ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

167 / 173
久しぶりだなとんでもない奴ということで
グラブルリリンクが出たのと、何より劇場版ガンダムSEEDを見てちと刺激されてしまい
やっぱりこいつらのその後というのも構想した以上は、形にしとくべきかもと思いまして
久々に筆を取ってみました。

初めての方へ
この作品における南雲ハジメやユエ、天之河光輝etcといった原作由来の登場人物は、
その在り方が大きく変化していたりもします。
ですがあくまでもありふれた錬成師と空の少女で世界最強という拙作においての
各キャラクターの歩みの結果であるとご了承の程、どうかお願い致します。

でも新訳Zのつもりが冒険王版ガンダムくらいまで変わってしまった感も我ながらあります。
ええい!このスイッチだ!


Neue Welt
The Successor


 

 

『知れば誰もが望むだろう! お前の様になりたい!なれた筈だと、なれる筈だと

ただ運に恵まれただけで世界を統べる力を、最強の力を得られたのだからな!』

 

確かにそれは否定できないとハジメは黙って声に耳を傾ける。

 

『確かに今、君は多くの友に恵まれてはいる、それらも所詮は羨望あっての物だ!

信頼によって得た物ではない!』

 

「違う!確かにそういう奴もいるかもしれないが……」

 

ここで初めて声を荒げるハジメ、その発言が自分ではなく、

自分をまかりなりにも信じてくれているであろう者たちへの侮辱であると受け取ったが故に、

だが……。

 

『信頼?君にその言葉を口にする資格があるとでもいうのか?」

 

声はより辛辣さを、鋭利さを増していく。

 

『何より君自身が自分を信頼してはいないのだろう?力だけが自分の全てではないとは心から

信じることが出来ているとでもいうのか?』

 

『己を信じられぬ者がどうして他者を信じ得ることが出来ようか、

そうだ!誰もがただ惑わされて誘われているだけだ、羽虫の如く君の持つ強大な力に知恵に!

例えそうではなかったとして、誰も分ろうとはしないだろう!誰にも!』

 

 

 

「はっ!」

 

思わず周囲を見回すハジメ、途端にいつもの軽い、目を閉じてブランコに乗った時のような、

特有の眩暈がハジメの身体を包む。

 

「今のが現状の俺が抱える闇ってことか……」

 

かつては図らずも得た強大な力を抱えたが故の未来への不安が自身の闇だった。

そして抱えた力と伴う未来を受け入れれば今度は……。

 

「たく」

 

ボヤキ交じりの溜息をつくハジメ、結局、奈落を抜けようが迷宮を踏破しようが、神を倒そうが、

勝てば勝つ程により困難な壁が試練が姿を現わすだけだということであり、

それが即ち"生きる"ということなのだろう。

 

しかし全くもって未だにここでは不思議な事が起きる、まぁ無理もないか……と、

ハジメは自身の周囲に展開する不可思議な光景を改めて見回す。

 

ここは神域の最深部にして、かつて神であった者エヒトルジュエの本当の意味での、

(プライベートな空間……そう考えるとなんか申し訳ないな)

確かに自分が死んだ後、さして縁なき他人が自室に踏み込むのを思うと、

あまりいい気分がしないのは事実だ。

そもそもは日記でもないかと興味本位で漁り始めたのが契機である。

今思うと私室に踏み込むどころか故人のパソコンのHDDを覗くレベルの、

下世話な行為ではあったとは思う。

 

実際にあくまでも調査という名目ではあったが。

 

(何もそこまでしなくても、止めなさいよ)

(……んっ、静かに眠らせてやる、それが敬意)

 

と、ジータたちが反対の声を上げたのも確かではあったのだが、

愛する少女たちよりも興味の方が勝ってしまった。

隠してたエロ本の何冊かでも見つけて悔しがらせたいと言って調査に同行した、

ミレディらは置いといて……

 

