ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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ミリンときて次はシオンですか、いずれサトーとかショウユウとかも
登場しそう。
で、ナタクよ、君を一体どこに連れてきゃいいんだ……。


運が悪けりゃ国交断絶

応接室を出、各々の部屋へとメイドたちに案内されるハジメたち、

身の周りの世話は何なりと、とお辞儀をするメイドを、丁重に追い返すと、

ハジメは早速、城内に仕掛けられた侵入者用のトラップや、

警備兵の位置や巡回ルートの確認に入る。

 

これはあくまでもハウリア族の、亜人族の戦い、

自身が先頭に立つことはするまいと、心に決めているハジメだが、

道を開いてやるくらいのことはしてやるべきだとの思いもある。

 

「やっぱりトラップは多いのかな?ハジメ君」

「ああ、でも幸いにもパーティーがあるからな、

解除するのは、会場まで滞りなく辿り着けるルートだけでいい」

「……んっ、あんまりやり過ぎるとボロが出ないとも限らない」

 

ハジメの腕には全幅の信頼を置くユエではあるが、今度ばかりは慎重である。

友人の一族の未来が掛かっているのだ、かつて自身も一族の長だっただけに、

今も自分の傍らで不安な面持ちを隠さないシアの気持ちも、

また、ユエに取って察して余りあった。

 

一方、別室では、ジータが王都に残っている愛子へと、定期連絡を行っていた、

光輝らとのやり取りも、愛子を介して行われる事となっている。

そろそろ彼らもブルックに着いた頃だろうか?

 

「そうですか……姫様はそこまでの決意を」

「ええ……でも、同じ女としてどうも……やっぱり納得いかないんですよね」

「面白くない、の間違いでしょう?蒼野さんの場合は」

 

顔を見合わせ苦笑するジータと愛子。

 

「そういえば、そろそろそちらにも例の報告が届く頃だと思います」

 

外交の本拠たる各国の大使館には、冒険者ギルドと同じく、

情報伝達用のアーティファクトが備え付けられている。

伝達速度こそリアルタイムとは行かないが、

数日内には本国に情報を届けることが可能である。

 

「では、シモンさんがついに……」

「ええ、ついにこの世界の歴史が……変わるんですね」

 

愛子の声は喜んでいるようでいて、戸惑いと畏れの響きも多分に含まれていた。

徒にこの世界の営みに、棹を挿して流されてはならないと、

日々口にしていた自分の願いで、世界の情勢が変わってしまうことに。

 

例え世の為、人の為であっても、過ぎてしまえば、自分たちが第二のエヒトに成り下がる、

その事を胸に改めて刻むジータだったが……その時、

机の上の警報機のブザーが、けたたましく鳴り響いた。

 

 

「ほぉ、今夜のドレスか……まぁまぁだな」

「……バイアス様、いきなり淑女の部屋に押し入るというのは感心致しませんわ」

「あぁ?俺は、お前の夫だぞ?何、口答えしてんだ?」

「……」

 

舐めるような、品定めをするような下卑た目で、かつて十にも届かない年齢の頃、

初めて会った時と同じ目で、リリアーナを見下ろす、粗野で横暴な雰囲気を纏う大柄な男、

これが件の婚約者こと、バイアス・D・ヘルシャー君である。

 

「おい、お前ら全員出ていけ、そこのカカシ共もだ!とっとと下がらせろっ!」

 

バイアスの一喝に侍女たちは慌てて部屋を出て行き、近衛の騎士たちこそ

リリアーナを庇うように立ちはだかるが、かつて王国での親善試合の際、

何人もの騎士が、彼の手で再起不能となっている事を知るリリアーナ自らが、

騎士たちに下がる様に命じる。

 

こうして二人きりの密室となったことを確認すると、それをいい事に、

バイアスはリリアーナに向け、さらに嬲るような言葉を吐いていく。

 

「あの時からな、いつか俺のものにしてやろうと思っていたんだ……なんだその目は?」

 

