ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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ちょっと駆け足かも


脱出行~封印部屋へ

「もういい加減覚悟を決めようよ」

「ちくしょう、なんで無いんだ…」

 

爪熊を殺してから三日、ハジメたちは上階へと続く道を探し続けていた。

既にこの階層の八割は探索を終え階下への道はすでに発見済だ。

 

爪熊を喰らってから~

―――あれは魔物の中でも別格だったらしく、ハジメは膝をつくほどの激痛に襲われ      

ジータもまた胸を押さえて、ハジメが神水を服用するまで痺れに耐えなければならなった。

 

ともかく痛みを乗り越えた甲斐あって、ステータスがまた跳ね上がり、

今や、この階層で彼らにとって脅威となる存在はおらず、

探索は急ピッチで進められていたにもかかわらず、いくら探してもは上階への道が

脱出口が見つからないのだ。

 

自分たちが流されてきた水路を遡るというのも考えたが、

水量が思った以上に多く、断念せざるを得なかった。

ちなみにハジメの手を逃れるように一枚のカードが、

水路の上流へと消えていったこともついでに記して置く。

 

なお、錬成で直接天井を開けて移動するという、最も手っ取り早い方法は既に試した後だ。

その結果は、上だろうと下だろうと一定の範囲を進むと、どうやら上下になんらかの

プロテクトがかかっているかのように、何故か壁が錬成に反応しなくなるのだ。

その階層内ならいくらでも錬成できるのだが……。

 

この【オルクス大迷宮】は、神代に作られた謎の多い迷宮なのだ。

 

「何があっても不思議じゃないか……仕方ない」

 

上に逃れることが出来ないなら、下に潜るしかない。

この大迷宮の更に深部へと……。

 

「ここは隠しダンジョンみたいなもんなんだよ、きっとね」

「……仕方ないか」

 

はぁ~と深い溜息を吐きながら、二人は階下への階段がある部屋へと赴く。

その階段、いや造りが雑なので凸凹した坂道と言った方が正しいだろう。

 

そしてその先は、真っ暗な闇に閉ざされ、

、巨大な怪物の口内のような不気味な雰囲気を醸し出している。

一度進めばもう二度と戻れない、そんな不安をどうしても拭いきれなかったがゆえに、

彼らは一縷の望みを求めて上への通路を探していたのだった。

 

「ハッ! 上等だ、なんだろうと邪魔するってんなら」

「殺して喰ってやる、でしょ」

 

ハジメの豹変を受け入れ、その道を支えると誓ったジータではあるが。

それでも殺すとかそういうのはあまり言ってほしくはなかった。

支えるだけではなく、時には正すのも自分の役目だ。

 

ともかく彼らは自分らのそんな弱気な考えを鼻で笑うと、

ニィと不敵に笑いってハイタッチを交わす、そして躊躇う事なく暗闇へと踏み込んだ。

 

 

 

それからどれだけの時間、いや日数が経過したか。

彼らは今や爪熊の階層からさらに下ること五十階層にも到達していた。

 

 

 

今のジータの姿は、緑を基調とした軍服風のコスチュームだ。

彼女の現在のジョブはホークアイ、偵察と強襲に長けた盗賊系のジョブである

ジョブの切り替えには時間がかかる、例えば毒を受けてから慌てて回復系のジョブに

チェンジしても間に合わない。

 

これは爪熊の階層から、いざ!と降りた途端。

バジリスクの石化の洗礼を受けてしまったことによる反省だ。

 

従ってまずは彼女が先行し、周囲の様子や敵を確認し、

その上で最適なジョブを選択し、改めて攻略に向かうというスタンスで

ここまで進んできた。

 

どうやらこの迷宮は階層ごとにテーマがあるようだ。

火気厳禁のタールの海の中でサメと戦ったかと思えば、

階層全体が毒霧で満ちていたりといった風に。

 

毒階層ではジータのジョブの一つである、ビショップの力が大いに役立った。

 

『ベール』

 

