剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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064話 文化祭編・一つの未来(02) 僅かな希望

Side 近衛木乃香

 

 

みんなと別荘を出て一度別れた後、なにかパクティオーカードが反応したように感じた。

せっちゃんに聞いてみたらせっちゃんも同様になにかを感じたらしい。

それで胸騒ぎがした。

 

「せっちゃん…ウチ、なんか嫌な予感がするんや」

「お嬢様もですか…。はい、私もです。そして先ほどから士郎さんに語りかけているのに一行に反応がありません。どころかカードから力が感じられないのです」

「!? せっちゃん、カード見せて!」

 

ウチはせっちゃんのパクティオーカードとウチのパクティオーカードを見せ合った。

するとやはり違いが少しあった。

絵柄は変わっていないのに少し所々に文字がかけていたりしているのだ。

 

「これは、どういうことでしょうか…?」

「どうしたの。このかに刹那さん?」

 

アスナが話しかけてきてウチらが思ったことをアスナに聞いてみた。

 

「ん? んー…確かに私のカードと比べると違うわね。どうしてだろう?」

「おい。なんかまわりがおかしいぞ」

 

そこに千雨ちゃんが周りがおかしいと言ってきた。

よく見ると確かに学祭の風景やあらへん。

夕映達も新聞を持ちながら駆けてきて、

 

「この日付を見てくださいです! 今日は学園祭から一週間も経過しているのです!」

 

なにか変やと思ってたけどそういうことやったんか!

それからみんなで合流して千雨さんのパソコンで見てみると武道会の件でマスコミに言い寄られている佐倉愛衣さんの姿が映っていた。

 

「と、とにかく合流場所のエヴァンジェリンさんの家にいきましょう。きっとなにか分かるはずです」

 

せっちゃんの言葉にウチ等はそろって移動した。

家につくとそこには、

 

「い、イリヤさんにランサーさん…?」

 

なぜか暗い表情をした二人がおった。

特にイリヤさんの顔は疲れというよりやつれていて綺麗な顔が台無しなことになっていた。

 

「…やっと戻ってきたのね、みんな」

「よお、お嬢ちゃん達、久しぶりだな…」

「イリヤさん、これって…!」

「それよりランサーさん、久しぶりという事は…!」

「もう分かっていると思うけど世界に完全に魔法がばれたわ。ついてきて。リンシェンの置き手紙があるから」

「超さんの!?」

「そ、それよりイリヤさん! 士郎さんは…?」

 

アスナの言葉にイリヤさんは一瞬体をふるわせた後、手紙の後に話すといった。

どうしたんや一体…。

なにかおかしいと感じる。

嫌な予感しかせぇへん…。

そんな気持ちを抱きながらもウチ達は超さんが残した手紙を再生するのだった。

 

『やあ。ネギ先生とそのお仲間達。スマナイが、これで君達の負けネ。納得のいかぬ敗北ではあろうガ…最も良い戦略とは、戦わずして勝つこと。悪く思わないで欲しいネ。こんな事もあろうかと、ネギ坊主に貸した航時機(タイムマシン)に罠を仕掛けさせてもらていたヨ。君達に最終日が訪れないようにする罠がネ。ネギ坊主が味方になてくれれば解除するつもりだたが…さて、見事私の罠にハマた君達は、何とビックリ、歴史改変後の世界にいるはずヨ。もう今までの君達の日常には戻れないがネ。………ようこそ諸君、我が新世界へ』

 

その内容にウチ等は唖然としてしまった。

では士郎さんも敗北してしまったって事…?

その考えにいたった瞬間、体が震えだした。

でもまだ続きがあるようなのでなんとか自制して続きを促してもらった。

 

 

 

―――Interlude

 

 

一方、ネギは魔法先生たちに責任の一端を課される事になり地下に幽閉されていた。

そしてタカミチ、ガンドルフィーニ、瀬流彦が部屋に入ってきて超についての報告書はどうかと聞くがくだらないと流されてしまう。

それから学園祭でなにがあったのか聞くことになるのだったが、

 

「我々魔法使いは完敗したよネギ先生…たった一人の少女にね」

 

それを始めとして学園祭で起こったことが話される。

超は、学園祭最終日の世界樹の魔力が最も増大する時間に、告白阻止ポイントである6箇所の魔力溜まりをロボット軍団で占拠し、直径3kmに及ぶ巨大魔方陣で「強制認識魔法」を発動させる。

