ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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今回は女子会みたいな話です。
それからジータたちの所持してるスマホの通信機能はオミットされております。


通常攻撃が全体攻撃で三回攻撃の友達は好きですか?

「こっち、こっちからハジメちゃんの気配を感じるよ」

 

リンクを辿り、ハジメたちとの合流を急ぐジータたち一行。

ただ急ぐだけではなく、"追跡"技能で要所にマーキングをしていくことも怠らない。

 

「あっちには回復や防御役がいないから、早く合流しないとね」

 

そしてこっちにはアタッカーがいない、

本来サポートの自分が、先頭に立たねばならぬ状況だ。

 

(せめて……ティオさんか、ユエちゃんがいれば)

 

全体の火力に不安がある現状では、ウォーロックとエリュシオンは、

その真価を十二分に発揮は出来ない。

環境に依存するランバージャックや弱体特化のカオスルーダー、防御特化のスパルタも、

この状況では不向きだ、ならば……。

 

ジータはかつて自分の手には余ると、運用を諦めたジョブをここで敢えて選択する。

自身の火力と仲間へのサポートを両立出来るジョブは、現状、これしか思いつかない。

 

周囲に敵がいないことを、入念に確認すると、

ジータはジョブチェンジを開始する、そして数分後。

全身フリフリふわふわの黒猫スーツに加え、耳付きフードと肉球グローブを装備した、

EXⅡジョブ、黒猫道士の姿となったジータが、光の中から姿を現す。

その手には金色に輝く箒、ルナティックブルームが握られている。

 

「かっ……可愛い~~っ」

 

開口一番、鈴がジータへと抱き着いてくる、

雫も、何かもふもふしたい衝動を抑えているかのような目で、こちらを見ている。

 

(可愛いで済んだらいいんだけど……)

 

このジョブはMPという特殊なリソースを消費する事で、自身や仲間たちに、

攻撃力・防御力の強化や攻撃速度の上昇といった多彩なバフを与えることが出来る。

攻防一体といってもいいジョブなのではあるが、

MPが切れてしまえば、自身のみならず仲間たちへのバフの効果も無効となり、

かつ、反動によって自身は大幅に弱体化してしまうという、

諸刃の剣的な部分も持ち合わせるジョブである。

 

よしよしと鈴の頭を撫でてやりながらも、ま、このジョブを選んだのは、

それだけの理由じゃないけどとジータが思ったところで、

その耳に虫の羽音が届き出す、待っててくれたわけではないだろうが……。

 

「非常時だからOJTは無しだニャ、二人とも」

「ニャ?」

「あ……」

 

語尾だけではなく、手も無意識に爪とぎポーズを取ってしまう。

このジョブの使用をジータが躊躇っていたのは、運用の問題だけではない。

そう、このジョブを使用している間は、見た目だけではなく、

自分の挙動も猫っぽくなってしまうのだ。

 

そして待つこと暫し、人間の幼児程もある、

超巨大なスズメバチがもどきの群れが姿を現す。

 

「キモッ!」

 

黄色と黒の毒々しく攻撃的な色合い、巨大な複眼と顎を一瞥し、

恐怖と嫌悪感を隠せず、ジータの背中へと隠れる鈴。

その顔を見て、何か言いたげな表情を見せるジータだが、

それは後と思い直して、杖を一振りした瞬間、月を象ったかのような光が走り、

スズメバチどもが次々と地に落とされて行く、そしてその中を、

まるで大河を割った太古の偉人のように、進んでいくジータたちだった。

 

(通常攻撃が全体攻撃で三回攻撃まで出来るのよね、このジョブ)

 

ものの数分でスズメバチもどきの掃討は終わり、

またハジメたちへの合流を目指し、足を進めていくジータたち。

そんな中でジータの視線は、自身に並んで歩く鈴へと向けずにはいられない。

 

一見すると、いつもと変わらない様に見える。

だが、どうもここ最近の鈴の元気は、ジータに取ってはカラ元気に思えて仕方が無かった。

鈴もそんなジータの視線に気が付いたのか、何かなと言わんばかりに、

ジータへと視線を返してくる。

 

「ねぇ……鈴ちゃん?」

「うん?」

「……」

 

やっぱり聞くべきではないかと、口籠るジータ、だが。

 

「無理……してるよ」

 

ジータの聞かんとしている事を察したか、鈴は自分からはっきりとそう口にする。

 

「大丈夫な……わけなんかないよ」

 

