剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ   作:炎の剣製

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008話 夜空を照らす剣製の弓

 

 

 

教師になって俺はネギ君をフォローしながらもなんとか平和な日常を送っていた。

だが、この世界にもなにかしら争いは起きているだろう……。

救いにいきたいがまだこの世界のことは把握していない。歯がゆいものだ。

だが、姉さんもここ最近俺の知らないところで楽しんでいるようでここにいるのも悪くないかなとも思い始めている。

そう、俺はこの学園の教師なのだから今は生徒達を守るのが義務というものだろう。

そして放課後に学園長に頼まれた機械類を修理しているといつの間にかタカミチさんがやってきていた。

 

「精が出るね、士郎君。しかし言ってはなんだけど僕から見る限りほとんどは寿命じゃないのかい?」

「そんなことはないですよ。確かに見た目はこれですが回線が切れているとかそんなとこぐらいでまだ状態的には仮病といったものだ。

それにここにあるのは解析してみればほとんどが今までこの学園の人たちに大切に使われてきたものばかりだ。

だからまだ活躍してもらいたいじゃないですか」

「そうか。士郎君はとても優しいね。

今のご時世じゃすぐに捨てられてしまうものがほとんどだ。

だから士郎君のような人がもっと増えてくれればうれしいところだね」

「そうですね。ものにも意思は宿るもの……だから命尽きるその時まで役目を全うし、そして最後は安らかに眠ってほしいと考えているんです」

「……驚いたよ。そんな考えまでもっているなんて」

「まぁものの年月に共感できるぶんそこらへんが普通の人とは感覚が違うんでしょう。前の世界でもなかなか捨てられなくて土蔵にものがたまっていく一方でしたから。それよりタカミチさん、なにか話があったんではないですか?」

「あー、そうだった。学園長が呼んでいるから来てくれないかい?」

「わかりました。少し待ってください」

 

俺はまだ修理途中のものを部屋の片隅に運んで作業着からスーツに着替えてタカミチさんとともに学園長室に向かった。

着くとそうそう学園長から携帯電話を渡された。

なにかの連絡用だろうか?

 

「学園長、これはなんのための奴ですか?」

「ふむ、それは警備員としての仕事用のものじゃ。なにか用があり次第、連絡しようとおもっとる。

それで今夜早速だがほかのこちらの世界の生徒や教師とともにまた現れるだろう妖怪達の退治をしてほしいんじゃ。

もちろん西の手下の召喚者も捕まえることが出来ればベストじゃが、なかなか用心深く姿は見せようとせん。だから退治だけに専念してくれれば十分じゃ」

「わかりました。俺で手助けできるのなら手伝います」

「うむ、それと一緒に今度からタカミチ君と広域指導員もしてもらいたいんじゃ。

最近グループ同士の闘争が絶えんで困ってたんじゃ。行き過ぎとったら鎮圧も構わんぞい?」

「はぁ、広域指導員ですか? 別に構いませんが鎮圧はさすがにまずいんじゃないですか?」

「なに、うちの生徒たちはそんなやわな者達じゃないから軽くもんでやってくれないか? さすがに僕1人じゃ鎮圧がせいぜいだからね」

「そうですか……なら、なにかちょうどいい戦闘不能な道具はあったか? 少し待っててください」

 

 

俺はそのまま心象世界に沈みなにかめぼしのものはないか探したが、しっくりくるものが二つあった。

虎(藤ねえ)が愛用していた虎のストラップがついた命名『虎竹刀』。

……ネーミングセンスがまんまじゃないかほんとうに。

しかしこの竹刀は実はかなり性能だけはよかったりもする。

なんせ、気絶はしなくても戦意を根こそぎ奪うという概念があるのだ。

……さすが藤ねえが愛用していた竹刀だ。

 

そしてもうひとつは、あまり思い出したくもないがあの毒舌シスターこと、カレンが使用していた『マグダラの聖骸布』。

これは捕まればその包容力とともに絶対に逃がさないというものがある。

とくに男にはとても効果があり使えばたちまち力を奪われ抵抗はできなくするものだ。

魔術も使うことが出来なかったからかなり強力だ。

……これは使うのはよしておこう。俺には苦い経験しかない。

いざという時に使うとしよう。

 

あとは武器なしだとあれだな。遠坂に半ば罰として受けに受けていて覚えてしまった『ナンチャッテ八極拳』。

ほかにも独自で柔道、ボクシング、ムエタイ、本格的な中国拳法も干将・莫耶をうまく使うために二流だが覚えたっけ?

