で、サマーフォーチュンカードはラインナップを見る限り、
絶対当てさせるつもりないだろうというのが透けて見えて……。
スクラッチカムバーーック!
オルクスの工房。
そこではハジメとジータがひたすらアーティファクト作成作業を続けている。
ただし、外側から見るとその動きはまるで十倍速にでもなったかのように、
目まぐるしく映ってならない。
もちろんこれにはタネがある、
香織が事前に行使した、再生魔法"刹破"――時間を引き伸ばす魔法により、
工房内での時間はなんと十倍にまで引き伸ばされており、
したがって外での一時間は、工房内では十時間に相当するのであるのだから。
「まさに精神と時の部屋だな」
「やりすぎると私たちあっというまに年寄りになっちゃうね」
顔を見合わせそんな言葉を交わし合うハジメとジータ、
そしてそんな二人を見守る掌サイズのグラフィグ状となったユエ。
「……」
今の身体では表情は伺えないが、何かを手伝いたいという気持ちは、
ユエの中から十分に伝わってくる、が……。
「ユエちゃんは見てるだけでいいの」
「精神を、魂魄をセーブすることが今のお前の第一の仕事だからな」
「……でも」
ユエは消耗を抑えるために諸作業へのタッチを一切禁じられている。
必要なこととはいえど、それが歯がゆくてたまらないのだろう。
ましてこの戦いの一端は自分の存在にあるのだという思いも当然ある。
それにハジメとジータに限らず、恐らく自分の知る全ての者たちが、
仲間たちが世界中を飛び回り、戦いの準備へと明け暮れているのだ、
やはり自分も何か……との思いを抱くのは当然のことである。
だが、気にするなよとばかりに二人はそんなユエへと笑顔を送る。
「この戦いは俺たちの故郷に帰るための、この世界の守るための戦い、
そしてお前の身体を取り戻す戦いであると同時に、お前の叔父さんの
仇を取るための……お前を守り続けてくれていたことへの、
恩返しの戦いでもあるんだからな」
「だよね、もう退けなくなっちゃったしね」
三人で向かった封印部屋での出来事をジータは思い出す、
思い出を語りつつもユエを封じていた封印石の分割、回収を終え、
工房に戻ろうとした所で、封印石が置かれていた場所の床に、
なにやら紋様が刻まれていることに気がついたのだ、
「これは?」
「この紋様、ヴァンドゥル・シュネーのものだよね?」
紋様の中央にはちょうど何かががはまりそうな小さな穴が空いていた、
そういえば【氷雪洞窟】脳略の証は……と、
ハジメは【氷雪洞窟】攻略の証である水滴型のペンダントを取り出すと、
その窪みへとはめ込む、その直後、床の紋様に光が走ると、
石柱が床から迫り出し、ハジメらの眼前で側面をパカリと開いた。
石柱の中には、水晶を思わせる透き通った掌サイズの鉱石が収められていた。
その正体はハジメにはすぐにわかった、映像記録用のアーティファクトだと。
「氷雪洞窟クリア後の特典か……」
「言い方少し悪いよ、ま、まずは見て見ないとね」
ジータはハジメから鉱石を受け取ると、鉱石に魔力を流し込んでいく、
そこに映し出された物は……。
「……おじ、さま?」
ハジメの頭の上で息を呑むユエ。
もちろんハジメもジータも驚きを隠せない、そんな三人の前で、
ユエの叔父にして、邪神に身体を奪われた悲運の男、
ディンリード・ガルディア・ウェスペリティリオ・アヴァタールが、
ゆっくりと話し始めた。
『……アレーティア、久しい、というのは少し違うかな?
君は、きっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。
私のしたことは…………あぁ、違う。こんなことを言いたかったわけじゃない。
色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない』
苦笑いを浮かべるディンリードの姿は実に親しみやすく、
誰からも愛される男と言うのはまさにこうであるべきだとの印象を、
ハジメとジータに与えてならなかった。
『そうだ。まずは礼を言おう……アレーティア、きっと、今、君の傍には、
君が心から信頼する誰かがいるはずだ、少なくとも、変成魔法を手に入れることができ、
真のオルクスに挑める強者であって、私の用意したガーディアンから、
君を見捨てず救い出した者が』
その言葉に思わず襟を正すハジメ、やや前のめり気味になっていた背中を
しゃんとしなさいとばかりにジータが叩く。
『……君、私の愛しい姪に寄り添う君よ、君は男性かな?それとも女性だろうか?
