ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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逆襲のシャア久々に見たのですが、やはりいいですよねぇ、
人類の命運がかかった戦いを、情けない男どもの痴話喧嘩で締めてしまう富野監督の凄さ。



カリオストロ流美〇術

 

 

「フフッ、可愛い男の子たちねぇ~~いいのかしら?ホイホイ入ってきちゃって、

た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん」

 

一切警戒することなく、店の門を叩いた光輝らの前に現れたのは、

筋肉ムキムキかつ、弁髪姿の濃ゆい顔に加え、

極めて露出度の高い服……いや布地を身に着け、

自分の筋肉を誇示するかのような、ポージングを恍惚の表情で繰り返す、

今までの戦いで見たどんな魔物よりも、遙かに悍ましい……、

普通に生きていればまず遭遇することはないであろう、まさにそれは。

 

「バケモノ……」

 

後退りつつ喘ぐような遠藤の言葉は、ユーリの叫びによって掻き消される。

 

「おい!店の人たちを何処にやった!変質者め!」

 

オブラートに一切包むことなく、ユーリはそのバケモノ、

言わずと知れたクリスタベルへと剣を構える。

 

「ま、待てユーリ、幾ら何でもそれは……」

 

まるでちょっと前の自分みたいだと思いながら、

とりあえず街中で武器は抜くなと、光輝がユーリを制止にかかるが、

 

「あら……坊やたち、いい度胸してるのね?

おねぇさんちょっと本気出したくなってきちゃったわよ

フフッ……二人がかりでもいいわよ、大歓迎、さ、来なさい、

ファニーフェイスの坊やにスッキリヘアのイケメン君」

 

既に時遅く、クリスタベルのハートはすっかりと燃え上がってしまっていた。

声音こそ冷静を装っていたが、その頬は赤く染まり、そして筋肉の鎧は、

ビキビキと脈打ち、何より興奮を隠しきれない歓喜に満ちた表情で、

さぁ!カモン!と言わんばかりに二人に向かい、

クリスタベルは、ぐっ!と大胸筋をせりださせる。

 

「こ、光輝殿……自分は後から加勢します、一番槍はどうか勇者の手で」

「ま、待ってくれ、そもそも君が発端じゃないか!」

 

発情するバケモノを目の当たりにし、情けなくも互いが互いを盾にしようと、

必死で背中を取りあう光輝とユーリ。

 

「怖がらなくてもいいのよ……教えてあげるわ、新しい世界の扉の開き方を」

 

こちらから来ないのなら、自分から……クリスタベルの瞳が光る。

光輝のみならず、ユーリも美少年と言ってもいいルックスの持ち主である、

そんな存在が二人も現れることなど、この田舎町に於いて何度あるか分からない。

ましてや以前、南雲ハジメという、これまた好みの少年を、

不本意ながら取り逃がしているのである。

 

「今日は忘れられない、君たちにとって人生の一大記念日になるわね」

 

そして、遠藤は、その君たちの中に自分が含まれていないことについて、

光輝たちに申し訳ないと思いつつも、同時に、かつてなく己の体質を感謝していた、

そう、心から。

 

しかし安心してもいられない、王宮や迷宮での諜報活動によって鍛え上げられた、

彼の気配感知は、この事態をますますややこしくするであろう存在の接近を、

察知させていたのだから。

 

 

「……慎みが足りねぇな」

「え!?」

 

遅かったか……おまいうと言った風に、一瞬聞き返えそうとして、

遠藤は慌てて口を噤むが、もう手遅れだぜと手に紙包みを持ったカリオストロの目が光る。

 

「慎み……誰のこと……かし……ら?」

 

クリスタベルの目がカリオストロへと向かい、大きく見開かれる。

何故ならば、カリオストロのその愛らしい外見は、自分がなりたくてなりたくて、

でも叶うことがなかった、理想の姿そのものだったのだから……。

 

