それから悪のサイレンススズカことエニュオはプレイアブル化はせずに、
マルチのボスキャラで登場しそうですね。
そもそもあんな凶悪な子、おいそれと仲間に出来ない。
(ロベリアやニーアとはまた違うヤバさがあって好きなのですが)
それはさておいて、そろそろ完結を意識して少しペースを上げて見ます。
ハジメたちはビッグフットの群れを退け、ついに氷雪洞窟への侵入を果たしていた。
「南雲君の作ってくれたこれ、凄いね」
鈴は両手に握ったハジメにより専用武器として貰い受けた二つの鉄扇を、
誇らしげにパラリと開閉させる。
この鉄扇には幾つかの神代魔法と、それに付随した能力、
さらに、血液による認証効果を利用した詠唱省略機能が付与されている。
「"聖絶・爆"だっけ?あのカウンター凄かったよ」
頭上へと伸し掛かろうとしていたビックフットの巨体を一撃で弾き飛ばした、
鈴の姿を思い出しながら、うんうんと満足げに頷く香織。
その右手には、やはりハジメに作って貰った新たな武器が握られている。
もちろんこの二人だけに限らず、ユエを始めとする彼女らは、
武器に留まらぬ装備品の数々をハジメより提供されこの大迷宮に臨んでいる。
例えば全員が装着している戦闘用ゴーグルもその一つだ。
流石に純正の魔晶石ゴーグルを常時装備出来るのは、
ずば抜けて高い魔抵能力を所持するハジメとシャレムしかいないのだが、
長い旅の間に上達した錬成能力と昇華魔法、そしてクラフト技術でもって、
一般人は無理でも、クラスメイトレベルのステータスがあれば装着可能な物を
造り出すことにハジメは成功していた。
もちろんハジメらの使う純正品よりはスペックが落ちるのは致し方ないが。
「熱っ!」
「シア、結界から出るなといったろう」
「ううう……なんで迷宮に雪が降ってるですかぁ」
そう、この大迷宮、洞窟であるにも関わらず不思議なことに常に雪が舞っているのである。
さらにこの雪はドライアイスのように極めて低い温度で出来ており、
触れると即座に凍傷を起こしてしまうのだ。
前方から吹き付ける風に乗って降りかかるので、
鈴が前方に障壁を張って散らしているのだが。
「うおっと!」
今度はハジメが結界からはみ出しそうになり、
慌てて結界の中へと逆戻りする。
「あーくっそ、落ち着かないな、やっぱこの光景」
ハジメのボヤキに分かる分かると頷くジータたち。
大迷宮の通路自体は広く、横に十人並んでもまだ余裕がありそうな程なのだが、
しかし、全ての壁がクリスタルのように透明度の高い氷で出来ており、
そのためまるでミラーハウスのように、
周囲の氷の壁に映る自分たちの姿に気を取られては、
結界から出てしまったメンバーが、アチチと凍傷を起こしてしまうというわけであった。
「この防寒用アーティファクトがなかったら、どうなってたのかしらね?」
雫の言葉に香織が結界の外に魔法で水を飛ばすと、放たれた拳大の水球は、
空中でビキビキッと音を立てて瞬く間に凍てつき、
そのまま地面に氷塊となって落ちてしまう、
「これじゃ水筒も役に立たないだろうしね、しかも……」
「その辺の氷を削って溶かそうにも、ここでは炎系の魔法行使が阻害されるようじゃし」
「……ああはなりたくないよね」
ジータとティオの視線の先には、眠るように目を閉じたまま、
標本のごとく氷の壁の中に埋まっている男の姿があった、
典型的な遭難、凍死者である。
「しかし、おかしいというか、随分綺麗に壁の中に埋まっているな」
「はい、まるで座り込んでいた場所まで氷の壁がせり出てきたか、
座ったままの状態で壁の中に取り込まれたみたいな……」
「……魔力の反応は氷壁でもないし、死体にも見えないね、何だろ?」
ゴーグルによるスキャンを終えた鈴が結果を伝える。
「どうする?」
「まぁ、念の為、トドメを刺して……いや、壊しておくか」
死者に鞭打つ行為を承知で頷き合うハジメとジータ、
屍人兵のことを考えると今更な気もしたが……。
ナムナムと、とりあえずは合掌する鈴、その姿を横目に、
ハジメは昇華魔法により新たに作り直され、スペックが底上げされた、
ドンナーを抜き、死体に向けて引き金を引くのであった。
