別に宇宙人や妖怪や異世界人を社会が普通に受け入れてる作品ってたくさんあるので……。
とりあえずミレディ書くのムズいです、もっとウザさを出したいのですが
自分で書いていてイヤなキャラは書きたくなくって。
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なんかやけにUAやお気に入りとか増えてるなと思ったら日間27位ありがとうございます!
「電車から降りると寒いですねぇ」
シアはミトンの手袋越しに掌をこすり合わせてはぁはぁと息を白くする。
暖冬ではあるが、温暖な樹海育ちのシアにとってはやはり堪えるらしく、
普段のプロポーション抜群の姿は、丸々と着ぶくれしている。
スカートこそミニであったが、残念なことに下からはズボンが生えている。
そんなタケノコか土偶かといったスタイルのシアを一瞥し、
こっちは暑くなりそうだ、と思ったハジメの視界に大きなトートバッグが入る。
その中には―――大量の参考書やノートが収められていた。
「シア、勉強は楽しいか?」
なんだか父親みたいな風だなと思いながらハジメはついこの前の出来事を思い出していた。
それはユエがこの地球へと帰還?し、そしてハジメたちと同じ学校に通い始めてから
暫く過ぎた頃のこと、突如としてシアも学校に行きたいと言い出したのだ。
その言葉を聞いた時にはユエへの対抗意識かと、ジータ共々思ったものだが、
だがシアが誰かに対抗してとかそういう理由で、
何か行動を起こすような娘では決して無いということも二人は知っていた。
どうしてと理由を問うた二人へとシアは決意を込めて語った。
この世界で得て学んだことをフェアベルゲンへと伝えたい、そしていつか、
この国のような自由で豊かな国にしたいと。
それを聞いた時、シアも自分の星を見つけ出したのだという喜びと同時に、
名状出来ない一抹の何かが己の胸を走ったこともハジメは覚えている。
ともかくユエが学校に通っているのは、この世界でハジメたちと共に生きるため、
シアが学ぶのはこの世界で得たことを己の故郷たるフェアベルゲンに持ち帰るため、
ならば学ぶべき物、教えを受けるべき存在も大きく異なる。
ということでシアは現在彼女の要望を受け、ハジメが手配した講師らに、
地元の大学で政治や経済、そして歴史を中心とした講義を受けているのであった。
「はい!楽しいです!」
力強くハジメへと即答するシア、その瞳は表情は自分の歩むべき未来を見つけたという、
確信と喜びに満ちており、そんな彼女の顔を目の当たりにしたハジメの胸に、
何故かまた安堵と同時にやはり一抹の……今なら理解できる、
これは寂しさなのだと、が走る。
「お父様は度々言ってました、御大、いえ……その、ハジメさんはいつまでもこの世界に
いてはならない存在なのだと」
ハジメの揺れを知ってか知らずか、まるで自分にも言い聞かせるかのようにシアは続ける。
「だとすれば、シア=ハウリアもきっといつまでもここに留まっていてはいけないんだって」
やはりハジメとしては寂しさを覚えずにはいられない、が、
シアはそこで改めてハジメの手を両の手で力強く握りしめる。
「前に言ったじゃないですか、私たちは家族だって、多分、ううんきっと…
家族って離れていても繋がっているから家族なんです」
(お見通しか、いや……)
単に天然ゆえになのかもしれないなと、シアの目を正面から捉えながらハジメは思う。
「でもお前の目指すそれは長くて険しい道だぞ」
シアが故郷に持ち込もうとしている物は、
自分らの世界でも数百年かかってようやく根付いた思想・制度だ、
ならば同じかそれ以上の時間が必要な筈。
しかしそれについても大丈夫です!とシアは胸を張る。
「私だけでは無理でも、でもきっと次のハウリアがそれでも無理ならまた次のハウリアが
きっとやってくれる筈です」
(星は目指すべき物、辿り着けるか掴めるかは問題じゃない……ってことか)
確かになと、自分もまた星を目指す者としてハジメは頷くと、
「シアは本当に偉いなあ、あいつらに分けてやりたいくらいだよ」
こたつむりと化した不届きな女子どもを思い出しながら、
ハジメは帽子越しではあるがシアの頭を撫でてやる、
全く漁夫の利を得るのが本当に上手いなとも思いながら。
「お父様にもこないだ同じように褒められちゃいました」
「そういや手紙も貰ってたよな、一体なんて書いてたんだ?」