ジータが頭上に杖を構えると、緑色のカーテンのような物が二人を包み込んだ、

事前に張っておきさえすれば状態異常を防いでくれるバリアのような物

(正確にはマウントという)らしい。

もっとも強力な毒などを受ければ破れてしまうらしく、

毒霧や蛾のばら撒く毒鱗粉はシャットアウト出来たが、

虹色のカエルの吐き出した毒液とは相殺しあって破れてしまった。

 

もしベールがなければ神水を大量に消費することになっていただろうとは、ハジメの言葉だ。

 

 

また地下迷宮なのに密林みたいな階層に出たこともあった。

そこは物凄く蒸し暑い上、鬱蒼としていて、

樹上では巨大なムカデがカサカサと這いまわっていた。

ここまでで一番不快な場所だったとジータは思う。

 

その上、ただでさえ不快感溢れる外見のその巨大ムカデは、

いきなり頭上から降ってきたかと思うと、

体の節ごとに分離してバラバラになって襲ってきたのだからたまらない。

その光景を頭から消し去るのにはかなりの時間がかかった。

 

ここで活躍したジータのジョブはハーミットである。

 

『チョーク』

 

数十体、いや数十片に分離し迫るムカデの群れにも動じず、

キノコのようなフード姿のジータは、短剣を翳しアビリティを使用する。

ハジメの持つドンナーに光が宿り、

そのままハジメは無造作にムカデどもに向かってトリガーを引く

放たれた弾丸はなんと数十個に分裂し、数十片全てのムカデのパーツを破壊しつくす。

 

そう、このチョークというアビリティは攻撃を全体化する効果があるのだ。

勿論、強力な分だけ効果は短く、使用間隔も長く、全体化はあくまでも、

分かる範囲、届く範囲に存在する敵の個体分だけという感じで決して万能ではない。

 

またあまり強力な攻撃は全体化出来ない様だ。

例えばいずれハジメが製作する予定の対物ライフルやミサイルランチャーといった類の…

ともかく、この時以来ハジメはリロードの技法や格闘技の研究にも励むようになる。

 

 

他には密林の樹木に擬態して襲ってくる樹の魔物がいた。

いわゆるトレントという奴だ。

このトレントモドキ、ピンチになると頭部をわっさわっさと振り

赤い果物を投げつけて来たのだが、これには全く攻撃力はなく、二人は試しに食べてみたのだが、

これが、血生臭い魔物肉に慣れた舌にはめちゃくちゃ美味かったのだ。

我を忘れて数十分硬直してしまう程に、ちなみに見た目はリンゴだったが味はスイカによく似ていた。

 

実に、何十日ぶりかの新鮮な肉以外の食い物、ましてそれは瑞々しい天上の果実である。

完全に狩人と化した二人は、トレントモドキを狩り尽くす勢いで襲いかかり

存分に収穫を、果実の実りを満喫する、迷宮攻略を再開した時には、

既にトレントモドキはほぼ全滅していた。

 

 

そんな感じで階層を突き進み、気がつけばここまでやって来ていた。

ちなみに、現在の彼らのステータスはこうである

 

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:49

天職:錬成師

筋力:880

体力:970

耐性:860

敏捷:1040

魔力:760

魔耐:760

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]

   魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 風爪 夜目 遠見

   気配感知 魔力感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 言語理解

 

 

蒼野ジータ 17歳 女 レベル:49

天職:星と空の御子

筋力:100+616

体力:100+679

耐性:100+602

敏捷:100+728

魔力:100+532

魔耐:100+532

技能:全属性適性 団員x1 召喚 星晶獣召喚(条件:同調者)同調(南雲ハジメ、同調率70%)

   剣術 統率  防壁Lv5 挑発 恩寵 背水 コスプレ サバイバル 

   魔力操作 胃酸強化 纏雷 天歩[+空力][+縮地][+豪脚] 風爪 夜目 遠見

   気配感知 魔力感知 気配遮断 毒耐性 麻痺耐性 石化耐性 言語理解

 

