ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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この一連の展開は早めに畳んだ方がいいかなというのと、
自分なりに迷っていることを確定させるべきかもという思いもありまして、
ペースを上げさせて頂きます。



例え灰になっても

 

ガシャガシャと大量の金属音がカリオストロの耳へと届く、

恐らく、迷宮内全てのゴーレムをこの部屋に展開させようとしているのだろう。

 

「流石にキリがねぇな」

 

カリオストロの指先一つで錬成された大量の武具が、

宙を飛んでは、その都度ゴーレムをいとも容易く粉砕してはいくのだが、

しかし粉々になったゴーレムも、またその都度魔力光を帯びながら再生し、

何事もなかったかのように、戦列へと復帰していく。

 

「満足に魔力を使えるようになったのは、こっちだけじゃなく、相手にも有利ってことか」

 

いや、相手には、ほぼ無限に行使できる戦力があるのだ、

このままでは文字通りのジリ貧である。

そんな中で、カリオストロはロゼッタの背後のミレディの姿を視界に収める。

性格的にいって何かを仕掛けてくる事は多分に予想していたが、

未だ彼女は動かず、ただゴーレム軍団を展開させたのみだ。

かといってロゼッタに任せきり、という風にも見えない。

 

(ご自慢の神代魔法、何故使わない……いや、使えねぇのか、もしかすると)

 

だとすればもうミレディには、自分が予想している以上に、

残された時間は少ないのだろう。

急がねばならない、ただ自分は光輝らのお守のためだけに、

ここへ来たわけではないのだから。

 

そこで何かに気が付いたのか、ほうと小声でカリオストロは呟く、

結局、考え無しの吶喊かと思いきや、なかなかどうして。

 

「前言撤回だ、バカはバカなりにってことか」

 

そしてカリオストロの言うところのバカ、光輝、ユーリ、ファラの三人は、

生い茂る茨を、行く手を阻むゴーレムを切り払いながら、

何とかロゼッタに、ミレディに肉薄せんと試みている。

そんな彼らの耳にも、当然のことながらゴーレムのさらなる軍団が、

こちらへと向かいつつある音が届いている。

 

このままだと恐らく物量で押し切られることは彼らとて承知している、

何より自分たちが保たない、その前にせめて……。

 

「行ってください」

 

焦りを覚え始めた光輝へと、ユーリが声を掛ける。

 

「余力が残っている間に、我々は勝負をかけねばなりません」

「今がその時っす!」

「分かっている……けど」

 

大技を使って強引に道を拓けば、先程の様にカウンターの餌食である、

かといって確かに小技では埒が開かない。

 

「今は出し惜しんでいる余裕はないっすよ!」

 

ファラの言葉に頷く光輝、確かに届かないまま、

ここで倒れてしまうわけにはいかない、

ましてや、あれだけの大口をすでに叩いてしまっているのだ。

 

カリオストロの推察通り、確かに光輝には考えがある、

だが、そのためには……。

悠然とした表情でこちらを見据えるロゼッタと視線が重なる、

それはまるで光輝へと何かを促しているかのようだった。

 

「二人とも頼む」

 

光輝の言葉に待っていましたとばかりに頷く、ファラとユーリ、

その身体に光の魔力が迸り始める、それは光輝から見て、

自分たちとはまた違う種の魔力のように見えた。

 

「「必殺!」」

 

二人は声を合わせ唱和する。

 

「突!」

 

光の魔力を纏い、ゴーレムを薙ぎ倒しながら突撃するユーリ、

 

「撃!」

 

さらに飛翔し、上空から茨を切り裂く大上段からの一撃を振り下ろすファラ。

茨の壁が切り払われ、ロゼッタを護る結界がついに剥き出しとなる。

 

そして、二人は空中で互いの身体を交差させると、

そのまま同じタイミングで結界の中枢へと、渾身の力で斬り込みをかける。

 

「「双破刃!」」

 

空を切り裂く破裂音と、そして何かがズレるような音が、

立て続けに響き、ついにロゼッタの薔薇の牙城が崩れ落ちる。

しかしその代償は大きい、切り裂かれた茨の蔦がそのまま刃と化して、

ファラとユーリの身体を切り裂き、刺し貫く。

 