「止まるんじゃねぇぞって一言だけ」
「……」
本当にいずれ故郷に帰していいのかと一瞬迷うハジメであった。
頼まれてた白菜をカゴに入れるとハジメらは手早くレジの列へと並ぶ。
(このスーパーも前は薄暗くって苦手だったんだよな)
だが、今は照明が煌々とフロアを照らし、
生鮮食品の瑞々しさをこれでもかとアピールしている。
ハジメの提供した技術により、インフラ関連の料金が安くなったことも関係しているのだろう。
通りすがりのハジメの顔を知っている何人かがペコリと頭を下げる。
唯一の大人、まして教師であったというだけで必然的に矢面に立たざるを得ない愛子と、
そんな彼女を支えるべく、いや彼女のためだけではなく。
『あの時俺は世界も皆も俺が守ってやるって確かに誓った、それは今でも続いているんだ』
と、自分からわざわざ表舞台に出ることを買って出た光輝程ではないが、
ハジメも多少は顔を知られた存在となっている。
今度は列の後ろでまーまーうさぎさんーと母親に抱っこされた子供が、
帽子から覗くシアの耳へと手を伸ばす。
「ほーらほらーウサギさんだぞお」
すいませんと恐縮気味の母親に会釈し、
ハジメが子供の手をシアの耳へと導いてやろうとした時であった。
「オイ!南雲ハジメだな」
「本当はあのキラキラ野郎よりお前の方が強ええんだろ!」
「俺たちと勝負しろや」
そんな、ハジメたちにというより周囲にわざと注目を集めるかのようなそぶりで、
三人の男が大声を発しながらレジ横からずいと進み出る。
「ハジメさん……これって」
「ああ」
勝負だの何だのと吠えてはいるが、その割に全然強そうに見えない三人の男を見ながら、
ハジメは小声でシアと言葉を交わす。
こんな人ごみの中で騒ぎを起こすか?
いや、こんな人ごみだからこそ騒ぎを起こすのだろう、何故ならば彼らの…
と、周囲をチラリと見渡すと、案の定不自然に鞄をこちら側に向けている男がいる。
ならば、連中の目的は恐らくと……ハジメがそこまで思ったところで。
「ハイ!そこまでです」
「御同行願えますか」
いつの間にか彼らの背後に回っていた国から派遣されている護衛役らが、
一瞬で彼らを確保し連行していく。
と、同時に着信、護衛のリーダーからのようだ。
『最近とある市民団体の動きが活発になってます』
『我々も対策を取りますが、挑発に乗らないようにと皆さんにお伝えください』
最初から覚悟・想定していたことではあるが、
どれだけ愛子と光輝らが真摯に取材に応じようが、
ハジメがどれほど科学力で世界に貢献しようが、
やはり自分らを異分子と見做しこの世界から排除したいと思う輩は一定数存在している。
たった今のにしても、恐らくこちらが挑発に乗り反撃した所を映像に収め、
危険人物としてアピールする……正直陳腐さが否めないが、
そういう算段だったように思える。
こんな稚拙な手段に打って出るあたりは所詮は末端の奴らに過ぎないのだろうとも。
(実際マトモに遣りあったらこんなもんじゃなかっただろうからな)
確かにハジメは己の培った技術を世界に提供・公開することで自分らの保護を約束させている。
だがそれだけでは足りない、この平穏は得られない、だから。
ハジメは自身の研究、技術で得た莫大な富を、
各機関・団体etcへの工作・懐柔の資金として大量にバラ撒いているのだ。
暴力武力だけが力ではない、知力、魅力、理解力、説得力、包容力etc
力とは決して画一的な物ではない、従って財力で戦って何が悪いとハジメは思う。
それに暴力で殴れば相手は痛がるだけだが、財力で殴れば場合にもよるが相手は喜ぶ。
誰だって殴られるより金が欲しいのだ。
もちろん金と力はあれども一高校生たるハジメ個人にそんな伝手がある筈もないのだが、
そこはジータの父親が真に仕える存在、国内外、表裏に絶大な権力を有す、
何でもお屋形様と呼称される……が指揮している、
内閣直属で諜報・謀略を主とする機関があるらしい―――から、
派遣・紹介された人材を駆使、いや、力を貸してもらってるのはこちらであって、
そういう言い方は良くないなとハジメは心の中で言い方を変える。
手伝って貰った上で行っている。
但し、ハジメ自身もそういうやり方に思う所がないわけではない。
実際自分と自分の家族・仲間たちに関してなら、策など弄さず、
暴力のみで守り切れる自信はある。
だが、他の級友やその家族・友人らはどうなのだ?