バイアスは、心底楽しげで嫌らしい笑みを浮かべながら、

顔を強ばらせつつも真っ直ぐに自分を見るリリアーナの胸を鷲掴みにした。

 

「っ!?いやぁ!痛っ!」

「まだ十にも届かないガキの分際で、いっちょ前に俺を睨んだ時よりゃ、

それなりに育ってんな、まだまだ足りねぇが、それなりに美味そうだ」

「や、やめっ」

 

苦痛に歪む、リリアーナの表情が、バイアスの欲望を刺激したか、

そのまま彼はリリアーナを床に押し倒した、リリアーナが悲鳴を上げるが、

外の近衛騎士たちには届いていないようだ。

 

「いくらでも泣き叫んでいいぞ?この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、

外には一切、音が漏れない、まぁ、仮に飼い犬共が入ってきても、

皇太子である俺に何が出来るわけでもないからな、

何なら、処女を散らすところ、奴らに見てもらうか? くっ、はははっ」

「無益ですっ!あと少し待てば名実ともに私は貴方の物となるのに」

 

その言葉は、口にしたリリアーナ自身の心をも、深く抉っていた。

この身は全て王国人民の物、故に自分個人の幸福など追求してはならない。

それが王家に生を受けた者の宿命、そう定め生きて来た、

だからこそ、野盗の頭すら務まりそうにない、この粗暴な男にでも

躰を捧ぐことも出来る筈だという覚悟もあった。

 

だからこそハウリア族を焚きつけた、もちろん亜人たちを救いたいという気持ちが

第一にあることは間違いない、だが、それに乗じ、帝国の国力を削ぎ、

先の襲撃で傾いた王国の地位を、僅かでも取り戻すための、

足掛かりにしたいという狙いが潜んでいたのも、また事実である。

 

だが、そんな覚悟や計算も、目の前の獣のような男に、

これからされるであろう事を思うと、生理的な嫌悪感と恐怖感によって、

容易く掻き消されてしまいつつあることを、リリアーナは自覚してしまう。

だからせめてでもとの思いを込めて、彼女は気丈にバイアスを睨む。

 

しかし、怯えを隠せぬ青ざめた顔であっては、却って逆効果だ。

 

「その眼だ、反抗的なその眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさ」

 

舌なめずりをするバイアス、その表情にはある種の慣れを感じさせた。

 

「俺はな、自分に盾突く奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ、

必死に足掻いていた奴等が、結局何もできなかったと頭を垂れて跪く姿を見ること以上に、

気持ちのいいことなどない……もう病みつきだ」

 

その言葉がリリアーナの予感の正しさを肯定していた。

 

「貴方という人はっ……」

「リリアーナ、初めて会った時、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、

いつか滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ、ようやく夢が叶うぜ……」

 

バイアスはニヤツキを隠さぬまま、リリアーナのドレスを一息に引きちぎり、

リリアーナは肌を隠す振りをしつつ、ネックレスに仕込まれた警報機のスイッチを、

咄嗟に押すのだった。

 

 

「ジータ様!」

「姫様が……どうかお力を!」

「我々ではどうすることも……」

 

警報を聞き、風の様にリリアーナの元へと向かったジータ、

その部屋の前には、歯噛みすることしか出来ない親衛騎士たちの姿があった。

無念の涙に咽ぶ隊長格の男の肩に手をやるジータ、案ずるなと言わんばかりの

力強い笑顔と共に。

 

「暫く向こうに行ってて、あ、私が出て来るまで、

誰も近づけさせないようにしてくれると、嬉しいな」

 

そして部屋の中では、バイアスに押し倒され、

さらに両手を頭の上で押さえつけられ、足の間にも膝を入れられて、

その裸身を隠すことも出来ないリリアーナの姿がある。

 

リリアーナのその目から一筋の涙が零れ落ちる、その涙は、

望んだ通りの結婚なぞ有り得ない、そう覚悟こそしていたが、

本当は、好きな人に身も心も捧げて幸せになりたかった、

そんな普通の女の子の気持ちを抑える事が出来なかったという、ある種の敗北感に満ちていた。

 

(光輝……失態を再三犯した貴方をどうしても責められなかったのは、

貴方にだけはこの婚約の事を打ち明けたのは、こういう事、だったのですね、

私も結局は……貴方と同じ……)

 

「すけて……」

「るせぇよ、大人しく俺様に処女を捧げな」

「助けて……」

「なぁ、リリアーナ、結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、

どんな顔でパーティーに出るんだ?股の痛みに耐えながら、どんな表情で奴等の前に立つんだ? 

