ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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というわけでライセン攻略終了
キリのいいところで、来週からの団イベに取り組めます。


おかわりっ!ライセン大迷宮

 

「一応、最難関として設定してるオーちゃんの迷宮をクリアした

チミたちの実力をまずは計りたくてね」

 

瓦礫の山の中でがっくりと肩を(あるのか?)落とすニコちゃん顔のゴーレム、

ことミレディ(本物)。

 

「まぁ、最初から全力を出さなかった時点で、目の前の相手の力量を

見誤った時点で……すべては負け惜しみだよ」

 

その声音には忸怩たる思いが滲んでいた、分かっていた筈だった。

戦いに次は元来ありえない、敗れれば……それきりだということを。

 

お前をスクラップにしてやるだの、先にこちらの質問に答えろだの、

のっけから不遜な態度を取ってくれれば、思う存分蹂躙できる気分になれたものを、

初めましてだの、お目通りだのと、礼を尽くして持ち上げられると、

やはり自分とて悪い気はしなかった……だから、試練と言いつつ

出来るだけ長くこの戦いを楽しみたかった、そんな浮ついた気分が、

心の奥底にあったのは否めない。

 

「それにしても」

 

ミレディは、すっかり色素を無くしたハジメの姿をまじまじと眺める。

 

「魔物肉ねぇ……私たちの時代でもそんなの思いつかなかったな」

「やらなかったんですか?」

「やらないよ、そんなの」

 

何を考えてるんだと言わんばかりのミレディ。

 

「まぁ……私たちも分かっててフグの肝食べたりしませんしね」

 

たまにいるみたいだが……。

この世界にフグがいるのか知らないので、今の例え通じるかなと思うジータ。

 

「とりあえず、元の世界に戻りたいなら、必ず私たち全員の神代魔法を手に入れること

君たちの願いのために必要だから……」

「全部ですか……なら他の迷宮の場所を教えて貰えませんか?殆ど失伝していて

私たちでは調べようがないんです」

 

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……

長い時が経ったんだね……うん、場所……場所はね……」

 

嘆息しつつも残りの七大迷宮の所在を語っていくミレディ。

 

「もし、魔人領に入れるのならシュネー雪原…と言いたいところだけど

次はクリューエン、ナッちゃんの所がいいんじゃないかな?」

 

「先にその二つって何か意味はあるんですか」

「それは教えてあげられないよ……特に氷雪洞窟についてはね…っとさて、

ここでこうしてても何だし」

 

ミレディが腕を上げると浮遊ブロックの一つがすーっと降りてくる、

まるでタクシーみたいだと思うジータ。

 

「来なよ、重力魔法授けたげるから」

 

ブロックにひょいと飛び乗るミレディ。

 

「そうですね、ゴミだらけですし」

「誰のせいかなァ、誰の」

 

見渡す限りの破壊の痕を見やり恨めし気に声を上げるミレディだった。

 

(色々演出用意してたのにぃ~)

 

 

 

そしてミレディの住居に案内された彼らが見たものは、

迷宮と同じく瓦礫の山だった、特に神代魔法の習得に必要不可欠という

専用の魔法陣が瓦礫の山の最下層に埋まっていた。

 

「ハジメも手伝う」

「ちゃんと整理しとけよ、もしかして片付けられない系か?」

 

うんしょっとと柱を持ち上げながら、憤懣やるかたないという感じで文句を言うハジメ。

 

「そこのお姉さんが盛大なのぶっぱなしてくれたおかげです……」

 

ジータの背中に隠れながらおずおずとシルヴァへと恨み言を呟くミレディ。

 

「その……なんかすまない」

 

頭を下げる仕草を見せるシルヴァだったが、その動きに反応して

またミレディの肩がピクピクと跳ね上がる。

しかしシルヴァの奥義をマトモに受けてむしろ住居半壊程度で済んだのは

全くもって幸運と言わざるを得ない。

ミレディいわく麻痺から回復して、起き上がろうとした瞬間、

目の前を光線が通過したのだという。

 

「それはラッキーでしたね……」

 

ミレディは震えながらコクコクと頷いている、

あと一秒起き上がるのが早かったら、自分はきっと消滅していただろう…。

 