しかして彼らは発見したのである、エヒトルジュエが最も大切にし、

そしてある意味では最も敬遠していた物であろう物を、それは……。

 

「思い出」

 

かつてエヒトも使っていたであろう寝台にごろりと寝ころび、

ポツリとそんな言葉を漏らすハジメ。

彼が今"思い出"と称した物……それはすなわち到達者たちが遺した、到達に至るまでの道程と、

そしてこの地に降り立ってからの遥かな年月を詳細に記した数々の記録であった。

 

それを見つけた時、心の何処かで安心したのをハジメは思い出す。

やっぱりお前も人であった頃を、その証を最後まで捨てられなかったありふれた男だったという、

確たる物を見つけることが出来たという安堵を、

君もやっぱり普通の……ありふれた奴だったんだねと瞑目しながら小さく呟いたミレディと共に。

 

ともかくこの場所はエヒトルジュエの終の棲家であると同時に書庫でもあったのだろう。

この部屋には先も記した通り到達者の文字通りの遺産と言っても良いほどの

膨大な資料が遺されており、その解読が目下のハジメの日課の一つであった、それはすなわち。

 

己のみならずいずれ必ず人類全てを到達の域に、

そして彼らがついに辿り着けなかったさらなる域へと。 

 

(それがこの故郷へ、地球へと帰還した俺が自分に課した命題)

 

確かに自分はエヒトに勝ったのかもしれない、だがそれは半ば譲られた勝利だったと、

ハジメは認識している。

あの時、パイルバンカーが己の心臓を貫いたその時のエヒトの笑顔は、

確かに余力を残していたという証だと、勝利を……座を譲った証だとハジメは確信していた。

 

「とんでもない物まで譲ってくれたもんだ」

 

所詮はただ生き残りたかっただけの自分が、最強など望みもしなかった自分がと、

改めてハジメは思い返す。

しかしながら勝利を譲られたのならば、譲った者の遺志を僅かながらであっても叶えるのが、

筋という物、と、いささかお人好しだなと自覚しつつ、

この世界の南雲ハジメとしては考えるのである。

 

だから自分は征かねばならない、彼らが目指し諦めた先へ。

それを為したその時こそ、南雲ハジメは真の意味でエヒトルジュエに勝利し、

到達者たちの業績を無為な物にすることなく、彼らのその存在を救ったことになるのだろう。

 

だがそれには遥かな時間が必要なこともまたハジメは理解している、

己の残り生涯全てを費やしてもきっと足りる筈もない程の悠久かつ膨大な時が……。

それはそれで構わないとハジメは思う、切り拓く者と耕す者、育む者、実りを享受する者が、

それぞれ同じである必要はないのだから。

 

その切り拓く者を自認するハジメとしては、

託せる所まではなんとかやってみせたいという思いはある、

次の世代は次の世代のやり方でということで、

そしてその実りを享受する存在が到達者と称されるのならば。

 

(もしかすると到達者って)

 

遥かな未来の、それこそ地球という言葉すら忘れ去った地球人の姿だったのかもなと、

ハジメはふと思う、だとすれば今こうしていることも予め何かによって定められた―――。

そこまで考えた所で、よくある話すぎてちょっと出来すぎだなとクリエイターの卵はそう思う。

 

(未来かぁ……)

 

ハジメは……自分に未来を教えてくれた偉大なる師のことも思い起こす。

 

 

『ま、オレ様は誰かの為、ましてや世界の為だなんて寸分たりとも思ってなかったがな』

 

天上天下唯我独尊にして徹頭徹尾己の利益と快楽の為、気まぐれめいた善行は

単に優秀さを世間に誇示せんが為、それがかつてのカリオストロの日常だった。

 

『その結果世界を敵に回してほとぼりが冷めるまで千年だ、

で、ようやくお天道様の下に出てみりゃ』

『オレ様の産み出したる錬金術は物好き共の学問に成り下がって

かつてのオレ様の1/10の領域にも及んじゃいねぇ、むしろ退化すらしてやがる、千年もあってだ』

 

