ということで、朝もはよからスペシャルバトルついでに投下です。
細かいところも含めて、原作とは少し状況等いじらせて貰っております。
この場のあらゆる全てが自分たちに牙を剥く中、ハジメとジータは必死の勢いで、
光の柱に飲み込まれようとしているユエへと手を伸ばす……だが。
(避けられない……あと少しだってのに)
使徒の無数の魔弾が剣が、己の身に迫る。
ここまでか……ここで潰えてしまうのか?そんな思いが流石に二人の中に芽生え始める。
だが、その時……。
奇跡、というには余りにも不可解かつ陳腐なことが起きた。
「フリード!」
「どうして……」
そう、この場に於いては間違いなく難敵の一人である筈の魔人軍司令官、
フリード・バグワーがまるで二人を守るかのように、愛騎たる白竜と共に、
使徒の攻撃へと身を挺し立ち塞がったのである。
フリードがもうすでに縛魂により、恵里の手に落ちているであろうことは、
二人にも容易に推測出来た。
だが、それでも死してなお、同胞たる魔人族を思う心が、
恐らくは呪縛から魂を解放させたのだろう。
二人の盾となり総身に弾を刃を受けながら、その唇から僅かに漏れた言葉は、
果たして彼らに届いたのであろうか?それは……。
「た……のむ……我……同胞……を……」
こうしてフリードが与えてくれた僅かな時間を利して、ハジメとジータは、
ついにユエの元へと辿り着く、が、三人の伸ばした手がお互いに触れたか触れないかの間に、
次の瞬間、ユエの身体は完全に光の柱へと飲み込まれてしまう。
「今出してやるっ!」
ハジメは光の柱に必死でしがみ付き、何とかしようとしている。
「させんよ!」
そこでディンリードからの追撃の魔弾が放たれるが。
『カウムディー!』
ジータの手の短剣から、かつてオルクスの地下でサソリモドキにとどめを刺した、
闇の烈風が自身らに迫る攻撃を相殺し、かつ使徒たちをも薙ぎ倒していき。
その背後で何やら衝撃音が響き渡る。
「ユエちゃん!」
その場にへたり込み、息を荒げるハジメに変わりジータが、
纏わりつく不気味な光の粒子を振り払いながら、ユエの元へと駆け寄る。
「……ここにいる」
「ユエちゃ……」
が、ユエの目を見た瞬間、飛び退くジータ。
それはユエの瞳に明らかに異質な何かが宿っていたのを察知しただけではなく、
とある確信があったからなのだが、それについてはまだこの場では語られない。
「ほう?なかなか勘のいい娘だ」
ジータの頬に赤い筋が走る、ユエの手刀がその頬を掠めたのだ。
「実に素直な娘だ、一切の抵抗なく我を受け入れおったわ
ふふふ、本当にいい気分だよ、イレギュラー、現界したのは一体いつぶりだろうか……」
ユエの姿を借りた何かは、艶然と微笑みながら指先にこびり付いた、
ジータの血を口元へと運ぶ、その笑みには見覚えがあった。
そう……この世界に召喚された時の大聖堂で見たエヒトの、
あの胡散臭い微笑みだ。
「ほぅ、これが吸血鬼の感じる甘美さというものか、悪くない
どうだ娘よ、お前も我に忠誠を誓うのなら、あの恵里とかいう娘同様、
我が使徒として永遠を与えてやろうではないか」
「お前……お前は……」
震えながらもジータはユエへと……いやユエの中の何者かへと、
何とか短剣を構えようとするが。
「エヒトの名において命ずる――"動くな"」
「ッ!?」
ユエの口からその名が出たことに関しては、それほど驚かなかったジータだが、
その命令によって己の体がなす術なく従ってしまったことについては、
驚きを隠そうとはしない。
「ふふふ……抗えまい、これぞ我が"神言"よ」
ちなみにハジメはというと、未だ俯きへたり込んだままである。
そんなハジメの様子を何やら怪しいと見て取ったか、
いつの間にかエヒトの傍まで近づいていた恵里が何やら耳打ちをする。
ほう……と、エヒトが恵里の言葉に頷き、
どこか優雅さすら感じさせる所作でパチンと指を鳴らすと、
ハジメの指に嵌っていた"宝物庫"の指輪が、エヒトの掌に即座に収まってしまう。
流石にこれにはハジメも驚いたのか、僅かにエヒトとその傍らの恵里へと、
視線を巡らせる。
その視線が悦に入ったのか、エヒトは楽し気に、
ドンナー・シュラーク・オルカン・シュラーゲンと
