ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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ラムレッダSSR昇格にも驚きましたが、カリおっさんリミテッドverだと!
と、それはさておき、20万UAプラスお気に入り800件突破、ありがとうございます。


雨降って……

 

 

「ジータどうしてここへ…って、あーもしかして俺たちの話、隠れて聞いてたな」

「そ、そんなのいいからっ、話を聞いて」

 

例によってこの近くにいることは分かってはいたが、

こんな距離にいるとは思ってもみなかった。

不満げな表情を隠そうともせずにジータと、

その背に庇われるようなノイントへと視線を向けるハジメ。

 

「どうしてそいつを庇う!どいてくれジータ!」

 

正眼に剣を構える光輝。

 

「だからっ……その」

「その汚らわしい手でジータに触るんじゃねぇ!」

 

ノイントの眉間に照準を合わせるハジメ。

 

「たたたっ!助けてくれジータ、このままじゃ南雲と光輝に殺されちまうっ!」

「やっぱりジータも香織も何か知ってたのね!」

 

話を聞いてと言ったはいいが、どう説明していいのか未だ答えを考え付いておらず、

言葉を濁すジータの背中にノイントがしがみ付き、さらにハジメと光輝のみならず、

雫までもが険しい視線を投げかけて来る。

 

「そ……そのぉ、これ……坂上君……なの」

 

心から申し訳ない、そんな表情で、かつたどたどしい口調で、

ジータは自身の背中に隠れるノイントの正体をハジメらに伝え。

 

「ホントだよぉ~~俺はれっきとした坂上龍太郎で、生年月日は~~」

 

そして龍太郎を称するノイントは、それを受けて必死になって個人情報を叫び始める、

その悲痛な表情と、何よりジータが嘘を吐いていないことを察知したハジメは、

半ば呆れ顔でドンナーを降ろし。

そして光輝もやはり首を傾げつつではあったが、未だ姿を見せないままの親友の名を呟いてみる。

 

「おまえ……龍太郎?なのか?……もしかして」

「あ、ああ……そうだよ、天之河光輝の親友の坂上龍太郎だよぉ」

 

光輝が自分に気が付いてくれたことが余程嬉しいのか、

ノイントは未だ言葉を詰まらせつつも、その美貌を輝かせながら返事を返す。

だが、当たり前の話ではあるが、それでも光輝は手放しで信用しようとはしない、

瀕死の重傷を負っているという話は聞いていても、

一体、何をどうすればこんな事態になるのかさっぱりわからない。

 

それでも、自分に出来る限りの手段を用い、何とか確認の術を探るのは、

やはり成長の証だろうか?

とりあえず彼は目の前の坂上龍太郎を称する美女へと、

いくつかのデリケートかつ、プライベートな質問をぶつけてみることにした。

 

「だったら……お前が小一の時のこどもの日、俺の家の五月人形を……っと、

すまない南雲、ジータ、少しだけ耳を塞いでいてくれ」

 

 

「龍太郎……本当に龍太郎なんだな」

「ああ、見た目は変わっちまったけど、ちゃんと生きてるぜ、この通りな」

「変わりすぎだろ……心配かけた挙句に……この野郎!」

 

感極まった光輝がノイントもとい龍太郎の身体を抱きしめる。

 

「お前こそえらいドジ踏んだらしいじゃねぇか!

そんでもって今どき丸坊主だなんてどこの中坊だよ!ザマァねぇぞ勇者!」

 

やはり龍太郎も涙を流しながら光輝の身体を強く抱きしめる。

 

しかし、傍から見ると美男と美女が涙を流し抱擁しているのではあるが

美女の中身のことを考えると、ハジメにとってはどうにも割り切れない、

複雑な気持ちを覚えてならなかった。

 

「それで、一体どういうことなんだ?南雲」

「それは……俺も」

 

光輝の問いに首を傾げるハジメ。

龍太郎の新しい身体は別に精製していた筈だ、勿論本人ベースの肉体で、

今のこの状況が誰の差し金かくらいは見当がつくが……と、そこに。

 

「やっほー!お兄ちゃんたちっ!」

 

恐らくこの状況を生み出した張本人、天才美少女錬金術師の元気な声が響くのであった。

 

 

