剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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久しぶりに更新します。


075話 記憶巡り編 とある視点で見る記憶 その2

切嗣さんが逝ってから少ししだして士郎さんもなんとか持ち直したのか、カラ元気だろうと藤村さんには心配を掛けない様に、それでも一人での無茶な修行を続けながらもいつの間にか中学生に上がっていた。

そんな代わり映えのしない、しかし毎夜の時間になっては続けられる修行という名の拷問に等しい行為を続けているシーンが何度も流れている時であった。

 

『すまんなみんな。こんなシーンなどつまらないだろう……もう少し先に進めていくか?』

 

そんなどこかすまなさそうな士郎さんの声が聞こえてきた。

しかし、それでわたしも一回落ち着くことができたのだろう、周りを見回してみればエヴァちゃんにこのか、刹那さん、イリヤさんは一回見た事だろうし落ち着いているが、それ以外……特にネギ君が少し暗い表情になっていた。

 

「その……士郎さん。士郎さんは辛くなかったんですか……? 本当の家族との記憶も失ってしまっていて、さらには切嗣さんまで亡くなってしまって……」

 

そしてそんな確信めいた質問をして少し涙目ののどかや夕映なども含めて無言で頷いている。

まぁ、分かるっちゃあ分かるけど、そこはもう士郎さん的にはすでに通り過ぎた道だろうし今更だろうなってわたしは客観的な思考に落ち着いていた。

士郎さんもそれで苦笑をしながらも、

 

『まぁ最初は色々あったが、それでも藤ねえが毎日うちにやってきては世話したりされたりしていたから毎日が楽しく進んでいって寂しくはなかったさ』

「そうですか……」

 

それでネギ君も出すぎたと感じたのかシュン…としてしまっていた。

そこにちうちゃんが声を上げて、

 

「ネギ先生。あの超にも言われたでしょう? 人それぞれなにかしらの痛みを持っているって……士郎先生にもあったように、ネギ先生にもそういう事はなかったわけではないでしょう?先生の過去は聞いてませんからどうかは分かりませんが……」

「ッ! そ、そうですね……千雨さんの言う通りです。そんな事にも気づけないだなんて僕は……」

 

それでまたネギ君は落ち込みそうになるけど、

 

「ですから、いちいち気にしていてももう過去は過去なんですから変えられないんですから、深入りはしないというのも考えてみては……?私もなんとか平静を保っているつもりなんですから」

 

それは千雨ちゃんの本心だったんだろう。わたしも色々誤魔化しているけど、耐えられない事もあるかもしんないし。

 

「そうですね……。すみません、士郎さん。まだまだこれからですのに話を止めてしまって……先をお願いします」

『わかった』

 

それでシーンは再生されて士郎さんの中学生の生活が流れていくのだけど、そんな中でも士郎さんの人の為になろうという思いは続けられていて、なんでも自分にできる範囲でなら人助けを続けていた。

しかし、そんな士郎さんの行いも利用されることも多々あって悪意ある利用目的で頼みごとをされることが多くあって、それでも悪い顔一つしないで引き受けている士郎さんのそんな姿を見て、

 

「ふむ……士郎殿はこう言ってはなんだがなんでも引き受けてしまうのは悪い癖でござるな」

『はは……耳が痛いな』

 

長瀬さんのそんな言葉で参っている士郎さんの声が聞こえてきた。

そしてそれが悪乗りでもしたのか成り行きで文化祭の看板作りを周りから押し付けられてしまい、一人で放課後に作っている時に一人の男子が士郎さんに近づいてきた。

 

『おまえ、馬鹿だろ』

 

そんな一言とともに現れた人物は名前を『間桐慎二』というらしい。

何度も士郎さんに悪態をつき手伝いは一切しなかったが、一晩中士郎さんのもとで付き添って、そして看板が完成したらしたらで、

 

『お前馬鹿だけどいい仕事するじゃん』

 

そんなこんなで奇妙な付き合いが始まっていつの間にか士郎さんと慎二さんは親友と呼べる仲になっていった。

それからというもの、士郎さんを利用しようとする輩に対してはちょっと度はきついが予防線を張って無茶なことは士郎さんには通さない様にしていたようであった。

 

「わー……やっぱり友達っていいものですねー」

「そうですね、のどか」

 

のどかと夕映がそう言って二人の仲を良く思っていたんだけど、どうにもそれを見ているこのかと刹那さん……そしてそれよりもひどい顔になっているのがイリヤさん。

三人はどうにも暗い表情になっていた。

おや……?

もしかして……これはゲームや創作物的展開ではのちに慎二さんは士郎さんのライバル的存在になって、もしかして……。

わたしはそこまで想像して「いやいや、まさか……」と今の士郎さんと慎二さんの関係を見ている感じではそんな雰囲気はしないと思ったんだけど、やっぱり……そういう事なのかなー?

