ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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水着アンチラちゃん実にけしからんですなあ……。
ということでウチの団は、もうリアルマネー突っ込む覚悟の者多数。
さすが七十万円の女と言えよう。
あー自分も、ボーボボが三万くらい石配ってくれたらなー天井するのに。


奴ら再び-Arrivano i Marines-

 

 

 

「こんなの嘘ですぅ……樹海が焼けて」

 

自身の故郷が焼き払われていく、あってはならない光景に身体を震わせるシア、

その肩をジータは優しく抱いてやる。

 

シアのみならず、眼下に広がる灰となった木々と、そしてさらに森を飲み込まんとする炎に

一瞬目を背けるハジメたち、あの王都での炎と死に蝕まれた光景は、

それ程までに彼らの心に深い傷痕を刻んでいた。

 

だが、それでも目を背けてばかりもいられない、

今の自分たちにはやれることがあるのだから。

 

ハジメとジータが視線を交錯させ、そしてその手を重ね合うと、

頭上に魔法陣が展開され、そこから六枚の翼を広げた美しき天司が姿を現す。

召喚に応じ、顕現したガブリエルは樹海に慈愛の雨を降らし、

みるみる内に炎を消し止めて行く。

 

「いつもすいません」

 

ガブリエルへとペコリと頭を下げるジータ。

アンカジのみならず、王都でも例のナース姿で人々の治療に力を貸してくれたことを、

思い出しながら。

 

そんな恐縮気味のジータへと、ガブリエルはいつも通りの笑顔で応じる。

 

「お礼はまだ先、大変なのはこれからだから」

 

火災が鎮火したのを確認すると、ハジメたちは樹海の入り口に戻り、

飛空艇を地上へと降ろす。

 

すると、入り口付近に設営されていたテントから一人の少年が颯爽と駆け寄り、

ハジメの手前でビシッ!と背筋を伸ばすと見事な敬礼をしてみせた。

 

「お久しぶりです、御大将ォ!シアの姐御ォ!再びお会いできる日を心待ちにしておりました!

まさか、このようなものに乗って登場するとは改めて感服致しましたっ!」

「ええと……確かパル?だったか」

 

自身の前で敬礼をする、兎人族の少年の姿を記憶の中から何とか引っ張り出すハジメ。

 

「ですから御大将……パルとは違うのですよ、パルとは、

今の俺は"必滅のバルトフェルド"過去を捨てた男でさぁ」

 

あの時のまるで変わらないニヒルな笑みを浮かべるパル少年、御年十一歳である。

さらにはパルに引き続き、揃いも揃って何故か右肩を赤く塗った軽鎧を装着した、

何人かのウサミミたちがハジメへと駆け寄り一斉に踵を鳴らして足を揃え直し、

名乗りと共にピシリと敬礼を決める。

 

「私は、"空裂のミナステリア"!」

「俺は、"幻武のヤオゼリアス"!」

「僕は、"這斬のヨルガンダル"!」

「ふっ、"霧雨のリキッドブレイク"だ」

 

夕日と相まったそれは、まるで独裁国家のポスターの様な絵面だった。

 

 

「なるほどな……やっぱ魔人族は樹海にも手を出していたか」

 

【ハルツィナ樹海】は大迷宮の一つとして名が通っている、

フリードらが神代魔法の獲得を狙っている以上、侵攻の手を伸ばすのは当たり前だ。

 

「肯定です、樹海の方は強力な魔物の群れにやられました、

先手に尽きましては、あらかじめ作っておいたトラップ地帯に誘導出来たのですが……」

ハジメたちを族長の住まう樹海中央へと案内しつつ、悔し気に薄暮の空を見上げるパル。

 

それでも当初はまだ楽観的な予測の下に、戦いは進められてはいたのだ。

樹海の濃霧は魔人族の感覚を狂わせることは実証済なのだから、

しかし、魔人族はともかく彼らが引き連れた魔物たちは、

予測に反し、樹海の霧を易々と突破し、長老たちの集う中枢へと迫ったのだ。

……多くの戦士たちの命を奪いながら。

 

だが、かつて樹海から追放されたパルたちハウリア族が、

大迷宮を魔人族には渡さないという名目で参戦すると、戦の風向きが変わり出す。

 

「それがフェアベルゲンの武門を受け持つ、我がハウリア族の役割!

まさにあれ以来一日も欠かすことなく、演習を続けて来たわけですからな」

 

あれ以来と言っても一年も経過していない、

そもそもいつから武門を受け持つなんて話になったのか?

