ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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ゲームの周回や書いてる時のBGMとして、プロレス関係の曲を聞くことが多いのですが。
この作品のハジメたちに当てはめるとこんな感じかなと、最近思ったりもしています。

ハジメ Hybrid Conscious
ジータ THE SCORE
ユエ Stylus
シア 100%VOLTAGE
ティオ Subconscious
香織 LOVE&ENERGY
雫 Flame Of Mind
光輝 GRAND SWORD
遠藤 Takeover


それはさておき、皆それぞれにという話です。


審判の日-Come Over to Doomsday

 

全ての準備を滞りなく終え、ついに工房から地上へと姿を現したハジメたち、

ゲートを抜けるとそこには……。

 

「おじ様、お願い……どうか必ず帰って来るって約束して!」

「安物だが……妻の形見なんだ、戦場でなくしたら大変だ、預かって置いてくれ」

「待ってます、私、サラダを作って待ってます!」

 

霧雨を纏い、お揃いのトレンチコートを着て、こんな所でも偲び合う、

カムとアルテナの姿がいきなり飛び込んできた。

 

「なんでこんなところにゲートを置いたんだよ……」

「だって作業の邪魔になっちゃう」

 

とりあえず物陰に隠れ、小声で言い争うハジメとジータであったが。

 

「あ、ハジメさんジータさん、ユエさん」

「わぁ!」

「皆さ……うぐぐ」

 

さらに間が悪いことにそこにシアまでもが姿を現したのだからたまらない。

とりあえず、ハジメが目を、ジータが耳を、そしてユエが顔に貼り付き口を塞ぎ。

そのままシアを見ざる言わざる聞かざるの体で引き摺る様にしながら、

その場をそろりと離れるのであった。

 

さて、と、落ち着いた所で改めて周囲を見渡していくハジメたち。

眼前には、土術師である野村健太郎を中心とした、

建造チームによる大要塞が眼前に聳え立っている。

そして王都前の大平原には各国各都市数十万の兵力が野営を行っており、

その威容は照明アーティファクトにより煌々と照らされていた。

 

「ようやく来たわね、みんなが待っているわ、付いて来て」

 

出迎えに来た雫に案内され、要塞内部へと入るハジメたちなのだが、

そこで雫の足音から伝わる苛立ちのような物を察知したか、ジータが雫へと尋ねる。

 

「……ガハルドさん?」

「そうよ、何かと理由を付けては私を傍に置こうとするし、口説いて来るし……」

「ごめんね……」

 

何せ冗談交じりとは言えど、布陣中の間は雫を我が副官にという条件を、

臆面なく出して来たのだから、ガハルドはああ見えて結構本気なのだろう。

 

「一言言ってくれたら良かったのに……」

「でも、やることはちゃんと完璧にこなしてくれてたし、機嫌損ねるとマズイかなって」

「もしかして情が移ったとかそういうの無いよね!」

「まさか!」

 

それについては即座に否定する雫、余りの大声に何人かの兵士たちが振り返り、

その視線にこそばゆい物を感じつつ、ハジメたちは要塞内の会議室へと到着する。

 

テーブルを囲むは、まずはリリアーナやランデル、ガハルド、アルフレリック、

ランズィ、そしてどう先回りしたのか、しれっと席に着いているカムといった、

各国、部族の代表たち、その中には愛子の姿もある。

そして冒険者ギルドからは、イルワ、バルス、キャサリンら……、

おや?キャサリンの隣にいるのは?

 

執事服に身を包んだ筋骨隆々の男を見咎めるハジメ、何処かで会ったような、

でも思い出すと何か不都合があるような……。

と、そこでその執事が巨体を揺らしながらハジメへと歩み寄り、

にこやかに話しかけてくる。

 

「お久しぶりね、ハジメ君にジータちゃん……その頭の上にいるのが、

ユエちゃんね」

 

そこで声と記憶が一致、思わず目を剥くハジメとジータ。

 

「あ……あんた、クリスタベルか!」

「嘘……え、どうして」

 

以前のアピール過多な姿とは一変し、ダンディズムすら感じさせる、

重厚なデザインの執事姿に思わず驚きの声を上げる二人。

 

「イメチェン……したんですね、それも思い切った」

「ええ、これからは母性のみならず、父性をも追求しようと思ってるの……それも

あの人に教えて貰ったお陰」

 

クリスタベルが熱の籠った視線でカリオストロを見つめる中、

まったくあの人は……と、顔を見合わせる二人。

 

ともかくそんな良く言えば余裕、悪く言えば緊張感に欠ける、

そんな雰囲気の中、最終会議の幕が上がる。

会議と言っても、すでに取り決めることなどこの期に及んでは何もなく、

行動方針、指揮系統etcの確認事項の徹底のみに終始したのは言うまでもない。

 