「二人ともすまない!だが、俺は俺の役目を果たす!」

 

視界に僅かに飛び散った血の赤を認識しつつも、もう振り返ることなく、

ここまで温存していた"限界突破"を使用する光輝、

いや、それだけでは足りない。

光輝の身体がさらなる魔力の輝きに覆われる。

 

"限界突破"終の派生技能[+覇潰]。

 

"限界突破"の上位技能にして、基本ステータスの五倍の力を得ることが出来る。

文字通り最後の切り札である。

かつてはあのオルクスでの危機の中での感情の昂りにより、

偶発的に一度発動したに過ぎなかったが、あの王都でのジャンヌとの訓練、

そしてハジメとの模擬戦の日々が、彼自身の意思による発動を可能としていた。

 

「骨は拾ってやる……全て出し尽くしてみやがれ、だからぁ」

 

そしてそれに呼応したかのように、カリオストロのエプロンドレスが、

まるで天使の羽根を思わせるかの如くはためき始める、

そしてカリオストロは、そんな天使の姿態でもって、

文字通り悪魔の所業を実行する。

 

「カリオストロのために頑張ってェ♪……エンデュミオン」

 

カリオストロが虚空に指を翳すと、天使の羽根のような何かが光輝らへと舞い降りる。

 

「魔力が……」

 

光輝たちは己の傷ついた身体を魔力が満たしていくのを、

確かに感じていた。

カリオストロの使用したこのアビリティは魔力の完全充填のみならず、

全てのアビリティ、技能の再使用が即座に可能となる。

もっとも属性の縛りがあり、遠藤に関してはその恩恵を今一つ享受することが、

叶わなかったようであったが、それはともかく。

 

「光輝……この期に及んで小細工なんぞ承知しねぇぞ」

「おおおおおっ!」

 

そんなカリオストロの言葉が耳に届いたのか否か、

果たして光輝の身体が叫びと共にさらなる輝きを帯び始める、が。

純白の光に混じり、今度は赤い霧までもが光輝の身体から一気に噴き上がる、

あろうことか彼はただでさえ強烈なデメリットがある"限界突破"を、

そしてさらにその上位技能"覇潰"を重複して使用したのだ。

それが肉体にどういう影響を及ぼすのかは、想像に難くないだろう。

 

自身の視界が深紅に染まり、自分の全身から鉄錆のような臭いが漂いだすのを認識する光輝。

ステータスの急上昇に器である肉体が耐えきれず、崩壊を始めているのだ。

しかし痛みはまるで感じない、それどころか自分の心が小波一つも無く、

ただただ澄み切っていくのを光輝は如実に感じていた。

 

それは正義も悪も神も魔もない、ただ純粋なまでの闘争本能だった、

不意にハジメに案内された、奈落の闇がフラッシュバックする。

ああ……あの地の底でアイツもきっと……。

 

(これが……俺の中に棲まう獣……)

 

かくして、これまで散々口にしてきた小利口な理屈を全てかなぐり捨て、

己の中の衝動を解放し、光輝は猛然とロゼッタへと襲い掛かる。

それはまさしく闘争のための一匹の獣、いや獅子と呼ぶに相応しかった。

 

「やるじゃない、けれど花が最も美しいのはね、散り際なのよ!」

 

ロゼッタの目は今の光輝が文字通り命を燃やしながら、

この場に立っていることを見抜いていた。

しかしそれでも彼女は非情なまでに光輝とマトモに戦おうとはしない、

戦士の誇りなど戦場には無用とばかりに。

 

それはただひたすらに理想を求める子供と、

そんな子供に、ほろ苦い現実を教えようとする大人との戦いでもあった。

 

光輝が死力を尽くせば尽くすほどに、花園を舞うかの如く退いていくロゼッタ。

それは花から花を渡り歩く蝶のようでもあり、一方、ようやく捉えたこの機会を逃すまいと、

自然の流れに、己の心に任せるままに、まさに蝶を追う蟷螂のように剣を振るう光輝。

それは華麗なる勇者の技ではなく、自分が最も慣れ親しんだ八重樫の剣技だった。

 

(結局はここに戻るんだな……)

 

そんな皮肉気な思いを光輝がふと抱いた時だった、

握った聖剣が震えだし、まるで怖れを為すかの如く点滅を始める、

止めろ、これ以上やると死ぬ、と、言わんばかりに。

 

