ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

41 / 173
6万UA お気に入り400達成!
ありがとうございます、励みになります。


繋がるモノたち

食事を終えると、一同は愛子の部屋へと集合し、

そこでハジメとジータは、自分たちが掴んだ情報の殆どを、

オブラートに包みつつも語っていった……

 

この世界の戦乱は全て出来レースであり、自分たちが神々の駒、玩具として召喚されたことを。

 

「どうせそんなこったろうと思ってたぜ、ククク」

 

カリオストロは予想通り、我が意を得たりと凶悪な笑みを見せているが、

残りの……愛子や優花たちは二の句が継げず、ただ茫然と視線を宙に泳がしている。

そんな中でジータはデビッドら、神殿騎士たちの様子を伺うのだが。

彼らもまた俯いたまま、微動だにしない。

 

「あのー?」

 

どうにも腑に落ちぬ表情のまま、ジータはデビッドに問いかける。

 

「こーゆー場合って、罰当たりめ!とか言って斬りかかるモノじゃないんですか?」

 

(その無駄に煽るクセ、直ってないよね……)

 

溜息をつく優花。

 

「そうしたいのは……山々ですよ、けど」

 

絞り出すような声でデビッドに変わりチェイスが応じる。

 

「憤り以上に……理解と納得の方が上回っているんです、分かりますか?この気持ちが」

 

タダでさえカリオストロに"毒"を吹き込まれ、揺らぎつつあったエヒトへの信仰が、

ハジメたちのもたらした"真実"により瓦解していく感覚を四人は明確に意識していた。

それは自分たちのこれまでのみならず、この世界のこれまでが、

ひっくり返るような……怒りを通り越した喪失感だった。

 

さらに言葉を続けようとしたチェイスをデビッドが手で制する。

 

「確かにとんでもないことを聞いてしまった……だがな、俺たちはきっと、

心のどこかでこういう結論を望んでいたんじゃないのか?」

「……」

「むしろ、神の枷から逃れ、一己の人間としてこれで堂々と愛子を、そして

君たちを守れるようになったことを俺たちは喜ばないといけない

……だから」

 

デビッドら四人は頷きあうと、改めて愛子の前に進み出、恭しく跪く。

 

「例え世界の常識が覆ろうとも我々は何も変わりはしません、

これまで通り愛子と、そして愛子の愛するもの、守りたいと願ったものを

守り抜く所存です……いつか」

 

「愛子が……もとの世界に帰還するその日…まで」

 

決意を新たにする騎士たち、最後の方は言葉が途切れ途切れになっていたあたり、

本気で愛子に想いを寄せているのだろう。

 

「はっ!はい!よろしくお願いします!」

 

しかしペコリと小さい身体をさらに小さくして、デビッドらに頭を下げる様子を見る限り

……当の愛子にはまるで伝わっていないようだったが。

 

 

「じゃあ、南雲たちは、独自で地球に帰る方法を探ってるってことなの?」

「ああ、こうなってしまうと単独で動く方がやり易いからな、事が事だけに

王宮や教会には頼れない」

 

決意に満ちたハジメの表情を覗き込むように眺める、昇たち男子トリオ。

 

「なんだよ?」

「……いや、別に」

 

彼らのその表情には、心なしか敗北感と劣等感が漂っているように思える。

俺たちが観光気分で浮ついている間に、かつて無能と蔑まれた筈のクラスメイトは、

ここまで考えて、動いていたのかという。

そんな彼らへ一旦視線を移し、フォローを入れるかのように微笑む愛子。

 

「天之河君たちにも、このことを……」

「それは愛子先生にお任せします、いかに彼でも先生の言葉なら

耳を多少は傾ける、と……思いますから」

 

せめて、そうであって欲しいと思うジータ。

 

「しかし、今のままでは……難しいでしょうな」

「何度か顔を合わせたことはありますが、彼はイシュタルらに完全に

取り込まれてしまっているように思えます」

 

ややうんざりといった感じのデビッドら。

 

「姫様とも仲いいしねー」

 