だからその姿が擬態であることに、クリスタベルは一切気が付かない。

そしてそんなクリスタベルの内面には一切忖度することなく、

カリオストロの舌峰が鋭く火を吹き始める。

 

「今のお前は只のオカマだ、漢女(オトメ)じゃねぇ!」

「言ってくれるじゃないの」

 

羨望と嫉妬に満ちた視線でカリオストロを睨みつけるクリスタベル。

 

「あなたみたいな生まれつきカワイイ女の子には、きっと私たちの気持ちなんて

分からないのよ!」

「生まれつきか……そうかそうか」

 

くっくっくっと、実に悪い笑顔を浮かべながら、カリオストロの手が腰に伸びる、

遠藤はあの深夜の庭園での出会いを思い出す。

まさか……あれを出すのか、ああ出すぜと一瞬のアイコンタクトの後。

 

「コイツを見てもそう思えるか!」

 

カリオストロはスカートをずり降ろす、瞬時に股間に生やしたごく一部を、

まさに見せつけるかのように……。

 

思わず額に手をやる遠藤と光輝とユーリの三人、

その一方でクリスタベルの身体がわなわなと震え始める、

その震えの源は興奮ではなく、戸惑いと憤りであった。

望んで焦がれて、だが決して届かない存在の筈が、

事もあろうに自分と同じ……。

 

「や……やめて……どうして、どうしてそんなのがぶら下がってるの!」

「真のカワイイにぃ~男も女もないんだよっ!~~だからぁ、つまりぃ」

 

"そんなの"をぶらさげた状態で、ズビシィ!とカリオストロは、

クリスタベルへと指を突きつける。

 

「そのお前の過剰なアピールは、何よりお前が真のカワイイを極めきってない、

信じきっていないというという証!いわばコンプレックスの裏返しだ!」

 

心の闇を突かれ、彫像の如く硬直するクリスタベル、

その傍で、過剰なアピールはカリオストロさんだって同じじゃ……と、遠藤は思ったが、

これ以上言うと、間違いなく殴られるので黙っていた。

 

「み……認めない、認めないわ!あなたのような存在が実在するだなんて!」

 

自分が焦がれて焦がれ続けた、少女の姿をした理想を前にし、

嫉妬にその身を振るわせるクリスタベル、そしてあろうことか、

相手が男ならば、クリスタベル容赦せん!とばかりに、

覆いかぶさるかのように、彼はカリオストロへと襲い掛かる。

いてはならない、あってはならない存在を自身の前から抹消するために。

 

だが、冷静に考えればこの世界の人間?としては規格外でも、

それをさらに上回る規格外の相手ではない。

クリスタベルの突進を軽々といなし、カリオストロはクリスタベルの、

その顔より太い首根っこを掴む。

 

「なりてぇんだろ……可愛く」

 

カリオストロはクリスタベルの巨体を軽々とリフトアップし、

仕立て台の上に乗せると、何処からかともなく現れた鎖がその四肢を固定する。

 

「ククク……オレ様が今から願いを叶えてやる、光栄に思いな」

 

カリオストロはボキボキと指を鳴らして、クリスタベルへと迫り。

 

「ヒィィィィィ!やめてぇ!」

 

美少女の姿をした悠久の時を生きるジジイを前にして、バケモノが悲鳴を上げる。

 

「オイ、お色直しに男は不要だ、とっとと出て行け」

「男って……」

 

だったらアンタはどうなんだと、遠藤たちは思うのだが、

これ以上この件については関わりたくなかったので、これ幸いと通りへと逃れていく、

準備中の札を入り口につけとけという声を聞きながら。

 

ぐわわわわわっー!ぎゃあああああっ!