「静まれッ!俺を選んだのなら最後まで付き合え!己の任を全うしろッ!」

 

主の一喝にまた輝きを取り戻す聖剣、が、

ここでぐらりと天地が逆転するかのような眩暈が光輝を襲い、

同時にその口から大量の血が溢れ出し、一瞬ロゼッタの動きが止まる。

しかし……肉体は死に向かっていようが、心は魂はまだ燃え尽きてはいない、

その証に、聖剣の一閃がついにロゼッタのドレスを掠める。

 

「俺はっ……敵に心配される程……まだ堕ちちゃいない!」

「こんなところで朽ち果てるのが坊やの本望ってわけかしら?乳酸菌でも摂ったらどう?」

 

腰の短剣を抜き、切り結びながら呆れ声で問うロゼッタ。

だが、同時にこうも思う、獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすという、

目の前の相手に真剣になれぬ者に、どうして勇者を名乗る資格があろうかと。

しかし、それを抜きにしても、光輝のそれは良く言えば純粋、

悪く言えば極端に過ぎる。

 

(飽きさせない……ね)

 

そう光輝を表したカリオストロの気持ちが少し理解出来た気がした。

 

「そんな生き方を続ければ、いずれ貴方は破滅するわよ、ましてや

こんなところで朽ち果てたら己の身を呪うにも呪えないわよ」

 

いずれどころか、今まさに破滅への階段を昇ろうとしている少年へと、

若干揶揄するかのような口調でロゼッタは問いかける。

 

「例えそうだとしても、代わりはもう見つけている」

 

今ならはっきりとあの夢の意味が分かる、墓に埋まっていたのは、

南雲ハジメではなく、自分自身だったということが。

 

「坊やの後釜だなんて、随分と迷惑な話じゃないの」

「教室で楽をしてた分、勇者の……いや、俺の命、せいぜい高く売りつけてやる、

世界平和じゃ到底足りないくらいの値段でな!」

 

我ながら勝手だなと思うが、今くらいはいいじゃないかとも思っていた。

どうせ向こうも、自分についてロクなことを思ってなかったに違いないのだから。

 

 

そして、その頃……陰に潜んでいたもう一人、遠藤浩介がまた動き始める。

 

(ここまでなら……大丈夫)

 

自身を睨むかのような花々へと、睨み返すかのような視線を返し、

遠藤は呼吸を整える。

 

何度も何度も阻まれた隠形ではあるが、

ただ無意味な失敗を繰り返していたわけではない、

痛みに堪えながらのトライアンドエラーの中で幾つか気が付いたこともある。

 

例えば……あくまでも反応しているのは薔薇の花であって、

ロゼッタ本人、ましてミレディではないということなどだ。

ロゼッタが光輝との戦いに、集中している、集中せざるを得ない今ならば……

 

「俺みたいな奴は……結局こうして地道にやるしかないからな……」

 

だからあえて最初の数回は捕まってみせた、自分の本気を悟らせないために。

 

遠藤は懐から、以前カリオストロに作って貰った、

幾枚かの人型を象どった形代を取り出す、自身の毛髪を組み込んだそれは

いわゆるチャフの役割を十分に果たしてくれる筈だ。

 

頭上を見上げる遠藤、天井までは蔦の上を這えば、それほど難しくなく辿り着ける。

 

(後は……スピード勝負……だな)

 

そして遠藤はこれまで培った本気の隠密術で以って、行動を開始する。

ルートは何度も頭の中で反芻している、目を閉じていても走破出来る、

そして目標は……。

 

まさに忍者の如く天井を駆け、宙へとダイブする遠藤、

しかしそこで花々が遠藤の存在を察知し、まるで剣のような蔦か今度こそ真っ二つにせんと、

空中の遠藤へと斬りかかるが、

彼の放ったチャフにより、蔦の目測はみるみる内に狂い始める、

 

だが、チャフの影響を受けなかった幾本かが、遠藤の身体を捉えようとする、

しかし。

 

「根性っす!」

 

そんな叫びと同時にまたしてもファラが遠藤を庇い、

その身に無数の棘を受け、花園がさらなる血の赤に染まっていく、さらに……。

 

