ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

21 / 173
女の子がいるとやっぱり生活面は充実するよね。


ゆっくり語らい

ハジメ達は、サソリとサイクロプスの素材やら肉やらを

えっちらおっちらと先立ってハジメらが作っていた拠点に持ち帰った。

ここでもユエの力が役にたった、最上級魔法の行使により、へばったユエに再度血を飲ませると

瞬く間に復活し見事な身体強化で怪力を発揮してくれたのだ。

 

そのまま封印の部屋を使うという手もあったのだが。

 

「何年も閉じ込められてた部屋なんて一刻も早く離れたいに決まってるでしょ!」

(コクコク)

 

と、ジータとユエが断固拒否したためその案は没となった。

そんな訳で現在彼らは消耗品を補充しながら、改めてお互いのことを話し合っていた。

 

 

「吸血鬼族って確か三百年前に滅んだって聞いてるけど?」

「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

「「……マナー違反」」

 

ジータとユエは息ピッタリの非難の視線でハジメを見る。

女性にそれは聞かない約束である。

 

「吸血鬼って、皆そんなに長生きするのか?」

「……私が特別。"再生"で歳もとらない……」

 

それっていいなあと思いつつ、

ジータはユエが初めてハジメの血を吸った時の妖艶な仕草を思い出す。

幼き少女の肉体に、大人の精神…まさしく魔性の美だった。

 

(ロリBBAって最強…)

 

聞けば十二歳の時、魔力の直接操作や"自動再生"の固有魔法に目覚めて以来、

老いることがないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるらしいが、

それでも二百年くらいが限度なのだそうだ。

 

ちなみに、人間族の平均寿命は七十歳、魔人族は百二十歳、

亜人族は種族によるらしいが、エルフの中には何百年も生きている者がいるとか。

 

ユエは先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に昇りつめ、

十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。

 

ハジメたちは改めて思う。

あの巨大サソリの装甲を融解させるような魔法を行使出来て、かつほぼ不死身の肉体。

その行く末は神として崇められるか、化け物として排斥されるかどちらかだ。

そして不幸にもユエは後者の運命を辿ったのだと。

欲に目が眩んだ叔父がユエをバケモノ、いわばイレギュラーとして、

その大義名分のもと殺そうとしたが"自動再生"により殺しきれず、

やむを得ずあの地下に封印したのだという。

 

ユエ自身、突然の裏切りにショックを受け、反撃も出来ずになんらかの封印術を掛けられ、

気がつけば、あの封印部屋にいたらしい。

 

 

「じゃあ…やっぱり」

「最初に言ったとおり…ここがどこでどうやったら出られるのかは分からない…でも」

 

そんなことを期待して助けたわけではないが、やはり肩を落としてしまう二人に、

ユエは話を続ける。

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

ユエ曰く、神代に、神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属がいたそうだ。

しかし、彼らは戦いに敗れ。世界の果てへと逃走し身を隠したとされている。

その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。

この【オルクス大迷宮】もその一つで、

奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

「確かに隠れ家っていっても地上への行き来は必要だし、もしもの時の脱出口を、

つくっておかないとね」

 

奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくる反逆者の姿を想像して

プッと吹き出すジータ。

 

「?」

 

何か自分はおかしなことを言ったのだろうか?

そんな疑問を感じたか、上目遣いでジータの顔を覗き込むユエ。

その端正な容姿も相まって思わず、抱き締めたくなる可愛らしさに、

目を逸らしてしまうジータ。

 

(やっぱズルイ…)

 

 

それから暫くは沈黙の時間が続く。

ジータがサソリとサイクロプスの肉をさばく音と、

ハジメが銃弾を補充している音だけが、薄闇の迷宮に響く。

 

「二人とも……どうしてここにいる?」

 

当然の疑問だろう、ここは奈落の底。

正真正銘の魔境だ、魔物以外の生き物がいていい場所ではないのだ。

他にもたくさん聞きたいことがあるのだろう。

たどたどしくも途切れることなく様々な質問をぶつけてくるユエ。

 