クリスタベルの生々しい悲鳴と共に、建物がぐわんぐわんと大きく揺れる。

そんな店の様子を呆れ顔で眺めつつも、光輝は頭頂部に手をやり、

じょりじょりと旅の間で伸びた髪を撫でている。

 

「長くかかりそうだし……俺、散髪行って来るよ」

「もういいんじゃないのか?もうお前は十分に……」

 

確かに五厘刈りだったのが、五分刈り程度には伸びてはいるが……。

 

「いや、これは戒めであると同時に誓いなんだ、この戦いが終わるまではって」

「戦いか……」

 

やや俯き加減でポツリと呟く遠藤、決して焦っているわけでも、

劣等感を抱えているわけでもないが、何故かその言葉は胸に刺さった。

しかしそんな遠藤を尻目に、いち早くユーリが動く。

 

「じ、自分もそろそろファラの奴を迎えに行ってくるのであります」

 

しまった、出遅れた……遠藤は諦めの表情を浮かべながら、

未だ鳴動を続ける店と、そして光輝らの顔を交互に見渡す。

 

「じゃあ、俺、ここに残ってなきゃだめか……」

「頼む」「お願いします」

「……わかったよ」

 

 

渋々ながら二人の背中を見送って、どれ程の時間が経過したであろうか、

ようやくカチャリと店のドアが開かれ、オラ!とカリオストロに背中を押され、

そこから現れたのは……。

 

清楚にして清潔感溢れるマリンルックのワンピースに身を包んだ、

黒髪セミロングの美少女であった。

 

野次馬たちの間から、ざわ……ざわ……。という効果音が一瞬流れたような気がして、

思わず遠藤は振り返り、そしてかつてクリスタベルであったであろう、

その謎の美少女の姿を、まざまざと凝視する。

 

ゴツゴツとした見るからに自己主張の強かった濃ゆい顔は、

控えめにして、それでも隠し切れない輝きを放つ、端正な容貌へと整形され。

威圧感溢れる筋肉の鎧は、柔らかかつ、白い肌へと矯正され。

しかも二メートル近い身長までもが、カリオストロと同程度まで

縮小されており、豊かな黒髪の先端に結ばれているリボンが辛うじて、

かつてのクリスタベルの姿を偲ばせていた。

 

「く……くりすぅ……恥ずかしぃ……そんなに見ないでェ」

 

野次馬たちの視線に晒され性格までも変化したのか、ドアの陰へと隠れるクリスタベル、

クセの強い野太い声までもが、鈴が鳴るような可憐な声へと変わっていた。

もはやこれは変身を通り越した変形だった。

 

「オラ!隠れてちゃ意味ねぇだろうが、もっと見て貰え、それが望みだろうが!」

 

一度は店の奥へと隠れようとしたクリスタベル?だが、それを許すカリオストロではなく、

抵抗は無意味とばかりにズズズと、いやいやを続けるクリスタベル?を、

通りへと押し出していく。

 

「い、今のくりすって……ど……どぉかな?皆」

 

クリスタベルを良く知る街の人々が、驚きを通り越し、唖然とした表情を見せる中、

当の本人はもじもじと手を胸の前で組み、頬を染める。

 

「可愛い……」

「うん、よく似合ってる、似合ってるよ」

 

そして、ようやく現実を受け入れた何人かから、素直な感想が漏れ聞こえ始めると、

それはやがて祝福の大きな声へと変わっていく。

 

「夢が叶ったなぁ!クリスタベルさん」

「自分が可愛くなれた気分はどうだい?」

「いつも街の為に色々やってくれてたんだもんな」

 

その声に、ただそっと目頭を拭うクリスタベル。

それはいかに自分が街の皆に愛されていたのかという証でもあった。

 

しかし、ただ単にいい話で済ませるわけにはいかないと思っている、

そんな若干空気の読めない男もいる。

 

「ほ、ほら……錬金術って、等価交換とか質量保存とか色々あって……

無から有を単に生み出すだけじゃないって、俺、マンガで読んだんだけど

あれ、おかしくないですか!?」

 

筋肉骨格はおろか、存在そのものが変化したクリスタベルの姿を目の当たりにし、

遠藤はカリオストロへと捲し立てる。

 

「別に錬金術を使ったわけじゃねぇ、カリオストロ流美容術って奴だ」

「美容術?美妖術じゃなくって?」

 