一先ず訓練場のロビーへと説明の場を移し、

カリオストロはベンチにどっかと腰掛け、得意げに講釈を開始する、

ハジメたちのみらず、メルドに雫、香織にジータにリリアーナと言った面々の姿も、

そこにはある。

 

「その、ええと魂魄魔法の力で、龍太郎の魂をその……ノイントの身体に

移し替えたというのは理解出来たけど」

「そうですよ、どうしてこの身体なんですか!」

 

身を乗り出すようにして、カリオストロへと問いかける雫とリリアーナ。

そしてその視線は一緒に居ながら何故こんなと、ジータを責めるような物へとも、

変わりつつあった。

 

「止めたんだよ!私ちゃんと!」

「俺が頼んだんだよ、もっと強い身体になりたいって……」

 

そう、切実に訴える龍太郎の姿が、エリセンでのあの夜、

自身へと涙ながらに強くなりたいと叫んだ香織の姿に重なると、

ジータとしても、どうしても反対しきることが出来なかった。 

ましてや強くなるために、自ら奈落にまで身を投じた男の願いなのである。

そして香織もまた、龍太郎にかつての自分を重ねていたのだろう、

彼の言葉を、決意を聞くや否や賛成したのは言うまでもないことであった。

 

「それにカリオストロさんもミレディさんも賛成してくれた」

 

とはいえど、やはり顔を見合わせるハジメとジータ、その面々の場合は、

賛成と言うより、面白がっていただけではないのかと。

 

「だからって俺に内緒でさ……」

 

ハジメはハジメでカリオストロに与えられた、人体精製諸々の課題に掛かりきりだったのだ。

自分の与り知らぬところでそういう話になっていたのを知ってしまうと、

やはりいい気持ちはしない。

 

「悪ぃ、俺が口止めしたんだ、南雲が聞いたら止めるって思ってさ」

「当たり前だ、TSなんぞ俺の趣味嗜好にはない」

「それによ……」

 

柳眉を歪ませ、ノイントボディの龍太郎が呟く。

その物憂げと言っていい表情は、中身を考慮しなければ実に絵になる姿である。

 

「そうでもしなきゃよ、心配だけ掛けておめおめと戻れねぇじゃねぇか」

「済まない、俺があの帰り道で迂闊なことを言ったばかりに」

「いいんだ、その迂闊な一言に乗っかった俺の方が悪いんだ」

「ま、実務面で言うとだな」

 

そこでまたカリオストロが説明に戻る。

 

「アーカルムカードの力は魂のみならず肉体にも強く紐づけされている、

それを切り離すのはオレ様でも至難の技だ、そこでだ、

性質の異なる肉体に魂を移すことで、その影響力を

何とか薄めることが出来やしないかと、オレ様としては考えたわけだ」

 

そうだ、瀕死となったその身体もだが、

目の前の男は呪いまで抱え込んでしまっていたのだ。

 

「で?効果の程はどうなんだ?」

「ああ……腹も減るし、ちゃんと眠くもなるんだ…………」

 

肝心の痛覚については未だ取り戻せぬままであったが、

それでも……と、涙ぐむ龍太郎。

 

「しかし、コイツはとんでもねぇ不器用だな、オレ様の計算ではその身体なら

ハジメ相手にでも互角で戦えるだけのスペックがあるというのに、

ロクにその力を発揮出来ちゃいねぇ、さっきのザマは何だ、

飛行能力だってちゃんと備えてある筈なんだぞ!」

 

そう、本来ならば飛行能力のみならず、"分解"や双大剣術、銀翼や銀羽といった、

本領を発揮する前に狙撃の憂き目にあったとはいえど、

ハジメを苦しめたノイント固有の能力も扱える筈なのだ。

 

しかし龍太郎本人の資質の問題なのか、それとも魂と肉体とのマッチングに問題があるのか、

それらの能力は未だに扱えぬままである。

それでもその身体能力を生かした格闘術だけでも、

かつての自分を遙かに凌ぐ戦力を得るに至ったのも事実である。

だからこそカリオストロは龍太郎に釘を刺すことを忘れなかった。

 

『カードの呪縛は薄れただけだ、根本の解決は出来ちゃいねぇ、

だから……星の力は決して使うな、使えば使うだけ、お前は人間から遠ざかっていくぞ』

 

