オスカーの弔いを済ます前にやらねばならぬことがある。
三人は封印されている書斎や工房の調査へと向かう、
扉はハジメの錬成でも開くことは無かったが、
もしやと思いオスカーの嵌めていた指輪を拝借し、それを扉に翳すと無事封印を解くことが出来た。
指輪の文様と封印の文様が同じだったのだ。
まずは書斎だ。
一番の目的である地上への道を探らなければならない。
ハジメたちは書棚にかけられた封印を解き、めぼしいものを調べていく。
何だか刑事か探偵になった気分で少し興奮する。
「もしも何も出てこなかったらオスカーさん、恨むよ」
祈るような気分で書類をパラパラとめくるジータ。
「そしたらオスカーは……畑の肥料」
ユエも辛辣な意見を口にする、と、そこに。
「ビンゴ!あったぞ、二人とも」
ハジメから歓喜の声が上がる、この住居の施設設計図らしきものを見つけたらしい。
設計図によれば、どうやら先ほどの三階にある魔法陣が、
そのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。
これもオスカーの指輪を持っていないと起動しないようだ
(畑の肥料にしようだなんて思って申し訳ありません)
心の中でオスカーに詫びるジータ。
「お墓、立派なの作ってあげようね」
「そうだな」
さらに二人が設計図や書物を調べていると、
ユエが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようだ。
その中身の殆どは他愛ない日常が綴られているのみだったが、
その内の一節に、他の六人の迷宮に関することが書かれていた。
「……つまり、あれか? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」
「でしょうね」
いよいよRPGめいて来たなとふと思うジータ。
手記によれば、オスカーと同様に六人の解放者達も迷宮の最深部で、
攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。
生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……
「……帰る方法見つかるかも」
「長い旅になりそうだね」
「だな、これで今後の指針ができた、地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」
それからしばらく探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。
現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】
目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】
辺りから調べていくしかないだろう。
工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。
中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、
錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。
調査に夢中になっている間に、部屋には赤い光が差していた、日没が近いようだ。
「今日はこれくらいにしておいて、オスカーさんのお墓作ろ」
「ヒュドラの肉……取らないと」
「そうだな、じゃあ残りは明日で」
滝の畔の高台をザクザクと掘りながら、ハジメとジータの二人はこれからの事を話し合う。
ユエはヒュドラの肉を回収しに向かっている。
「暫くみんなの元には帰れなくなったね」
「まぁ、どの道、吸血族のユエを連れて王都に入るわけにもいかなかっただろうしな」
迂闊にクラスメイトの元に戻れば、また出ていくのは困難に思えた。
それに教会の総本山がある王都は、ある意味では敵の本拠ともいえる。
こういう時こそカリオストロの力を借りたいところではあるが……。
「この程度のことでノコノコ帰って来やがって、情報が足りないって逆に怒られるね」
「地理的にはハルツィナ……と、ライセンが近いか」
地図を思い出しながら考え込むハジメ。
「その二つを攻略してから一度王都に戻らない?」
「オスカーの言葉が全て真実だとも限らないしな……心配かけて申し訳ない」
「香織ちゃん、雫ちゃん、元気でいてね」
王都の方向っぽい向きに手を合わせる二人。
「でも、こんなこと皆に話したって……ねぇ」
基本的には皆、教会や王宮の人々の言葉のまま、従えば帰れると信じて戦っているのだ
根っからの善意で戦ってるのは某天之河くらいのものだろう。
「アイツに話したところで信じて貰えないだろうな」
「わかってないよハジメちゃん、信じて貰えないのならまだマシだよ…」
こんな話を聞こうものなら、あのバカはヒーロー願望を爆発させて、教会のお膝元で、
この世界の人々を弄ぶ悪しき神と戦うぞ!などとホザきかねない、いやホザく。
「確かに」
その上、クラスメイトだからとかそういう理由で神と戦うのに力を貸せとか、
当然のように要求してくるに違いない。
「心意気だけで悪を倒せるなら……」
「オスカーさんはこんなことにはならなかったよね」
その心意気も、光輝の場合は怪しいものだが、
フワフワとただ都合のいい綺麗なものに縋っているようにジータには思えてならなかった。
「なぁ、ところで提案があるんだが、しばらくここに留まらないか?
さっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……書庫や宝物庫とか色々調べたいし
学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ
他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ?」
「さっき、オスカーさんの指輪で書庫の扉を開けた時、ユエちゃんと少し話してたのもそのことだね」
「ああ、三百年も地下にいたんだ、一刻も早く外に出たいだろうなって思うとな」
「で?」
「俺たちと一緒ならどこでもいいってさ」
(私もそれは同じだよ)
とは、口に出さずにジータは頷いた、その表情には何やら決意めいたものがあった。
「さ、早くお墓作ってユエちゃんの手伝いに行こ」
こうして彼らは、ここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。
その夜。
ジータお手製の魚料理と露天風呂を堪能したハジメは、
心身ともにほっかほかでベッドルームへと向かう。
「はふぅ~、最高だぁ~」
美味しい食事にお風呂とくれば後はベッドで眠るだけだ。
久々に人の暮らしを文化を味わった気がする。
やっぱり生きるっていいもんだなとスキップしながらベッドルームに向かい。
ふわふわのマットへとダイブを決めるハジメ。
ふにゅ?
ベッドとは違うそれでいて心地よい感触に、少し違和感を覚える。
(何だこれ)
自分の顔を挟み込む、ぷにぷにした何か、この感触はクセになるような、
それで懐かしいような何かだ。
(これ気持ちいいな)
その感触をもっと味わいたく、顔を夢中になって動かす―――と。
「……ぁん……」
(!?)
艶めかしい喘ぎ声が聞こえる、しかもその声には聞き覚えがあった。
慌てて身体を起こすと、そこにはシーツ一枚のみを身にまとったジータの姿があった。
「あ…ああ、あのー」
「ホントはお風呂で仕掛けてもよかったんだけど…初めてがお風呂場……って言うのも
お互いにちょっとね」
ファサとシーツを外し、一糸纏わぬ裸身を晒すジータ、
さっきは気が付かなかったシャンプーの香りが一面に漂い、
そしてハジメはジータの二つの胸の膨らみに目を奪われる。
思わず後ず去るハジメだが、さらに背中に慎ましやかだか、
それでいて確かな感覚。
「……えい」
「……あ、当たってるんだが?」
「当ててんのよ」
「何でそのネタを知ってんだ!」
振り向くと、ユエもジータと同じく生まれたままの姿だ。
「私はハジメの一番になりたい、けどハジメの特別はジータ……だから
ハジメの初めてはジータのもの、ジータの初めてもハジメのもの」
ユエの中では一番と特別は両立できるものらしい、
もしかすると王族としての育ちも影響しているのかもしれない。
「二人で決めたんだもんね」
「ジータさんや…ユ…ユエさんや」
魔物相手の雄々しさはどこにやら、泡食って救いを求めるハジメ。
いや、口調こそ救いを求めてはいるが、己の武器は今こそ!とばかりに
臨戦態勢に入っている。
「悲しいな……男のメカニズムって」
「ハジメとジータは初めて同士、変なクセがつくと困るから、最初は私が教えてあげる」
ニヤリと笑うユエの姿に、大奥という言葉が何故かハジメの頭に浮かんだ。
「天井のシミを数える間に終わるから……」
「それ男のっ……んっ!」
なおもグダグダと反論しようとするハジメをジータが押し倒す。
その後、何があったのかはご想像の通りである。
そしてあっという間に一か月が経過する、
窓から差し込む朝の光と、シーツに残る行為の跡を見て、神妙な顔をするハジメ。
