ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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ブレグラのBGMがソイヤ!で少しテンションが上がっている作者。 


ライセン大迷宮その2

 

 

「疲れちゃった?ハジメちゃん」

 

壁にもたれ掛かり休憩中のハジメに声をかけるジータ。

フリフリとジータのスカートのフリルがハジメの眼前で動く、

頭には魔女の三角帽子、そしてセーラー服を基調としたコスチュームは

魔法少女を連想させずにはいられない。

今のジータのジョブはウォーロック、先のオルクスでムカデ相手に活躍した

ハーミットの上位職、したがってこのジョブも対集団攻撃に長けている。

 

殆どのトラップを発見したのと、

また騎士型のゴーレムが大量発生する部屋を発見したこともあり、

本来の攻撃力を発揮出来ないハジメたちを手数で補うべく、

彼女は攻撃型のジョブに切り替えたのだ

 

「遊園地みたいなものだと思えばいいんだよ」

「……」

「ホラ、私たち簡単には死なないしさ」

 

あれから数日、初手こそムカついたが、もともとローグライクゲームが好きなこともあり、

ジータは大迷宮の攻略にかなりのめり込んでいる、しかし。

 

「つまりトル〇コやシ〇ンと思えって?」

「そそ」

 

ハジメはそこまで熱心ではない、声からしてかなり苛立っているのが分かる。

 

「あっちと違って宝物一切出ねぇし、セーブも出来ないけどな」

「ハジメちゃんは速解き派だもんね」

「そういうジータはやり込み派なんだよな……おっとと」

 

ハジメの右肩にもたれ掛かって眠るユエが寝返りを打とうとし、

ハジメはそっと腕を伸ばして、起こさないようにユエを支えてやる。

ちなみに左肩ではシアがだらしなく口元から、よだれを垂しながら眠っている。

 

「気持ちよさそうに寝やがって……ここは大迷宮だぞ?」

「それもハジメちゃんが頑張ってくれてるから、だからみんな安心できるの」

 

(そう、どんな姿になっても、ハジメちゃんはハジメちゃんだよ)

 

「まったく、俺みたいなヤツの何処がいいんだか……」

「それはまだ内緒、だよ」

 

ムギュとハジメの胸に飛び込むジータ。

 

「こんなところで…おい、シルヴァだって…」

 

「いいんだよ、私たちはまだこんなに余裕だーってのを見せつけてあげたらいいの、

きっと私たちがアタフタしてるのを、ミレディ・ライセンはあの世で高みの見物……あ!」

「七大迷宮は神と戦う力に試練を与え、乗り越えた者に力を授けるという、ならば

どうやらこの大迷宮は神の気まぐれというものを私たちに体験させているようだな」

 

コッヘルで沸かしたお茶を、各人愛用のティーカップへと注いで行くシルヴァ。

床には無駄だと石板に煽られつつも、根気よく記した大量のマップが並んでいる。

 

「それを乗り越えるには果てしなき忍耐……あるいは…あちち」

 

我慢比べは得意といいつつも、やはり疲労が溜まっているのだろう

珍しく手元が狂ったか、床に広げられたマップの上にお湯を零してしまう。

 

「すまない」

 

濡れたマップを取り上げ水気を切るようにバサバサと振るシルヴァだったが…。

何かに気が付いたようだ、水に透けたマップ用紙を重ね始める。

 

「……見ろ、ここまでのマップを」

 

どのブロックがどの位置に移動したのかを確かめる地道なマーキング作業によって、

この大迷宮の構造変化には一定のパターンがあるらしいことはすでに解明済みだ。

で、今回マップを重ね合わせ、三次元的に迷宮の構造を捉えた場合、

どのパターンにおいても必ず同じY軸上の位置に配置されているブロックがある。

そしてその最深部に位置するブロックのみ、まだマーキングがなされていなかった。

 

「でも……それだけじゃ」

「いや、証拠らしきものはある、その周囲のブロックの配置を真上から見るとだな」

 

シルヴァに促されて立ち上がって重なり合ったマップを上から見るジータ。

マーキングによって色分けしたブロックの形が

 

 

       ( ̄∀ ̄)

 

 

となっていた。

 

「随分とまた小ネタを仕込んでくれたもんだね…」

 

「むにゃ……あぅ……ハジメしゃん、大胆ですぅ~

お外でなんてぇ~、……皆見てますよぉ~」

 

話の腰を折るようなシアの寝言に憮然とした視線を向けるジータ。

ハジメはおやさしいことに二人を起こさないよう壁にもたれたままだ、

ジータはそんな彼を制すると、不埒な寝言を口にしたシアの鼻を摘まんでやる。

穏やか…というよりだらしないシアの表情が徐々に苦しげなものに変わっていくが、

気にせず塞ぎ続ける。

 

「ん~、ん? んぅ~!? んんーー!! んーー!! ぷはっ! 