こうして今までしてきたことを全部並べてみるとほぼ二流で埋まっているような? 決して悔しいわけではないぞ!?

 

 

閑話休題

 

 

俺は気を取り直して『虎竹刀』を投影した。

 

「これでいくとしましょう。

これならどんな不条理なことをしても気絶程度ですむ概念がありますから。

ちなみに学園長、聞きたかったんですが近衛が持っているトンカチもなにか施しましたか?

絶対に重症は負わないという暗示がかけられてますよね?」

「そ、そうじゃよ。あれでこのかも過激なところがあるから、ああでもせんとワシ死んじゃうもん」

「やはり。では今度からなにかあったときは使わせてもらうとしますよ」

「ふぉ?」

 

学園長は疑問の表情をしていたが、あのトンカチを投影して不適に笑ってみせた瞬間、脅したつもりは別になかったが学園長はなぜか顔を青くしてしまった。

さて、それはともかくさっそく夜より先に生徒指導員の仕事をしようじゃないか。

 

「じゃいきましょうか。タカミチさん」

「あ、ああそうだね」

 

 

ちなみに俺たちが部屋から出て行った後、学園長は…

 

 

「白夜の鷹に標的にされてしもうた……」

 

とかわけがわからないことを、しずな先生に話していたとかなんとか。

 

 

とりあえず俺は騒がしいらしいとこに連れてきてもらい来てみると、どうやら学園外のものと生徒達が言い争いをしているようだった。

 

「さて、じゃさっそく士郎君のお手並み拝見といこうじゃないか」

「わかりましたよ。できるだけ話で解決はしてみますよ」

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 神楽坂明日菜

 

 

もう……最近ネギの奴にふりまわされっぱなしよ。

士郎先生はあんなにしっかりしているのにネギはどこか抜けてるところがあるから。

これだからガキは嫌いだわ。

今もこのかと一緒に三人で帰りの途中だけど疲れるわ。

 

「なぁなぁアスナ?」

「ん? なに、このか?」

「あそこにいるの士郎先生とちゃうの?」

「あ、確かにそうですね。でもなにか生徒の人たちと話をしているみたいですね」

「あれは大学の工学部の人達ね。あと、もう一方はたぶんこの学園外の人じゃないかしら?」

 

あ、工学部の人達は士郎先生を見た瞬間、

 

「(白夜の鷹だ……)」

「(おい、ここはおとなしくしていたほうがいいぞ?)」

 

……どうやら士郎先生のことを知っているようで少し後ずさりしている。

でも白夜の鷹って……あぁ、士郎先生の目のことね。私もネギのとばっちりであの目をされたわね?

確かにあれは鷹の目みたいで怖かったわ。

それと白夜っていうのはきっと白髪に褐色の肌から来たんでしょうね。

 

「そうなんですかぁ……あ! もう片方のグループが士郎さんに襲いかかりました!?」

「えっ!?」

 

正直一瞬あせったわ。

でも士郎先生はネギと同じこっちの世界の人間だから冷静になってみればあんな人達に負けるわけがないわよね。

その答えとして襲い掛かった人達は士郎先生のすごい踏み込みとともに竹刀を突かれ吹き飛ばされていた。

……五メートルくらい飛んでるけど平気なのかしら?

そんなことを思っていると、

 

「あれは中国拳法の震脚を加えた突きネ。すさまじいものがアルよ」

「古菲さん?」

「お邪魔するアルよ。ネギ坊主にアスナ、このか。それにしても士郎先生はすごいアルな。

相手の攻撃をカウンターでまったく力をかけずに突き返してるし、加えて太極拳の震脚による足の踏み込みで力を倍増してるからあの人たちはたまったものじゃないヨ」

 

太極拳って……くーちゃんがほめるほどなんてどれだけ強い突きをしているのかしら?