あぁ、楽しみで仕方がねぇよ」

 

涙声で助けを求めるリリアーナの姿が、余計に興に入ったのか、

サディスティックは表情でさらに嬲りを入れるバイアス。

 

「助けてぇ!メル……」

「いい加減にしろ!」

 

余りに泣き叫ぶリリアーナに焦れたバイアスが、

その頬を殴りつけようとした瞬間だった。

 

ドアが蹴破られ、このあらいを作ったのは誰だあっ!と、

もちろん叫びはしないが、それでもそんな鬼気迫る表情を浮かべたジータの飛び蹴りが、

バイアスの後頭部に炸裂した。

ジータのフルパワーだと、頭が砕けてしまうので流石に加減はしてあるが。

 

蹴り飛ばされ、壁に思いきり顔面を叩きつけるバイアス、

壁紙が血で染まって行く、どうやら鼻の骨でも折れたようだ。

 

「姫様……大丈夫?」

 

何が起こったのか分からぬままに、ぼ~~っとしたままのリリアーナを抱き起すジータ、

傍らのカーテンを裂いて、彼女の裸身に纏わせることも忘れない。

 

「あ、もしかしてハジメちゃんか……それとも天之河君の方がよかったかな」

 

そこでようやく我に返り、状況を理解するリリアーナ。

 

「な……何てことを!ジータさん自分が何をしたのか、分かっているんですかっ!」

 

嬉しくてたまらないのに、どうして自分はこんな事を言ってしまうのだろうか?

ジータを咎めてから、激しく素直になれない自分へと、

自己嫌悪の表情を見せるリリアーナ。

 

「そうだっ!俺を誰だと思ってやがるっ!」

「女の敵」

 

鼻血をダラダラと流しながら、ジータへと向き直るバイアス。

そこにジータからの辛辣な一言が掛けられ、その顔が一瞬激情に歪むが、

ジータの姿を一瞥するや、嫌らしい笑みをまた浮かべ始める、

飛んで火に入る何とやらとか言いだしそうだなあと、ジータが思っていると、

 

「くくく……随分と可愛らしいナイト様のご登場だな、飛んで火に入る何とやらって奴だ」

 

ジータの事を獲物程度にしか思っていないのであろう、ジータの胸に視線を置きつつ、

ぺろりと舌なめずりすらしてみせるバイアス、その顔はジータに取っては、

かつての帝国兵たちの姿と、重なって思えてならなかった。

 

(上が上ならってことね……)

 

「俺はな、不意打ちをするのは大好きだが、されるのは大嫌いなんだ

ま、今ので俺を仕留める事が出来なかったのが運の尽きと思いな、可愛いナイトさんよ!」

 

そう叫ぶなりジータのテンプル目掛け、余裕の表情で拳を放つバイアスだったが、

ジータは体捌きだけで、バイアスの身体のベクトルを変え、

そして彼の拳はあらぬ方向に向かい、大理石の柱を思いきり殴りつけることになってしまう。

鈍い音が聞こえた、拳にヒビでも入ったようだ。

 

「おっ……ごっ……」

 

呻くバイアスには構うどころか、あろうことか背中を向け、

ジータはリリアーナへと何処か痛いとこない?などと気遣う仕草を見せる、

それがさらにバイアスの怒りに火を注ぐ事を、知っていながら。

 

「俺を……無視すんじゃねぇ!」

 