その嘆きは人々の本来歩むべき未来を自分の愚行のせいで閉ざしてしまったという後悔が、

確かに含まれていた。

 

『おかげで本来なら化石か干物同然の扱いをされてなけりゃならねえオレ様にだな

開祖だの何だのと未だに能無しの情けねぇ奴らが大量に群がってくる始末だ』

 

まさかこの天才美少女錬金術師のカリオストロ様が、

こんなジジィめいた繰り言をホザくようになるとはな

などと口にしつつ、取り繕ったかのように彼女(彼?)はいつもの擬態を始める。

 

『つまりぃ~カリオストロちゃんとしてはぁ~』

 

声色こそ美少女のそれだが、無造作に尻をボリボリ掻く仕草で台無しである。

 

『オレ様の足下にも及ばねぇバカとはいえど舎弟のお前にそんな風になって欲しくはねぇ、

例え世界を統べ従える力があってもだ』

 

 

エヒトら到達者の犯した失策の中で最も重い物、

それは後継者を作り得なかったことだとハジメは考えている。

人間であれ国家であれ単一の強大な存在に依存する世界は必ず綻びる、

不変の生命はあるかもしれないが、不変の精神や不滅の国家など決して存在はしない、

事実ハジメはエヒトが最初からエヒトではなかったことを知っている、それこそが証ではないか?

 

何より唯一最強の存在が世界を統べることを是とすれば、新たなる最強の手によって

最悪それまで積み重ねた全てが覆されてしまう可能性すらあるのだから。

単に強さのみを基準にしてしまえば、それ以上の強者が現れた時の抑止が利かなくなってしまう。

世界を巡る最強と最強の椅子取りゲームなど不毛なだけだ。

 

「ってことをわかってんのかね?アイツは」

 

そのアイツが誰なのかは言わずもがなである、かつて氷雪洞窟にて相まみえることとなった。

己のもう一つの可能性、魔王南雲ハジメ、この世界のハジメのこの一連の取り組みは、

その魔王への挑戦も含まれている、何せ何とか退けたものの、

勝利と引き換えにときメモの爆弾レベルのとんでもない置き土産を頂く羽目になったのだ。

いずれ一泡吹かせなければ腹の虫が収まらない。

 

(絶対仕返ししてやる……)

 

しかしながら魔王への対抗心もまたこの道を取らせた要素の一つだとすると……。

 

(やっぱり俺は俺なのかもしれないな、とはいえ、俺にもまだ未来はある、ある筈……だよな)

 

今の己の肉体は魔物の血肉を取り込んだ、

いわば人のそれとは大きく異なる要素が多分に含まれている。

勿論ある程度の保証はあるが、それでも前例無き物である以上、

いつどうなるのか?という確証は持てない。

少なくとも南雲ハジメ一個人としては今ここで心臓が止まっても、

魔物になってもそれはもう仕方がない。

悲しいけどこれ……という話で終わらせるだけだ、あくまでも一個人としては、しかし。

 

(ジータを巻き込むわけにはいかない、絶対に)

 

そう、この世界の南雲ハジメに一個人という言葉は当てはまらない。

何故ならば自分と生命と魂を共有する掛け替えなき対の少女が、

命に替えて守りたい少女がこの世界には存在しているのだから。

その少女が……もしもジータがいなければ、奈落の底でずっと傍にいてくれなければ……

励ましてくれなければ、共に最後まで戦ってくれなければ。

 

(俺は強さと引き換えに失う不安と奪われる恐怖に苛まれながら

生きて行くことになってたかもしれない…一人で生き抜いた自信ばかりが肥大して

傲慢に他人を虐げるような存在になっていたのかもしれない)

 

俺じゃないあいつがそうであるとは思いたくないが……だがしかし、

ハジメにとって魔王は原初の憧憬を抱かせると同時に、

酷く何かに怯えている小さな存在にも思えてならなかった。

それは鋭利な牙と炎の息を備えさらに雄大な翼と堅牢な鱗をも持ちながら

洞窟の奥でひたすら宝物を貯め込み続けるドラゴンにも思えた。

 