 

そして現在、階下への階段を発見した時点で、

二人はこの五十層で作った拠点にて鍛錬を積みながら、少し足踏みをしていた。

ここまで駆け足、特に直上の四十九階層でかなりの激戦が展開されたので、

休息したいというのもあったのと、

それにこの五十層は他の階層と比べると明らかに異質だったからだ。

 

というのも、まずこの階層には魔物が一体も存在せず。

脇道の突き当りにある空けた場所に荘厳な両開きの巨大な扉が有り、

その扉の脇には二対のサイクロプスのレリーフが半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

「いるね…中に」

「多分な」

 

ゲーム的なセオリー通りならおそらくボスが中にいる。

あるいは今にも動き出しそうな、いや絶対動くだろうと思う、

このサイクロプスくんたちがボスなのかもしれないが。

 

ともかく二人はその空間に足を踏み入れた瞬間、全身に悪寒が走るのを感じていた。

某天乃河ならガナビーオーケーとばかりに突っ込むのだろうが。

レディ・パーフェクトリーとまではいかないものの、これはそれなりの準備はして臨みたい。

 

何しろこの先の見えない探索にようやく現れた"変化"なのだ。

調べないわけにはいかない。

 

あの扉を開けば確実になんらかのトラブルに見舞われることになるだろう。

だがそれでも避けるわけにはいかない。

そう、休息や装備云々よりも彼らは変化への期待を、

逸る気持ちを抑え、冷静に先に進むためにここでキャンプをしていたのだ。

 

「さながらパンドラの箱だな……さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

「パンドラの箱なら希望の前に絶望が飛び出してくるんだよ」

 

二人はゆっくりと扉へと向かう。

 

ハジメはドンナーをゆっくりと構え。

ジータは新たな召喚石の感覚を確かめる。

このキャンプ中に手に入れたのは幾つかのカーバンクル、

それからガルーダとセレスト・マグナ、そしてサジタリウスだ。

 

 

『トレジャーハンティングⅢ』

 

 

扉まで約十メートルの地点でジータの目が光り、

まるでスカウターのように視界内がスキャニングされる。

本来は文字通り宝物を探すアビリティだが、

このように周囲の偵察や罠探知、敵の弱点看破にも使用することが出来る。

 

「罠はないね…あ、あの二体やっぱり動くみたい」

「どうする?拠点でハーミットに変わってからやるか?」

「二体でしょ?非効率だよ…それにね」

 

闇色の短剣、コルタナを構えるジータ。

 

「多分あれは前座だよ」

 

あらかじめ壊すのも手と言えば手だが…スルー出来るならそれに越したことはない。

 

(まだまだ甘いかな?)

 

「もし動いたら…右はハジメちゃん、左は私が行くね。」

 

扉には見事な装飾が施されており、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれている。

 

「見たことあるか?こんなの」

「全然、まあ、あの程度じゃ仕方ないけど…」

 

ハジメがカリオストロにシゴかれている間、

ジータはその手伝いだけをやっていたわけではない。

いかに複数の天職を駆使できるからと言って、

自身の低能力をそれだけで払拭できるわけではないのだから…。

したがって彼女は睡眠時間を削って座学に力を入れていた。

 

もちろんあの短期間で全ての学習を終えることは不可能なのだが、

それでも魔法陣の式を全く読み取れないということは無い筈。

 

「記録に無いほど古いってことかな?多分」

「なら練成で普通に開けりゃいいか、罠は無いんだよな」

 

ジータが再度頷くのを見て、ハジメは扉に触れて練成を開始するのだが…。

瞬間、火花が散ってその手を弾き飛ばす。

 

「わっ!」

 

それと同時に左右の頭上から雄叫び、予想通り扉の両側に彫られていた二体のサイクロプスが、

周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。

 

「左は任せた」

 

神水を口に含みながらドンナーの一撃で右側のサイクロプスの眼を撃ち抜き瞬殺するハジメ。

そして縮地と豪脚で一気に跳躍したジータは左のサイクロプスの喉元へと、

闇の刃を閃かせる。

だが、サイクロプスの体が一瞬発光したかと思うとその刃は弾かれる、

 

(固有魔法!?)