それはともかく、彼らは武門の一族をあくまで勝手にではあるが、自称するだけはあり、

巧みな情報操作で以って、魔物たちを各個撃破し、

そして最終的には指揮官の魔人族も、トラップ地帯に誘い出し討ち取ったのだという、

しかし……。

 

「奴らも我々と正面から戦うのは愚策と判断したのでしょう……だからと言って、あんな」

 

指揮官を討たれ、一旦は退いたと思われた魔人族ではあったが、

残存部隊は近郊の森林に潜み、付かず離れずの距離を保っていた。

いっそこちらから撃って出るか……そういう意見がハウリア族の間で出始めた頃。

 

灰竜の大群を引き連れた巨獣や巨鳥が空から炎の雨を降らせ、

樹海を焼き払い始めたのだという。

弓も届かぬ空からの攻撃には、いかにハウリア族ともいえど為す術がなかったそうだ。

 

しかもその間隙を縫い、帝国兵までもが奴隷狩りと、魔人族への報復目的で、

木々を焼かれ、霧の護りを失いつつある樹海への侵攻を開始し、

結果、大峡谷から樹海の入り口近辺は、魔人族とハウリア族を中心とした亜人族、

さらには帝国兵までもが入り乱れる乱戦の地となっていた。

そしてその渦中の中で……兎人族を中心とした多くの亜人たちが、

帝国に連れ去られてしまったのだという。

 

「あの時、地上にいたのは討ち漏らしの魔物か……」

「それで父様は……?」

 

シアの問いにパルが答える。

 

「大佐ですか?大佐は」

「た、大佐?」

「はい、自ら同胞たちを救うべく、帝都へと侵入しました、

ですが……それ以降連絡が……」

 

そこから先は流石に言いづらいのか、パルは年相応の表情でシアから視線を逸らす。

と、森が深くなるに従い、霧がようやく濃くなり、

かつてハジメたちを悩ませた、感覚の違和感が彼らの全身を支配し始め、

メンバーの中ではチートと縁がない、

リリアーナや護衛の騎士や文官たちが口元を抑え、足下をふらつかせ始める。

 

「大丈夫?」

「大丈夫です、これくらいでへこたれるわけにはいきませんから」

 

香織たちに支えて貰いつつも、歩みは止めないリリアーナ、

彼女はこれから亜人族を統括する族長であるアルフレリックと、

亜人解放についての交渉に臨むことになっている。

タフな交渉になるであろうことは覚悟の上、

今からこんなことではという思いがあるのだろう。

 

滞りなく交渉が纏まるには早くとも数日はかかると聞いている、ならばその間に。

 

「なぁ、ラナ?だったか」

 

一見まともそうなウサミミお姉さんに尋ねるハジメ、もちろんその期待は即座に裏切られる。

 

「御大将、どうかこれからは"疾影のラナインフェリナ"と、呼んでください」

 

その言葉にシアがまた悲しそうな顔を見せ、ジータが心から申し訳ないと言った風に、

シアの肩に手をやる。

 

「……ラナインフェリア」

「"疾影の"です」

「ハイハイ、で、今動ける人員はどれくらいいるんだ?」

「はっ!以前より我らと懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで、

訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……実戦可能なのは、

総勢百二十二名になります」

「……パンデミック」

 

ぼそりと呟くジータには構わず、ハジメは続ける。

 

「それくらいなら全員一度に運べるな……帝都に行く奴等を募れ、

俺が全員まとめて送り届けてやる」

「は? はっ! 了解であります!この疾影のラナインフェリナが直ちに!」

 

敬礼の後、勇躍し自分らの根拠地へと駆けていくラナ、もとい疾影のラナインフェリナ、

その背中と、ハジメの顔を交互に眺めるシア。

 

「ハ、ハジメさん……その?」

「心配なんだろ、カムたちのことが」

「……」

 

きっとハジメならば、父親たちの捜索に一肌脱いでくれるであろうことは、

シアとてこの旅路の中で理解はしている。

だが、だからこそ、それを自分の口から言い出すことについてはやはり憚られた。

これはあくまでも私事なのだからという……。

 

「ちゃんと言いたいこと言って、ホラ、いつもは一言多いのにね」

 

そんなシアの気持ちを察したジータが、促すようにシアの背中に手をやり、

その温かい手の感触が、シアの心を解していく。

 

「ううっ……わ、私ぃ」

 

シアの大きな瞳から涙が零れだす。

 

「……私、父様達が心配ですぅ……一目でいいから、無事な姿を見たいですぅ……」

「全く、最初からそう言えばいいんだ今更、遠慮なんてするから何事かと思ったぞ」

 

ただ静かに涙を流すシア、その髪をジータが優しく梳いてやる。

 

「シアちゃんはいつもみたいに、思ったことを思った通りに言えばいいんだよ

初めて会った時みたいにね、第一、シアちゃんが笑ってないと、

みんなの調子が狂っちゃうよ」

「わ、私、そこまで無遠慮じゃないですよ……」

 

と、言いつつ無意識なのか意識的なのか、

いつの間にかハジメの胸の中に顔を埋めようとしているあたり、

この娘やりおるわと思わざるを得なかった、女子一同であった。

 

そして数日後、王国とフェアベルゲンとの交渉が無事妥結したのを受け、

ハジメたちは樹海をひとまず発つ事になる。

詳しい合意内容についての説明は省くが、王国側の誠意という形で、

樹海全体をカバーする対空用の結界アーティファクトを、

ハジメが制作し、フェアベルゲン側に提供したということは記しておく事にする。

 