「俺が活路を開く!」

 

いつの間にか接近していたユーリが大上段から剣を振り降ろす、

だが、その目標はロゼッタではない、ユーリが狙ったのは、

小さな身体を震わせながら、戦況を見守っていたミレディだった。

 

「おわっ!こんな形で不意を突くとはね、やるねぇ」

 

しかしユーリの一撃は、ミレディの障壁によって止められる。

 

「ぐっ……」

「痩せても枯れても"解放者"だよん、チミのようなルーキーが不意を討とうったって」

 

確かに痩せても枯れても解放者だ、完全に虚を突いたと確信して振るった、

ユーリの刃を苦も無く受け止めたのだから。

しかし、ミレディはユーリの……その、どこか納得したかのような表情に、

微かな違和感を覚えていた。

 

「悔しく……ないのかい?」

「俺なんてまだまだ修行が足りませんから」

 

ミレディの問いにユーリはただ静かに微笑む、

彼のその笑みの意味を、ミレディが一瞬考えあぐねたその瞬間、

横合いから遠藤が彼女の身体を抱え込み、空中へとかっさらった。

 

「こっちのおばさん!ミレディさんはこの通り!こちらが確保したぞ!」

「おば……っ」

 

ミレディの喉元らしき箇所にナイフを突きつけ、

坊や呼ばわりの仕返しとばかりに叫ぶ遠藤。

 

「何度でもやり直せるなら、傷つく価値もあるってもんだ!」

 

遠藤の声に苦笑するロゼッタ、その笑顔を見て光輝も緊張と共に構えを解いていく。

 

「最初から狙いは私じゃなかったのね」

「ええ、それに言ったじゃないですか、越えて行けって、

……倒せと言われたら困ってましたけど」

 

それでも途中からは作戦の事は半ば頭の中からあえて消していた、

本気でなければ、命を捨てねば、この薔薇の女王を欺くことは出来なかったに、

違いないのだから。

 

「ちょ、ちょっと!何いい雰囲気になってるのさ、試練はこれで終わりじゃないよ!」

 

遠藤に抱きかかえられたまま、異議を唱えるミレディ。

遠藤一人だけならば、振りほどくのも苦はないのだろうが、

生憎とカリオストロがすでに睨みを利かせている。

 

「あら?不満ならもう一度やり直してもいいわよ、けど」

 

ロゼッタはこれ見よがしに光輝へとしなだれかかり、腕を絡める。

 

「その代わり、今度は私こっちに付くわね」

「いやあ!ロゼッタさんのような強くって美しい人が味方になってくれるだなんて!

これはもう勝ったも同然ですね!」

 

これまでの鬱憤を晴らすかのように、あからさまな大声で叫ぶ光輝、

その気になれば、彼もこれくらいの意趣返しは出来るのだ。

 

「ううう……」

 

言葉を詰まらせるミレディ、彼女とて光輝たちの死力を尽くした戦いぶりには、

大いに感じるところがあったのは事実であるのだから……。

 

「ほら、ミレディさんも行ってたっすよね」

「はい、確かに言い訳無用と聞いたのであります!」

 

ファラとユーリの言葉にミレディは観念したかのように軽く頭を振る。

 

「分かったよ、釈然としないけど……負けは負けさ」

「か、勝った……勝ったぞオイ!天之……河」

 

遠藤の歓喜の声と、ミレディの敗北宣言と同時に、"覇潰"の効果が切れたのか、

いや、精神の緊張を解くことで、肉体が限界を思い出したのか……。

全身を朱に染め、ついに光輝は地に膝を衝く。

 

(はは……少しやり過ぎたか)

 

爪から目から耳から、全身の穴と言う穴から出血し、

赤く染まった視界は闇に包まれつつあった。

 

遠藤が、ミレディが何かを叫んでいるようだが、もう今の自分にはどうでもいい。

いや、どうでもいい……というわけにはいかないのだろうが、

今の光輝には不思議な充実感があった。

 

(お祖父さん……やったよ、初めて……)

 

それは、望みは全て叶うと信じきっていた少年が、

初めて心から勝利を渇望し、そして勝利することの尊さを、

望みを叶えるための険しさを知った証だった。

……例えそれが自分の手に拠る物でなかったとしても。

 