(だからこそ、俺はジータを転生させたという神様の元へ必ず辿り着く)

 

その神は恐らくエヒトとは全く異なる文字通り高次元の存在なのだろう、

例えその思考は人のそれと変わりなくとも。

 

(そしてジータを普通の身体に戻して貰う)

 

到達だの未来だのとさんざ口にしようとも、

結局これこそが自分が目指す本来の目的と言ってもいい。

しかしながら、その原動力となっている感情が何なのかは一言で説明できるが、

それを口にできる勇気は残念ながら今のハジメには無かった、何よりも確証が持てない、

今の自分のこの感情が単に生存本能から来る生理現象に過ぎないかもしれないのだから。

そしてもしも……。

 

自由を取り戻したジータが自分以外を選んだら?自由を取り戻した自分が……。

 

「くっ!」

 

怖い……分からないということが、無知という物がこんなに恐ろしいことだなんて、

かつての自分には全く想像もつかなかった、だがそれでも。

 

「恐れていても……先には進めない」

 

その精神あったればこそ生き抜き、帰還が叶ったのだ。ならばこそ初心に……。

と、そんな時であった。

 

ハジメの瞳から不意に涙が零れ始める。

 

「あ……あれ?」

 

あまりにも唐突でかつ予想外な自身の変化に驚きつつ、頬を拭うハジメ

しかし涙はとめどなく流れ続ける……そればかりか胸の奥から

心地よい昂ぶりまでも湧き上がってくる。

これは……いや違う、これは……。

 

自分由来の感情ではない……だとすれば。

 

「あんにゃろめ」

 

今の自分の現状を察知したハジメはクリスタルキーを取り出す、目指すは……。

 

 

神域から出るなりそのままハジメはジータの下へと直行する。

あらハジメくんどうしたの?なんてジータの母の声を聞き流し。

勝手知ったる他人の家とばかりに、このあらいを作ったのは誰だあっ!と、

まさにそんな感じでもってしてジータの部屋のドアを乱暴に開け放つ。

 

―――――そこにはコタツで丸まり海外ドラマを見ながら涙するジータたちの姿があった。

 

「ジータっ!コラこの野郎が!」

「ちょっと画面見えないよハジメくん!それに今日は女子会の日だよ」

「……んっ、女の子にこの野郎はちょっと違う」

 

コタツに包まる香織とユエの抗議の声は無視して、ハジメはそのままジータへと怒声を上げる。

 

「あそこに入る時は感情がダイレクトに伝わりやすいから

大人しくしとけって言ってるだろうがーっ」

「だ、だって、ハジメちゃん…やっと、やっと二人が結ばれようとしてるんだよぉ~」

 

そう口では言い返すジータであったが、涙を浮かべたその瞳は画面に釘付けである。

 

「籠るの一時間が限度なんだぞ!貴重な時間をだなあ」

「今いいところなんだから変に怒ったりなんかしないでよぉ~」

 

互いに涙をボロボロ流しながら怒ってるのか泣いているのかよくわからない態で、

口論を始めるハジメとジータ、生命や魂のみならず、かつては伝わる程度であった感情すらも、

二人は共有しつつあった。

 

 

「たく……」

 

神域から離れたことでようやく防壁が作用してきたのか、

感情のシンクロが通常レベルまで落ち着いたのを確認し、

やっと一息入れられるぞとハジメはどっかと胡坐を掻く。

 

「南雲君、お行儀が悪いわよ、他人の家で」

「ああ、八重樫も来てたのか」

 

行儀云々と言いながらも自身はコタツで仰向けになったまま雫はハジメの無作法を指摘する。

 

「ここはもう戦場でもなければトータスでもないのよ、ジータにも言われてるんでしょう?」

「まあ、な、それに関しては自分でも何とかしなきゃなって思っちゃいるんだ」

 