それについて二人は作業の手を時折止めては丁寧に一つずつ答えていく。

 

いきなりこの世界に召喚されたこと、無能と思われていたハジメが懸命に努力し

皆に認められそうになった矢先、卑劣な騙し討ちを受けジータと共に奈落に落ちたこと、

そしてここまでの戦いの軌跡を。

 

「ずずっ…ひっく……」

 

鼻を啜るような音を耳にし、二人がユエを見るとハラハラと涙をこぼしている。

 

「……ぐす……ハジメも……ジータも…つらい……私もつらい……」

 

どうやら自分たちの為に泣いてくれているらしい。

ジータが促すより先にハジメが動き、その涙を拭ってやる。

 

「気にするなよ、ジータが俺のそばにいてくれたお陰でそこまで寂しくもなかったし」

 

ハジメは苦笑いを浮かべつつもユエの頭を撫でる。

 

「もちろんここから出られたらちゃんとクラスメイトや師匠の所へ戻って、

あいつへの落とし前は付けるつもりだが…」

 

ジータがいたおかげで、今のハジメはまだ人間的な…おそらく一人ぼっちだと

生存のために切り捨ててしまっていたであろう箇所が、まだ色濃く残っている。

香織や雫、遠藤やカリオストロらへの感謝の心や、

すなわち自分のみではなく、ジータをも奈落へと叩き落した原因である、

檜山への復讐心もまだ残っていた。

 

 

「そのためにも今は生き残る術を磨くこと、

そして故郷に帰る方法を探すこと、それに全力を注がねぇとな」

 

撫でられるのが気持ちいいのか、猫のように目を細めていたユエが、

故郷に帰るというハジメの言葉にピクリと反応する。

 

「……帰るの?」

 

「うん? 元の世界にか? そりゃあ帰るさ。帰りたいよ、

……色々変わっちまったけど……故郷に……家に帰りたい……」

 

父や母、やりかけのゲームやアニメやコミックの続き、そんな些細なことが、

もう遙か昔に失った宝石のようにハジメの瞼に甦る。

 

「私も……父さんや母さん……それにまた兄さんに会いたいよ…」

「……そう」

 

ユエは沈んだ表情で顔を俯かせ、ポツリと呟く。

 

「……私にはもう、帰る場所……ない……」

「なんならユエも来るか?」

 

間髪入れずに応じるハジメ、その言葉には一切の迷いはない、

居場所を、新しい名前まで与えて置いて、

自分の都合で取り上げるような真似など出来よう筈もない。

だからこそ、もしもユエにもう故郷が、帰る場所がないのならば、

連れて帰ろうと二人は互いに相談することもなくすでに決めていた。

 

「え?」

「いや、だからさ、俺の故郷にだよ。まぁ、普通の人間しかいない世界だし、

戸籍やらなんやら面倒なことはジータの両親がなんとかしてくれるだろうし」

 

ハジメの言葉に頷きながらジータも続ける。

 

「色々窮屈な世界かもしれないけど……でも私もハジメちゃんも

今じゃ似たようなもんだしね、どうとでもなると思うし……

あくまでユエちゃんが望むなら、だけど?」

 

「いいの?」

 

口調こそ遠慮がちだが、その瞳を期待に輝かせながら尋ねるユエ。

 

「いいに決まって…あ」

 

そこで何かに気が付いたかのようにジータは少しバツが悪そうに頭を掻く。

 

「ゴメンね…ユエちゃ…ユエさんは私たちよりずっと年上なんだよね」

「いい…ユエちゃんでいい…ジータにそう呼ばれると温かい気持ちになれるから」

 

今までの無表情が嘘のように、ユエは輝かんばかりに微笑み、

ジータの背中にその身体を預かるかのように、もたれかかる。

そんな二人があまりに眩しく思えて、ハジメはブンブンと何度か頭を振ると、

改めて作業に没頭することにした。

 

 

「……これ、なに?」

 

ほとんど密着しながらハジメの作業を覗き込んでいたユエが、

興味津々といった体で問いかける。

 

 