「強制認識魔法」は、地球上に12箇所存在する麻帆良と同等の「聖地」と共振・増幅され、3時間後には全地球を覆い尽くす事になった。

実のところ強制認識魔法は魔法などの認識のハードルを下げる程度の効果だが瀬流彦はそれで充分だったと言う。

またネットに魔法関係の情報をばら撒いていて、表向きは武道会のトンでもバトル。しかしその実態は興味を進めていけば裏の情報が次々と判明し魔法界のことまでたどり着けるという用意周到さ。

最後に半年が経つころには世界すべての人間が魔法の存在を自明のものとして認識してしまうというもの。

 

「これらが詳細だ。理解したかねネギ先生」

「そ、そんな…そうだタカミチ、士郎さんは!」

「…………」

「衛宮か…本当に何も知らないみたいだなネギ先生。浮かばれないな…。衛宮は…」

「いや、ガンドルフィーニ先生、後は僕が話しておくよ」

「わかった…」

「それでは後はお願いします高畑先生…」

 

ガンドルフィーニと瀬流彦は悲しい顔をしながら部屋から出て行った。

 

「その、タカミチ、士郎さんの身に、なにかあったの…?」

「士郎は…表向きは行方不明扱いとなっている」

「えっ…どうして?」

「クラスの生徒達や他にも知る一般の人には話せないからだ」

 

 

―――士郎は…死んだ。

 

 

タカミチのその言葉にネギは目を見開いた。

 

「え…? 士郎さんが、死んだ…?」

「うん。僕も詳細はわかっていない。知っているのは一緒の場に居合わせたイリヤ君とランサーだけだ」

「ど、うして…?」

「それもわからない。詳しい情報を聞く前にイリヤ君達は士郎の死体を僕達に預けた後、忽然と姿を消してしまったからだ」

「そんな…あの強い士郎さんが…死んだ…」

 

ネギは士郎の死にひどくショックを受けてしまっていた。

 

「少し落ち着くまで待っていよう…。僕も君に伝えたいことがあるんだ」

「うん…」

 

 

 

Interlude out―――

 

 

 

『そういう訳ネ。では…また会おう(・・・・・)諸君』

 

そう言って超さんの手紙の内容は終了した。

 

「なるほどな…」

「どうしたの千雨ちゃん…?」

 

千雨ちゃんは言う。

超さんがこの時代で事を起こしたのはインターネットが普及した時代だからだと。

 

「くそっ! 冗談じゃねぇぞ!」

 

千雨ちゃんの焦りの表情が伺えてきた。

するとそこにドアからカモ君がカシオペアを持ちながらやってきた。

ネギ君はどうしたの? と聞くとネギ君は現在責任を取らされ地下に閉じ込められていずれはオコジョにされてしまうという。

 

「ネギは一足遅かったわけね…全員がいる時にこの事を伝えたかったんだけど…」

「そういえば士郎さんの行方を知っているんでしたよね!」

「士郎老師はどうしたアルか?」

 

そこでまたイリヤさんは悲痛な表情になる。

けど決心したのか、

 

「士郎は、死んだわ…」

『え…?』

「ど、どうしてなんイリヤさん?」

「そうね…正確には、私とランサーが殺してしまったのよ」

 

二度目の衝撃だった。

あれほど士郎さんのことを溺愛していたイリヤさんがどうして…

 

「どうしてなん!? イリヤさん! どうして!!」

「お嬢様! 落ち着いてください! イリヤさんが士郎さんを本気で殺すと思っているのですか!?」

 

私は涙を流しながら必死に叫んだ。

なんでこんなことになってしまったのかこの不条理を叫んでいた。

同じく涙を流しているせっちゃんに止められなければまだ続いていたかもしれない。

 

「…言い逃れはしないわ。それも踏まえて聞いてほしいのよ」

 

そしてイリヤさんは語る。

あの悪魔襲撃の日にランサーさんが殺したはずの言峰綺礼が生きていた。

学園祭三日目の日にイリヤさんの影にとりついて精神を一時的に支配した。

支配して令呪を使いランサーさんに士郎さんを殺すように命じる。

とりついた言峰綺礼はランサーさんが再度滅したがそれは分身だったために取り逃がしてしまったこと。

 

「もう、この学園にはいないと思うわ。私たちが徹底的にこの学園を虱潰しにしたから」

「あいつの気配はもう覚えてるしな…くそが」

「そんな…そんなのって、あんまりや…」

「士郎さん…くっ…」

 