とにかく瓦礫の山を何とかしないと始まらない。

彼らはえっちらおっちらと瓦礫をミレディが何かの装置で開けた穴の中、

―――大迷宮の底に投げ込んでいく。

 

「これがねーメル姉ね、で、これが」

「ナイズ・クリューエンで、ナッちゃんなんですね」

 

そんな中、ミレディとジータはアルバムを開き、

いつの間にか大掃除あるあるな光景を展開していた。

 

「お前らも手伝え!」

 

ハジメの怒号が飛んだことは言うまでもない。

 

 

「いやぁ~スッカリ片付いたねぇ~感謝感謝だよ」

 

壁の大穴もハジメが錬成で塞ぎ、元通りとまでは行かないものの

小ざっぱりとした部屋の風景が彼らの前には広がっている。

……もしかすると最初からこういう目的でここに連れて来たのかもしれない。

 

「なぁ…神代魔法習得のためにここに来てるんだよな、コイツの断捨離に

付き合わされたワケじゃないよな」

「……それは考えないでおこうよ」

 

不穏な雰囲気を察知したか、ミレディはとっとと話を進めていく。

 

「さてと、じゃあその魔法陣の中に入ってよ」

 

 

 

習得の儀が終り、攻略の証をミレディはハジメへと手渡す。

 

「欲しいのは何でも持ってっていいから」

 

自身の宝物庫から、次々と素材を出して行くミレディ。

 

「欲しい…というのとは別ですけど、ミレディさんも私たちと一緒に来ませんか?」

 

嬉々として鉱物の吟味を始めるハジメを横目に見ながらミレディに問いかけるジータ。

 

「こんなユカイな姿を衆目の元に晒せと」

「ホラ、腹話術の人形とかそういうので」

「ヤアミレディダヨ、ヲトモダチニナロ…って何言わせんじゃい!」

 

ジータにノリツッコミを入れるミレディ。

 

「ま、冗談は置いといて、もう私は終わった存在、試練を乗り越えられてしまった以上

後は君たちに託すのが道理さ、それに……引き際を誤った老いたる者ほど、

醜い者はないって個人的には思ってるんだ」

 

身体を乗り換えてまで生涯現役を貫く、

自称天才美少女錬金術師の姿を思い浮かべるハジメとジータ、そうだ、彼女に伝えなければ。

 

「会って欲しい人がいるんだ、きっと力になってくれる」

 

会わせちゃいけない気もしないでもないが……。

しかしミレディはハジメの言葉にはっきりと首を横に振る。

 

「……私がついていけばきっと神殺しを強いてしまうことになるよ、それはフェアじゃない

オーちゃんや私が授けた力はもう、君たちの物なんだ、だから君たちは

君たちの思った通りに生きればいい」

 

きっぱりとした口調で告げるミレディ。

 

「君たちの選択がきっとこの世界にとっての最良だから」

 

(それに…ね)

 

ミレディはジータの顔をまじまじと眺める、正直、似ても似つかない……それでも。

 

(君と話していると、とても懐かしい、大切な人のことを思い出してしまうから)

 

「でも、とりあえずもしその人に会えたなら……」

 

ポイとジータへともう一つ攻略の証を投げ渡そうとしたその時だった。

ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張っ……。

しかし銃声が響き、引くより先に紐が切断される、ミレディの手元数センチのところで

 

「余計な真似はせぬことだな…」

 

シルヴァの袖口から覗く小型拳銃が硝煙を放っていた。

 

「は…はひぃ」

 

(もうこのお姉さん嫌ぁ!)