アレーティアにとって、どんな存在なのだろう?恋人だろうか?親友だろうか?
あるいは家族だったり、何かの仲間だったりするのだろうか?
直接会って礼を言えないことは申し訳ないが、どうか言わせて欲しい。
……ありがとう。その子を救ってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。
私の生涯で最大の感謝を捧げる』
恋人、親友、家族、仲間……きっとその全部ですとジータは心の中で応じる。
『アレーティア、君の胸中は疑問で溢れているだろう
それとも、もう真実を知っているのだろうか?
私が何故、あの日、君を傷つけ、あの暗闇の底へ沈めたのか、
君がどういう存在で、真の敵が誰なのか』
そこからの話は概ねハジメたちの推測を離れるものではなかった。
エヒトに狙われたユエを守るべく、ディンリードがクーデターとみせかけ、
ユエを奈落に封印したこと、それがいかに苦渋の決断であったかを、
そしていかに自分がユエを、いや、アレーティアを愛していたのかを、
愛する姪を自分の手で守ることが出来ない弱さを、
未来の誰かに託すことしかできなかったその無念を訴えるディンリード。
「……おじ、さま、ディン叔父様っ、私はっ、私も……」
声を震わせるユエ、だがそれ以上のことは叶わない、
今のこの身体では涙を流すことは叶わないのだ。
だが、ハジメの身体が小刻みに震え、ジータの頬に光るものが流れているのを、
彼らが自分の代わりに涙を流してくれているであろうことを、
確かにユエは感じていた。
『もう、私は君の傍にいられないが、たとえこの命が尽きようとも祈り続けよう
アレーティア最愛の娘よ、君の頭上に、無限の幸福が降り注がんことを、
陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めますように』
「……お父様っ」
その声はユエではなく、アレーティアの声だった。
そしてまさに声が通じたかのようにディンリードの目が細まる、
まるで愛娘が愛し、そしてその傍に寄り添う者を思い浮かべているかのように。
『私の最愛に寄り添う君、お願いだ、どんな形でもいい、
その子を、世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ、どうか、お願いだ』
例え視界が歪んでいても、ディンリードの限りない優しさを秘めた、
遠い眼差しを感じ取れぬ筈がない。
深く、そしてはっきりと頷くハジメ、そしてもちろんジータも。
二人が誓いを新たにする中、ディンリードの姿が薄れて行く、
そしてその最後の言葉が響き渡るのであった。
「……さようなら、アレーティア」
「君を取り巻く世界の全てが幸せでありますように……か」
作業の手は休めることなく、深い感慨を込めて呟くハジメたち、
二人は感謝せずには、そして誓いを新たにせずにはいられなかった。
ディンリードは自分たちが思い、そして願った通りの人物であったことに、
そしてその託された希望に、自分たちが応じねばならないということに。
「だから、全てが終るまでは大人しくお姫様してていい」
「エヒトをやっつけるために、元気貯めとかなきゃね」
「……んっ」
三人がシンクロしたかのように頷いた所で、時計のベルがなる、食事の時間だ。
額の汗を拭いつつジータに軽く指示を残して工房を出、
ハジメが住居へと向かうと。
「パパァ!お帰りなさいなの」
「あなた、お帰りなさい、ご飯持ってきましたよ」
そこにはミュウとレミアがいた、エリセンに向かったクラスメイトの誰かが、
気を利かせて連れ帰って来てくれたのだ。
確かに二人にも魔人族の魔の手が伸びかかったことを考えると、
手元で保護するのが得策ではある……だが、二人は王宮にいた筈……、
一体誰がとハジメが思った所で、ミュウが誰かに向かい手を振る、
その視線の先には光輝がいた。
「二人を連れて来たのはお前か?」
「ああ、会いたがってたみたいだったし」
もちろんそれだけのために、光輝がここに来たわけではないことくらいは、
ハジメにも分かる。
「少しいいか?」
「食べながらで良ければな」
「いいんだ、俺もそのつもりだし」
全員のスケジュールはそれこそ分刻みで決められている、
こうやって休憩が重なること自体稀なのだ。
だから貴重な時間を無駄には出来ない。
レミアたちも気を利かせたか、二人だけの食堂にハジメと光輝の声が響く。
「ええと、まずはミレディさんからの預かり物だ……神言だったか?