ハジメが手掛けたアーティファクトの数々を自身の周囲の空間に浮かべ弄び始める。
「よいアーティファクトだ、この中に収められているアーティファクトの数々も、
中々に興味深いな」
しかしその割にはさしたる興味は抱いていないのは明白である、
せいぜいが玩具程度という認識しか抱いていないのであろう。
だが、それでもハジメは動かない、
こと自身の開発した武器の数々が明確に愚弄されているにも関わらずに、である。
「イレギュラーの世界はそれなりに愉快な場所のようだな、
ふふ、この世界での戯れにも飽いていたところ、魂だけの存在では
異世界への転移は難行であったが……我の器も手に入れたことであるし
今度は異世界で遊んでみようか」
そう言うなり、エヒトは邪悪な笑みを浮かべながら掌の中の"宝物庫"を
躊躇うことなく握りつぶす、もちろんドンナー・シュラークを始め、
他の武器もいわずもがな、である。
「エヒト様ァ、あれを忘れちゃダメだよぉ」
媚びを売るような恵里の声に、エヒトは勿体ぶったように頷くと、
パチリと軽く指を鳴らす、と、ハジメの義手が先のアーティファクトと同様に砕け散る。
ちなみにハジメの義手には擬似的な神経が通っており、触感も温度も感知でき、
……当然、痛覚もである。
いかに耐性があれど、いきなり左腕を粉砕される激痛はいかばかりの物か……、
しかもその感覚はジータにも伝わるのである。
「がぁああああ!!」
「あああああっ!!」
「ふ~~ん、檜山もたまにはホントのこと言ってたんだぁ」
激痛にのたうつ二人へと恵里が近づく、わざとらしくスキップをしながら……、
その姿にジータが思わず目を逸らしたのは忌々しさだけではない。
断罪の光の洗礼を受けた恵里のその身が、火傷で惨たらしく焼け爛れていたからである。
「ちょっと運が良かっただけでイキってるからこんなコトになるんだよぉ~」
のたうつハジメの顔面を思いっきり踏みつける恵里、使徒の肉体で、である。
自身の靴底で何かが砕ける音と、さらなるジータの悲鳴を楽しみながら恵里は続ける。
「君は君らしく生涯隅っこで暮らせばいいのさ!世界を救うのは
相応しい誰かがちゃんといるんだ!」
無抵抗(実際はそれどころではなかった)のハジメを蹴りつけながら、その様を嘲笑う恵里、
その姿は教室での檜山をまさに彷彿とさせる物があった。
「ああ光輝くぅん、君が奈落に落ちて僕を迎えに来てくれたらよかったのにぃ~~」
と、嬌声を上げながら恵里が剣を抜いたところで、エヒトが仕草で以って恵里を制する。
もちろん狂態を見るに見兼ねて、というわけでは決してない。
「……アルヴヘイト、どうもこの身体違和感が拭えぬ……」
エヒトのその言葉にごく僅かの、それこそほんの一瞬であったが、
顔を見合わせるハジメとジータ、ここまでほぼ無表情だったハジメの、ジータの顔が、
何ゆえか焦りに満ちて行く。
「ゆえに、我は一度【神域】へ戻る、やはり調整が必要なようだ」
その言葉に安堵の表情を見せるハジメとジータ、もちろん今度は気取られぬように、
が……。
「しかし我が主……一度帰還されますと」
(何言ってやがんだこのイエスマン野郎、ここで粘るんじゃねぇ)
(ハジメちゃん顔に出そうになってるよ)
(……んっ、今はまだ我慢)
だが二人?の心の声が作用したのか否か、エヒトは指先でもってアルヴへと否定の意を示す。
「次の現界までのエネルギーを充填するまで三日は必要というのであろう、よい
楽しみというものは、多少は先に延びる方が喜びもひとしおと言うもの、
アルヴヘイトよ、後始末は任せる!」
「ははっ」
平伏するアルヴを満足げに見つめながら、エヒトは手を頭上に掲げると、
光の粒子が舞い上がり、天空に巨大なゲートを造り出した、
おそらくこれが神域へ行くための門なのだろう。
エヒトは宙に浮きながら、ハジメたち二人へと高らかに宣言する。
「イレギュラー諸君、我はここで失礼させてもらおう、しかしながら、
このまま去るのも何だ、諸君らのこれまでの健闘に免じ冥土の土産に教えてやろう」
この世界にも冥土の土産なんて言葉があるんだ、などと、
やや場違いな感想を心の中でジータは浮かべてしまう。
「我は三日後再び【神山】へと現界する、その暁にはこの世界に花を咲かせようと思う