いつの間にかウチとせっちゃんは地面に膝をついてしまっていた。

 

「シロウに、会いたい……?」

「ウチ…士郎さんに、会いたい…会って無事を確かめたい」

「はい…! 私もです…!」

「皆はどう…?」

「このかと刹那さんの気持ちに及ばないかもしれないけど私も会いたいです!」

「アスナ…」

 

それから次々と上がる皆の声。

千雨さんも、

 

「私はそれほど面識はありませんが衛宮先生は一応の常識人サイドですからいなくなられては嫌です」

 

皆の意識は固まったみたいや。

 

「それじゃカモミール。カシオペアはどう?」

「今はただの懐中時計になっていやすが…まだなんとかなるかもしれねぇ。考えがありやす!」

「そう…よかったわ。それじゃ最後に私からコノカとセツナにプレゼントがあるの」

「「え…?」」

「これを…」

 

イリヤさんはそう言って私に一本の剣を。せっちゃんには赤い宝石をプレゼントしてくれた。

 

「あの、これは…」

「シロウの形見よ。死に際に託されたのよ」

「「士郎さんの…」」

「このかの剣は本当は『剣製の赤き丘の千剣』だけどシロウが最後にその形にしたのよ。

シロウが死んだ後も消えずに残ってくれたの。

そしてその剣の名はアゾット剣。魔術行使を補助する魔杖と呼ばれていて一人前の魔術師が持つにふさわしい剣なの。

だからもうコノカは一人前の魔法使い…これをうまく使いこなしてね」

「はい!」

「後、このコートを過去の私に渡して……」

「これは…?」

「悪魔祓いのコート。私の呪詛がこもった特注品よ。おそらくランサーの令呪を持っている私が狙われる可能性が大なのよ」

「わかりました」

 

せっちゃんはそのコートを大事そうに受け取る。

そこに楓が声を上げる。

 

「どうやら拙者達は見つかったようでござる」

 

外には先生が二人立っていた。

せっちゃんがいうには女性の方はせっちゃんと同じく神鳴流剣士でもう片方は西洋魔術師だという。

そこに待ってましたというようにランサーさんが槍を持って立ち上がる。

 

「みんな…まずはネギを助けなさい。きっと過去に戻れる道は見つかるはずよ。ここは私とランサーに任せなさい」

「イリヤさんは、戻らないんですか?」

「私は、もう無理よ……。こんな嫌な気持ちを抱いたままシロウに会わす顔がない…。それにあなた達が歴史を修正しても、もうこの世界は一個の平行世界として切り離されてこれからもきっと続いていくわ…」

「てしたらなおさら!」

 

せっちゃんがなんとか説得しようとしてるけど、イリヤさんはすべてに諦めがついてしまっているのか、首を振って「もう、いいの…」と言って、

 

「私の事はもういいから。あなた達は本来の時間に戻りなさい…。あ、シロウには私の事はあんまり伝えないでね?きっとまた無茶なことをしちゃうと思うから…。だから、必ずシロウを助けてね…」

「わかったえ…」

「さっさといきな。マスターのお守りはきっちりとこなしてやるぜ。士郎に頼まれたからな」

「もう…ランサーは…。それよりコノカ、もう我慢することないわ。いっぱい暴れちゃいなさい」

「はいな! ウチ、頑張る!」

 

そして私はネギ君と同じくエヴァちゃんから託された指輪を指にはめる。

それを見て皆驚いていたけど今はそれどころやない。

 

「早くネギ君助けにいこか!」

『お、おー!』

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

このか達が裏庭から脱出をはかったのを尻目にイリヤ達は、

 

「さて…コノカ達に望みを託すことができた事だし、暴れちゃおっか、ランサー?」

「いいぜマスター。こういう展開は大好きだ」

 

二人は刀子達に果敢に挑んでいったのだった。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

背後からすごい爆発音らしきものが聞こえてくる中、

 