そして、いわゆる異世界組の主戦力となっている面々の割り振りではあるが、

【神域】に乗り込むは、ハジメ、ジータ、ユエ、シア、ティオ、雫、鈴、

カリオストロ、シャレムの九人。

そして地上に残るのは、光輝、龍太郎、香織、遠藤、ミレディ、シルヴァ、ジャンヌダルク、

ファラ、ユーリの九人ということになっている。

 

そういえばティオの姿が……と、かつて交わした約束を今こそ果たす時と、

竜人族の里へと勇んで戻っていた彼女の後姿を思い出しつつ、

ジータが窓の外へと視線を移すのと同時に、伝令が駆けこんで来る。

 

「ひ、広場の転移陣から多数の竜が出現! 助力に来た竜人族とのことです!」

 

頷きあうまでもなく、いち早く外へと飛び出すハジメとジータ、そこへ……。

 

「ご主人様よ! 愛しの下僕が帰って来たのじゃ! さぁ、愛でてたもう!」

 

黒竜姿から一瞬で人型に戻ったティオがハジメの胸元へダイブし、

それに対してジータは反射的に、カウンターのキックを繰り出してしまうのであった。

……ともかく、これですべての準備は整ったのであった。

 

 

「まさか竜化状態で転移して来るなんてね、いいデモンストレーションだよ」

「ふふ、そうじゃろ?五百年も引き篭っておった伝説の種族じゃ、

どうせなら士気に一役買おうと思っての……うむ、度肝を抜けたようで何よりじゃ」

 

周囲が度肝を抜かれているのは、また別の要因があるのだが、

それについては深く考えないことにするジータ、と、

そこでティオが背後に従えていた六体の竜が人身へと変化する。

 

鱗の色が髪の色となるのだろう、

緋色、藍色、琥珀色、紺色、灰色、深緑色と虹の如き髪色の六人の男たち、

その内の緋色の髪をした、一際威厳を放つ初老の男がハジメ達の前に進み出て来た。

 

「ハイリヒ王国リリアーナ・S・B・ハイリヒ殿、ヘルシャー帝国ガハルド・D・ヘルシャー殿、

フェアベルゲンの長老アルフレリック・ハイピスト殿、お初にお目にかかる」

 

その穏やかにして威厳漂う声は、何よりリリアーナら各国の重鎮らを前にしても、

全く気後れする様子が無いところを見ると、彼こそが王なのだろう。

 

「私は竜人族の長、アドゥル・クラルス」

「クラルスって……」

「しっ!」

 

つい口を挟もうとしたハジメの腕をつねるジータ。

 

「此度の危難、我等竜人族も参戦させて頂く、里には未だ同胞が控えており、

ゲートを通じて何時でも召喚可能だ、使徒との戦いでは役に立てるだろう、よろしく頼む」

 

その言葉に兵士たちの間から「おぉ」と叫びがあがる。

物語の中にしか登場しない伝説の種族が、自分たちの味方になってくれるというのだ、

盛り上がらない方が不思議である。

 

リリアーナらの返礼に、鷹揚に頷きつつアドゥルたちは会議室に向かうのであるが、

その際、ハジメたちに、いや正確にはハジメの頭の上のユエへと、

アドゥルの視線が注がれ、何かを口にしたいようなそんな表情へと変わるのだが、

静かに首を横に振ると、会議室へと足早に歩を進めて行く。

 

「さっきの続きだけど」

「クラルスって……言ってたよね」

「そうだ、ティオ姫はアドゥル様の孫にあらせられるお方だ」

 

一人だけ広場に残っていた、藍色の髪の竜人が二人の疑問に答えるかのように、

口を挟んでくる。

 

「姫?」

「そうだ、我ら竜人族が姫と言ったらティオ様のことに決まっているだろう!」

「姫?姫って……」

 

ハジメがジータがユエがシアが香織が雫がシルヴァが光輝が、

ともかくこの場の全員が姫と言う言葉と、

これまでのティオの数々のやらかしめいた姿を思い起こす、そして一斉に。

 

「「「「「「「「ないわ~」」」」」」」」

 

と、声を揃え叫ぶ。

 

「な、何を失礼な!族長の孫である以上は姫とお呼びするのは当然のこと!」

「そ、そうじゃそうじゃ!」

「じゃあこれから姫って呼んであげようか?ティオ姫、ちょっと語呂が悪いけどティオ姫

なかなかいいと思うよティオ姫」

「そうだな、もっと早く教えてくれよティオ姫」

「ぬがー!二人とも止めてたもう~~!ご主君よぉ~~」

 

羞恥で身悶えするティオ、ここまではよくあることなのだが、

聞き捨てならない言葉が混じっていたような?

