ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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夏の生放送、特筆すべき情報は正直……といった感があります。
とりあえず十月のコラボを楽しみに待つとしましょう。
しかし水着ロベリアめ、誘ってやがる……。



招待-Invitation

 

 

「不思議な空間ですね、距離感が掴めません」

「シアの言う通りだ、落ちたらロクなことにならないだろうからな、全員、気をつけろよ」

 

【神域】に踏み込んだハジメ達の目に最初に飛び込んできた光景、

それは果てという物が認識できない、極彩色に彩られた曖昧模糊とした世界だった。

そんな世界の中にある一本の白亜の通路の上にハジメたちは降り立つと、

そのまま道なりに移動を開始していく。

 

「ハジメちゃん、羅針盤は?」

「ああ、この先に光が伸びている、と、言ってもどの道進まないと仕方ないんだけどな」

「……んっ、でも少しずつだけど光強くなってる」

 

ユエの呟きに全員がホッとしたような表情を見せるのは無理もない。

何せ遠近感が一切掴めないので、実際は同じ場所で延々と足踏みしているのではという、

不安がどうしても否めなかったのである。

 

「しかしの、敵の待ち伏せのど真ん中に出なかっただけでも僥倖と思わねばのう」

 

確かに……と、思う、いきなり大量の使徒や魔物の待ち伏せに出くわす可能性もあったのだから。

 

そんな果ての見えない通路を進むこと数十分……ハジメのゴーグルが異変を捉えると同時に、

シアのウサミミがピンッ!と立ち上がる、未来視が発動したという証である。

 

「来ますっ!砲撃!」

「集まれっ!」

 

ハジメの号令に従い、整然と全員がハジメの傍に身体を寄せ、

ハジメが宝物庫Ⅱに魔力を込めると、そこから複数の巨大盾が自動的に展開し、

それは幾重にも連なりドーム状となって、ハジメたちを覆う、

と、その瞬間全方位からの―――使徒による分解能力を込めた閃光が到達する。

 

「……こんなこともあろうかと、ってな」

 

静かに、しかし絶対の確信をもって呟くハジメ。

 

この複合巨大盾―――アイディオンという、は。

幾枚もの復元石を組み込んだアザンチウム製の複合盾であり、

さらにハジメによる"金剛"による強化もなされている。

 

そのため単純な防御能力もさることながら、さらなるキモとして、

その一枚一枚に、空間魔法、さらに重力魔法を付与しており、

受けた攻撃のベクトルを、そのまま相手へと弾き返す効果がある、

ただし万能というわけでは無く、攻撃反射機能は長時間は行えず、

また、その後クールダウンの時間が必要となるため、

常時展開し、担いで走り回るような真似は出来ない。

 

ちなみに、パルスヒュベリオンによる全方位攻撃も、この技術を利用した、

ミラービットによって行われていることをここに付け加えて置く。

 

ともかく、盾への圧力が消え、盾を収納したハジメたちの前に姿を現したのは、

辛うじて反射を避けられたものの、身体の一部を欠損させた十数体の使徒と、

その数を遙かに上回る極彩色の空間の中に埋まる様にして、

上半身を消失させた数十体の使徒の骸。

無傷なのは明らかに狼狽の表情を見せる数体の、指揮官クラスであろう使徒のみであった。

 

「くっ」

 

指揮官らしき使徒の中の一人が合図を送ると、

極彩色の空間から続々とまた使徒が湧き出していく、

五十を超えたあたりでその数が止まったのを確認するや、

ハジメは宝物庫Ⅱからメツェライを取り出す、ただしそのフォルムは、

従来のそれよりも二回り以上巨大化している。

 

――超大型電磁加速式ガトリング砲 メツェライ・デザストル

 

ウルで、王都で、氷雪洞窟で立ち塞がる物全てを薙ぎ払った殲滅兵器メツェライの、

さらなるバージョンアップ版である、その発射速度は毎分一万二千発から、

七万二千発にまで大幅強化されている。

 

そんなもはや常識を逸脱した巨大兵器の引金を、

ハジメはなんの躊躇いもなく、使徒の群れへと引く。

 

毎分七万二千発の紅い光の濁流が、文字通り天罰の力を帯びた破壊の光となりて、

銀翼による防御をも貫通し、使徒たちは全身を撃たれて次々と地へと落とされていく。

光が晴れた時、そこに残っていたのは先程の合図を入れた使徒一体だけであった。

 

「お前がここのボスか?」

 

ハジメの問いに使徒は、ただ双大剣を展開させることで応じた、

そしてそのまま銀翼をはためかせ、まっしぐらにハジメへと突進する。

ハジメはそんな使徒に対して、やはり無表情で何に誇るわけでもなく、

ドンナーの引金を引く。

 