これまで堪えて来た何かを吐き出すように、鈴は言葉を途切れ途切れではあったが、

ジータたちへと紡いでいく。

無理もない、自他ともに認める親友が、その手を血に染めていたのだから。

整理などそうそうつく話ではない。

だからだろう、率先し、復興活動に従事していた鈴の姿をジータたちは思い起こす。

責任を感じていたのもあるのだろうが、きっと何かをしていなければ、

耐えられる筈も無かったのだと。

 

「辛いなら……戻る?王都に」

 

鈴はジータへと首を横に振る。

 

「正直、堪えてはいるよ……けど、あのまま王都に残ったままなら、

きっと頭がどうにかなりそうだった」

 

自身を苛む"何故?"という罪の意識もそうだったが、

彼女に罪はない事は誰もが理解はしていても、

あいつは裏切者の、殺戮者の親友だという人々の思いは、また別の問題だ。

そしてそんな感情の籠った視線や、声に耐えられる程、谷口鈴は鈍い少女ではない。

 

「恵里に会ったって……何か言えるわけでも、何かが出来るわけも……ないのに」

 

鈴は俯いたままで、自身の心情の吐露を続ける。

 

「……ずっと考えてたんだ、恵里の事……でもね、考えるだけの事を……、

何にも知らなくってさ……ホラ、女子の間でお泊り会……流行った時期あったよね、

鈴、ジータちゃんの家にも行ったよね、奈々ちゃんと二人で」

「あ、ちょっと驚いたんじゃない?二人して」

 

自分の家でもないのに少し自慢げな表情を香織は見せ、確かに……、と。

ジータの……どんな悪い事をすれば、こんな家に住めるんだと、

奈々と一緒に思わずにはいられなかった大邸宅を鈴は思い出す。

ちなみにジータの父はギャラリーを営んでいる……あくまでも表向きは。

で、そんなハイソな蒼野家と南雲家が何故に親戚同然の付き合いが出来ているかというと、

彼らがまだ生まれる以前、ハジメの父親が製作したゲームのOPを、

声楽家であるジータの母親が歌ったことと、そしてハジメの母親の作品の原画展を、

ジータの父のギャラリーで行ったのが始まりである。

 

「でも……恵里だけは、誘っても、そういうお泊りは一度もやらなかったんだよね」

 

とはいえ恵里が一度断れば、それ以上強引に誘うような事は鈴もしなかった。

素直にそういうのが性に合わないだけだと思っていたのだ、

大人しく、遠慮がちなクラスメイト……いや、親友としか思ってなかったし、

そんな事をしなくても、その友情は揺るぎもしないと確信していたのだ、

少なくともあの時までは。

 

「あれって、今思うと、自分も家に泊めないわけにはいかなくなるって事だったんだよね、

だって……私、恵里の家に遊びに行ったことないんだ」

 

彼女と恵里の家は、確か駅から正反対の方向だったとジータは記憶している、

確かに学校帰りに……というわけには行かないのかもしれないが。

もしかすると恵理は、知られる事を恐れていたのかもしれない。

単に家庭環境とかそういうのとは別に、本当の自分を親友に……。

いや、正確には理解される事で、自身の想いが変わってしまう事を……なのかもしれないが。

 

「きっと今の恵里の願いは……光輝くんに殺される事なんだと思う」

 

愛される事が許されないなら、せめて殺されたい、憎んで欲しい、だから罪を犯す。

そうすることで自分の存在を、天之河光輝という少年に永遠に刻ませるために、

そして、自身の罪を清算するため。

 

「でも、光輝くんは……恵里を憎めない……殺せない……、

だから、恵里の願いは叶わない」

 

そんな恵里の願いを承知の上で、自身の思いを殺し、

悲痛な声で勇者として恵里を見捨てる事を宣言し、

その処遇を自分たちに託した光輝の姿は、未だ記憶に新しい。

 

「鈴はやっぱり助けたいんだよね……それでも恵里を」

「助けたいよ……鈴の方が、光輝くんよりもずっと恵里の近くにいたんだから」

 

鈴の声は涙交じりの嗚咽へと変わって行き、

黒焦げになった死体の山に、必死で謝る鈴の姿をジータは思い起こす。

 

「けど、恵里は……神の手先になって、あんなにたくさんの人たちを殺したんだ……

永山くんだってあんなに泣いて……だから、許しちゃいけないんだ……きっと

けど……わからないよ……こんなの」

「わからないなら……わからないでいいニャ」

 