はぁ、はぁ、な、何するんですか! 寝込みを襲うにしても意味が違いますでしょう!」

 

ぜはぜはと荒い呼吸をしながら目を覚まし猛然と抗議するシア。

 

「ハジメちゃんにお外で何をさせちゃうのかな?お話聞かせてもらおっか?

「えっ? ……はっ、あれは夢!? そんなぁ~、せっかくハジメさんがデレた挙句、

その迸るパトスを抑えきれなくなって、羞恥に悶える私を更に言葉責めしながら、

遂には公衆の面前であッへぶっ!?」

 

聞くに堪えなくなって、シアの頭をひっぱたくジータ。

一方でハジメはユエを優しく揺さぶって起こしてやっている。

ユエは「……んぅ……あぅ?」と可愛らしい声を出しながら、

ボーとした瞳で上目遣いにハジメを見つめている。

 

「見習うようにね」

「……ふぁい」

 

そして彼らは小休止を終え、また探索を開始する。

今度は一応の目的地が分かっているので、まだ気が楽だ。

 

「でも、今回のパターンだと、真上のブロックまでは辿り着けるけど、

その先は回避不可のトラップで、軸を挟んで反対側の方向に強制移動されちゃうよ」

 

ジータの疑問にハジメはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「神の気まぐれを打ち破るには果てしなき忍耐と」

 

ハジメは"宝物庫"から全長二メートル半程の縦長の大筒を取り出し、

中程に空いている機構にハジメが義手をはめ込むとそれは連動して動き出した。

凶悪なフォルムのそいつは、義手の外付け兵器"パイルバンカー"

"圧縮錬成"により、四トン分の質量を直径二十センチ長さ一・二メートルの杭に圧縮し、

表面をアザンチウム鉱石でコーティングした、世界最高重量かつ硬度の杭。

それを大筒の上方に設置した大量の圧縮燃焼粉と電磁加速で射出する、

必殺の近接兵器である。

 

ゴウンゴウンと周囲が鳴動を始める、一定時間を過ぎると内部構造が変化し、

強制的に入り口に戻されてしまうのだが、少し早すぎる。

制限時間も気まぐれなのか?それとも……。

 

そんなジータの不安げな顔を見て、ハジメは心配するなといわんばかりに微笑む。

まずは万一を考え、自分たちの身体をアンカーとロープで壁に固定すると、

パイルバンカーからアームを射出し、周囲の地面に深々と突き刺し、大筒をしっかりと固定させる。

 

「ガマンだけじゃなくってそれを上回る力を持てってことだな!」

 

ドォゴオオン!!

 

大迷宮の床にマジメの紅い魔力光を帯びた漆黒の杭が打ち込まれ、

床にピシピシとヒビが入っていく。

 

「貫けええええっ!」

 

ハジメの叫びと共についに床が砕け階下への道が開ける。

穴から覗くそこは超巨大な空間だった。直径数キロメートル以上ありそうである

空間内は様々な形、大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動をしている。

まるで一昔前のアクションゲームのような光景である。

 

五人はロープを伸ばし、慎重に空間へと侵入しようとすると

彼らの足元にスーとブロックが乗れといわんばかりにやってくる。

そのまま招待に応じんとばかりに一行が飛び乗ると、

ブロックはそのままゆっくりと底へと向かい下っていく。

 

「この部屋は球体?」

「直径は数キロほどありそうだね…」

 

ジータの体感としては、この大迷宮は行ったり来たりの登ったり下ったりの

繰り返しを強要されるだけで、実際はそれほどの規模ではない、

せいぜいオルクス数階層程度の物だと認識している。

ならばこの広大な空間は何か?

