ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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今回は短めです。その上ムッチャ強引なやり方で攻略しています。
お許しあれ。


決着!ライセン大迷宮

 

 

ミレディゴーレムがモーニングスターの鉄球を振り回しながら。

滑るようにブロックを縫い、移動していく

やはり黒霧に蝕まれた影響か、その動きは本来の物と程遠く思えたが。

 

「慣性を無視してるよね、あの動き」

「やっぱりアイツは重力に関する魔法の使い手みたいだな、賭けは俺の勝ちな」

「いつ賭けたのよ、いい加減なこと言わないで欲しいな」

 

背中合わせで互いの得物を構えつつも、妙な口論を始める二人に

ミレディゴーレムが突っ込みを入れる。

 

「そこぉ!余裕見せつけすぎぃ!」

「こっちに気を取られてていいの?」

「!」

 

「頭上!取ったですう!」

 

すでに上方に移動していたシアがミレディゴーレムの脳天へとドリュッケンを振り下ろす。

ミレディゴーレムもそうはさせじと横へと回避するが、やはり鈍い。

 

「まだです!」

 

若干目測は狂ったもののシアは手元のトリガーを引き、

ドリュッケンの打撃部分を空撃ちすることで軌道を修正し、遠心力と反動を乗せた一撃を

ミレディゴーレムへと叩き込む。

 

「くっ!」

 

左腕でガードするミレディゴーレム、衝突音と同時に左腕が軋む音も聞こえるが

お構いなしとばかりに、左腕を振るいそのままシアの身体を弾き飛ばそうとするが。

 

『エーテルブラスト!』

 

ジータの持つ薔薇をあしらった風属性の短剣、エターナル・ラブから

地火風水光闇、全ての属性が内包された光が放たれ、

一陣の烈風がミレディの左腕を肘から砕き落とし、

結果、ノーガードとなった左肩にシアのさらなる一撃が叩き込まれる。

 

「腕は二本あるんだい!」

「そんなものっ!」

 

体勢が崩れることも厭わず、ミレディゴーレムは右の拳で強引にシアを潰しにかかるが

すでにシアはその攻撃範囲から逃れている。

 

「ほう」

 

感嘆の息を漏らすハジメ、樹海でユエとシルヴァに相当追い込まれたことは

自身の口から聞いているが、ここまでやれるとは。

そういえばシルヴァは?と彼女の姿を探そうとした刹那。

 

ミレディゴーレムが指を翳すと中空に浮かぶ無数のブロックが一斉に落下を開始し、

その隙に距離を取ろうとする姿が目に入る。

ハジメは宝物庫からガトリング砲:メツェライを取り出す。

そして上空のブロックの群れへと、六砲身のバレルから毎分一万二千発の弾丸をバラ撒き、

細断されたブロックの雨が降り注ぐ。

 

そんな中でもジータたちはミレディゴーレムへの追走を止めることは無い。

ブロックの破片はユエがぶら下げた水筒から振りまいた水を、

ウォーターカッターとして放つことで回避している。

 

(しつっこ…いっ!、でも!)

 

なんとか振り切りたいミレディゴーレムだが鈍重な身体は如何ともし難い。

しかし騎士ゴーレムが復活するまであと数秒だ、ここを凌げばまたリスタートできる。

だが、ミレディもジータらの異質な力に慎重になり過ぎていた、

勝ちたいならば、なりふり構わず天井でも落としていればよかったのだ。

 

(よん、さん、に……)

 

ブロックの雨の中でも自分にヒットアンドアウェイで、

攻撃を繰り返すシアを追い払いながら、

頭の中でカウントダウンを行うミレディゴーレム、だから気が付かなかった。

 

ジータが関節の継ぎ目に黒光りする短剣を突き刺していたことを。

 

ユエの右手が光って唸り出す、ミレディを倒せと輝き叫ぶかのように。

その光はこのライセン大迷宮にあって決してあってはならない光。

 

「最上級魔法!そんなっ!」

 

ミレディゴーレムの驚きの声に構わず、ユエは床に雷を纏った拳を叩きつける。

床は濡れていた、先ほどのウォーターカッターによって、さらにその水は

ジータが突き刺したハジメによってアザンチウムコーティングされ、

帯電率を限界まで高められた短剣へと繋がっていた。

 

サソリモドキ、そしてヒュドラ戦を鑑み、二人は相手の強靭な装甲を、

突破するにはどうすればいいかを、オルクスの工房内にて試行錯誤を繰り返していた。

そしてその答えの一つが、威力を集中させることによる一点突破と、

触媒を用いることによる内部への浸透攻撃だ。

 

「……だけどここは最深部っ!」

「それだけじゃない!行くよ!」

 

ジータの求めの声にハジメの視線が交差する。

 

『黄龍!』

 

ユエの頭上に魔法陣が輝き、そこから金色の神獣が求めに応じ顕現する。

その名は黄龍、ハジメの黒麒麟と対を為す星晶獣だ。

そしてその効果は黒麒麟が武器の完全充填ならば、黄龍は魔力の完全充填。

つまり召喚によって強引にユエは十全の威力で最上級魔法を放つことを

可能にしたのだ。

 

もっともここは、ライセン大迷宮最深部、放たれる電流は次々と霧散していく

ユエが本来放つ筈の魔法を、己の拳に纏わせているのも僅かでも減衰を避けるためだ。

しかし、逆を言えば魔法攻撃への備えは薄い、さらに……。

 

『ブルー・ローゼス』

 

ジータの握る短剣が翻り、追撃の奥義が放たれる、舞い散る青薔薇の花弁を伴った

烈風が、ミレディゴーレムの装甲を砕く。

そしてゴーレムの表面装甲を含む外骨格が雷撃によりすべて吹き飛び、

内部構造が完全に露になる。

 