 

「ご……主君?」

「そうだ、申し遅れました、俺の名はリスタス……姫が主君と定めた相手ならば、

俺にとっても主君も同然、つい言葉を荒げた非礼はどうかお許しあれ」

 

主君……主君……その言葉の意味を図り兼ねていたジータだが、

すぐにはっとした目でティオの顔を見ずにはいられない。

やはりティオも彼女なりの考えを巡らせた上で、

ハジメの傍にいられる方法を模索していたのだと、

ジータは思い知らされずにはいられなかった。

 

ご主人様と言う響きでは、いかがわしい印象を与えてしまうが、

ご主君ならば……聞こえが全然違うし、何よりも拒絶し難い響きが強い。

……例え意味するところが同じであっても。

 

そんな言葉上のレトリックにすっかり騙されたリスタスはその場に跪きつつ、

言葉を続けて行く。

 

「正直、里へと戻った姫様の姿には戸惑いを隠せませんでした、

洗脳でもされたのではないかと……」

 

こんなことを言われるのはお前のせいだと、互いに肘をぶつけ合うハジメとジータ。

 

「しかし、言葉を重ねる内に分かりました……聡明で情に厚いその内面は、

決してお変わりになってはおられないのだと……ううっ、そんな姫様がっ……

お選びに……なられ……」

 

この様子から察するに、リスタスという男、ティオに想いを寄せていたのだろう。

そしてティオもまた開花した変態性を里帰りの際、完璧とは言えないまでも、

同族に対してほぼ隠蔽し、自分たちのことを説明したのであろうと。

 

「よくぞ言うたリスタス……」

「族長」

 

騒ぎを聞きつけ引き返して来たアドゥルがそっとリスタスの肩に手を置き、

それからその視線をハジメたちへと向ける。

 

「初めまして、南雲ハジメ君、蒼野ジータ君、君たちのことはティオから聞いているよ」

「あ、こちらこそ初めましてアドゥルさん!」

 

ハジメよりも先にジータが挨拶を入れる。

 

「……リスタスの言う通り、私も最初はティオの変化に戸惑った」

「まぁ……」

「しかし、あの子は隠れ里での生に飽いていたのを私は察していた、

外へと旅立つことを志願したのも、その渇きを癒すためであろうとも

そしてティオは見つけたのだ、生涯を掛けて忠誠を誓うべき……

君たちという存在を」

 

言ってることは大筋では間違ってはいないのだが、

それゆえに心が痛むのをジータは覚えていた、もちろんハジメも同様に。

 

「ティオのことをお頼み申す、仕えるからには我ら竜人の代表としてその忠義を、

しっかりとお見せするようにと、固く誓わせておりまするゆえに」

 

そしてアドゥルは今度はハジメへと話しかける。

 

「己の信条のために五百年も独り身を貫く頑固者ではあるが、

もしも君がいつか受け入れてくれるつもりがあるのならば……」

 

そこから先はハジメにだけ聞こえるように小声での耳打ちに変わる。

 

「曾孫の顔を見れる時を期待してもいいだろうか?」

 

その不意打ちに苦笑するしかないハジメ、やはり口ではどうのと言ってはいても、

孫の本心など、とうにお見通しのようであり、そしてそれを知ってなお、

自分たちの元に送り出すことを良しとしているのである。

その大らかさに改めてハジメは敬意を払わずにはいられなかった。

 

「アレーティア様、いえ今はユエ様でしたか……」

 

続いてアドゥルはハジメの頭上のユエへと視線を移す。

ちなみに今のユエの姿は戦装束と呼ぶには、やや不自然と言えるまでに、

ドレスアップされており、まるで好事家の間で持て囃されるドールの如き姿となっている。

何か理由でもあるのだろうか?

 

「……私は」

「いえ……覚えていないのも無理もございますまい、私が最後にお会いしたのは

まだ姫様がディンリード様の胸の中に収まる程に小さな頃であらせられましたから」

「……叔父様のことを知っているの?」

「はい、大変によくして頂き申した、あの大迫害があって以降、

どうなされているかは心密かに案じてはおりましたが……まさか……」

 

声を震わすアドゥル、恩人の動向を案じながら隠れ里に籠らねばならぬ日々は、

いかばかりであっただろうか。

 

「つまりこの戦いは我々に取っては、ディンリード様への恩義を返すため

その仇を討つための戦いでもあるのです」

「……ありがとう、叔父様もきっと喜んでくれると思う」

「勿体なきお言葉にて……」

 

と、それだけを言い残し、瞳に光る物を浮かべながら、

アドゥルは力強い足取りと共にリリアーナらの元へと戻って行くのであった。

 

そしてそれから暫くは各人やり残しがないようにと、

ある者は人々にアーティファクトの使用法を教え、

ある者は自身に与えられたアーティファクトの習熟に、

そしてある者は休息にと時間を費やしていく、

そして東の地平線から輝く太陽が顔を覗かせた時だった。

 

世界がまさに魔物の瞳の如く赤黒く染まり、鳴動を始め、

そして【神山】の上空に亀裂が奔り、深淵が顔を覗かせた。

 

「空が……割れる……」

 

 

 




後半部分のユエとアドゥルの会話シーンみたいなのを書きたくって、
ここまで続けて来たのかなと今にして思ってます。

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