ええ、お願いするね、お兄ちゃん」

「任された」

 

イリヤの指差したほうへと俺は向かっていった。

すると、

 

「イリ姉…どこにいるんだよ」

 

思ったとおり昔の俺が少し愚図りながら迷子になっていた。

 

「シロー!」

「! イリ姉!」

「もうどこに行っていたのよお父様達が心配しているから早く戻りましょう」

「ああ、わかった。………ところで兄ちゃん誰だ? イリ姉を肩車しているけどなんでだ?」

「ああ、そうだったな。それでは降ろすぞ」

「えー? もっと乗っていたかったんだけどなぁ~」

「わがまま言っちゃだめだろ、イリ姉」

「ぶー…ま、いいや。ありがとねお兄ちゃん!」

「ああ」

「むー…」

 

ん? どうやら小さい俺がむくれているな。どうしたのだろうか?

 

「兄ちゃん、イリ姉とどんな関係だ? もしかして隙を見て誘拐とかしないだろうな」

「なんでさ?」

「違うわよシロー。お兄ちゃんは名前がシローと同じということでこれも縁ということでシローを探すのを手伝ってくれたのよ」

「そうなのか!?」

「ああ、俺の名前は衛宮士郎だ」

「お、俺も衛宮士郎だ…」

「クッ…同姓同名だな」

 

フッ…なにやらアーチャーの気持ちがわかるかもしれない。

これはなかなかに愉快だ。

 

「…あれ? お兄ちゃんなんか雰囲気変わった?」

「いや、そんなことないさイリヤ。それより早く君達の親のところまで行くとしようか。それまで一緒についていこう」

「ありがと、お兄ちゃん」

「なんか兄ちゃん…俺に対する視線がイリ姉と違いすぎないか?」

「そうか? 俺は常に平等のつもりなのだがね」

「うーん…なんていうか俺をバカにした様な態度のような…」

「気のせいだ。さ、馬鹿やっていないでいくぞ」

「うん♪」

「お、おう(なんだろうな。なぜか気に入らない…)」

 

クククッ…やはり同属嫌悪を感じているようだな。

俺は別に平気だがこいつは初めてのことで整理がついていないだろうよ。

 

「…なんか二人とも表情が変だよ?」

「「そんなことはない…む?」」

「あはは♪ なんかそうしていると兄弟みたいね」

「俺がこの小僧と? ありえないな」

「そうだぜイリ姉! 誰がこいつなんかと!」

「ほう…年上に対してその態度とはいただけないな?」

「あんたこそ年下には優しくしろよ!」

 

売り言葉に買い言葉とはこのことを言うのだろう。ただ違うとすれば俺は遊んでいるような感じだが。

そんなことを繰り返しているうちに目的地に着いた。

そこにいたのは黒いコートを着ているボサボサの髪の男性…衛宮切嗣。そしてこの姉さんに似た人物こそが俺達の世界ではホムンクルスだったという母親のアイリスフィール・フォン・アインツベルン。

 

「もー、どこまでいっていたのかしら、イリヤちゃんにシロー」

「そうだぞ。あんまりアイリと僕に心配をかけさせないでくれ」

「「はーい…」」

 

フッ、やはり親の前では素直か。

平行世界ではこうまで環境が違えばこうして普通に過ごしていけるのだからいいものだな。

 

「あの…あなたは?」

「ああ、申し遅れてすみません。私の名は衛宮士郎、この麻帆良学園の教師です」

「まぁ! シローと同じ名前なんですか!」

「はい。先ほどイリ…お子さんが弟を探しているというので折角ですから手伝っていただけですよ」

「そうですか、ありがとうございます。私の名前はアイリスフィール・フォン・E・アインツベルンです」

「僕の名は衛宮切嗣だよ。イリヤと士郎を守ってくれてありがとう。………時にお伺いするがもしかして君はあの噂に聞く“鍛冶師エミヤ”かな? 士郎君」

「ッ!? それを知っているということは…」

「ああ。僕達は魔法使いだよ」

「そうですか」

 

やはり魔法と関わりがあったということか。

魔法使いと魔術師の違いがあるだけで平行世界であってもやはりそう違いはないようだ。

 