今は多分聞いても答えてくれないだろうなー。

ネタバレされるのもわたしとしては嫌いだけど、こういう空気のままっていうのもなんかモヤモヤする。

なので、わたしはそっとイリヤさんに近寄って一言。

 

(イリヤさん。もしかして士郎さんが魔術の世界に踏み込むきっかけの事件で慎二さんは……)

(ハルナは勘がいいのね……うん。まぁそういう事。その時になったら私も白状するわ)

(そっすか……)

 

嫌な予感は当たってしまうものだね。

しかも多分だけど士郎さんが慎二さんを殺すだなんてしないだろうし、消去法で……。

そうなると、なんていうか士郎さんは辛い人生を歩んでいるなーと思う他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は進んでいって一気に高校生にまで上がっていって、そこで士郎さんのもう一人の親友ともいうべき存在で生徒会に所属する事になった『柳洞一成』さん。

そして士郎さんが弓道部に入る事になって姉御肌の同級生である女の子である『美綴綾子』さんとも知り合いになって、それでもとから天才肌であった慎二さんも弓道部に入って、しかも高校での担任で弓道部の顧問でもある藤村先生がいて、士郎さんの周りは一気に色づいていった。

…………というより、藤村さんが学校の先生でしかも担任とか、それってどこのギャルゲー攻略キャラの一人だ!とも思う気持ちがあった。

でも、もし藤村先生が攻略キャラだとしても、士郎さんに対して、

 

『士郎ー、ケッコンしよー』

『いいよー』

 

と、たった三秒で終了してしまうかもというくらいのフランクさがあると思うのはわたしだけだろうか……?

 

それから夏の大会まで士郎さん、慎二さん、綾子さんの三人が中心になって一年生にしては弓道部で頭角を現していった。

特に士郎さんは三人の中で群を抜いていて矢を放てば必ず当たるという正確さをこの時から維持していた。

 

「士郎さんってこんな時から弓の腕は抜群だったんですねー」

 

と、ネギ君が言うが、イリヤさんが平坦な声を出しながらも、

 

「いえ、シロウのはある意味邪道なのよ。だって、魔術を使う延長線上でしかないんだから眼に魔力を流して精神統一すれば普通の人間が敵う訳ないんだから」

「「「「あー……」」」」

 

それですぐに納得するアスナ達。

だけど、そんな中で士郎さんがバイト中に腕をケガしてしまい、弓道の大会に出れなくなってしまい、士郎さんは部のみんなに迷惑が掛かるという感じであっさりと弓道部を辞めてしまった。

 

辞める際に、慎二さんに、

 

『衛宮さ、こういう時にケガするって何考えてんだよ? しかも部も辞めるって……本気かい?』

『ごめん……。でも、俺がいなくっても慎二がいてくれればなんとかなるだろ……』

『そういうことじゃ!……ああ、そうかい。わかったよ……』

 

それからというもの、士郎さんと慎二さんの仲は少し悪くなっていく事になる。

慎二さんもどこか複雑な感情を抱いているようだったけど、いまのわたしにはどういった心情かは計りかねない。

多分だけど、士郎さんの事を思っての事もあるだろうけど、それより対等な人物が簡単に張り合える事で辞めてしまったのでやりきれない感情を抱いたんだろうと……。

いや、それ以上の事もあると思う。

でも、もうわたしの予想ではそれは窺えないんだろうなぁ……。さっきのイリヤさんの反応も含めて。

 

 

 

 

 

それから家に帰って片腕が使いづらい士郎さんはそれでも魔術の訓練をしようとしているのだが、そんな時に雨が降っている中で衛宮邸にやってきた一人の少女の姿。

玄関を開けた士郎さんが見たのはすでにずぶ濡れになっていて、そして無表情でどこか精気が少なそうで薄幸そうな感じがする女の子。

 

『君はたしか慎二の妹の……』

『間桐……桜です』

 

士郎さんもいつまでも玄関に立たせておくのもアレだと感じたのか家に向かい入れて着替えを貸したのだが、後から帰ってきた藤村先生に色々と誤解されそうになっていた。

…………うんうん。

いいねぇ……。まさしくヒロインその1の人かもしれないわ!

しかも慎二さんの妹って事は後輩属性持ち!これはキターーーーー!!