神の言葉を耳に入れると、その通りの行動を取ってしまうっていう、
それの対策に使えるんじゃないかって」
「へぇ……そいつは有難いな」
ハジメは魂魄魔法が込められてるであろうビー玉サイズの宝珠を見つめる。
あの【神言】が魂魄魔法の一種であることはすでにハジメも見抜いていた。
このビー玉はその【神言】をブロックする効果があるのだろう。
「お前の力ならきっと完璧な物に仕上げられるだろうって」
「色々と改良はしないといけないだろうけど、確かにこれで【神言】対策は
大きく進む、ありがとな天之河」
「お礼は俺じゃなくってミレディさんに言うべきだろう」
「分ってるよ、けど微妙に……な」
ハジメの言葉に分かるよと小声であったが呟く光輝、
やはりあのミレディと共に過ごすのは、彼といえどもかなり骨が折れるのだろう。
「あ、もちろんお前の装備もちゃんと作ってやるからな、まずは飛行用のだな……」
「ありがとう、けれど俺は……」
矢継ぎ早なハジメの言葉に僅かに笑みを漏らしつつも、
光輝は次の瞬間には真剣な表情で、腰のポーチから一本の短剣を取り出しテーブルに置く。
「何だこの短剣、凄い力を感じるぞ……これはまさか」
そういえばリューティリスが言っていた、かつて解放者が作った概念武装、
神殺の短剣はミレディが持っていると。
「神滅の短剣、聞いてるとは思うけど、解放者たちが遺した最後の概念武装さ」
それは本来自分がミレディから受け取った物である、
だが同時に光輝はその隠された意図に気が付いていた、
ミレディは自分を試しているのだと、自分で使うのではなく、託してみせろと、
自分が選んだ最も相応しき者の手に、と。
「まぁ……作られた経緯についてはここでは言わないけどさ」
何か不都合があるのか口籠り出す光輝、多分ロクでもないことを、
ミレディに吹き込まれてしまってるんだろうなと察するハジメ。
「とにかく…エ、エ、エヒトを倒すぞっ!って気持ちだけで出来てるから、
ユエさんの身体とかには影響はないだろうって」
「そいつはいいな、ユエの身体に作用しないって所が特に気に入った、
こっちも切り札はいくつか考えてるけど、手札は多いに越したことはないしな」
しかし光輝がそれを自分に託すということは……。
「お前……」
そこでハジメは光輝の、彼の秘めた決意を悟る。
「ああ、俺は【神域】には行かない、ここでこの世界の皆と共に戦う」
「それがお前の定めた勇者の道、なんだな」
それはハジメにとって、予想外であると同時に、至極納得のいく答えでもあった。
「勇者は常に人々と共にその輝きをもって導き、標を与えるのが役目だと俺は思う、
だからその戦場は常に人々の傍でなければならない、だから……後ろは俺に任せて
南雲たちは安心してエヒトと戦ってくれ」
やはりどこかでミレディの影響を受けつつあるのだろう、
光輝の、かつての彼らしからぬそんな言葉にも少し目を丸くするハジメ。
「お前……変わったな」
「それをお前にだけには言われたくなかったな」
「けど……」
中村はどうするんだ?と言いかけ、口を噤むハジメ。
自分の問いたいことなど光輝は百も承知な筈、幾度となく葛藤を重ね、
その上で結論を出しているのだ、今更だろう。
増してや、思い定めればどこまでもという男である。
それにハジメは心の中で密かに安堵していた、
今の光輝を恵里に会わせてはならないとの思いが、当然あっただけに……。
と、そこで光輝の腕時計のアラームが鳴る、どうやら時間のようだ、
「これ、持ってっていいかな?」
「おう、持ってけ持ってけ」
食べきれなかった分を慌てて口に頬張り、残りを包みながら席を立つ光輝。
「またライセンに戻るのか?」
「ああ、ふぁりほすほろさんも……ぐっ、待たせてるんだ、じゃ……」
それだけを口にし、ゲートキーを取り出すと光輝はライセンへと再び戻り、
それを大きく伸びをしながら見送るハジメであった。
そしてライセンに転移した光輝をミレディが出迎える。
「ちゃんと渡したようだね、あの短剣」
「ええ」
「ちょっとはさ、惜しいんじゃないの、やっぱり」
ミレディは光輝の肩に飛び乗り、ツンツンと頬を指でつつく。