自分らを嫌い、この世界から排除したいと思う奴らが、
南雲ハジメや天之河光輝らただ数人だけを律義に的にかけ続けるとは思えない。
もしかすると何ら関わりなき一般人にまで手を出し、その上で声高に叫ぶのだ。
あいつらがいたからこうなった、と。
とはいえど、もちろんこの国には言論・結社の自由という物がある以上、
単に嫌っている嫌われているというだけで人を罰することは出来ないのだが、
いざ、そういう渦中の当事者となってしまうと、
まったく人間社会というのは悪神以上に形の無い厄介な何かだと思わざるを得ない。
しかしながら国家のトップや科学の最先端を担う人々はやはり違ったなとも、
ハジメは思う。
幾度かの面会、会合を経て彼らはすぐに理解した、言い方こそ悪いが、
南雲ハジメはいわば金の卵を産む鶏なのだと。
そんな希少で貴重な存在が、平穏な生活というありふれた物しか望んでいないのである。
さらに言うのならばその鶏は世界を相手に出来る獰猛な爪と嘴、
そして世界を渡る翼すら備えている。
わざわざその機嫌を損ねたり、増してや腹を裂こうとするなど愚の骨頂というものだろう。
それはそれで今度は国家権力と結託し、奴らはこの国を、
ひいては世界を牛耳ろうとしていると思われるんだろうなと、
そんな風に考えるとうんざりとした気分になってしまうのだが……。
(ま、いざとなりゃ皆と一緒にこの世界からオサラバするしかないけどな)
幸い自分たちにはそれが可能なだけの力がある。
言われなくてもとまで諦めがいいわけではないが、言われたらスタコラサッサということで、
でもその前にと、ハジメはレジの会計を済ませるべく財布を取り出すのであった。
そしてその頃、奇しくもスーパーの屋上では。
「すまんな、わたちとしたことが少し座標がズレた」
「どうせならもっと家の近所に戻して欲しかったよ」
「文句ならハジメに言え、本来はアイツの役目だ」
神域のトラフィックゲートは神域の継承者たるハジメとジータ、
保守管理を担当するユエ、それから彼らに匹敵する魔力を持つシャレムにしか操作できない。
が、まだまだ神域を経由した転移に関しては不安定な要素も多く、
今回に関しては神域から地球への帰還の際に問題が起きたようだ。
帰還が叶ったにも関わらず、帰還した場所に不満があるのかミレディの鼻息は荒い、
いや、彼女の機嫌が悪いのはどうやら他の理由のようだ。
「たく、全くお人好しが過ぎるよ」
ミレディは光輝の肩から床へと飛び降り、そのまま彼を睨みつける。
「あの巫女様、キミがあと二押しくらいしたら落ちてたよ」
「今回は他に相手がいたわけですから」
「本当かい?でもどうもさ、キミは積極性に欠ける気がするんだよ
……今回だって、わざわざキューピット役まで買って出る必要ないじゃないか」
ミレディ・ライセン、解放者唯一の生き残りである彼女は、
カリオストロ謹製のぷちりっつか、はたまたねんどろいどかと思わせる、
生前の姿を模した小さなボディへと魂を移し替え、
現在は勇者天之河光輝のお目付け役兼仲人として、
彼の新たなる恋を探すべく奔走しているのであった。
(それとも……)
キミはまだあの子のことを、ジャンヌダルクを追い求めているのかい?