「んっ!」

「やったね!……チチッ!」

 

会心の笑みでユエとハイタッチを交わすジータ。

少し痺れて顔を顰めるハプニングもあったが。

 

「ぎゃ…ふぎゃあああああああああ」

 

そして洗濯機の中で眠っていてそれと知らずに回された猫のような悲鳴が、

骨組みだけとなったミレディゴーレムから発せられる。

不思議なことに、その悲鳴はゴーレムとはまるで見当違いの空中からも響いてきた。

 

迷宮全体をコントロールする管理室の中で、激痛にのたうつニコちゃん顔のゴーレム

そう、このふざけた姿のゴーレムこそ、ミレディ・ライセンその人である。

 

遠隔操作だけでは対処できない―――ミレディは自身の魂魄をゴーレムに繋ぎ

直接操縦に切り替えたのだ。

もちろんリスクもある、この方法の場合、

カット機能があるとはいえ、ゴーレムの受けたダメージが、

自身へとフィードバックされてしまうのだ。

 

そして全身を貫く雷撃の痛みに絶叫するミレディ

 

(い…いたみ……いつぶり…だろ……はは)

 

苦しい、確かに苦しいが、なぜか久方忘れていた生の実感が戻って来る。

これは決して彼女がMだというわけではない。

 

(けど……こっちも)

 

今度は繋げて置いた天井、遙か彼方の空間から直接仕返しをしてやろうと、

動くミレディ…しかし動けない。

 

(ま…麻痺ってる…)

 

どうやらこの、まだ名もなき技は相手を麻痺させる効果があるようだ

 

さらに…ミレディがこの迷宮のどこぞかでピクピクと麻痺ってるのも

お構いなしについに動き出した者がいる。

遙か上空の空間に浮かぶ僅かなひずみを察知したのは、必殺の一撃を見舞うべく

潜伏状態になっていたシルヴァだ。

 

即座に狙撃体勢に入るシルヴァ、彼女に取って距離は問題ではない、

ただ見えて届きさえすれば―――。

 

「準備完了、行くぞ!祈る余裕は与えん! バリー・ブリット!」

 

即ち必中である。

 

針の穴ほどの僅かな空間の歪みへ裂帛の気合いと共に愛銃のトリガーを引くシルヴァ

 

「我が銃弾、過たず敵を穿つ!」

 

糸を引くような極光を放つ弾丸が歪みの中に吸い込まれていく……そして

凄まじい爆発音と共に。

 

「くぁwせdrftgyふじこlpィィィィィ!」

 

空間にヒビが入り、そこからニコちゃん顔の子供サイズのゴーレムが、

こちら側へと吹っ飛ばされる。

 

「な…なんでなんでなんでぇ!どーしてそんなコトできるの!」

 

いざという時は直接ちょっかいを出せるようしてたのが、

完全に裏目に出た―――いや、そもそも距離にして数キロは離れていたのだ……それを。

 

さらに理不尽は続く。

高密度の攻撃が続いたことにより充填された魔力とまた違う異質な力が、

ライセン大迷宮の最深部に嵐を呼ぶ。

 

『チェインバースト、乱壊のテンペスト』

 

骨格だけになったとはいえ、まだまだ巨体といえるミレディゴーレムの身体が

浮き上がる程の暴風が迷宮内に吹き荒れ、腰の部分から真っ二つに折れ、

上半身が吹き飛んでしまう、暴風の渦の中に再生を終えたばかりの騎士ゴーレムも、

すべて吸い込まれ、また粉々に粉砕される、さらに。

 

『デットスペシメン』

 

シルヴァのさらなる一撃の準備が整う。

ミレディは咄嗟にすでにほぼ全壊状態のゴーレムから核の部分をパージする。

パージされた核のあったすなわち心臓の位置を寸分違わず光線が通過するのは、ほぼ同時、

回収した核のパーツに周囲のブロックを組み合わせて即席の脚を造ると、

そのままその上に乗り、しゃかしゃかとカニのように、彼女は逃走を図るが。

 

その行く手にはシアがいた……嗜虐心に満ちた笑顔を浮かべて。

 

「……あ」

 

シアはぶんとドリュッケンをミレディへと振り下ろす、大槌がフードを掠める

もちろんわざと外した。

 

「ビビりましたかぁ? ねぇ、ビビっちゃいましたかぁ? チビってたりしましたかぁ」

「ひぃぃ」

 

思わず後去るミレディだが、今度はハジメのパイルバンカーがその行く手を阻む。

 

「そんなビビんなよ、ダセぇな」

「……あ、あああ」

 

左右からはジータとユエが向かって来るのが見える。

そしてハジメがおもむろにドンナーを取り出した時だった。

 

「もうそれくらいにしときなよ、ハジメちゃん」

「だよな」

 

最初から撃つつもりはなかったようだ、やれやれといった風に

ハジメはドンナーを収納する。

 

「というわけでミレディさんの魔法、奪わせて頂きますね」

「いいよ、重力魔法、もってけドロボーだよ」

 

敗北を認めるミレディ、項垂れつつもその声にはどこか充実感があった、しかし。

 

「状況終了か、皆、大事ないか」

「ヒィィィィィィ!」

 

ライフルを担ぎ、歩み寄るシルヴァの姿を見るや否や、

悲鳴を上げてジータの背中に隠れるミレディ、

そしてそんな彼女の姿を見て、やはり自分は女性としての魅力に乏しいのかと

また悩みだすシルヴァだった。

 





……シアにはどこかで活躍の場を作ってあげないと、
と少し罪悪感。
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