「それに今日の君の試合を見させてもらったけどなかなかどうして、強いようだね」

「いえいえ、まだまだですよ」

「謙遜だな。まぁいいかな」

 

ハッハッハッ!と笑う切嗣。

やはり油断ならないようだな。

そんな時だった。

 

《シロウ? 今どこにいるの?》

《イリ、…ではなく姉さんか?》

《そうよ。それでどうしたの? 一向にこっちにこないようだから心配しているのよ》

《どこにいるかくらい教えといてくれ…それより今はなかなかに面白い目にあっているんだ》

《居場所といえば今はシロウの魔力を追っているところよ。コノカ達とは別れたから。それより面白いことって?》

《なに、平行世界の悪戯だよ。今俺の目の前には小さい俺と姉さん、それに親父に姉さんの母親だというアイリさんがいる》

《えーーーーーーーーーッ!?》

《会うのなら今しかないから来るなら早く来たほうがいいと思うぞ》

《うん、うん! すぐにいくからまだ別れないでね!!》

《ああ》

 

それで急いでいるのか姉さんからの念話は終了した。

 

「誰かと念話していたのかい?」

「ええ。よく分かりましたね」

「まぁね」

「ねぇねぇお兄ちゃん! もしかしてそれって私と同じ名前のお兄ちゃんのお姉ちゃん!?」

「あ、ああ、そうだよ。もうすぐしたら来るそうだ」

「そっかー。なんか会うの楽しみ♪」

「士郎君、もしかして君の姉の名前はイリヤなのかい?」

「はい。多分もう少しで―――………」

「シロウーーー!!」

「来たようです」

 

姉さんは息を切らせながらやってきた。

そしてその表情は少し緊張の色が出ているがそれ以上に嬉しさのほうが上回っているようだった。

 

「はぁ、はぁ…やっと見つけたわよシロウ」

「君が士郎君の姉のイリヤちゃんかな?」

「あっ…キリ…ぅ、えっと、はい」

「まぁ! 本当にイリヤそっくりね! ね、イリヤ」

「うん、お母様!」

「すげぇ…イリ姉にそっくりだ」

「う…」

 

衛宮家族に少し押され気味の姉さんの姿がそこにあった。

 

「世界に似た人が何人かいるという話は聞くけどここまでそっくりだとまるで偶然じゃないみたいね」

「そ、そうですね…」

「姉さん、大丈夫か…?」

「だ…大丈夫よ、シロウ」

「でもお姉ちゃん、涙目になってるぞ?」

「こらシロウ! イリヤお姉ちゃんに失礼でしょ?」

「もうシロウは…それよりイリヤさん、大丈夫?」

「は、い…その、アイリさんが死んだお母様にそっくりで…つい…」

「そう…」

 

よく耐えているようだが涙目で見ていられないな。

そこでなにか気の効いたことを事を言おうとしたら、

 

「アイリ、イリヤちゃんの頭を撫でてやったらどうだ? もちろんイリヤちゃんが嫌じゃなければだがね」

「いいかしら、イリヤさん? なぜか私もあなたの事を放っておけないのよ」

「はい、大丈夫、です…」

「それじゃ…」

 

それでアイリさんは姉さんの頭をまるで自分の子供のようになで始めた。

それにされるがままだった姉さんの目には涙が零れていた。

 

「ちょっと、いいかな? 士郎君」

「あ、はい」

「どっかいくのか、親父?」

「ああ、ちょっと士郎君に聞きたいことがあるんだ。少し待っていてくれ」

「わかった」

 

それであまり人が来ないところまでいくと切嗣は話を切り出した。

 

「さて、士郎君」

「何でしょうか?」

「少し話す前に僕の知り合いにね、性は遠坂っていうんだけどね」

「!?」

「その顔だと…いや、今はいいか。それでね、表向きは宝石商をしているが裏の顔ではやはり魔法使いで、それにある魔法の研究をしているんだ」

「その研究とは…?」

「平行世界の移動…という大それたことさ。そんな魔法はこの世界には存在していないからいつか完成させるんだと息巻いている」

「そ、そうですか…」

「変な話をしたね。それで本題だけど、もしそんな魔法を使える人物がいてそれを受けた者がいたとしたら、どうだろうね?」

「なにを、いいたい……?」

「簡単なことさ。実験に付き合ってもらうに決まっているじゃないか」

 