と、改めて、まるで検分するかのようにミレディはまた光輝の顔を見る。
男子にとって初恋は生涯忘れじの聖域だと聞く。
もしかすると目の前の少年は、ジャンヌとの鮮烈なる日々を生涯ただ一度の恋とし、
その想いを永遠の物とすることを定めてしまっているのでは?
だとすればあまりに不器用でひたむき過ぎると思わざるを得ない。
「この前もそうだよ……モアナ王女さ、キミの好みにドンピシャだったんだろ」
年上にして豊満、さらに聡明と、図星を突かれたかそこで光輝の表情が僅かに変わる。
「そりゃ大切なのは心さ、けどね……入り口は」
尚も光輝の奥手さに愚痴をこぼさんとするミレディであったが、
そこでようやく光輝がやんわりと言い返していく。
「まぁまぁミレディさん、モアナさんに関しては別にまた会えないわけじゃないんですから」
「うーん」
でも恋は急がずとも言うので、今はこういう感じでも致し方ないと、
ミレディが思い直した所でシャレムが思わぬ言葉を口にする。
「なるほど、つまりオマエは現地妻方式でやっていくということか」
「げ…ち!」
余りに生々しい現地妻なる言葉に凍り付く光輝、さらに間髪入れずにミレディが動く。
「そうか……そうだったのかい!つまりキミは船乗り気取りで港ごとに女を作っては
立ち寄る度に俺の船が帰る港はお前だけだなんて甘い言葉を囁いては……
何て汚らわしい魂胆を抱いていたんだキミは!
こうちゃんっ!お母さんに謝らないといけないことあるでしょ!ええ!」
「何がお母さんですか!」
ノリノリでウソ泣きまで始めたミレディを、
光輝はもう慣れたよといった体であしらっていく。
彼女と組むようになって以来、いつもこうだと思いながら……。
何せミレディ・ライセンとはその全身を嘘、大袈裟、紛らわしいで、
構成されてるような存在なのだから。
だが、それでもと光輝は同時に思い出す。
キミの家に引き取られてようやく家族という物を知ることが出来たんだよと、
しみじみと語るミレディの姿を、
ドラマやアニメの何でもない団欒シーンで涙を零す姿を……。
孤独を抱えて生きて来たが故の、その道化の仮面の下にある拭い難き悲しみを……。
そんな彼女の、ミレディの失われた時間を僅かでも取り戻す救いになれるというのならば、
それもまた勇者の役目だろう、だから多少の……多少かな?迷惑なんて……。
だが、それでも断固阻止したいこともある。
「お願いですからこうちゃん呼びだけは止めて下さい、せめて光ちゃんで」
「音は同じじゃないか」
「活字にすると違うでしょう、印象が」
などと口にしつつも屋上から店舗に降りると、過去のニュース映像ではあるが、
電化製品コーナーのテレビの中に自分らの姿が映っていた。
(あの頃は……大変だったな)
唯一の大人、まして教師であったというだけで必然的に矢面に立たざるを得ない愛子と、
そんな彼女を支えるべく、いや彼女のためだけではなく。
『あの時俺は世界も皆も俺が守ってやるって確かに誓った、それは今でも続いているんだ』
と、自分からわざわざ表舞台に出ることを買って出て以来、全てを飲み込み、
バラエティ番組でやりたくもない聖剣技のポーズを決めたり、
トーク番組で困惑しながら愛想笑いをしたかと思えば、
CMでスポーツドリンクを飲んだりもした。
尊敬して止まぬ祖父についての様々がスキャンダラスに報じられた時には、
流石に感情を抑えることが出来なかったが……。
しかし、そんな狂騒の日々はやや唐突に終焉を迎えることとなる。
ある時期を境に自分たちに関する報道や、
それに伴う出演依頼が目に見えて少なくなり始めたのである。
自分らよりも年がずっと若く、ずっと重い責任を負わされ、
見知らぬ世界で悪戦苦闘した子供たちを晒し物にするのは明らかに間違っているという、
世論を伴った上で。
(やってくれたか南雲)
それは裏で動いていたハジメの工作が成功したという証でもあった。
そして同時に光輝はこうも思った、この世界の住人たちも捨てた物ではない、
わずかながらであっても善意や想像力を働かせてくれたのだろうと。
世論がそういう方向に固まり始めると後は早かった。
興味本位であったり、はたまた弱みを握ろうと色々とうろつき回る輩は後を絶たないが、
それでもかつてに比べると遙かに落ち着いた普段通りの生活を送れるまでに
自分らの日常は恢復を遂げていた。
(けれどあいつが……南雲がもしもいないままこの世界に帰還していれば)
異世界で得た自分らの力が地球でも使えると聞いた時には級友共々大いに湧いたが、
その後襲ってきたのは強烈な不安だった。
いかに超常の力を持っていても戦うことしか出来ない自分たちの居場所や扱いなど、
限られているのではないのか?