「どうかな?」
「死体にも氷壁にも反応はないね……」
「弾の無駄だったか、行こう」
何事もなくほっとしつつも、やや拍子抜けしたような気分で、先へと進むハジメたち。
彼らが洞窟の奥へと消えてしばらくの後、
「ごぁ、がぁ、グギィ……」
氷のひび割れるような音と呻き声が密かに木霊したことにも気が付かず。
「まともに探索したら結構手間だなあ」
「羅針盤様々だね
迷宮は、かなり複雑に枝分かれした迷路となっていたが、
ジータの言葉通り、羅針盤のおかげで深奥への道に迷うことはなかった。
「今でどれくらいかなあ?」
「全体の三分の一って感じかなっと、またあったよハジメちゃん」
鈴の問いに応じつつ、ジータは通路の先で、
また氷壁に埋め込まれたような死体を発見する、肌と耳に特徴がある、
魔人族の男だ。
「これで五十人か……」
「フリードが攻略したことで挑む人数も増えたんじゃないかの?」
「どれだけの人間が……挑んだんだろうね」
そっと祈りを捧げながら香織が呟き、シルヴァもまた瞑目する。
「攻略情報があれば行けると踏んだのだろうが、この環境ではそう簡単にはいくまい」
「しかし……いいのか?」
「いいって?」
シャレムの言葉に振り向くハジメ。
「わたちが思うに、恐らく連中は国を挙げて挑んでいたのかもしれん、
そう考えると、フリード以外にも攻略出来た奴がいるかもしれんぞ」
「シャレムさんは王都の、残して来た皆を心配してくれてるんですね」
思案を巡らせるジータ、確かに内通者の可能性は徹底的に潰してはいる、
大結界も以前以上に強固になって修復され、それを警備する兵士たちも、
高い危機意識を持って勤務に励んでくれてはいる……。
と、備えは十分には思えるが、相手にはこちらの事情に精通した恵里がいるのだ、
正直な話、何を仕掛けて来るかは予想がつかない。
正面から来て貰えれば、龍太郎とジャンヌがいる限り、
戦力的には安心は出来るが……。
「天之河たちはまだライセンの攻略にかかりきりだろうしな……
レーザーはあと一発は撃てるから……」
歩きながらも考えに没頭し始めるハジメの横顔を、ただ静かに眺めるジータ、
いつか感じた思いがその胸に甦る。
図らずも強大な力を得てしまったハジメを孤独にさせないための、
寂しい生き方をさせないために、自分が心を砕いてきた行為の数々は、
もしかすると自分たちを阻む障害となって、立ちはだかることになるのかもしれないと、
だが、今、目の前の少年はその障害に自ら取り組み、乗り越えようとしている。
もちろん何を優先するのかは、ハジメの中では明確に定められているのだろう、
だが、きちんとこの世界のこともハジメの心の天秤にはちゃんと掛かっている。
そのことが今のジータには無性に嬉しくてならなかった。
「うん?」
自身を見つめる熱い視線に、ようやく気が付いたか、
不思議気にではあったが、ジータへと顔を向けようとするハジメ、
それを察知し慌ててジータは視線を逸らし、ついでに話題も逸らそうとする。
「な、何でもないの、あ、次四つ辻みたいだよ」
そのわざとらしい様に、幾らなんでもと何人かが顔を見合わせる、
やはりこの二人の関係は、成熟しているようで、どこか初々しさを残したままであった。
ともかく、ジータの言った通り、少し歩くと彼らは巨大な四つ辻に出る。
ハジメが再び手元の羅針盤で方角を確かめたようと立ち止まった時、
不意にシアのウサミミが反応した。
「ハジメさん……何か来ます」
「魔物か?ようやく出て来たな、どこからだ?」
シアの警告に全員が瞬時に戦闘態勢を取る。
「……四方向、全部からです」
「なに? 後ろからもか?」
「そんなぁ!ちゃんと確認してたのに」
背後からという言葉に、鈴が悲鳴のような声をあげる。
それから数秒後、通路の暗がりの向こう側から何とも怖気と不快感を誘う、
呻き声のようなものが聞こえ始め、
そして、全身を凍てつかせ、瞳を赤黒い色で爛々と輝やかせた、
魔人族の死体が次々と通路の奥から溢れ出す。
「チッ!こんなことなら」
やはり情けも容赦もなく、片っ端から壊しておけばよかった、
しかも数が多い、見ただけでゆうに百体は超えているだろう。