そう、人で作る真っ赤な花だ、それでもって世界を埋め尽くす
最後の遊戯だ、その後は、諸君らの世界を新たな遊戯場にしようと思っている」
どうやらエヒトは本気でこの世界を滅ぼし、新天地として地球を選ぶつもりのようだ。
そのタイムリミットは三日……この場合は三日の猶予が出来たというべきか。
「もっとも……この場で死ぬお前たちには関係のないことだがね、ではさらばだ
小さき者たちよ」
そこでアルヴへと目配せをするエヒト、健闘云々言うなら、
今は見逃して欲しかったのにと、心の底から思うジータ。
そこで怯えるような目を向けながら、ハジメがユエへと手を伸ばすが、
(ちなみに非常にわざとらしい仕草に見えたが、誰もその事に気がつくことはなかった)
その手を恵里が踏み躙る、ジータへと当てつけるかのような満面の笑顔で。
「そうだよ、それが君に相応しい姿さ!無能には何も掴めやしないのさ!」
それだけを言い残し、エヒトに続き恵里も宙へと舞い上がる。
実は魔王城の外においても、おびただしい数の使徒や魔物、
そして魔人族たちが天に輝くゲートへと舞い上がっていた。
これがつまりカリオストロらが平原でみた光景だったのだが、
そのことは二人には知る由もない。
そしてエヒトはゲートの前で、彼らをを迎え入れるように手を広げた。
それはかつて見た大聖堂の肖像画のようでもあり、
王都の大観衆の前での天之河光輝の姿にも似ていた。
しかし、かの勇者の清廉さと悲しみを帯びたその姿に比べ、
エヒトのそれは、ジータにとっては禍々しさしか感じなかった。
そして魔人族の大歓声の、天に迎え入れられるという悦びの声に包まれ、
エヒトはそのまま溶けるように光の中へと消えていく。
その様を……叫ぶことすらなく、ハジメとジータはただ黙って見送るしかなかった。
何故ならば、それよりも大事な仕事が彼らにはあったのだ。
だが……それを滞りなく完了させるためには……。
「ククッ、無様なものだなイレギュラー、エヒト様はあの器に大変満足されたようだ
それもこれも、お前が"あれ"を見つけ出し、力を与えて連れて来てくれたおかげだ
礼を言うぞ?」
その場に残された十人程の使徒と、三十体程の魔物を従え、わざとらしく足跡を響かせ
ハジメらの元へと歩み寄るアルヴヘイトを睨みつけるジータ。
ハジメはこれ以上は引き伸ばせないとばかりに、全身から紅いオーラを滾らせつつ、
とある作業に入っている。
あと数十秒、何としても時間を稼がねばならない、だが……。
その為の手札がもはや尽きた状態なのだ。
「エヒト様は高尚なお方でな、ことさらに弱者をいたぶるような真似は好かぬのだ」
嘘だ!と、誰もがツッコミを入れるような妄言を口にするアルヴ、
「だが私は別だ、このエヒト様の第一の眷属神たるアルヴヘイト様の美しい身体に
傷をつけたこと、その償いは行って貰うぞ、その身をもってな!」
アルヴは真っすぐにハジメの方へと向かう、せめて先にこっちにとは、
ジータは思わない、その道一人が死ねばもう一人も死ぬのだから。
それでもジータは足掻く、自分たちだけではない者を守るために……。
だから叫んだ、自分に残る全てを爆発させるかの様に、願いよ届けとばかりに。
そしてゲートを潜ったカリオストロらが見た物は……。
結晶化した使徒や魔人族に囲まれ、息を荒げるジータ、
そしてどこか呆けたような表情のまま、
床に横たわり天井を見つめるハジメの姿のみであった。
「おい!ユエはユエはどうした、オイ!」
「待って!カリオストロさん二人とも酷い傷だよ」
「あ……すまねぇ」
香織に窘められ、一旦ハジメから手を放すカリオストロ。
癒しの光が周囲を覆い、二人の目に落ち着きが戻って来る。
「で……ユエはどうなったんだ」
カリオストロの詰問に、ハジメは俯き加減で答える。
「奪われちまったよ……ユエの身体は」
そうか……間に合わなかったかと、やはりハジメと同じように俯くカリオストロ、
愛弟子の悲嘆は彼女にとっても察するに余りあった、が、ハジメの声には、
決して落胆だけではない何かが籠っていることも聞き逃すことはなかった。
ユエの身体は……と。
「身体はってことは、オイつまり……」
「ああ、ユエはここにいる」