そしてこの世界には魔物も怪人も存在していないのだ。
だからと言って力を一生封印して生きることが出来るのか?
それが出来たとして、力を封じて生きることを自分以外の皆が納得してくれるのか?
周囲はそれを……本当に信じてくれるのか?
(そして俺自身が皆を……信じることができるのか?)
世界を救った俺が……神の使徒として下にも置かぬ扱いを受けた、
俺たちが普通の暮らしに戻れるのか?
普通の人たちに頭を下げて学んだり、働いたり怒られたりが出来るのか?
そして生涯を今以上の奇異の目に晒され続け、
最悪、戦争の道具・尖兵として平和維持の名の下で……。
自身がそんな悩みを抱える中で南雲ハジメが、この世界で為すべきことを、
自分の目指す星をとっとと見つけていたのは本当にちゃっかりしてると思ったものだ。
そしてその夢の成果によって自分らはこうして暮らせている。
(結局守られてばかりだな)
「何やらまたつまらんことを考えているようだが、それは違うとわたちは思うぞ」
そこで光輝の思いを察知したかのようにシャレムが声をかける。
「確かにハジメの働きも大きいだろうが、オマエと愛子が喧しい連中ども相手でも
クソ真面目に付き合い続けたからこその今だ、それを怠ったままだとしたら」
シャレムは賑わいを見せるフロアを一瞥する。
「所詮は疑念と畏怖と引き換えの平穏に過ぎなかっただろうな」
「そう言って頂けると……」
確かにシャレムの言葉は光輝にとっては救いであった。
だが、それでもどうせならあいつにもっと多くを望んではいけないのだろうか?
(あいつが、南雲が"起つ"とただ一言言ってくれさえすれば、俺は……)
この世界を、いやそれだけでなく全てを統べることを、
あいつに望んではいけないのだろうか?
光輝はあの最終決戦でハジメが披露した衛星レーザー砲の閃光を思う。
もしも俺にあの力があったのならば……きっと、もっと……。
「酷いこと考えるねキミは、勇者のくせに」
今度はミレディが光輝を窘める。
「そんなことになったらきっと皆悲しむよ、もちろん他の誰かにそれを望んでもいけない」
「お見通しでしたか」
「キミは顔に出るからね」
ミレディの言葉を受け、今の悪い考えは忘れてしまえとばかりに軽く頭を振る光輝。
それでも誰を悲しませても為さねばならぬ時がいずれは訪れるかもしれない。
自分が勇者である限りは、との思いは消えることはないのだろうと考えたところで。
「だが、オマエのそれは杞憂という物だな」
シャレムに促されるままに光輝が視線を移すと、そこには白菜以外にも何か頼まれたか、
百均コーナーへと向かうハジメとシアの姿があった。
「集団の最小単位である家族すら御せぬ者に世界など背負える筈もない
オマエの考えてることはただ友人を不幸にするだけだ」
「たく……あいつは」
それはそれで光輝としては別種の心配が芽生えてくる、実際偉いのだから、
もう少し偉そうに出来ない物なのか……。
「やはりミレディの言う通りお人好しだな、オマエは」
「俺は俺よりも凄い奴が過小評価されるのが気に入らないだけです」
「それをお人好しって言うのさ」
二人に応じつつもハジメに声を掛けようとした時、
目の前のテレビの画面がまた愛子の姿へと切り替わる。
と、その時実は先程から少し気になっていた、やけに画面を……いや、
正確には愛子を凝視していた二十代半ばであろうマスクにニット帽姿の青年が、
何か怯えたようにその場から足早に立ち去ろうとして、
足元しか見てなかったのか、シアのトートバックに自分のリュックを接触させてしまう。
「あ……すいません」
「いえ」
バラバラにぶち負けられたノートや教科書を拾い集めながら青年は詫びるが。
しかし何故か光輝とハジメ、そしてシアらの姿を認めるなり。
「……」
俯き無言でシアの荷物を纏めてやると、また一声スンマセンといい捨てるように
そのまま外へと去ってしまうのであった。
「何だあれ?」
「さぁ?って天之河、なんでこんなとこにいるんだ」
「何でというか、キミが本来手筈を整える筈だったんだろ?