 

「しかし、君は彼らにいいことを教えてくれたぞ、相手に義侠心を期待するなという」

「そ……そうだよ、いい勝負が通用するのは試合までだよ」

 

自分が暗に卑怯者だと言われてる気がして、もやっとした気分になってしまったが、

それも仕方ないやと思うしかないミレディだった。

 

そしてミレディは結局、自らハジメたちを脱出口まで案内する羽目になる、

逃走阻止用のワイヤーで縛られたその身体は、まるで犯罪者の実況見分に見えて

仕方が無かった。

 

こうして彼らは数日振り、ミレディに取っては幾年月振りかの外の空気に触れる。

綺麗な満月が彼らを出迎えてくれていた。

 

「ここからブルック?だっけか……は、一旦東に出て、そこから外壁沿いに進めば早いから」

 

流刑地に街が出来てるなんてと、ミレディはしみじみと時の流れを実感する。

 

「色々最後までありがとうございます、で、この指輪を」

 

刻まれた紋章こそ同じだが、ハジメが貰ったのとはまた違うサイズの指輪を

夜空に翳すジータ。

 

「そのカリオストロって人に渡して貰えればいいから、勿論、

迷宮には挑んで貰うよ、せめてあの部屋まで辿りつけるくらいじゃないと

話にならないから、あ、君たちが連れてきてくれるなら、ココ使って貰ってもいいよ」

 

足元の脱出口を示すミレディ、ここから入ればあの試練の間へと一直線だ。

 

そして彼らはそれぞれの目的と使命を果たすべく、それぞれの道へ戻ることとなる。

ハジメたちは帰還のため、そしてミレディは解放者の責務を守るため。

 

 

しかし。

 

 

転んでもタダじゃ起きないのがミレディ・ライセンの哲学だ。

彼女の口には痺れ薬を塗った含み針が咥えられていた、え?その口でどうやって?

 

(フフフ…そこはミレディ脅威のメカニズムだよ)

 

去り行くハジメたちの背中に照準を合わせるミレディ。

行為の是非はともかく、この決して諦めないファイティングスピリットめいた

執念こそ、彼女を解放者たらしめているのかもしれない。

 

(しばらく魚市場のエビのようにひくひくと丸まるがいいさ!

そして魔物のエサになるかもという恐怖を味わうがいい!)

 

ちなみにこの周囲は魔物封じの結界で守られている、生息するのは無害な小型動物程度だ。

と、ミレディが未だ衰えぬ執念を漲らせてる中。

 

「やっぱりさ……悪いと思うんだ、ミレディさん、寂しかったんだと思う、

だからきっと構って欲しかったんだよ」

「そうだな……」

「そういわれるとなんだか可哀そうになっちゃうです」

 

ミレディは遥かな時を孤独とともに過ごして来たのだ、思い出だけを友にして。

そりゃ、少しはハシャぎたくなるというものだ、度が過ぎてた気もするが。

 

「もう一度、ちゃんとお別れを言おうよ」

「んっ」

「では偉大なる解放者!ミレディ・ライセンに一礼!」

 

シルヴァの号令と共に一斉に振り向き深々と頭を下げるハジメたち。

 

「ぶっ!」

 

ハジメたちの意外な行動に発射寸前の含み針を思わず逸らしてしまうミレディ、

そして針はあろうことか己の脚部に突き刺さった。

 

(あ……)

 

深々と一礼したハジメたちが頭を上げると、そこには痙攣し地面に突っ伏すミレディの姿。

仮にもゴーレムであるミレディの動きを止めるとは恐るべき痺れ薬だった。

(そんなもん使うな)

 

「なんか魚市場のエビみたいに丸まっちゃってる…」

「ミレディ……泣いてる、きっと」

「そっとしておいてやろう…道化の仮面の下には解放者の誇りがあることを、

私たちは知ってしまった、きっと涙は見せたくないだろうから」

「そうだな」

「そうですね」

 

そして彼らは次の目的地、ひいては未来へと歩を進める、もう振り返ることなく。

 

(しょんな~~~もう一度振り返ってよぉ)

 

そして哀れミレディは魚市場のエビのごとき様相で、この谷底に放置されることとなる。

しかも群がってきた小動物たちが彼女の微妙な個所に鼻や舌を這わせ始める。

 

(や、やめてえ、そんなトコ舐めちゃらーめぇらーめぇ~~~)

 

身動き一つ取れないその身体が、動物たちの唾液に染まっていく中、

 

(おにょれぇ!絶対仕返ししてやるぅ!)

 

憎たらしいほど綺麗な月に向かってミレディは誓うのであった。

 




来週は団イベのため、投稿はお休みの予定です。
ちょこちょこと各話の手直しはするかもしれませんが 
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