ハジメが掌を広げると、そこにはユエがいた、ただしグラフィグ状の姿となって。
「え……これユエさんなの!」
何故か声を弾ませる雫には構わず、ハジメは話を続けて行く。
「ディンリード、いや、アルヴの話がヒントになったんだ」
「肉体を持たない神が地上で十全に活動するには、器となる肉体が必要になるってね」
もしも本物のディンリードが、自分たちの思った通りの人物であったのならば、
ユエを封印した理由が、自分たちの思った通りであったのならば。
「エヒトは自分の器としてユエを狙っていた筈、そしてここに俺たちを誘い出したのも
その為だろうってな」
「しかし咄嗟のことでよくそこまでやれたな」
「師匠の教えのお陰さ……そして、俺一人の力では成し得なかった」
南雲ハジメは生成魔法にこそ絶大な適性を有してはいるが、
その他の神代魔法に関してはからっきしと言ってもいい……。
だが、ハジメにはその欠点を補って余りある存在がすぐそばについていた。
こと物質、素材の生成のみならず魂魄の扱いについても最高の師、
言わずと知れたカリオストロがいたということである。
例え適性が無くとも、概略を理解し、知識があれば補うことは可能である。
あの刹那の、フリードが身を呈して作ってくれた僅かな時間の中で、
ハジメとジータはユエの魂のサルページを半ば強引な形ではあったが実行し、
そして成功させたのだ。
だが、単なる魂魄魔法の一環としてであれば、
この目論見は成功することはなかったであろう。
それもまた刹那に発動したハジメ・ジータ・ユエの三人の心が合致した上での
概念魔法の一つであったことは言うまでもない。
「じゃあエヒトの奴は……」
「ああ、ユエの身体だけで勝ったつもりになって帰って行きやがった、
肝心な物は全て抜き取られた後だってことも知らずにな」
固有魔法、ましてエヒトが欲して止まなかった自動再生能力など、
肉体と魂と精神との密接なリンクあってのものである。
肉体だけでは行使など出来よう筈もない。
「どれくらいでバレると思う?ハジメちゃん」
「……んっ、残留思念とか、それっぽいものはまだ私の中には残ってる、けど」
「どんなマヌケでも一時間もすりゃバレるだろ、ホント帰ってくれてよかったぜ」
本来はサルページ完了後、隙を見てトンズラをかますつもりだったのだ、
だがあの忌々しい神言が予定外だった。
「しかし随分と綱渡りの賭けだったな」
「ああ、でもあのまま何も出来ないよりはってね」
もちろんサルページに成功したとしても、次に魂を何らかの物体、生命に
格納・定着させねば意味は無い、そしてその憑代を作成する時間は流石のハジメと言えども
捻出できず、従って僅かの時間であったとはいえ、
ユエの魂を自身の身体に格納するしか手はなかったのである。
一つの身体に二つの魂、相応の処置なく行えば、
肉体と魂それぞれにとてつもない負荷がかかる、一歩間違えれば互いの魂が交雑しあい、
二度と個人の物として分離することは叶わなくなる所だったのだ。
「だから、なるべく動かないように、心に波風を立てないようにしてたんだけど……
エヒトもだけど中村の奴、容赦ねぇな」
「普段からマジメにやってなかったからだよ」
確かにエヒトの慢心がなければ、そして魂魄の扱いに長けている恵里が、
火傷で冷静さを失っていなければ、この目論見は成功することはなかっただろう。
自身があの奈落の底と同じく、またしても幸運に恵まれたことを実感するハジメ、
確かに運が良かっただけだと中村が言いたくなる気も分かるなと、心の中で思いながら。
「で、こいつは何だ?」
結晶体と成り果てた魔人族や使徒の亡骸をコンコンと叩きつつ、
今度はジータへと尋ねるカリオストロ。
「それは……そのうユエちゃんの魂を定着させられる器を、
ハジメちゃんが生成している時間を稼ぐためにぃ~~そのぉ~~ちょっとタンマって」
「概念魔法……」
ハジメは確かに見ていた、瞬間的にではあったがジータを中心に灰色の何かが拡がり、
それに触れた使徒や魔物を次々と結晶へと変えていく光景を。
「触れた者の生体時間を奪い取り、結晶化するって魔法ってところかな、
ちょっとどころか、永久にタンマだよこれ」
名づけるならば時の棺とでも言うべきであろうか?