学区外の人たちは全員気絶してるし。

それで工学部の人たちは事情を説明して少し説教を受けてから気絶した人達を連れていっちゃった。

 

「おつかれ士郎君、さすがだね」

 

って、高畑先生!?

あ、そうか。高畑先生も広域指導員の先生だったっけ。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 衛宮士郎

 

 

「終わりましたよ。しかしほんとによかったんですか? 襲いかかられてとはいえ撃退してしまって」

「なに、構わないよ。あんなことはこの学園じゃ日常茶飯事だからね」

「なら構いませんけど」

 

この学園は荒れているのかいないのかわからないな。

広すぎる分指導が大変そうだ。

 

「タカミチー、士郎さーん!」

 

ん? あれはネギ君に神楽坂、近衛、古菲か。

 

「どうしたんだ、みんなして」

「士郎さんはタカミチと一緒になにしているんですか?」

「広域指導員の仕事だよ、ネギ君。学園長に頼まれたものでな」

「そうなんですか」

「士郎先生、中国拳法を使てたアルけどどれくらいできるアルか?」

「よく気づいたな古菲。まあたしなみ程度にはできるくらいだ。

基本技は大体できるが上級になってくると俺には才能はなかったらしく会得は困難だから一時期だけだったこともあり諦めた。

その代わりとはいってもいいが様々な武術と併用させて活用させてもらっている。

たとえば先ほど見てたのならわかると思うが剣道などにな」

「なるほどネ。つまりいろんなところから足りない部分を補ってきてるアルね?」

「そういうことだ」

「興味がでたネ。士郎先生、いつか手合わせ願いたいアルよ」

「暇があったらな。今は1人鍛錬に付き合ってるものがいるのでな」

「そうアルか?」

「ああ、名前はあえて控えさせてもらうよ」

「残念アル……」

「まあそう落ち込むな。それはともかく四人とも遅くならないうちに帰るんだぞ?」

 

俺の言葉に「はーい!」といって帰っていったことを確認してその後もいくつか回った後、

俺も寮に帰ってきた。

 

「ただいま。姉さんいるか?」

「あ、シロウ? おかえりなさい。最近はネギの様子はどう?」

「今のところは安定しているようだ」

「そうなの? この間のお風呂の件もあって内心は心配していたんだけどね」

「お風呂の件……?」

 

なんのことか聞いてみたところ、ネギ君がお風呂嫌いで神楽坂が水着を着用して無理やり連れて行ってそこでまた魔法を使って一騒動あったらしい。

その内容はさすがに教えてくれなかったがまたすごいことをしたんだろうと考えていた。

 