そして数が揃うや否やフロストゾンビたちは、ハジメたちへと猛然と突進を開始する。
大口を開けて歯を剥き出しにして突進してくるその様は、まんまバイオハザードである。
「人海戦術にも程があるぞ!フリードさんよぉ!」
「ボヤいている暇があれば、攻撃しろハジメ」
いちはやくライフルを構えるシルヴァに呼応し、
ハジメの二丁拳銃が火を噴き、ユエがティオがシャレムが次々と魔法を放っていく。
絶大な破壊力を秘めたそれらの攻撃は、突進してくるフロストゾンビどもを、
苦も無く粉砕していく。
「随分と脆いな……って、再生してやがる」
ハジメの目は、撒き散らされた肉体の破片が勝手に動いて集まり、
瞬く間に元の姿を取り戻していく、フロストゾンビ共へと注がれていた。
「……ハジメ、こいつら魔石がない」
「ああ、うっすらと魔力を纏っているのはわかるが」
「なるほど、つまりあのクリオネモドキと同じということかの」
「じゃあ、一度に焼き払うか?」
ハジメらの会話を聞いたシャレムの目が楽し気に細まって行き、
その表情の意味するところを知ってハジメが悲鳴を上げる。
「やめてくれ!あんなもんここで使われたら俺たちもコイツらと同じになっちまう」
件のクリオネモドキ、悪食を空中に引き摺り出し、
文字通り一撃で焼き尽くした闇色の光を思い出すハジメたち。
ちなみにその破壊力は樹海でも如何なく発揮されたようで、
何を見たのかは分からないが、彼女の背後にぞろぞろと続きながら、
ユニバースと虚ろ気な目で呟くハウリア族らの顔をも、ハジメは同時に思い出していた。
「まぁ、何か仕掛けがあるんだろう」
ハジメは引き続きゾンビどもを撃ち払いながら、片手に羅針盤を取り出し、
それらしき物を探し始める、
「なるほど……リモートか」
結果、羅針盤はそれっぽい物の存在を指し示した、
現在位置から五百メートル以上離れた場所にではあったが。
「なるほどって、感心してる場合じゃありませんよハジメさん!」
シアの悲鳴通り、先陣を倒している間にも後から後からゾンビどもは湧き出してくる。
既に四辻はぎっしり埋まってしまっている、その背後にも無数に存在している筈だ。
「強行突破あるのみだね」
ジータの声に頷くと、ハジメは宝物庫からオルカン―――巨大な長方形型の、
ミサイル・ロケットランチャーを取り出しその肩に担ぎ、
『タクティカル・シールド』
さらにジータが仲間全員へとバリアを張る。
どこか未来的でかつ、メタリックなハイレグスーツを身に纏った、
彼女の今のジョブはレリックバスター、
先の樹海での戦いで取り込んだ機神の力で戦うジョブである。
「俺たちが先陣を切る!全員、遅れるなよ!」
そう叫ぶなり、ハジメはゾンビの密集地帯へとロケットランチャーをぶっ放す。
凄まじい轟音が通路内に響き、爆砕されていくゾンビども、
その隙にハジメとジータが先陣を切って通路を駆け抜けていき、
そして後に続くユエたちが討ち漏らしを始末していく。
だが、撃っても撃ってもゾンビどもは瞬く間に再生し、
後方から呻き声を上げながら迫ってくる。
最後尾を固める鈴がナンマイダナンマイダと両手を合わせつつも、
リアルバイオハザードはやだよぉ~と悲鳴を上げる。
腐ってないだけマシなんじゃないかなと思いながら、先を切って走るジータ。
だがある程度距離を取り、一本道に入った所でシャレムが重力球を通路に設置したので、
そこから先は余裕を持って進むことが出来、そんなこんなで五分後、
彼らの前にドーム状の大きな空間が姿を現す。
羅針盤を見る限り、ゾンビたちを動かしているはずの魔石の場所はこの空間にある筈
背後の物音を気にしつつ、ハジメが視線を巡らすと、
対面にある氷壁に、赤黒い拳大の塊が埋まっているのがはっきりと見えた。
「見つけたぞ」
ハジメは軽く頷くと、宝物庫にオルカンを収納すると、今度はシュラーゲンを取り出す。
当然、シュラーゲンも昇華魔法により強化されており、そのスペックを大幅に上げている
銃口から早くも迸る荷電粒子の光がその証拠だ。
しかしハジメが狙撃姿勢に入ろうとした時だった、
「……ハジメ!」
「チッ!新手か」