「……選ばなきゃならないんだろうな」
その言葉にはまだ戸惑いがある、このまま流されるべきか、それとも抗うか。
……どうせ流されるんだろうが、いや事実流されっぱなしだ
実際、彼らは傍から見れば「リア充爆発しろ!」と叫ばれるような日々を送っていた。
時折ジータが何かに怯えるように背後を気にしてたり、
ごめんねぇ~薙刀はやめてぇ~と寝言を口にしていたりはあったが。
まぁでもとりあえず今は雰囲気に浸りたい、おもっくそ濃いブラックのコーヒーを
ホットで香りを楽しみながらチビチビやりたい、そんな気分に。
で、そんな気分の折に。
「ハジメちゃん!来て来てハジメちゃーん、はやくー」
なんて声が聞こえると余韻ブチ壊しなのである。
ポリポリとヘソの周りを掻きながら、パンツ一枚で食堂へと向かうハジメ。
戸惑ってるくせに、態度はかなり慣れた風に見える。
「ねぇねぇ見て見て!」
かなり興奮した様子でステータスプレートを指で示すジータ。
とりあえず指先で示された個所に注目すると―――。
"団員Lv2"
「おおおっ!」
これには興奮を隠せずにハジメも叫ぶ、気だるい余韻など一気に吹き飛んだ。
「仲間がまた増えるの!やったねユエちゃ…イタタ」
状況を今一つ飲み込めてないユエの手を握りながら、
やや危険なネタを口走りそうになったジータの頭をハジメがはたく。
「じゃ、じゃあ早速ガチャを―――」
「でもハジメ……その前に着替え」
ユエの指摘に自分がパンツ一枚だったことを思い出すハジメ。
ジータとユエの視線が突き刺さる。
「……着替えてくる」
スゴスゴと寝室にUターンするハジメだった。
朝食を取り、ついでにユエのアドバイスで滝の水で身体を清め――。
「そこまでする必要はなかったんじゃ?」
「……気分の問題」
正座で居住いを正すハジメ、ユエも真似て正座をしていたが、
すぐに足が痺れてしまったか、今は床で足を投げ出している。
「ついにこの時が来たか、長かったな」
「もう少し早く呼べたらよかったのにね」
苦難の道中を思い起こす二人。
「でも、アル〇ドやシャル〇ィアみたいなのが来ると困るな」
冗談めかしたハジメの言葉に、ジータもアイ〇ズ様チックな、
オスカーの亡骸を思いだして苦笑する。
ともかくジータは意識を集中させつつ、スマホを召喚し、ガチャを回していく。
いわゆるケツアゴの軍服姿の青年や、妙にチャラい三人組、
やけに言葉遣いが乱暴な幼女などを経て、ついに虹色の光に周囲が包まれる。
虹と共に現れたのは肩に巨大な銃を担いだ美貌の女性だった。
青みを帯びた銀髪を靡かせ、ロングコートの下のタンクトップ風のシャツからは
豊かな胸の谷間が覗き、青のミニスカートからはスラリとした足が生えている。
自分のスタイルに自信がなければ絶対に手を出さない、いや出せないコーディネイトだ。
スタイルだけではない、凛とした鋭い視線と、それでいて余裕を感じさせる柔らかな口元。
大当たりを引き当てたであろう確信と興奮で拳を握りしめるジータへと、
女性は想像通りの涼やかな声でまずは挨拶する。
「私は狙撃手のシルヴァ、このライフルは伊達ではない、必ず君の力となろう」
二人目を選んだ基準として
強すぎて呪いの装備になりかねないキャラ 例 ニオ、ブローディア、レイetc
正義感が強くてハジメらの行動の妨げになるキャラ 例 シャルロッテ、アテナ、ヘルエスetc
口調や役割が被りそうなキャラ 例 スカーサハ、ゼタ、etc
などを今回除外した結果、シルヴァさんに出張っていただくことになりました。
ハジメパーティにいなかった超遠距離攻撃キャラで、
かつ普段は出しゃばらずに、時折大人の判断を見せて頂ければなと