言ってしまってから、慌ててジータは口を塞ぐ、

まただ……これだからこのジョブを使うのはイヤだったのだ。

 

「見てるだけじゃ、傍にいるだけじゃ、そんなことわからないんだニャ」

 

ジータはそっと鈴の身体を抱きしめる。

 

「本当の意味でちゃんとしてる人なんて、きっとそんなにいないし

いたとしたって綱渡りの連続で、心が休まる暇もないと思うニャ」

 

こんな言葉が慰めになるのかはわからないし……、

却って傷を深めてしまう結果になるかもしれないと思いつつも、

ジータは続ける。

 

「きっと恵里ちゃんは、それが人より少し上手かった、それだけなんだニャ」

 

何より自分も知りたかった、香織や鈴ほどではないにしても、

恵里とはそれなりの関係を築けていたと思っていただけに、

あの王都での、自身に向けた憎しみに満ちた眼差しの理由を直接。

 

「だから……わからないってその気持ちを……時には吐き出してくれたら……

鈴ちゃんも少しは楽になれて、わからない何かにも、もしかしたら答えが出るかもしれない

……ににに…ニャア」

 

少しはいい事を言ったつもりなのに、語尾のせいでふざけているようにしか、

聞こえてないのではないか?と、ジータがバツの悪い思いを抱く中。

 

ニッ、と、不意に鈴が笑うと、

 

「ほらほら、ジータにゃん」

 

鈴は猫じゃらしっぽい植物を、おもむろにジータの眼前にちらつかせる。

 

「にゃ……にゃ……」

 

ジータのスーツの耳と尻尾がピンと立つ。

 

「や……やめてぇ、そんなの見せちゃ駄目にゃあ」

「えーお礼だよお礼、話を聞いてくれた……ね」

 

ニコと笑う鈴、もうその笑顔からは先程までの翳りは消えていた、

ホッと内心胸を撫でおろすジータだが、今度は自身のピンチから逃れないとならない。

ジータは必死で身体を捩るが、香織がそうはいかずと後ろからジータを羽交い絞めに固め。

雫までもが、止めてあげなさいと言いつつも、

何処かうっとりとした視線をこちらに向けてくる始末、

 

だが……幸か不幸か彼女らの耳に魔物の咆哮が届き、

香織たちは瞬時に戦闘態勢に移行する、

さしものジータも、この時ばかりは魔物に感謝せずにはいられなかった、。

 

ともかくジータが先頭に立ち、魔物たちを駆逐しながらハジメへのリンクを辿り、

樹海を移動する事、数十分。

彼女らの目の前には、群れを成す猿型の魔物が、ぎゃあぎゃあと吠え猛っている。

たかが猿とはいえど、樹々の間を飛び回りながら放たれる、

四方八方からの投石はなかなか侮れず、しかも棍棒や剣などといった武器まで装備している。

 

「う~ん、流石に数も多いし……ここは手伝って欲しいにゃあ」

 

実際は一人でも余裕なのだが、先程の事を思い出してしまうと、

見物料くらいは働いて貰いたいとの思いが、頭をもたげてきたのだ。

 

そんなジータの気持ちを知るや知らずや、投石の雨に梃子摺りつつも、

彼女の声にどこか和んだ表情を見せる雫らに、微笑みを返すと、

ジータは金色の箒を頭上に掲げる。

 

『ブラックチャーム』

 

先に言った通り、リソースの維持管理に注意を払わねばならないが、

猫を象った紋様が宙に描かれると同時に、

攻撃力、防御力、攻撃速度、弱体耐性を一気に大幅UPさせる破格のバフが、

自身を含む仲間たちの身体を包み、勇躍した雫らが一転攻勢に入る。

 

「でも、これ使うと自分の攻撃が単体攻撃に戻っちゃうのがにゃあ……」

 

折り重なるように自身へと飛び掛かる、猿の身体を数匹纏めて一撃で粉砕するジータ、

全体攻撃ではなくなったが、その分追加ダメージが発生している様だ。

 

「ボス猿は私がやるから、みんなは雑魚を散らしていって欲しいニャ」

 

そう指示を送りつつ、ジータは箒をくるくると月のように眼前で回転させ。

 

『ムーンライト』

 

魔力、この場合は自身の物とは違い、奥義を撃つための武器に籠った魔力だが、を、

リソース用のMPへと変換していくことも忘れない。

 