ユエの警告と同時に、頭上から翼を広げた大鷲が強襲を仕掛けてきた。
それもただの大鷲ではない、全てが透き通った氷で出来た大鷲――フロストイーグルだ。
しかもそいつは天井の氷壁から次々と生み出されるように出現し、
まるで豪雨のようにハジメらへと降り注いでいく。
さらに周囲の氷壁から咆哮が響くと、今度は二足歩行の狼が大量に生み出されて行く。
こちらはフロストワーウルフといったところか……。
空にはフロストイーグルの大群、地にはフロストワーウルフの大群、
一旦通路へと退くハジメたち、それでもフロストゾンビどもが散発的に攻撃を仕掛け、
かつ本隊が重力球の拘束を解いてこちらに向かってくるのも時間の問題の筈。
「オマエたち、後は任せたぞ……」
「……まさか」
シャレムの手にはすでに第七元素の光が宿りつつあった。
「この広さなら問題はあるまい」
確かに眼前のドームは、東京ドームと同じくらいの広さはあるが……。
だがそれでも狭いような気が……と、ハジメが思うか思わないかの間に、
すでにシャレムは空中へと身を躍らせていた。
『ケイオス・レギオン!』
決めゼリフと共に掌サイズに過ぎない魔力塊を中空へと投げ放つシャレム。
中空に紋章が刻まれた瞬間、魔法陣が展開され、
空に地に跋扈する氷の魔物たちが全て魔法陣に吸い込まれ、消えた……と思った刹那。
やはりあの時、悪食を焼き尽くした時と同じく、
まるで幾多の複合された魔力が重なりあうかのような大爆発が起き、
そしてその閃光の中でドヤ!と勝利を確信するシャレムの背中も、またあの時と同じだった。
「ユニバース……」
呆然と呟くハジメ、それ以外に何と表現すればいいのか?
「オイ、わたちの勇姿に関心するのはいいが、どうやら奴が本命のようだぞ」
氷が砕けるような音が響くと、魔石があった氷壁が凄まじい勢いでせり出し、
周囲の氷を取り込みながら、一秒ごとにその体積を増やしていく、そして。
「クワァアアアアアアアアアアアアアアアン!!」
凄まじい衝撃波を伴った咆哮が響き、すかさずユエが空間魔法を応用した障壁を張り、
衝撃波を遮断する。
そしてその障壁の向こう側では、魔石を体内に抱えた魔物が完全な姿を晒す。
それは体長二十メートルはあるだろう、巨大な氷の亀だった。
「どうやら、野郎の装甲をぶち抜いて魔石を破壊するのが先か、
魔物の群れに呑まれるのが先か、そういう試練らしいな」
しかしこうして自ら姿を晒してくれるなら、望むところ……、
そう思い直してまた再び狙撃姿勢を取るハジメだが、その照準器を掌が塞ぐ。
そう、もう一人の破壊の権化がこのパーティーには存在していた。
「ここは私に任せて欲しい、君には悪いが、完璧を期すのならば、な」
一瞬、ハジメの目に複雑な光が宿るが、完璧を期すという言葉を、
この美貌の狙撃手が口にしたのならばと、
ただ静かにシルヴァの肩に手をやり、そのまま背後へと向き直る、
その耳にはすでにフロストゾンビの蠢動する音が届き始めていた、もう余裕はないのだ。
『バリー・ブリット!』
シルヴァはフロストトータスの甲羅の魔石を狙い、愛銃に込められた魔力を全て解放する、
ミレディを、そしてノイントすらをも屠った破壊の光が一直線に氷亀の甲羅を砕いていく。
しかし……。
「あっ!でも」
銃弾が魔石に届く瞬間、あろうことか魔石は飛び跳ねるように甲羅から抜け出すと、
空中のフロストイーグルがそれをしっかりと爪でキャッチする。
外したか……と、誰もが思った刹那だった。
なんと銃弾が魔石の動きをトレースするかのように動き、
そのままフロストイーグルごと、魔石を打ち砕いた。
サポートスキル『正射必中』もはやこの狙撃手からの銃弾は、
通常の手段では逃れることは叶わないのだ。
かくして撃ち砕かれ、完全に破壊された魔石の欠片がキラキラと宙に舞い、掻き消えていく、
と、同時におびただしき数の魔物たちも只の氷塊と化していくのであった。
そしてその一方でシュラーゲンを腰に構えたまま、
どこか行き場を無くしたような体のハジメの背中へと、
ジータとユエがそっと手をやるのであった。
まさにコールド(Cold?Called?)・ゲーム、今回はそういう話でした。