 

桜さんの話を聞いていくと、どうにも士郎さんのケガが治るまで手伝いをしたいという。

それには士郎さんも藤村先生も申し訳ないという気持ちになったのか一度は断ったのだけど、それから毎日玄関前までやってくる桜さんの姿を見て士郎さんも根負けしたのか、桜さんに手伝いを頼むことにしたのであった。

 

だけど、桜さんは家事とか一切できないという事を知って士郎さんはそれから指示をしながら桜さんに服の畳み方や掃除、料理などの指導をしていく。

すると今まで感情があんまり窺えなかった桜さんの表情に次第に色が付きはじめてきていて笑顔が増えていく光景を見せられて、

 

「士郎さーん? こんな先輩後輩関係なのに桜さんとはなんにもなかったんですかぁ~? 合鍵まで渡しちゃいまして~」

『朝倉。お前の期待の眼差しにどう答えればいいかはしらんが桜とはなにもなかったよ。俺にとっては桜は可愛い後輩で、慎二の妹でそれ以上の事はなかったんだから』

「なんか、そう考えると桜さんが不憫だね……」

『どういう意味だ?アスナ』

「「「「はぁー……」」」」

 

それで一斉にため息を吐かれる士郎さんにわたしは同情は出来なかった。

むしろアスナ達と同じ気持ちだし。

 

そしてそんな士郎さんと桜さんとついでに藤村先生とのささやかな時間は流れていって、桜さんも士郎さんと同じ高校に入学すると言って一生懸命勉強を衛宮の家でしている光景を見て、健気だなぁ……という思いと同時に、なんで夜まで士郎さんの家で過ごしているのか少し疑問がわいた。

自分の家でも勉強はできるだろうし、もしかして自分の家にはあんまりいたくないのかな?という思いに至った。

こういうのって、桜さんには失礼だけどもしかして桜さんは家ではいびられているのではないか?と感じたからだ。

その証拠に桜さんは間桐の家での暮らしぶりは士郎さんには一切話さないからだ。

色々想像が膨らむけどわたしとしてはあんまりしたくないけど、もしかして創作視点でいえば桜さんって所謂汚れヒロイン?もしくは被害者側から加害者側に変わる系?

 

そうわたしが感じたのは、士郎さんが桜さんが泊まっていく事があっても、いつものように死と隣り合わせの修行を繰り返していたからだ。

しかも士郎さんがこの時にまともに使える魔術は良くて強化くらいだから結界なんて論外だし、もし……間桐家が創作のセオリー通りなら魔術の家系だったならバレていても不思議ではないからだ。

 

それでも指摘してこないのは桜さんの優しさゆえか。

 

そんなこんなで士郎さんは高校二年生になって、桜さんも無事に同じ高校に入学できて、慎二さんの妹だからと美綴さんに弓道部に誘われたりと、色々とあったが士郎さん視点で桜さんと話している時にたまによく見るようになった女の子の姿があった。

どこか桜さんの様子を遠くからただ見ているのかのようにしている感じのツーサイドアップの黒髪の女の子。

 

『桜。あれって……』

『はい。あの人は』

『遠坂だよな?』

『先輩はご存じなんですか……?』

『まぁ、有名だしな』

 

女の子の名前は『遠坂凜』というらしい。

士郎さんと同級でなんでも容姿端麗、才色兼備の優等生らしくて、できない事などないって感じの女の子らしい。

 

そこでわたしの脳内がキュピーン!と鳴った。

この人がヒロイン二人目であると。

それにどこか桜さんとは無関係ではない感じでもしかして本当の姉妹だったりして……?

でも、髪の色も瞳の色も違うしわたしの勘が勘違いでも起こしたのだろうか?

まぁ、なにかしらの関係である事は確かであろう。

 

まぁ、それでも普通の日常は進んでいくのだが、冬の時期になって少しずづだが異変が起こり始めだしていた。

猟奇殺人事件やガス漏れ事件などがテレビで流れるようになって、士郎さんは『物騒だな……』と思うも、普通に学校に通っていったのだが、その時に校門をくぐる瞬間になにかの違和感を感じたみたいだけどその時はなんなのか分からなかったみたいで、

 

「な、なにかが始まりそうなのかなー……」

「おっ!? とうとう来たんか!?」

 

それで今まで退屈そうに見ていた小太郎君が反応をしだした。

どこか楽しそうで不謹慎だなぁと思うもわたしは口を慎んだ。

 

どこかパトカーも何台も走っていて物騒な帰り道のことであった。

士郎さんの目の前に一人で歩いてくる少女の姿があった。

その姿はまるで今のイリヤさんを小さくしたかのような―――……。

士郎さんとすれ違う瞬間に、

 

『早く呼び出さないと…………―――――死んじゃうよ、お兄ちゃん』

 

士郎さんはそれで咄嗟に振り向くけど、もう少女の姿はいなくなっていた。

 

 

 

わたし達は考える事は多分皆おんなじだっただろう……。

とうとう士郎さんが魔術の世界に入るきっかけの事件が起こり出すのだと……。

 

 

 




今回はここまで。
あとは活動報告で書きました通り、DVDが届いて履修した後に続きを書こうと思います。
それまでお待ちください。

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