「ああ、それと前に学園長がいっていた警備員の仕事だが今夜から参加することになるそうだ」

「ふ~ん? そうなんだー。この学園もほんとうに物騒ね。魔法の隠匿はどうなるのかしら?」

「その辺は心配ないらしい。結局相手もこちらの世界のものらしいからな。それにすべて幻想種まかせらしい」

「そうなんだ。めんどうくさいわね。一気に大本を叩けばそれで終わっちゃうのにね」

「それはダメだろ。聞いたがここ関東魔法協会の学園長と西の関西呪術協会の長である近衛詠春は親類関係にあたるらしい。

そして名前どおり近衛木乃香の親だそうだ。だからむやみやたらに事は起こさないでくれと頼まれてしまった」

「そうなんだー。じゃ西の刺客っていうのは西の長が抑えられていない結果、勝手に動いていることなのね。難儀なことね」

「まったくだな。それで、今日なんだが姉さんはどうする?」

「そうね。私はまだ静観しているわ。あの吸血種がどこで見てるかわからないし。

シロウと違ってれっきとした魔術を使うところは見られたくないから。

でも、シロウならこちらでいうマジック・アイテムやアポーツっていう魔法でごまかしがきくしね」

「確かに。今はまだあちらも静観しているようだから油断はならない。

だから宝具関係は使わない方針でいく。

それと二人行動で組むことが多いらしいからアーチャーではないが前衛がパートナーの場合は後衛で弦を引くことにしよう」

「間違ってもカラド・ボルクとかは使っちゃダメよ?」

「わかっている。せいぜい矢に使うとしても黒鍵くらいだ。ただの矢でも平気だろうが相手は幻想種だからいざというときに、だな」

「そう、それなら平気そうね。それにもし見ているんだったとしたら黒鍵は魔的のものには有効という恐怖を植えつけられるしね」

「ま、逆の考えだとそれもありだな。接近戦でも剣に魔力を通すことだけが得意な俺にとって徹甲作用は最大の武器になるからな」

「それにしても今思い出しても信じられないわよね。埋葬機関第七位の“弓”のシエルが実は大のカレーマニアだなんて。

まだシロウが封印指定かけられる前に町一つを死の町にして根城にしていた中級の死徒を滅ぼすため、共闘した時に戦闘前にシロウがカレーを作ってあげて調理法も教えてあげたら、それだけで『等価交換です』といってご機嫌な顔をして埋葬機関では秘儀とされているはずの黒鍵の使用方法を色々教えてくれたもんね。きっとリンがこの話を聞いたら『それのどこが等価交換よ!?』とか怒りながら言うでしょうね」

「ありえそうで怖いな。まあそのおかげで戦いのレパートリーが増えたから感謝はしているよ」

 

ピピピッ!

 

姉さんと話をしていたら携帯が鳴ったので出てみると相手は桜咲だった。

 

『士郎さん、学園長から話は聞いていると思いますが今日は私と組んでもらいます』

「そうか。わかった、では待ち合わせの場所でまたな」

『はい』

 

要点だけの話が終わり携帯を切り俺は黒いボディーアーマーに着替えて、赤い聖骸布の外套を纏い戦闘準備を完了させた。

 

「では行ってくるよ、姉さん」

「ええ、無茶だけはしちゃダメよ?」

「ははっ、わかっているさ」

 

苦笑いしながら俺は姉さんに見送られながら桜咲が待っているであろう場所に向かった。

そして待ち合わせ場所に到着したが、まだ桜咲は来ていなかったようなのでしばらく話しておく内容をまとめていた。

ちょっとして桜咲も来たのでさっそく作戦会議に入った。

 

「さて、では桜咲。行く前に聞いておきたいんだが後衛向きの術や技などは持ち合わせているかね?」

「いえ、これといってありません。できても斬撃を数メートル放つくらいでしょう」

「なるほど。やはり桜咲は純粋な剣士のようだ。ならば今日は俺が後衛に回らせてもらおう」

「士郎さんが、後衛ですか?」

 

桜咲が聞いてきたので俺は黒い洋弓を投影して、

 

「ああ、言ってなかったが俺はどちらかといえば後衛向きだ。

昔から弓道だけは自信があったからな。

まぁ、魔術鍛錬の意味合いもあったんで正式な弓道ではないが射法八節はしっかりしている。

それに俺は千里眼というスキルも持ち合わせていて目に魔力を集中すれば約4km先の標的までなら捕捉可能だ」

「4キロですか!?」

「ああ、だから背後は気にせず己の倒しきる敵を各個撃破してくれ」

「はい、わかりました。ですがもうその目は魔眼並みではないですか?」

「確かにそうだがあまり気にしないでくれ。では所定の位置についたらまた連絡する」

 

最後にそれだけ伝え俺は目星のついていた鉄橋の一番高いところまでジャンプして登り敵が来るまで待機することにした。

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

Side 桜咲刹那

 

 

しかし本当に士郎さんはすごい。今までずっと前衛タイプだと思っていた私の考えを一気にひっくり返してくれた。

真名ですらスコープ越しで2キロがやっとだと聞いていたのに裸眼で4キロだなんてすご過ぎる。

もし今私と士郎さんが敵同士だったのなら一瞬で貫かれていることだろう。

それは召喚された妖怪達と戦っている時に何度も思ったことだ。

私に真正面から迫ってくる敵を捉えて言われたとおり各個撃破をしていたが、気づいたときにはまるで連射しているかのように次々と魔力の篭った黒塗りの矢が私の横を秒単位で何度も通過している。