「これはな……対物ライフルのレールガンバージョンだ。

要するに、俺の銃は見せたろ? あれの強力版だよ。弾丸も特製だ」

 

 

「銃の威力を上げるにはどうしたらいいかを俺は考えたんだ、炸薬量や電磁加速が、

限界値にあるドンナーでは、これ以上の大幅な威力上昇は望めない、

だから新たな銃を作ることにしたんだ」

 

「まぁ元々構想にはあったが、妥当な素材がなかったんだ、ところがだな」

 

ハジメはサソリの残骸を指で示す。

 

そう、素材はなんとあのサソリだ。

ハジメが、あの硬さの秘密を探ろうとサソリの外殻を調べてみたところ、

"鉱物系鑑定"が出来たのである。

 

「つまり錬成であの装甲は簡単に破れたんだよなあ…で、その時思ったんだ」

「こいつでならより強力な銃を造れると」

「当然、威力を上げるには口径を大きくして、加速領域を長くしてやる必要がある

そこで俺が考えたのがこの対物ライフルだ、装弾数は一発と少なくて持ち運びが大変だが、

理屈上の威力は絶大だぞ」

 

熱に浮かされたように口を動かすハジメ。

 

「何せ、ドンナーで最大出力なら、通常の対物ライフルの十倍近い破壊力を持っているんだからな」

 

この新たな対物ライフル――シュラーゲンは、理屈上、

最大威力でドンナーの更に十倍の威力が出る……はずである。

 

「当然、弾丸にもこだわるぞ、タウル鉱石の弾丸をシュタル鉱石でコーティングしてな

いわゆる、フルメタルジャケット……モドキというやつ…」

 

そこでハジメの頭に拳骨が振り下ろされる。

視線を頭上に移すとそこには呆れ顔のジータがいた。

 

「いいかげんにしなさい!まったくオタクという生き物はこれだから…」

「……ハイ」

 

とりあえず作業も一段落したので食事にすることにした。

 

メニューはサソリとサイクロプスの肉の丸焼き

さらにデザートにトレントの実を使ったドライフルーツが加わる。

これもジータがいなければ思いつかなかったことだ。

 

ハジメがお皿やナイフ、お箸といった食器、それからテーブル等を錬成していく、

本来ならば誰を憚ることなく地べたで、手掴みでも構わないのだが

これもまたジータの方針だ、出来うる限り人間らしくあろうという。

 

「ユエ、メシだぞ……って、ユエが食うのはマズイよな? 

あんな痛み味わわせる訳にはいかんし……いや、吸血鬼なら大丈夫なのか?」

「ユエちゃんには私と同じで毒消したの用意してるけど?」

 

二人とも当たり前のように魔物肉を食べてはいるが、本来はタブーなことを

今更のように思いだす。

 

「三百年も封印されて生きてるんだから食べなくても大丈夫なんだろうけど……

お腹空いたりとかしないの?」

「感じる……でも、もう大丈夫」

「大丈夫?何か食ったのか?」

 

ユエはハジメを指差して微笑む、その笑顔はやけに妖艶に思えた。

 

「ハジメの血」

「ああ、俺の血ってことは、吸血鬼は血が飲めれば特に食事は不要ってことか?」

「……食事でも栄養はとれる……でも血の方が効率的」

 

吸血鬼は血さえあれば平気らしい。ハジメから吸血したので、今は満たされているようだ。

なるほど、と納得しているハジメを見つめながら、何故かユエがペロリと舌舐りした。

 

「……何故、舌舐りする」

「……ハジメ……美味……」

「び、美味ってお前な、俺の体なんて魔物の血肉を取り込みすぎて不味そうな印象だが……」

「……熟成の味……」

 

まだ舌に残っているのか、その味を思い出し、恍惚とした表情を浮かべるユエ。

曰く、何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような、

濃厚で深い味わいらしい。

 

「あとで私の血も飲む?」

「うん…ジータの血も飲みたい」

「でもその前に」

 

ジータは短冊状に切ったドライフルーツをユエの前に差し出す。

 

「こっちは食べるよね?」

 

コクリとユエは頷くのであった。




次回は地上パートです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。