無造作に放たれたその閃光を切り払わんと、

大剣でもって振り払う動作に移る使徒だったが……。

 

(光が……ブレ…て)

 

充分に切り払えるタイミングであったにも関わらず、剣は空を切り、

そして驚愕の表情を浮かべた使徒の頭を弾丸が吹き飛ばした。

対使徒用にハジメが開発した装備の一つ、変成魔法を付与した特殊弾丸、

リビングバレッドの効果覿面といったところである。

 

「お前らの防御や反応に正面からやりあうだけなのも何だからな、

多少はココを使わせてもらったよ」

 

コンコンとこめかみを指で突く仕草を見せるハジメ、

と、そこにまだ隠れ潜んでいたか、三体の使徒が一斉に大剣を振り下ろすと、

そこから極太レーザーが放射される、だが。

これに対してもハジメは無表情で二枚の円盤のような物を投げて対処するのみだ。

一枚の円盤はハジメたちの眼前で展開し、レーザーを飲み込み、

そして少し離れた場所で展開したもう一枚が、その飲み込んだレーザーを放出する、

放った使徒へとそのままに。

 

恐らく空間魔法を応用したこれも使徒用の装備なのだろう、を、

上半身を消滅させた使徒を確認しつつ、平然と収納しながらハジメは独り言ちる。

 

「少しは俺たちのことを研究しては来てたんだろうが、所詮は木偶だな……

今を必死で掴もうとする者へは追いつける筈もない……って、もう聞こえてないか」

 

その口調には確信めいた響きはあれど、誇らしげな物は含まれてはいない。

メテオインパクト、バルスヒュベリオン、アイディオン、リビングバレッドetc、

確かにこれらの超兵器を造り出したのはハジメである、

 

しかしそれは先人の培った技術、そして多くの夢追い人たちの賜物でもあると、

ハジメは理解している。

だからハジメはまだ誇らない、愛する者の肉体を取り戻し、

何より人の進化を弄び、踏み躙る者をこの手で討つまでは。

 

ともあれこの空間に潜んでいた使徒は全て倒せたようだ。

そのまま先に進むこと暫く。

 

「行き止まりか……」

「これってゲートだね」

 

行く手を阻む極彩色の壁、それもこれだけが他の壁とは違い波打っている、に。

ハジメが手を当ててみると、そのままブリッと向こう側へと沈み込み、

その先は一切見えない。

 

カリオストロが色々と調べるが、すぐに首を横に振る、

このまま身を任せて先に進むより他に無いようだ。

 

一行は頷きあうと、経験上意味はないと分かってはいても、

それでもあの氷雪洞窟と同じようにスクラムを組んで、

一斉に波紋の中へと身を躍らせていくのであった。

 

 

極彩色の空間から出た先は、灰色の荒廃した都市であった。

朽ち果てた高層ビルや、滑落した高架、一見すると映画に出て来るような、

滅んだ近未来の都市そのものである。

 

ともかくそんな周囲と、そして仲間たちの数を確認するジータ、

そして、やはりか……と、いった風に表情を曇らせる。

 

「……ハジメちゃんがいない、ユエちゃんも」

「どこにいるのかは?分かるんでしょ?ジータ」

「分かる、分かるよ、このずっと先……」

 

ジータの視線の先には時計塔があった。

 

「二人とも一緒なのでしょうか?……ジータさん」

「それは間違いないよ、ハジメちゃん落ち着いてるから」

 

ハジメの心の動きは先程と変わらず、静かなものである、

だが静かな中にも強い闘志を抱いていることもまた伝わってくる。

ならばハジメとユエはきっと大丈夫だ、だから今は先を急ごう。

 

「ジータがそう言うんだ、今はハジメのことよりも、ここを切り抜けることを考えるぞ」

 

カリオストロの言葉に頷くと、一行はジータの示した時計塔へと向かい、足を進めて行く。

 

「地球の文字じゃないね……」

 

確かに、建物の壁や看板に薄らと残る文字は地球の物ではない。

 

「これもエヒトが滅ぼした世界の一つなのかも……」

「もしかするとトータスの過去の一つなのかもしれないね」

「記録にも残らない遠い時代の、か」

 

そうシャレムがうんざりとした表情で口にした時だった。

シアのウサミミがまたピクリと動く、未来視のみならず、

気配察知に優れた兎人族の十八番である。

 

「皆さん、囲まれていますよ……」

 

シアがハジメによって与えられた新しき武器、ヴィレドリュッケンを構えながら、

仲間たちへと警戒を促す。

 

「ハジメがいないんじゃしょうがねぇ、オレ様たちも多少は働かねぇとな……ククク」

 

カリオストロがそう犬歯を剥き出したと同時に、ビルの陰から

数百体にも及ぶ、大量の魔物とそして使徒が姿を現す。

魔物に混じる使徒の数が思ったよりも少ないのは、

どうやら大半を地上侵攻に振り分けているからなのだろうか?