むせかえるような自身の血の臭いに混じって、ほのかな薔薇の芳香が鼻腔に届く、

ふと視線を上げると、そこにはロゼッタの笑顔があり、

光輝は満ち足りた表情で、その傷ついた身体をロゼッタの胸の中に預けて行く。

 

「お疲れ様、勇者くん」

 

こんな美しい人の腕の中でなら……勇者冥利に尽きる、と思いながら、

光輝は意識を手放していく、その耳にミレディの絶叫が届いた。

 

「これが……こんなのが勝利だっていうのかい!」

 

絶叫するミレディ、全身から噴水の如く鮮血を溢れさせる光輝のその姿は、

どこから見ても致命の域に達しているとしか彼女には思えず、

何より、そんな光輝の姿を確認して置きながら、平然としているカリオストロらの表情も、

ミレディに取って信じ難き物であった。

 

「目的の為に平然と味方を使い捨てる……こんなやり方……」

 

ミレディの脳裏にかつての……神の名の下に平然と非道を行った、

聖光教会の騎士たちの姿が甦る。

 

「勝ちは勝ちっすよ、ね」

 

さらにそんな自分の嘆きなど、どこ吹く風のファラの口調がミレディの怒りに火を注ぐ。

 

「ふざけるな……ふざけるなよ」

 

ミレディの声に身体に怒気が籠って行く、

その姿こそがミレディ・ライセンがいかなる者かを如実に表していた。

 

「勝てばそれでいいって奴らなんかに、神代魔法を授けたりなんかしてやるもんか!」

 

次いでミレディの視線は今まさに命の灯が消えようとしている、

少なくともミレディの目にはそう見える、光輝へと注がれる。

 

「さぁその子を今すぐ助けろっ!返せよ!戻せよ!産めよ!」

「大丈夫です、ホラ」

 

憤怒で声を荒げるミレディを宥めるかのように、遠藤が声を掛ける。

彼が目で促したその先には、余裕の表情を隠さないカリオストロがいる。

 

「カリオストロさんが、ああいう顔をしている時は」

 

とはいえど、そういう自分も血みどろの光輝の姿に若干焦ったりはしていたが。

ともかく、遠藤の言を受け、やれやれとばかりにカリオストロが口を開く。

 

「こいつの歩もうとしてる道はな、こんな程度で終われるほど楽じゃねぇんだよ、オラ!」

 

ロゼッタの豊かな胸に倒れ込もうとした光輝の首根っこを、

カリオストロは容赦なくぐいと掴んで引き剥がす。

 

「寝るにははぇぇぞ、勇者で在りたいのなら……灰になってなお、

羽ばたき続けなきゃならねぇんだ」

 

と、カリオストロが言い終わるか否かの内に、光輝の傷がみるみる治癒、

いや再生していく、まるで映像の逆回しを思い起こさせるかのように。

 

光輝らに行使したアビリティ『エンデュミオン』のもう一つの効果、

それは瀕死状態に陥った対象を即座に全快状態で蘇生させるという物だった。

 

従って光輝の傷は見る間に塞がり、元の爽やかイケメンに戻るまで、

ほんの数瞬の時間しか必要とはしなかった。

 

「死の手前ってのを知った気分はどうだ?爺ちゃんに会えたか?」

 

やや不穏な言葉を吐くカリオストロへと苦笑で応じる光輝。

 

「ね、ホラ」

「何だコースケ、お前もちょっとはオレ様を疑ってたんじゃねぇのか」

 

何処か得意げな遠藤、その足下には自分が一杯喰わされたことを、

自覚したのか、わなわなと身体を震わせへたり込むミレディの姿がある。

対照的な二人の表情を交互に見やりつつも、

カリオストロはミレディの叫びを思い出していた。

 

(勝てばそれでいいって奴らなんかに、神代魔法を授けたりなんかしてやるもんか!)

 

光輝も恐らくカリオストロと同じようなことを思ったのだろう、

不意に呟きが漏れる。

 

「……そんな人たちだから」

 

神に立ち向かう事を決意し、同時に、その優しさゆえに、

彼らは神に敗れ去ったのだ、と。




というわけで決着です。
早ければ今日中には続きを投下出来るかもしれません。
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