ハジメの力を外交材料に使ってしまう事について、リリアーナは心から詫びたが、

最もハジメとしても、樹海の惨状を捨て置く気分ではなかったし、

元より、リリアーナの義理堅さと自制心の強さは心得ている。

前例を持ちだし、易々と頼み事をするような人物ではないという事も。

 

「ちょっと技術の安売りだったかもね、ハジメちゃん」

「でも、元々これは先生の頼みだしな」

 

亜人解放の言い出しっぺは愛子である、一応快諾こそしたものの、

王国側としてはいわば余計な仕事である。

だが、リリアーナや、新教皇となったシモンは本気で亜人解放に向けて取り組んでくれている。

なら、それくらいのことは、生徒としてやらないといけないのでは?

との思いがハジメにはあった。

 

―――樹海全体をカバーする結界が、"それくらい"なのかは、微妙なところではあるが。

 

ともかく、ハウリア族の志願者らを加えた飛空艇は一路帝国を目指し、

樹海を飛び立つ、香織の再生魔法の力により、

元の青々とした姿を取り戻そうとしている木々たちに見送られながら。

 

 

そして彼らは現在、ヘルシャー帝国の首都に降り立っていた。

煩雑な街並みと、

 

「ヨォヨォ兄ちゃん、いいスケ共連れてるじゃねーか」

「そこのウサミミ一匹よこせや」

 

実力主義という名目上、野放しになっている粗野な人々に閉口しながら。

 

「ヘルシャー帝国ってのは、確か」

「先の大戦で活躍した傭兵団が設立した新興国だっけ?

本で読んでてもロクな人たちじゃないだろうとは思ってたけど」

 

擦れ違いざまに自分のスカートをめくろうとした不埒者を投げ飛ばしながら、

ハジメへと答えるジータ。

 

「うぅ、話には聞いていましたが……帝国はやっぱり嫌なところですぅ」

「うん、私もあんまり肌に合わないかな……ある意味、召喚された場所が王都でよかったよ」

「まぁ、軍事国家じゃからなぁ、住民の多くが傭兵上がりという話じゃし」

 

無理もない話だが女性陣にとっては、やはり気に入らない国のようだ。

 

「無法の街って結構憧れたりとかしてたんだが……」

 

ゴミ箱に頭から突っ込んだ先程の不埒者が、

みるみる間に身ぐるみ剥がされていく姿を目の当たりにし、げっそりとした顔で呟くハジメ。

 

「見ると住むじゃ大違いだな、たく」

 

そんな中で雫は街中のある一点をじっと見つめていた。

その視線の先には、値札付きの檻に入れられた亜人族の子供たちの姿があった。

 

「……やっぱり許せないな……奴隷なんて」

 

腰の太刀が雫の怒りを現すかのごとくに、チリチリとその身を震わせ出す、

しかし、それを咎めるかの様に、耐えているのは皆同じと、

自身を見つめるジータの目を見て、檻から視線を外す。

 

「……わかってる」

 

雫は内心、ここに光輝がいない事に胸を撫で下ろしていた。

自分ですら何とか我慢しているのだ、正義感の強い彼の事、

この街で展開されている光景は、間違いなく看過出来ない物に違いないのだから。

 

「そういえばさ、雫ちゃん、ここの皇帝陛下に求婚されたんだって?」

「……そんな事もあったわね」

 

思い出したくなかった事を思い出して顔をしかめる雫、

が、何故かその時、不意にリリアーナの姿が頭を過る、帝国に近づくにつれ、

明らかに表情を曇らせ始めたその姿を……後の事を思うと、

それはある意味、女の勘だったのかもしれない。

 

「ま、その皇帝、天之河の言う通り、かなりの食わせ者であることは間違いないな」

 

確かに食わせ者でもなければ、一代で国家など築きようがない。

 

「その食わせ者とリリィは……」

 

交渉という武器なき戦いに単身挑まねばならない親友の身を案じ、

ギュと拳を握りしめる香織。

 

「ま、俺たちは搦手から姫さんを援護できればって……オイ?」

 

ハジメはキョロキョロと周囲を見渡したのち、自分の仲間たちの数を

指折り数える。

 

「シャレムがいないぞ、あいつ何処いった」

「あそこだ、あの屋台」

 

シルヴァの示す先には、屋台の長椅子に腰かけ、

怪しげな色のついた液体を、ちゅるちゅるとストローで喉に流し込む、

シャレムの姿があった。

 

「この飲み物なかなか刺激的だぞ、オマエらも飲め」

 

呆れ顔のハジメらには一切構わず、シャレムはお替りまでも注文してみせる。

ちなみに彼女が飲んでいるのはジュースではなく、調味料である……、

しかも激辛の。

 

「もう一杯くれ、あ、金はアイツらが払う」

 

「……撃て」

 

コクリと頷くシルヴァだった。




この作品のハウリア族は、色々な物が混ざってます。
基本はデ〇ーズ艦隊+ギン〇ナム艦隊ですが。
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