「あったとしてもちょっとだけ、ですよ」
ミレディのしつこさに少し辟易しつつも、はっきりと光輝は答える、
一度、自分の戦場を定めた以上、もはやその意志は揺らがないのだと
目の前の解放者に示さんとばかりに。
「ま、それだけじゃ何だし、来なよ」
クイクイとミレディに促されるままに階段を降りる光輝。
ビル数階分ほど降りただろうか、
やがて転移用の魔法陣がある突き当たりへと辿り着く二人。
二人が魔法陣に入ると、大量のゴーレムが並んだ格納庫へと風景が一変する。
確かこのゴーレム軍団も出陣させるって言ってたようなと、
光輝は思いつつ、さらに指示に従い先に進むと。
「流石に定刻通りだな」
そこには様々な工具に囲まれたカリオストロがいた、
そしてその傍らに立つ物を視界に捉えた時、光輝は息を呑まずにはいられなかった。
そこにあったのは全高五メートル程の白銀の輝きを放つ巨大なゴーレムであった、
しかもその胸甲部分が開いており、
その中には人一人分が収まる程度のスペースがある。
「これは……」
これは悪い冗談だ、まさか俺がこんなと思いつつも、
それでも湧き上がる期待に胸躍らせつつ、光輝はカリオストロへと視線を向ける。
「ご期待通り、お前の新しい力だ」
カリオストロの言葉に応じるかのように、ギラリと輝く巨大ゴーレム、
そのボディには重力魔法が付与された紋様が幾重にも刻まれている。
「これはね、神域に殴り込む戦士たちのためにオーくんが作っていたんだ」
「そんな貴重な物を俺に……」
「そりゃ私たち解放者の名代としても戦うんだ、不足と思われちゃ困るんだよ、チミィ」
相も変わらずの煽り口調のミレディの言葉であっても、
身の引き締まる思いと、それにも勝る湧き上がる闘志を抑えきれない、
そんな顔を見せる光輝。
何より……きっとミレディ自身が、これを駆って戦場に赴きたかったに違いないのだから。
この解放者のゴーレム、後には勇者の甲冑として、多くの世界に於いて、
その伝説と共に、時に燦然と時に畏怖と共に語られることになるのだが、
まだそのことを知る者は誰もいない。
「武装も何もかもお前に合わせて調整済みだ、お前の聖剣技も使用出来るようにしておいた」
確かに背中の大剣の柄には、聖剣を差し込むスリットが備え付けられている。
「光輝、これを」
次いでジャンヌが光輝へと跪き、何やら巨大な布のような物をその手へと捧げ渡す。
そんな彼女の恭しき仕草に一瞬面食らい口籠る光輝。
「そんな……ジャンヌさん」
「これは私ではなく、君の戦場、君の役目だ、さぁ」
ジャンヌに促され、光輝は布を受け取り床へと広げ、
そこであっ……と思わず声を漏らさずにはいられない。
それはゴーレムの手に合わせて仕立てられた大旗であった、そしてその図柄は、
ハイリヒ、ヘルシャー、アンカジ、フューレン、フェアベルゲンetc、
全ての国家都市の紋章が記され、縫い込まれていた。
「この旗陥ちる時が勇者が陥ちる時、そしてそれが人類が敗れる時です、
よく心得るのです、光輝」
メルドはかつてこう言った"何があっても、光輝だけは連れ帰ってくれ"と、
最初にそのことを聞いた時はどうしてと思ったのだが、今ならその意味が分かる。
勇者とは栄光と引き換えに、自身の生死すら選ぶことができない、
過酷な存在なのだと、例え自分の視界尽くが戦友の亡骸で埋め尽くされても、
俯くことも、振り返ることも許されないのだと、勇者であることを選んだ時から、
己の命は己だけの物では無くなってしまったのだと。
(そして……その道は時には死を以ってしてでも、生き様を示さねばならない道だよ)
ミレディもまた改めて思う、だからこそ目の前の少年を"解放"せねばならないと、
何よりも彼と、その彼の周囲の人々の幸福の為にも。
「じゃあこれに乗って……乗ってみても、いいですか!」
「当たり前だ、その為に呼んだに決まってるだろ」
己を律しつつも、新たな力に興奮を隠せない、
そんないそいそと、それでいて震えるような動きで甲冑へと取り付く光輝、
その背中にカリオストロの声がかかる。
「お前にもオレ様にも当然予定が詰まってる、そんなに長いこと慣らしにゃ付き合えねぇ!