ともかくジータらが攻勢に転ずるや、みるみる数を減らしていく魔物猿、

そこで魔物猿はまず、最も攻撃力が低いとみた鈴へと狙いを集中させる。

それも倒すのではなく、攫うといった風に……、

どうやら彼女を人質にでも取る作戦なのかもしれない、しかし……。

 

「へっへーん、届かないよーだ」

 

ジータのバフにより大幅強化された鈴の障壁は、魔物猿の爪も牙も通さない。

むしろ集中した分、却っていい的になってしまう始末だ。

 

「いい加減逃げればいいのに……」

 

溜息交じりで魔物猿の群れを睨む雫、ここまで実力差を見せつければ、

地球の猿であればとっとと逃げ出すものを……。

 

「人質を狙う程度の知恵はあるのに……」

 

そう、その中途半端な知恵が、彼らを敗北へと導いてしまう。

彼らは転移陣が読み取ったハジメたちの情報を元に、

自身らの持つ固有魔法"擬態"を使用する、もちろん先のスライムなどとは違い、

魔物猿どもは、半端に知恵が回る。

 

すなわち、どのような人物に擬態して、どのような行動をとれば相手が心を乱すか、

という点を考えることが出来るのである。

だから彼らは単に、最も危険な敵が、最も大切にしている者に擬態した、

まさに浅知恵である。

 

魔物猿は、奥の茂みから擬態した同胞を引きずって来たのだ……。

全身を拘束され、ボロを纏った半裸の傷だらけのハジメの姿を。

 

確かに、ジータたちは傷ついた半裸のハジメの姿を見るなり、

一応は、衝撃を受けたかの如く、固まってしまい……魔物猿どもは、

かかったとばかりに口角を吊り上げる。

さぁ、そこの猫女、お前の一番大切な男を連れてきてやったぞ、さぁ慌てろ、動揺しろと。

……しかし。

 

一瞬驚いた後、ジータたちは輪になりヒソヒソと何やら相談を始める、そして……。

この今となっては貴重な姿を画像に焼き付けんと、

あろうことか一斉にスマホで撮影を始めたのだった。

その理解し難き行動に、こ……これなら?と、

逆に魔物猿の方が動揺しながら、ジータの目の前でハジメ(擬態)を殴りつけ、

殴られたハジメが「……ジータ、助けて」などと言ってしまったものだから大変だ。

 

感極まった香織が、魔物猿どもを弾き飛ばしながら、ハジメ(擬態)の元へ、

駆け寄るや否や。

 

「ねぇ!香織、助けて……って!言って欲しいんだけど!」

 

充血した目をくわと見開いたまま、自身の願望を隠さず叫ぶ香織、

その姿を目の当たりにし、一様に怯えた表情を見せる魔物猿ども。

 

「本物にはこんなこと絶対頼めないし!見せてくれないの!ねぇお願い!」

 

その程度の良識は何とか保っているんだと、

感心していいのか迷いながらも、一応感心するジータたち。

 

「ふふ……本物のハジメちゃんなら、

そこに落ちてる木の実くらい丸呑み出来るんだけどにゃあ?」

 

笑いを堪えながらスイカ程もある木の実を指さすジータ、

それを見て怯えた表情を見せるハジメ(擬態)。

 

「あああ~~、そっ、その顔いいよぉ~グーだよ!ブラボーだよ!ハジメくんっ!」

 

その表情がまたツボに入ったのか、はしたない嬌声を上げる香織。

 

一方の魔物猿どもは、い……いや、我々敵で魔物だし……そんなお願いされても、と、

いった風な、至極まっとうな反応を垣間見せた後、蜘蛛の子を散らす様に逃げていく、

えらい奴らに出会ってしまった、人間怖い、ついて行けないとの思いを共有しながら。

 

そして少し離れた物陰では、ジータたちの姿を見つめる一匹のトカゲめいた……

人間の赤ちゃんサイズのドラゴンと、さらにはゴブリンの姿があった。

小さな翼をパタパタとはためかせつつもドラゴンは、

わなわなと全身から憤怒の気配を漂わせ、

片やゴブリンはそれを宥めるかの様に、ドラゴンの頭を撫でてやっている。

ただし、笑いを堪えてるかのように震えながらではあったが……。

 




一応グラブルクロスなので、今回ハジメはゴブリンではなく
ビィ君スタイルになって貰いました。
(そうでもしないと登場させられないので……)
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