確かにあの奈落での豹変は自身の様々な何かを変えてしまったのは確かであるが、その一方で、

実際には自分を盛り上げ奮い立たせるための一種のロールプレイ的な感もあったのも事実だ。

だが、トータスでの戦いの日々によっていつの間にかこっちの方が馴染んでしまい

今では最初からそうだったのでは?とさえ自分で思えてしまう。

 

「ちゃんと言ってるんだけどね、こんなんじゃ魔王様になっちゃうよって」

「おい!」

 

いかにいけ好かないとはいえど、自分である、

そういう風に扱われると流石に腹が立つのかジータに抗議の声を上げるハジメ。

 

「魔王になったハジメ君かぁ~私も会いたかったなぁ」

「んっ、実はあっちの方がちょっとかっこよかったりする」

「え…ちょ…おい」

 

香織はともかくとして思わぬユエの言葉に今度は声を詰まらせるハジメ、

当のユエはそんな彼の様子を楽しみつつ、気付かれないようにんべーと舌を出したりする。

 

 

(よく八人も抱えて、しかも子供までこさえられたもんだよ、俺じゃない俺)

 

こっちは振り回されっぱなしだというのにと、

そこんとこはハジメとしても評価するのはやぶさかではない。

それはジータにとっても同じである、少なくとも自分が危惧していた魔王の姿ではなく、

まかりなりにも誰かを愛し愛される存在としての魔王南雲ハジメであったことに、

密かに安堵したのだから。

但し流石にそれぞれ母親が違う子供をしかも八人もこさえるのは論外としか言いようがなく、

何より雫や愛子と顔を合わせると、別に自分は関係ないのに、

何故か監督不行届という言葉が浮かんで若干の気まずさが先に立つようになってしまった。

 

(でも流石にさ)

(ミュウちゃんにまで手を出してたり……しないよね)

 

もしもそこまでの域に至っているのなら、二人としては怒りというより、

むしろ謝りたい気分になってしまう。

したがって打倒魔王南雲ハジメはハジメのみならずジータや、

それからユエに取っても他人事ではなく、

むしろ積極的に協力するのが当たり前という物であり。

 

(安心出来なくなったんだから責任取って貰わないと)

(んっ)

 

と、いつもの通りアイコンタクトを取り合う二人なのであった。

 

 

「で、ハジメちゃん食べてくんでしょお夕飯」

 

そういえば今夜は鍋するからと誘われていたのをハジメは思い出す。

 

「光輝とミレディさんも帰ってくるんでしょ?」

 

コタツで寝ころんだままでハジメへと尋ねる雫。

 

「ああ、もう他に勇者がいるから早く帰してくれって」

 

勇者召喚の際、狙った個人のみならずたまたま似ている資質を持つ者まで、

世界を跨いで引っ張られてしまうことがある。

流れ弾召喚と自分たちは読んでいるが、今回の光輝の場合はそれである。

すでに準備は整えているので今頃もう神域に設けたゲートに帰還できた頃だろうか?

本来ならその出迎えも兼ねて神域にいたのであるが、そこはシャレムに頼むとして。

ハジメが俺もとばかりにコタツに入ろうとした時だった。

 

お鍋の白菜が足りないので買ってきて欲しいとそんなジータの母親の声が階下から届く。

 

白菜?買ってきて?誰か?いや誰が?そんな微妙な空気が一瞬部屋に流れる。

季節は冬真っ盛りで外は薄曇り、その上夕闇が迫りつつある。

 

「じゃあハジメちゃんお願いね」

「へ?なんで俺が?別に……」

「だってコタツに入ってないのハジメちゃんだけじゃない」

「……んっ、私もコタツから出たくない」

 

ハジメの問いににべもなくジータが言い放つと、ユエもまた顔を見合わせ同意する。

 

「ねー」

「んっ」

 