笑顔を浮かべながらも恐ろしいことをさらっと衛宮切嗣は言った。

 

「ッ!!」

 

気づいたときには投影をする一歩手前の状態で俺は切嗣の首に手をかけていた。

だが切嗣は動じた風もなくさっきまでしていた薄気味悪い表情を解き、優しい顔になった。

 

「かまをかけてみたが、思った以上の効果があったみたいだね。大丈夫、そんな人を売ることはしないさ“士郎”」

「あっ…!」

「最初はただの偶然だと思った。しかしイリヤまで現れたとあっては偶然で済ますにしては些かおかしい。

それで友人の研究のことを思い出した。それでもしかしたらと思ってね…大丈夫。アイリ達はこの事を知らない」

「切、嗣…」

「確信したから言わせてもらうよ。君とイリヤちゃんは平行世界の僕らの子供だね?」

「あなたはたいした人だよ。ああ、正確には俺は養子だったが…確かにそうだった」

「そうか…やっぱりね。どうしてこの世界に来た、とかは聞いちゃいけないのかな?」

「できれば…」

「分かった。これ以上は何も聞かないよ。…しかし将来士郎はこんな好青年になるのか」

「安心してくれ。この褐色の肌と白髪はある魔法の副作用だ。だからあの小僧はなる心配はないだろう」

「そうか。それじゃそろそろ戻ろうか。アイリ達が待っているから」

「待ってくれ…」

「ん? なんだい士郎?」

「もうばれてしまったのだから言わせてもらう。たとえ平行世界とはいえ会えて嬉しかったよ………“親父”。」

「それはよかった」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

それから他人の振りをしながらも俺達は別れた。

その代わり連絡先やらを貰えたのはよかったと思っている。

 

「ねぇシロウ、キリツグとの会話、少し聞いちゃった…」

「そうか」

 

姉さんが俺の肩にもたれかかりながらそう言ってきた。

 

「私たちのキリツグもちゃんと私達の事を考えてくれていたかな…?」

「きっと考えてくれていたさ」

「そうだね…」

 

―――そうだぜ。

 

「「!?」」

 

気づくと背後には屋台のものを食べているランサーが立っていた。

 

「よっ」

「よっ、じゃないわよ! いつからいたのランサー!?」

「おいおい、ひでぇなマスター。離れてはいたが近くにいたぜ。ま、店にいたから分かんなかっただろうが…。

ところで言わせてもらうが子を大事に思わない親なんていねぇと思うぜ?」

「わかっているわよ…」

「しっかしこっちの世界の士郎達か。あのアーチャーのマスターのお嬢ちゃんには感謝しなきゃな!」

「そうだな。ラインをこの世界に繋いでもらわなければ俺達は何かしら世界の修正を受けていただろうからな」

「ランサーもそうね」

「なんでだ?」

「なんで、ってコトミネがこの世界に来たのはリンのうっかりが原因なんだから」

「あー…確かにそうだな。でもなきゃ今頃まだあの野郎の手足として使われていただろうからな」

「そういうことよ」

 

ピリリリッ!

 

その時仕事用の携帯がなりだしたので出てみるとガンドルフィーニ先生であった。

 

『衛宮か?』

「ええ、どうかしましたか?」

『ちょっと会議がある。もちろん超鈴音についてのことだ』

「そうですか…」

『そうだ。だから今から指定した場所に来てくれ』

「了解しました」

『それと他に誰かいるか?』

「ええ。今いっしょに姉さんとランサーがいますので一緒に連れて行きます」

『わかった。では場所は学園長室だ、早めに来るようにな』

 

ガンドルフィーニ先生から場所を聞いて電話を切った。

 

「どうしたのシロウ? 仕事?」

「ああ。超についてのことらしい。今から向かおう」

「わかったわ。私もリンシェンについて気になっていたから」

「俺もかー…ま、いいだろう」

 

 

 




並行世界の悪戯です。

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