やはり何故か瞳を爛々と輝かせる雫の視線を気にしつつ、
カリオストロの肩の上でミレディが溜息交じりにそんな言葉を口にする。
ちなみにミレディの、ぷちりっつともねんどろいどとも取れるその姿に、
ツッコミを入れる者は誰もいない。
そういうことを言ってられる空気ではないのだ。
改めて周囲を見渡すジータ、派手な現象の割りには思ったより生き残りは多いように見えた、
それを喜ぶべきかどうかは状況が状況なので判断がつかなかったが。
どうやらあの光は自分たちへの敵意や害意により強く反応したのだろう。
結晶と化した者たちは皆手に武器を持ち、その顔はことごとく殺意や害意に満ちており、
実際生き残った者たちは最初から武器を手には帯びてはいなかったり、
異変を察知した際武器を捨てるか逃げ出した者たちであった。
それでも……と、ジータは自らが引き起こした惨状に、見ていられないとばかりに、
そっと目を伏せる。
その先には剣を構えた状態で封じられた男に縋りつく女と子供の姿がある、
おそらく家族だったのだろう。
「テメェのやらかした事で目ェ伏せんじゃねぇ」
そんなジータへとカリオストロの叱咤が飛び、さらに雫や龍太郎たちへも続ける。
「お前らもだ、この光景忘れんじゃねぇぞ、これが戦の理不尽だ」
「そしてその理不尽のツケはいつでもただそこにいただけのね……
一番弱い者たちが被らないといけないんだよ」
ミレディの悲痛な言葉に頷くより他ない一同、そこに。
「で、アルヴってのはどれだ?」
「あれだよ」
カリオストロの指摘にハジメの指さした先には、結晶となった膝から下の足があった。
咄嗟に両足を斬り落として脱出したようだ。
這う這うの体で逃げ出したのであろう血痕を辿って行くと、玉座の裏の隠し扉に続いていた。
「転移用のゲートだな」
そこにあったのは直径数十メートルにも及ぶ巨大な転移用の魔法陣だった。
おそらく緊急脱出用なのだろう、規模からみて片道使い捨てではあろうが、
恐らく……今も空に開いたままのゲートを見上げるハジメたち、
あれを利用すれば神域まで転移可能な物であったのだろう。
「いけないなァ、こんなものを残していくなんて」
「ククク、そそるぜ」
実に悪い顔をしながらゲートの術式をメモっていくミレディとカリオストロ、
神域に殴り込みをかける際の参考になるとばかりに……。
と、一心地ついた所でハジメがポツリと呟く、その視線の先には……。
「でも……一番はこいつの、フリードのお陰だよ」
愛騎たる白竜と共に、床に倒れ伏すフリードの亡骸へと改めて瞑目するハジメ。
全身を穿かれ、斬られ、無残そのものの遺体であったが、
その顔は満足げであることが救いの様にハジメには思えた。
「こいつが時間を作ってくれなかったら、俺たちを庇ってくれなかったら……
だからせめて墓でも作ってやりたいな……」
「でもよ、そいつ確か悪い奴だろ?」
「けど、悪い奴だったけど、いい奴だったかもしれないだろ」
彼もまた同胞のため、民族のために戦っていたのは紛れもない事実なのだろうからと、
龍太郎の言葉にハジメはごく自然に言い返しただけのつもりだった。
だが、龍太郎にとってその言葉は、ある種の新鮮な驚きを感じさせる物だったようだ。
「なんか今のお前の言葉、光輝みたいだったぞ」
不思議と悪い気はしなかった。
ハジメを必要以上に丸くはしないつもりで書いてはいましたが……。
なんか自然にこういうことを口にしちゃうキャラになってしまいました。
ジータの発動させた概念魔法はセブンナイツレボリューションより引用しました。
でもこれ敵キャラの使う技なんですよね。
それからユエに関しましては精神および魂の掌握なくして、
乗っ取りは成立しないという解釈で書かせて貰っています。
少々上手く行き過ぎではということにつきましては、否定はしません。