さらにその言葉尻に乗るかのように香織がまた妙なことを口走る。

 

「私ハジメくんの買ってきた白菜食べたいな!きっと絶対美味しいよ!」

 

誰が育てたとか作ったとかじゃなく誰が買う買わないで味は変わる筈がないだろうと、

ハジメのみならず香織以外の全員が思ったが、勿論思うだけで口にはしない。

ともかくこいつらではだめだと、

ダメ元でティオへ救いを求めるかのような視線を向けるハジメであったが。

 

「ご主人よ、妾は竜、いわば爬虫類じゃ変温動物ゆえにの寒さはちと遠慮じゃ」

 

普段トカゲ扱いすると怒るくせにこういう時だけ調子がいい。

じゃあと今度は雫、しかし。

 

「あら、南雲君?私にお買い物行かせる気?

私は光輝とミレディさんを迎えに来ただけで今日はお客さんよ」

 

部外者に頼るなとばかりに、あっさり機先を制されてしまう。

 

「じゃあ、いつものアレで決めよっか」

「え、あれかよ……」

 

いつもの、とジータの言葉に縮こまるハジメ、これは寒さのせいではない。

 

「俺、アレで勝てた試しないんだけどな」

 

そんなハジメのボヤキは半ば無視してジータはとっとと話を進めて行く。

 

「南雲ハジメ君に白菜を買ってきて貰うのがいいって思う人!」

「「「「「はーい」」」」」

 

ジータ、ユエ、ティオ、香織、雫……。

それぞれの関わり方や距離は違うとはいえ、自身に関わる女どもが高々と掲げた手は、

それはまるでジェリコの壁の如くハジメには映った。

 

(ちくしょう……いつもどうして多数決じゃ勝てないんだ)

 

この世界の南雲ハジメ(ちなみに天之河光輝もだが)は、

多数決(もとい女の友情)に弱いのであった。

というよりこの決定方法の致命的欠陥について二人とも未だに気が付いていなかった……。

信じられぬことに。

―――誰にでも欠点盲点は存在する証である。

 

「それでは五対一を持ちまして本件は可決となりまァす」

「……ハイ」

 

憤懣やるかたないハジメへと容赦なくジータは買い物袋を押し付ける。

 

「買うのは高架渡った駅のトコのにしてね」

「え?そこ遠……」

 

本来の最寄駅からは逆方向である。

 

「し・て・ね」

 

ジータの圧にたじろぐハジメ、だがこういう時の彼女は何か思う所があるのを、

ハジメも当然勘づいている、

何の意味も無くこんなことを言ったりさせるような少女ではないことを。

 

こうして彼はスーパーへと渋々ながら向かうこととなる。

男にとって厄介極まりない女の友情や結束について何とかしてくれる存在がいるのならば、

いつでも最強を明け渡して構わない、そんな風に今この時だけは思いながら。




改めましてお久しぶりです、ハジメが最強であることくらいわかりきったことなので
ハジメに限らずその内面を表面的な強さ以外の何かを
自分なりに解釈して書いていったのが本作であります。
最初はこんなん大丈夫かなと思ってはいたのですが、
完結後数年経過しても評価やお気に入りが増えているのは嬉しい限りです。

とりあえずはこの作品の南雲ハジメと女の子たちはこういう関係なのです。
え?一人いない?それは次回にて



ちなみにですが劇場版SEEDどうなることかと思ってましたが
蓋を開けるとキラとラクスの愛の物語でしたねぇ
ラクスって周囲から見たら聡明かつ毅然過ぎて、かつ普段から人を試すようなことばかりの
男の子に取っては一瞬たりとも気が抜けない怖い女の子だと思うのですが
そんな怖い子がキラにだけはちゃんと恋する女の子の姿をこれでもかと見せてくるのは
ちょっとズルいなって思いました。

……でもね…見終わって友人らと語ったのは殆どアスランの事ばっかで
見た人わかりますよね?一体何なのアイツ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。