自身の説明に尚も納得いかないのか、珍しく食い下がる遠藤へと

カリオストロは小煩げに手を振る。

 

「うるせぇな、いい事をしてやったんだから、そこは素直に受け止めろ!……ま」

 

カリオストロの視線の先には、はにかむような笑顔を浮かべ、

ありがとう、ありがとうと呟きながら、街の人々に胴上げされるクリスタベルの

まさしく夢を叶えた姿があった。

 

「いくらオレ様でも、恒久的に他者の肉体を変化させるなんて真似は出来やしねぇよ」

 

 

そしてその日の夜。

宿泊先にて、密かにカリオストロを訪ねて来た者がいる、

もちろん言わずとしれたクリスタベルである。

 

「オイオイ、こんな高そうな服、いいのか?」

「せめてものお礼……お代はいいわ、受け取って」

 

白いエプロンドレスをクリスタベルはカリオストロへと手渡す。

 

「これはね……私がもしも女の子だったらって、そう思ってずっと前に作ってたの

けど、もう願いは叶ったから……」

「やっぱり元の身体がいいか?」

「……うん」

 

クリスタベルの声は覚悟と名残惜しさの間で揺れていた。

 

「それに……解ってるの、筋肉や骨格を強引に変形させてるんですもの……

この姿では長くはいられないって事くらい」

「ああ、長く保っても明日の夕方までだ、街中で元に戻るんじゃねぇぞ」

 

それでも名残惜しさを振り切って、クリスタベルはカリオストロへとペコリと頭を下げる。

 

「一日限りの夢、ありがとう」

「で?どうする……望むなら」

 

本当にお前が望む理想の女の子の身体を造ってやってもいい……。

だが、そんなカリオストロへとクリスタベルは明確な矜持を胸に首を横に振る。

 

「ホントの意味で女の子になれなくっても、やっぱり自分の身体だもん

自分が愛してあげなきゃ……ね」

 

その言葉に我が意を得たりとばかりに、カリオストロはククク……と、笑みを見せる。

 

「かつてオレ様に同じことを言って来た奴がいてな」

「その人も……もしかして?」

「ああ……真のカワイイを求め続ける、父性と母性を併せ持つ理想の漢女だ」

 

イッツア・ラァアアヴ!がモットーの愛の伝道師の巨躯をカリオストロは思い出す。

 

「父性と……母性」

 

自らの胸に刻むかのように、その言葉を何度もクリスタベルは呟く。

 

「で、本題は何だ?お礼を言いにわざわざ来たわけじゃねぇよな」

「私の気持ちはさっき話した通り、けれどね」

 

クリスタベルは、不意に遠くを見るような目を見せつつ、

もう一つの願いをカリオストロへと語って行く。

 

「それでも変わりたいって願う子たちの気持ちを……無視することは出来ないわ

身体が変われば、きっと心も変わる……それで悩める子たちの人生を拓くお手伝いが

出来るのならって、そうずっと考えてたの」

 

クリスタベルの言葉に、我が意を得たりと頷くカリオストロ。

 

「なら、伝授してやるぜ、カリオストロ流美容術をな……アレンジは自由だぜ」

 

かくしてカリオストロがクリスタベルに施し、伝授した、この美妖術、

いや美容術は後に色々と生かされる事になるのだが、

またその事は、誰も知る由もない。

 

そして翌日、滞在先であるマサカの宿を出、彼らはいよいよ大迷宮に臨むこととなる。

もっとも光輝とユーリに取っては。

 

「お願いしますぅ~~せめて連絡先をぉ~~」

 

頬を染め自身らに縋りつくソーナちゃんを振り払うのが先だったが。




そしてアフターでの例の話に繋がるという……。
と、いうことで、またまたやらかしたカリオストロさん。
書いていて若干いいのかなと?思ったりもしましたが。
今回に関しましては松田さんのごとく広い心で、「いんだよ細けぇ事は」と、
流して下されば幸いです。

次回からいよいよハルツィナ攻略編です。
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