 

いずれにせよ魔物相手の方が好都合と、まずはジータが先制のアビリティを発動させる。

 

『アンブレディクト!』

 

ジータの代名詞ともいえる万能デバフ、ミゼラブルミストをも凌ぐ黒霧が魔物を、

そして使徒を覆いつくし、その動きを拘束していく。

しかも効果はそれだけではない。

このアンブレディクト、ミゼラブルミストの上位アビリティなだけあって、

敵全体のへの攻防ダウンのデバフに加えて、さらにランダムで攻撃速度ダウン、

灼熱、睡眠、暗闇、魅了、恐怖、麻痺のどれかを付与発動させる。

ある魔物は身体から火を噴き、ある使徒は身体を麻痺させ墜落し、と、いった具合に。

 

さらに昇華魔法によって、その成功率、効果量は元のスペックよりも一段階上となっており、

まさに半減といっていい自身たちの能力の減少に戸惑う間もなく、

さらなる追い討ちのデバフがカリオストロから放たれる。

 

「オレ様が世界で一番カワイイに決まってんだろ?コラプス」

 

カリオストロの手から放たれた重力球、これも重力魔法により、

さらなる強化が施されてる~――が、放たれ、さらに魔物と使徒の動きが鈍くなる。

こうして黒霧と重力、二つの戒めにより、通常の半分、いやそれ以下の力しか、

発揮できぬまま、シア、ティオ、雫、シャレム、カリオストロらの一斉攻撃により、

魔物、そして使徒までもが櫛の歯が欠けたように一気にその数を減らしていく。

 

しかしそんな中で一行はある奇妙なことに気が付く。

 

「なんかさ、ジータちゃんばかり狙われてない?」

 

そう、鈴の指摘通り、敵の大半がシアやティオを半ば無視して、

ひたすらにジータを狙い動いているのが一行にはありありと見て取れた。

 

確かにハジメとジータ、どちらかが死ねばもう片方も死ぬであろうというのは、

情報共有されてはいるのだろう。

しかしこれは少し露骨すぎはしないだろうか?

まるでジータのみを抹殺せんとばかりに、

使徒が、魔物が次々と彼女へと殺到していくのだから。

 

もちろんそれを察したジータも心得た上で誘導するかのように動くので、

タダでさえ動きの鈍い魔物や使徒のその算を乱した行動は、

シアやティオ、雫らにとっては格好の獲物にしかならなかったのだが。

 

「さてと、そろそろ頃合いか……おいジータ、あの柱の辺りに連中を集めろ、

一気に蹴散らしてやる」

 

カリオストロの指示に従い、自信を追う大量の魔物を誘導、いや牽引していくジータ。

そして、満を持してカリオストロがとっておきを放つ。

 

「これが真理の一撃だ!アルス・マグナ!」

 

カリオストロの声に従い出現した双頭の龍が、

次々と魔物たちをその牙で爪で切り裂き、ブレスでもって焼き尽くす、

かのウルの街での蹂躙劇と同じように、そしてその跡には、

これもウルの街の時と同じく、ブスブスと燻る魔物と使徒の骸のみが残っていた。

 

「あの時も思うたが、弟子が弟子なら師も師じゃのう……では……」

 

妙な感慨と、そして邪な期待が籠った眼を向けるティオには構わず、

無言で先を急ぐよう促すカリオストロ、そういうところじゃ!と、

それが却ってツボに入ったか、一瞬身体をくねらすティオではあったが、

やはり次の瞬間には真顔に戻りその後に続く。

 

途中幾度か、散発的に使徒や魔物の襲撃を受けたが、

やはり今の彼女らの敵ではない。

そしてついに時計塔がその全容を彼女らの前に現わそうとした時であった。

 

先頭を進んでいたジータが突然胸を押さえ、その場へと蹲る。

どうしたのかと雫がジータの顔を覗き込み、思わず絶句する。

何故ならばその顔には見覚えがあったからだ、

それは確かまだ自分たちがここに来て間もない頃の……。

 

『雫ちゃんお願い!ハジメちゃんを探して!ハジメちゃん今酷い目にあってる!』

 

そうだ、あの時……訓練場での、確かあの時は。

 

「ねぇ、南雲君になにかあったの!?」

「……ハジメちゃん、多分今エヒトと戦ってる!」

 

何とか努めて心を落ち着かせようとしてはいるのだろう、

だが、その声には明確な焦りと昂りがあった。




ハジメとユエの身に何が……。
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