「ちょ、このか! あんた、それってネギが持っている指輪と同じ!」

「うん! 魔法発動体の指輪や! エヴァちゃんに貰ったんよ!」

「え、エヴァちゃんに!?」

「お嬢様はエヴァンジェリンさんに直々に修行を受けてもらっていたのです」

「せっちゃんもな!」

「初めて聞いたんだけどー!?」

「それは内緒にしていたからや! それよりカモ君、なにか作戦あるか?」

「任せとけ! とりあえずちうっち!」

「なんだよ」

「あんたにはネットで調べてほしいことがあるんだよ」

「あー? 今は無理だぞ。ネット環境整ってねぇからな。近くにネットができる施設が…」

「電話ボックスがあるでござるよ!」

「いけるか!?」

「なんとかな。ISDNでちと遅いがな」

「十分だ! 調べてほしい場所は麻帆大の「世界樹をこよなく愛する会」のHPだ」

「はぁ!? 何でそんな弱小サークルのHPを!?」

「いいから!」

 

カモが早くと促す中、古菲が「来るアル!」といった。

そして「お待ちなさい!」という声が響いてくる。

皆が振り向くとそこには高音・D・グッドマンに佐倉愛衣、夏目萌の三名が後ろに魔法である影を引き連れて現れた。

 

「あー! あんたウルスラの脱げ女!?」

 

ハルナの自重なしのお言葉に高音は涙目になりながらも、

 

「ま、まぁいいでしょう…おとなしく同行するならよし、ですがあくまで抵抗するというならこの正義の味方、高音・D・グッドマンが成敗させていただきます!」

「で、でもお姉さま。あちらには麻帆良武道会のメンバーが勢ぞろいしてますけど…」

「戦力がちょっとこちらはきついです」

「大丈夫です! 私を信じてくだされば勝利はおのずと勝ち取れます!」

 

少々、自棄になりがちだがこれでも実力者なのだろう。

大量の影を用いて襲い掛かってくる。

それに一同は目を合わせ、

 

「お嬢様、夕映さん、ハルナさん、のどかさんは後ろに! 千雨さんはパソコンに集中してください!」

「アスナ殿、古、刹那、拙者が前に出るでござる!」

「よっし! なんて最強タッグだ! やったれい!」

「ウチも頑張るえ! まずは敵を吹き飛ばすえ!“アゾット・メ・ゾット・クーラディス”…!」

「このかさん!? もしかして始動キーを!」

 

このかはアゾット剣を構えて呪文を唱える。

それに呼応してアゾット剣が光り輝く。

 

「光の精霊101柱!!集い来たりて敵を射て!!魔法の射手(サギタ・マギカ)集束・光の101矢(コンウェルゲンティア・ルークム)!!」

「きゃあーーーーー!!?」

 

詠唱とともに百もの光の射手が高音達に襲い掛かる。

 

「せっちゃん!」

「お任せを、お嬢様!」

 

刹那は瞬時に足に気を集中させ踏み込んだ瞬間、地面が抉れて次の瞬間には高音、佐倉、夏目の背後に一瞬で移動し、

 

「神鳴流奥義…百烈桜華斬!!」

「くぐぅ…!?」

 

剣の旋風が巻き起こり影の軍団を次々と葬り去り辛うじて高音は自身に纏っている操影術で防いだ。

 

「くっ…この私が姿を見失うなんて!」

「当然や。せっちゃんはランサーさんと何度も死闘に近い速度域で稽古をしていたんやからな」

「むぅ…少し出遅れ感があるでござるな」

「むむむ…スピードが武闘大会以上ネ。やるアルナ、刹那」

「このかさんも魔法の腕が相当のものになっていますね」

「地獄の特訓の賜物や」

 

その後、アスナの魔法無効化(マジック・キャンセル)の力もあり、高音達を無力化することに成功して、のどかのいどのえにっきでネギが幽閉されている場所へのルートを聞き出してそこを目指す事になった一同。

このかは、

 

(イリヤさん……あなたの想いは無駄にせぇへん。必ず全員で過去に戻って、そしてみんなで未来を変えてみせる! 士郎さんも絶対に死なせへん!! ウチ、絶対にまた士郎さんに会うんや!!)

 

そう心に誓ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

そんなこのか達の姿をあまりの気配の薄さで気づかれずに見ていた人物がいた。

そしてそっと着いていくのであった…。

 

 




ここまで書いて更新は止まっています。
昔の自分にどうして書くのをやめたんだ!?という感じですが、投稿する気はまったくなかったし、それにちょうど『剣製の魔法少女戦記』を書いていてまずは暁の方に投稿して軌道に乗っていた時期でしたからね。
原作も完結している以上は書けない道理などありませんね。




このあと、活動報告にてある内容を投稿します。
よかったら見てください。

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