 

どうやらサイクロプスの固有魔法は防御力を著しく強化させるもののようだ。

 

「けどね!」

 

続けざまに斬撃を行うジータ、その攻撃速度はハジメの銃撃と同等だった。

彼女が現在装備しているコルタナという短剣は生命力を下げる代わりに

攻撃力と攻撃速度を大幅に増幅させる効果があるのだ、そしてさらに。

 

『フォーススナッチ』

 

ジータの刃を跳ね返し、小馬鹿にしたように歪んでいた、

サイクロプスの口元が今度は驚愕に歪む。

何故か固有魔法が…守りが自分の意思とは関係なく強制的に解除されてしまったのだ。

そしてジータの二撃目の刃がサイクロプスの喉を易々と切り裂き、

トドメの三撃目が半ば繋がっていた状態の首を完全に切断した。

 

ぐらあと倒れるサイプロプスの巨体を背にとんと軽やかに着地するジータ。

ハジメはもうすでに扉の前で思案中だ。

扉の二つの窪みと二体のサイクロプス…

 

思いついたようにハジメはサイクロプスの死体を切り裂き

その身体から採取した魔石を窪みに嵌めこもうとするが…。

 

「待って、ここでジョブ変えるね」

 

ジータの声にその手を止める。

サイクロプスを排除し、この周囲には危険が存在しない。

ならば扉の中の危険に対処出来るジョブに変更しておこう…ということか。

 

ジータの身体が光に包まれ幾重もの魔法陣や文字や記号が光の後を追いかけるように

さらにその身体に表示されていく。

緑の軍服が黒の鎧姿に変わるまで、その間、なんと数分。

乱戦ではとてもじゃないが中途でのジョブチェンジなど出来ようはずもない。

ちなみにこの状態で攻撃を受けても、ジョブの変更がキャンセルされるだけなので

対処は可能である。

 

「お待たせ」

 

ダークフェンサーへと姿を変えたジータがハジメへと向き直る

やはり強敵を想定した場合、ダークフェンサーの行動阻害能力は頼りになる。

 

ハジメは改めて魔石を窪みに嵌めこむ。

すると魔石から扉の魔法陣に魔力が注ぎ込まれていき。

それに合わせて部屋が光に満たされる。

 

「中にあるのは希望かな?」

「それとも絶望か」

 

二人は警戒しながらも同時にそっと扉を開いた。

 

暗闇の中に外の光が差し込み、部屋の全貌が明らかになっていく、

と、そこは部屋の中央付近に立方体の石が設置され、

幾本もの太い柱が規則正しく立てられた、

いわば神殿のような造りになっていることが見て取れた。

 

その立方体の石は、まるで御神体のようにハジメには思えてならなかった。

とはいえ、聖域であろうとここまでくれば侵すのみだ。

ハジメはジータに背後の、主に扉の警戒を任せ、

自分はゆっくりと立方体へと近寄ろうとした時だった。

 

「……だれ?」

 

かすれた、弱々しい女の子の声だ。

ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。

よく見ると立方体から何かが生えている、差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人……なのか?」

 

その立方体には両腕と下半身を埋め込まれ封じられた、金髪の少女の姿があった。

垂れ下がった長い髪は、金髪と黒髪の違いはあれど、某ホラー映画の女幽霊を髣髴とさせ、

そして、その髪の隙間から紅の瞳が覗いている。

その紅は、たまに夜空に浮かぶ赤い月みたいだなと、ハジメは直感的に思った。

 

年の頃は十二、三歳くらいだろうか?

随分やつれているし、垂れ下がった髪でその表情はわかりづらいが、

それでも美しい容姿をしていることは確かだろうと思えた。

 

「誰か……居るの?」




いよいよ動き出す運命
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