ちなみに龍太郎の本来の肉体も、ほぼ元通りに修復され、

保管されていることは言うまでもないことだ。

 

「……なるほどな」

「ごめんね、なんかこういうことになっちゃって」

 

男の親友が女の子になって戻って来る、という普通に生きていれば、

遭遇することはないであろうシチュエーションを味合わせてしまったことについて、

光輝と雫へと頭を下げるジータ。

その視界の端には隠れる様に、ゴメンネと両手を合わせる香織の姿もある。

元々ちゃっかりした部分はあったが、魔物の血肉を取り込んで以降、

そういう所にも、ますます拍車がかかっている様だ。

 

そんな幼馴染たちの様子を苦笑しつつも眺める光輝、

その肩へと何かを促すように雫の手がかかる。

二人は頷きあうとスッと表情を真剣なものに変え、ハジメらの方を向き姿勢を正し、

深々と頭を下げた。

 

「皆、私たちの親友を救ってくれてありがとう」

「借りは増える一方だし、返せるあてもないけれど……

せめてこの恩は一生忘れないことにするよ」

 

素直に感謝の言葉を口にする光輝を見、目を丸くする龍太郎。

 

「お前、ホントに変わったんだな」

「お前ほどじゃないけどな、多分」

「この野郎」

 

軽口を叩きつつもグータッチで応じ合う光輝と龍太郎。

そんな様子を目を細め眺めつつ、メルドがポンと両手を叩く。

 

「さぁ、そろそろ練習を再開するぞ」

 

メルドの言葉に従い、また訓練場へと戻っていくハジメたち、

その背中を見つめながらしみじみとカリオストロは独り言ちる。

 

「雨降って何とやら……か」

「あの……さ」

「全く泣かせやがるぜガキどもめ……って、お前まだいたのか」

 

自分の傍らに居残ったままのノイント、もとい龍太郎へと、

訝し気な目を向けるカリオストロ。

 

「なぁ、ところでセンセェよぉ」

「だからなんだ?」

 

クール系美女がもじもじと恥ずかしがるような仕草は、

見る者に一種のギャップ萌えを喚起させるが、中身を知っているカリオストロには、

一切通じることはない。

 

「トイレ行くとき……俺、どっちの方に入りゃいいんだ?」

 

ああ、そういえばまだ言ってなかったなと、

カリオストロは龍太郎に手短に教える。

 

「今まで通りでいいぜ、流石に慣れねぇ内は抵抗あるだろうからな、

ちゃんと生やしといてやったぞ」

「そりゃどうも……って、あーーーーっ!」

「うるせぇぞ!」

 

急に耳元で叫ばれ、思わず龍太郎へと怒鳴り返すカリオストロ、

何だろうと怒鳴り声を聞きつけたハジメが振り返ろうとするが、

 

「見世物じゃねぇ!お前はお前の仕事をやれl」

 

カリオストロの怒声に、回れ右で訓練場へと戻っていく。

 

「は……は、生えてるって……いいのかよ!」

「いいんだ、一生女のままで過ごす気はないんだろう、

それにな、性器ってのは人体にとって重要なバランサーだぞ、

少しでも元の身体に近い方がいいだろうと思ってだな、オレ様は……」

 

それでも疑念の目を見せる龍太郎であったが、

しかしもとより脳筋の彼が、口でカリオストロに勝てる筈もなく、

そのまま何となく言いくるめられてしまったのは言うまでもなかった。

 

そしてまた時が経過し。

 

王都中央、急場でこしらえられたとは思えぬ威容を見せる多目的ステージにて、

大観衆の中、躍動するハジメと光輝。

 

その観衆の殆どが、先の戦いで傷つき、多くを失った民衆たちであり、

その誰もが思っていた、勇者が、この二人がいればきっとまた王国は、

人間族は立ち上がることが出来ると。

 

しかしそんな喧騒から耳を背けるかの様に佇む、一人の少年の姿があった、

手に失った想い人の形見を握りしめて。

 




後にも先にもノイント龍太郎だなんて真似をしでかすのは、
多分この作品だけかも……。

次回、ハジメvs光輝プラス……。

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