つい先程までの余裕は何処へやら、バイアスの身体が、

その巨体からは想像も出来ぬ程の俊敏さで宙を舞い、三角跳びでお返しとばかりに、

ジータの後頭部を狙うが、それもまたひょいと頭を下げたジータの上を空振りし、

開きっぱなしの衣装タンスの中に突っ込んで行く。

 

中から悲鳴が聞こえる、角に小指でもぶつけたようだ。

 

「いい度胸してやがる、雇われ犬の分際で……」

 

片足飛びでタンスから、ぴょんぴょんと飛び出してくるバイアス。

 

「オイ、リリアーナ、今すぐコイツをクビにしろ!未来の夫の、

ヘルシャー帝国皇太子の命令だぞ!従わない場合は親父……じゃねぇ!陛下にっ……」

「ふ~~~ん、バイアスたんは、そういう時パパにお願いしちゃうんだ♪」

「パッ……」

 

図星を突かれたバイアスの顔が、鼻血と屈辱で真っ赤に染まっていく、

だが、ここまであしらわれて、実力差に気が付かぬ程、愚かではなかったらしい。

 

「月の出ている晩ばかりじゃねぇぜ……必ず犯ってやる!

その前にたっぷりと悲鳴を聞かせて貰ってからなぁ!」

 

野盗そのものの捨て台詞を吐き、バイアスは忌々し気にジータを睨みつける、

どうやらもう、リリアーナは眼中にないようだ。

ひょこひょこと片足のまま部屋を去っていくバイアスの後姿を眺めながら、

もしかすると、小指の骨も折れているかもしれないなと思うジータ。

 

「姫様、もう大丈夫ですよ……これでもうあいつは私を……」

「どうしてっ!どうしてっ!どうしてっ!」

 

ポカポカとジータの胸を殴りつけるリリアーナ、

目に浮かぶ涙は、助けを求めた自分の弱さへの怒りと、

そして実際に助かったことへの、安堵とが入り混じっていた。

 

「これで我が王国と帝国の関係はっ……もう……」

「もういいよ、そういうの」

 

泣きじゃくりながらも未だ体裁を崩そうとしないリリアーナを、

ジータは子供をあやすように抱きしめる。

 

「もう、やっちゃったものは仕方ないしね、で、どうします姫様?」

 

優しく、諭すようにジータはリリアーナへと問いかける。

 

「私をクビにしますか?」

「へ?」

 

きょとんと、ジータの大きな瞳を覗き込むリリアーナ、

ジータも同じくリリアーナの涙に濡れた瞳を覗き返し、

そして暫しの沈黙の後。

 

「ふ……ふふっ……」

「うふふ……あははははっ!」

 

絨毯の上を転り回りながら、大声で笑い合う二人。

 

「見ました!ジータさんあいつの顔!」

「見た見た、帝国皇太子の命令だぞ!って!あはは!ざまぁみろ!」

「もーホントにどうしてくれるんですか、ふふふ」

「大丈夫大丈夫、ああいうタイプって女の子にヒネられたなんて、

恥ずかしくって絶対口に出来ないもの」

 

そして受けた屈辱は決して忘れず、自分の手で落とし前を付けたがるタイプでもある。

 

(だからもう姫様はしばらく大丈夫、狙うなら……私の方だから)

 

これも思うだけで言わない、言えば余計な心配をまたかけてしまう。

 

(折角、こうして笑ってくれているんだから)

 

リリアーナのその柔らかな笑顔は、為政者の、姫君のものではなく、

普通の女の子の、クラスメイトの笑顔そのものだと、ジータには思えた、だから。

 

「これからは香織や雫と同じようにリリィって呼んで下さい、ジータさん」

「じゃあ私もジータでいいよ、リリィ」

 

(やっぱりあんなのに渡せないよ、同じ女の子として)

 

自分の中の、おせっかいの虫が騒ぎ出したのを自覚するジータであった。

 

 




PV見たのですが、あんな姫様を……バイアス許すまじ。

で、色々考えましたが、ストレートに助けに行かせました
ジータも女の子である以上、そうするだろうと思ったので。
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