士郎さんがいる場所はかなり後ろだというのに威力はぜんぜん落ちていないようで、貫かれた妖怪達はその悲鳴すら上げずに一瞬で還されていた。きっと気づく前の段階で終わっていたのだろう。

その正確なまでの命中率に守られているという安心感が浮かんでくるが、同時に恐怖すら沸いてくるようだ。

そして最後の標的が目前に見えて私は神鳴流を使った。

 

「神鳴流奥義! 斬魔剣!」

 

最後の一体を斬魔剣で滅ぼし任務は終わった。

そして私達の担当していた場所に進入してきた妖怪達はすべて潰えたので士郎さんに連絡を入れようとした瞬間、突如、滅ぼしたはずの妖怪達の残り香が集まりだして2m以上はある巨大な大妖怪が出現して、夕凪をもう鞘に納めていたのでその妖怪との距離もそんなになく一気に距離を詰められてしまいやられる!? と思ったが、

 

 

ズドンッ!

 

 

「え?」

 

私がその衝突音とともに攻撃がなぜ止まったのかを確認すると妖怪の胸にはよくシスターなどが首にかけている十字架のような剣が突き刺さっており、その妖怪は人には理解不能なうめき声をあげ、次の瞬間には剣を中心に炎が広がって全身を燃やしながら妖怪は塵となって消えた。

いや、あれは消えて還ったのではない。まさしく消滅したのだ。

その光景に呆気にとられていると携帯が鳴っていることに気づいて出た。

 

『大丈夫だったか桜咲!?』

「あ、はい……私はなんともありませんでした。ですがあの剣は一体……?」

『黒鍵という俺達の世界では魔的なものを滅ぼす概念を持っているんだ。それを矢として放った。奴には申し訳ないが咄嗟のことでもあり火葬式典という術を使い消滅させた』

「やはり…」

『とりあえず合流しよう。そのときにまた詳しく話すとしよう』

「わかりました」

 

私は士郎さんと合流した後、士郎さんのその命中精度について聞いてみた。

 

「俺の放つ矢は中てるんじゃない。すでに中っているんだ」

「中っている、ですか?」

「そう、標的を目に捉え瞬時に中っているイメージをしてから矢を放つ。

だから中るのは必定。

外れるのならば、それは何処かで失敗しているだけか、もしくは桁外れの標的に中るというイメージがわかない時だけなんだ」

「そうですか、勉強になりました。それで次に先ほどの剣のことですが……」

「さっきもいったが俺達の世界には概念武装というものが存在する」

「概念武装ですか?」

 

そういえばよく士郎さんは概念とかを説明していたな。

 

「例えばだ。吸血鬼といったものは銀の鉛玉というものを受ければ死ぬという仮説があるが実際そんなに効果はない。

だが、概念武装とは決められた事柄を実現にするという固定化された魔術礼装。

物理的な衝撃ではなく概念、つまり魂魄の重みによって対象に打撃を与えるという物をいうんだ。

だから先ほどの黒鍵には魔的なものを滅ぼすといった概念武装が備わっているから最後の奴はその概念ゆえに消滅したわけだ。理解できたか?」

「ええ、なんとなくですが……ならば先程の例を言いますとその概念がこもっていれば吸血鬼も倒せるということですか?」

「結果的には、な。強力な敵ではそう簡単にいくものではない。まあ、とりあえず今日はここまでにしておこう」

「わかりました」

「では、学園長に連絡し帰るとしようか」

「はい」

 

やはりこの方に師事して正解だったかもしれない。

まだ隠しているものがありそうですが信用に足るに十分な方だ。

……この方になら私のことを話しても、いや、止めよう。

このような話をしても士郎さんを困らせてしまうだけだ。

だから……。

 




昔からなにかと都合がよく便利な人、シエルさん。

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