気合い入れろよ」
そしてその日の深夜。
「君から呼び出すだなんて、珍しいじゃないか、ジータ」
「ミレディさん、朝までは時間が空いてるって聞いて」
「かといって寝不足はオハダに毒なんだよぉ~~」
実に勿体ぶった仕草を見せるミレディ、恵里ほどではないが、
やはりかまってちゃん的な気質が多分にあるのだろう。
「それはいいですから、ハルツィナにお願いしていいですか」
「ハルツィナ……あそこには何も……」
口調を沈ませるミレディ……彼女が継承の間、いわゆる解放者たちの住居には、
余り近づきたがらないことをジータは知っている。
無理もないと思う、きっと輝ける日々の記憶と、敗れ去った苦渋の記憶とが、
ない交ぜになり、彼女を苛むのだろうと。
しかし、少しばかりはサプライズをこちらから仕掛けてもバチは当たらないだろう。
ともかく神山の深部に密かに設けられた、
解放者とそれに累する者にしか通れない、秘密の通路を辿り、
二人はハルツィナ樹海へ、そして大樹へと向かう。
僅かの時間で大樹の頂上、リューティリス・ハルツィナの住居へと辿り着く二人、
天に近いだけあって月がやけに近く見える。
「ね……ホラ何もないでしょ」
石版の袂に腰かけ、寂しげに呟くミレディ。
「私と月見でもしたかったのかな?ねぇ?この一大事に、そんなくだらないことで
私を連れ出したわけじゃないよね」
あのミレディでもこんな声を、こんな表情を見せるのかと、
ジータは少し新鮮な気分を覚えてしまう。
「ね、ミレディは少し捻くれてるだけの、寂しがりの普通の女の子なのですわよ」
「うるさいな」
頭上からの声にごく自然に言い返すミレディ。
「あら?褒めてあげたつもりなのですけど」
「キミに普通って言われたくないの!それに何だい、リュー!
前から思ってたけど、ホントに君は遠慮を知ら……」
そこでようやく自分が何と話していたのかに気が付いたのだろう、
これも初めて見る、呆けたような表情で頭上へと視線を向ける。
そこには瞳に再会の嬉し涙を浮かべるリューティリス・ハルツィナがいた、
それは例え残留思念とはいえど、映像でも何でもない、本物であるという証であった。
「え……あ……ああ」
ミレディは困ったようにリューティリスとジータの顔をぐるぐると見回す、そして。
「酷い!ホントに酷いよ!ジータ……こんなの……ううっ」
余りにも不意打ちのサプライズに泣き笑いの体でジータに叫ぶミレディ、
「言ってくれたら……もっともっと……話すことが……でも」
そこで涙を拭うミレディ、満面の笑顔で。
「きっとどんなに考えても一杯ありすぎて決まらないや!
とりあえずリュー!本当にリューなんだね!」
「ああ、ミレディ!幾千年ぶりかしら!そんなにちっちゃくなってしまいまして!」
「変わったのはお互い様だよ!」
幾千の時を経て再び邂逅した同胞は固く抱擁を交わし合う。
その様子を見、そっと背中を向けるジータ。
時を超えた二人の盟友の語らいは、自分の胸の中にだけ
そっと留めておこうと言わんばかりに。
「だから内緒だよ」
と、唇に指を添え、そっと誰にともなくジータは呟くのであった。
ディンリードのメッセージを事前にユエと共に聞いたり、
光輝の選択や、ミレディとリューティリスとの再会etcなどなど、
最終決戦を前に、これまで割とありそうで見かけなかった、
そんなシーンを色々と書かせて頂きました。
それから光輝の甲冑はソロモン・エクスプレス版ジオをイメージして頂ければと思います。
サイズとしてはAT程度ではありますが。