 

「まるで……宝物庫」

 

青狸のポッケの如くなんでも収納出来て取り出せる、オスカーの指輪を思い出すジータ

 

(なら……ここで得られるのは空間を操る神代魔法?…だったら)

 

帰れるかも、と考えてる間にブロックは床へと到着する。

見上げると遙か上空からゴーレム騎士たちがこちらに向かってくるのが見える。

さらに前方からは、巨大な何かも向かってくる。

武器を構えつつも、ハジメは何かを考えるような表情で、

トントンと床の上で軽く飛び跳ねている。

 

「ジータ、分かったぞ、ここで得られる神代魔法が」

「じゃあ、せーので言ってみない?」

「せーの!空間!」「重力!」

 

顔を見合わせ苦笑する二人、まさしく十年選手の為せる阿吽の空気である。

勿論その間にも騎士たちは地表へと近づいてるし、巨大な影も大きくなってゆく。

 

そして彼らの目の前に出現したのは、宙に浮く超巨大なゴーレム騎士だった。

全長は約二十メートル、右手は赤熱化しており、

左手にはモーニングスターを装備している。

着地したゴーレム騎士達も、大剣を胸に垂直に構え整列していく。

ハジメの眼が剣呑な光を帯び始めるが。

 

「あれはおそらく歓迎の儀礼だ……落ち着け」

 

ハジメの逸る気持ちを見透かしたシルヴァが窘める。

見ると、確かにどの騎士たちも刃を内側、つまり身体の方向に向けている。

今、この時に関しては害意はないという証だ、そして。

 

「チミたち仲いいねぇ~ミレディ妬けちゃうなっ!」

 

巨大ゴーレムから女の子の声が発せられた。

 

「「「「「……は?」」」」」

 

「さーて私は誰でしょう!はっはっは、答えはクイズだぁーっ!」

「いや、アンタさっき自分でミレディって名乗ったろ」

「くっ……言ってはならんことを…まぁいいや」

 

くるりんと巨大ゴーレムはその場で回転し、

魔法少女っぽいポーズを決めようとして、左手の鉄球がゴチンと頭にぶつかる。

 

「おとと…コホン、やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」

 

「おい…お前」

「初めまして蒼野ジータといいます、解放者が一柱、ミレディ・ライセン様にお目通りが叶い

光栄の至りでございます」

 

いきなり喧嘩腰のハジメの昂りと苛立ちを察知し、機先を制するジータ、

ぐいとハジメの頭をひっつかみムリヤリ頭を下げさせることも忘れない。

ユエも同じように何が何だかのシアの頭をひっつかんでいる。

シルヴァはそつ無く捧げ銃の姿勢で直立不動だ。

 

「そこは解放者が主柱と言って欲しかったなぁ、ともかく

ようこそライセン大迷宮、最後のステージへ」

 

またポーズを決めようとしたが、先程の失敗を思い出したか

途中で止めるミレディゴーレム。

 

「御存命とは存じませんでしたが…御両所様は何処の工房?」

「あれは~遙か昔…溶鉱炉の胎内で私は目覚め~って、なわけないじゃん!」

 

両手を組んでプンスカとしている……ようなミレディゴーレム、

何せゴーレムなので表情が分からないのだ。

 

「少しはさぁ……ミレディ・ライセンは人間の女の子じゃなくゴーレムだったのかっ!

とか、気遣いが無いの気遣いが」

「オスカーさんの手記にちゃんと書いてましたから」

「え!どんな風に!どんな風に、ねぇねぇ」

「ミレディ・ライセンは女の子などではなく、ゴーレムだったと」

「……キミさ、嘘つきってよく皆から言われない?」

 

溜息をついたようなミレディゴーレム、やっぱりゴーレムなのでホントかどうかは分からない。

 

「でもいいさ、久しぶりの会話にこれでも内心ウキウキしてるんだよ、

っていうか、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

 

「はい、オルクスさんの迷宮ならクリアしました、

次はハルツィナに行こうと思ったのですが、証が足りなくて」

「ここに来たと……で」

 

ミレディゴーレムの口調が変わる。

 

「何の為に大迷宮を攻略するの?まぁ神代魔法が目的なんだろうけど…何の為に

神代魔法を欲するのかな?」

 