直接家に送ってくれるんじゃなかったのかい」
「どうもオマエの家から東方向だと著しく座標がズレるな、問題点はメモしておいたぞ」
光輝の返事の代わりにミレディとシャレムからの抗議を聞き、首を竦めるしかないハジメ、
そういえばシアは?
「おい?シア」
「あ…ハイ、すいませんハジメさん」
どこか呆けたような表情でへたり込んだままのシアへと声をかける。
「どっか打ったか?」
「いえ……そういうわけでは……」
口籠りながらシアはハジメと光輝を交互に見比べるような仕草を見せ、
それからようやく立ち上がるのであった。
その後光輝らと他愛ない会話を交わし、帰路につくハジメたち。
だが、シアの表情は何故か冴えない。
(あれは……)
ハジメと光輝が隣りあった刹那、シアの持つ固有能力、未来視が一瞬垣間見せた……。
南雲ハジメと天之河光輝の可能性の一つ。
その光景は全てが死に絶えたかのような荒野、そこに対峙するは、
年頃として青年から中年へと差し掛かろうとしているような二人の男、すなわち。
『悲劇の度に人は繰り返す、もう二度とこんなことはしないと、こんな世界にはしないと!
だが人はすぐに忘れそして繰り返す、過ちを……それをわかるんだよ!南雲っ!』
涙ながらに訴える光輝と。
『俺はお前の抱える地獄も絶望も分からない、それでもひとりの人間として
人の心の持つ可能性を俺は否定させるわけにはいかない!』
悲痛な表情で叫ぶハジメの姿。
(悪しき未来もまたゼロではないんですよね、お二人が……)
ハジメと光輝、かつては色々あったらしいが、
今では共に困難を乗り越えた友人としての関係を築けていると確かに思える。
だが、もしも……と、さらに暗澹たる気分に陥りそうになった所で。
「未来は変えられる、オマエの口癖ではないか」
「わっ!」
ふわりと宙を舞いながらシャレムがシアの耳元で囁く。
「だからオマエ自身の未来も変わった、そうじゃないのか」
「……あ」
考えてみればそうだ、忌子の自分が今では故郷の未来を担おうとしているのだ。
かつてを思えば信じられない未来ではないか。
「案ずる時は案じればいい、だが動くべきと思わば動け、ただし闇雲にでは逆効果だぞ、
そこを銘じておけ」
「はい!」
勢いよく返事するシア、但し声が少し大きすぎて、
先に歩いていたハジメが思わず振り返ってしまう。
その何が何だかの表情に、人の心配も知らないでと少し頬を膨らませるシアであった。
今回に関してはなんか原作の尻拭いをやってる気分がしました、正直。
光輝パートは書いていて楽しかったですが。
ともかくこれにて1stピリオド終了です。
あくまでもオマケなので、今後の更新はしばらく先になると思います。
本編よりも後日談の方が多い作品もあるそうですが。
ま、まぁ夏までにはお届けできればと……ルリドラゴンも復活することですし。
次回はアフターを読んでいて最初に待てよと思った話か
光輝のお祖父さん絡みの話になるかと思います。
ちなみに逃げた青年は誰かお分かりでしょうか?
多分これに関しては原作よりも酷い話になる可能性が……。
そして明らかになるジータの父親の真の職業とは立〇人だったのであります。
(本筋には一切関係しませんのであしからず)