その声音はまさに解放者の主柱を自負するだけの威厳に満ちていた、

嘘偽りは許さないという意思が込められた。

 

「元の世界、私たちの故郷への帰還です、解放者の皆さんが"神殺し"を願っていることは

承知しております、それでも……」

 

ジータはこれまでの経緯をミレディゴーレムに説明する。

 

「あのクソ野郎どもは他所の世界にまで手を伸ばし始めたか……だったら」

 

そこでミレディゴーレムは言葉を一度切る。

 

「……奪いなよ、欲しかったら」

 

「ジータちゃんだったかな、キミはこの世界の問題はこの世界の住人が解決すべきだって

言ったよね、なら私はこの世界の住人としてキミたちに立ちはだかることにするよ

神と戦わない者に神代魔法は渡せない、けど」

 

ミレディゴーレムはぐっ、と胸を張る。

 

「負けたらどうしようもないからね、私の神代魔法はキミたちのものだよ」

 

そこで初めてハジメへと視線を動かす、ミレディゴーレム。

 

「ね、そこのボク、スイッチ入った?」

「正直、アンタとはあまり戦いたくないんだが…俺たちが欲しているのは

あくまで帰還に必要な魔法のみだ、無駄な争いはしたくない、

アンタが持つ神代魔法は何だ?空間か、重力か、それとも霊魂か何かか?」

 

無駄な戦いは避けたいのも本心だが、

何百年…いやもしかすると数千年もの間、意識を保ち続け迷宮の奥深くで

挑戦者を待ち続けた彼女の凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感に

彼らは畏敬の念すら持ち始めていた。

 

(少ししゃべりすぎたみたいだね、これ以上は……いやいや)

 

「……ゴーレムたちが増えていってるぞ、物陰に潜ませて一気にケリをつける気だろう

まったくもって抜け目がないな」

 

ジータに耳打ちするシルヴァ、彼女がいなければなんとなくいいムードのまま

戦闘に突入した挙句、初手でかなりの不利を被ったに相違ない。

 

「大丈夫、対策はあるよ」

 

五人は死角を作らないように円陣を組む。

 

「言ったでしょ、そっから先は……」

 

ミレディゴーレムの指がスッと動いた瞬間、すでに包囲が完了していた

無数のゴーレムたちがハジメらへ襲い掛かる…が

 

『チョーク』

 

ジータが短剣を翳すと、円陣を組んだハジメたちの放った弾丸が、魔法が、大槌が

無数に分裂し、ゴーレムたちを一瞬で屠る、さらに

 

『チェイサー』

 

質量を伴った残像が再生しようとしていたゴーレムを再度粉砕していく、

これにより数の優位はなくなった。

 

「私を倒し…えっ!えー?えええええっ!?」

 

『ブラックヘイズ』

 

さらにミレディゴーレムの身体と視界が闇で包まれ、

そこにハジメのロケットランチャーが、棒立ち状態のその腹部に炸裂する。

 

「ミレディさんの大嫌いな神様に誓っていいよ」

「先に抜いたのはテメェだ、覚悟しろ」

「やってくれるねぇ~私の神代魔法が君のお目当てのものかもしれないよぉ~

私は強いけどぉ~、死なないように頑張ってねぇ~」

 

(出力25%ダウン……各種センサー異常…ホントにやるね、でも)

 

腹部に大穴を穿かれ、若干ヨタりながらも、ブロックを吸収し穴を塞ぎつつ

鎧に包まれたミレディゴーレムの顔の奥底の目が光り、

左手のモーニングスターから放たれた鉄球がハジメたちに向かって射出される、

明らかに狙っての動きだ、何をしたのかは不明だが、

どうやら"暗闇"状態は脱したようだ。

 

「ゴーレムたちが再生するまで二分くらいだと思う、それまでにケリをつけるよ!」

 

粉々に砕かれた騎士ゴーレムがカチャカチャと再生しようとしている様子を見て

ハジメたちに指示を飛ばすジータ。

 

「やるぞ! ユエ、シア、シルヴァ、ミレディを破壊する!」

「んっ!」

「了解ですぅ!」

「私の力、上手く使ってくれ」

 

こうして七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。

 

 





チョクチェやるならここしかないなと思った次第。
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