奈々がやや苛立ってる様な口調で、いかに光輝とリリアーナ姫が、

仲睦まじく過ごしているかをハジメたちに教える。

リリアーナの姿を思い出すジータ、ついでにリリィって呼んでもいいかな?、と、

いきなり初対面から誤解をされかねないアプローチを行っていた光輝の姿も思いだし、

うへぇとなる。

 

「天之河君……前はあんなじゃなかった」

「菅原さん……」

 

彼女も光輝に仄かな慕情を抱く者の一人だったのだろう、

ジータに遠慮しつつも悲し気な呟きを漏らす。

 

「蒼野さんのお兄さんとの事があってから……あんなに頑なに」

 

確かに、以前から多少行き過ぎた行動は見受けられたとはいえ、

それでもちょっと困った奴の一言で済ませることが出来たのだ……。

あの出来事があって以来、光輝は異様なまでに正しさに、正しくあらんとする事に

正しさを認められる事に拘るようになっていった……対抗意識剥き出しで。

 

「そういえば、俺たちが生きているってことを先生は知ってたけど

他にこのことを知ってるのは?」

「ああ、伝えたのは香織に雫、それからコースケと恵里だ」

 

カリオストロの答えにその四人ならと、納得する二人、

ただしジータには少し思うところが……気になることがあった。

 

(恵里ちゃん……工房に一度も遊びに来なかったんだよね、鈴ちゃんはよく来たのに)

 

「だから、すぐにというのは難しいかもしれませんが、

他の皆さんにも早く会ってあげて下さい、特に白崎さんは……南雲君のことを

一途に想って頑張っていましたから」

「ええ、一段落すればホルアドに立ち寄るつもりでした」

 

香織や雫が今も自分やハジメの生存を信じてくれていることに

喜びを隠せないジータ、とはいえど……。

 

(結局、抜け駆けしちゃったんだよね)

 

反面、大いに後ろめたさを感じてはいたが。

 

それからまた他愛ない話が続き、そろそろお開きか、という雰囲気の中。

一つだけ、誰もが意図的に触れない話題があった。

 

「檜山は……どうなりました?」

 

意を決して、タブーを口にするジータ、カリオストロが答える。

 

「あいつは、王都から逃走を図って行方不明って話だ……多分

ロクに捜索も行われちゃいねぇ」

 

何故そうなったかについては、詳しく聞くことは……

特に愛子の前では躊躇われた。

ただ少なくとも相応の報いは受けてはいたのだろうということは、

クラスメイトたちの表情から見て取れる。

彼らが檜山を断罪してくれていたことについては留飲が下がる思いがしたが、

反面もやもやした気持ちを二人は抱えてしまっていた。

これは結局イジメの対象がハジメから檜山へとスライドしたに過ぎないのではないかと。

 

(気分のいい……話じゃないよね)

 

とはいえ裁きを容赦するつもりは一切ないが。

 

「やはり…二人とも檜山君のことを……」

「ハジメちゃんの髪もそうですけど、見て下さいよ、これ」

「お……おい」

 

ジータはハジメに構うことなく、彼の左手の義手を外し、

肘から先が切断された様を愛子たちに晒す、何人かの息を呑む音が聞こえる。

 

「せめて腕一本くらいは貰ってもバチはあたりませんよね?」

 

その口調はどう考えても腕一本で済ますつもりは無いように思えた。

 

「……檜山君を許せ、とは……先生でも言えません」

 

ポツリポツリと言葉を続ける愛子。

ちなみに檜山の処遇についてだが、遺恨を残さぬために断固厳罰を!と、

主張したのは他ならぬ愛子だ……しかし。

 

「ならば、死刑以外ありませぬな、私怨で味方を二人も殺しておりますからな」

「死刑って……そんな」

 

イシュタルの言葉に絶句する愛子、確かに厳罰こそ望んだが、いくら何でも教師の立場として

極刑までは求められない、そもそもこのまま有耶無耶にしてしまえば、

クラスの風紀を保てないというのも、彼女が厳罰を求める理由の一つだ、

しかしクラスメイトが死刑などということになれば、却って逆効果だ、

もはや学級崩壊は避けられない。

 

「先生、南雲は決して復讐なんか望んでいません」

 

模範解答の如き、正しい言葉を実に正しい姿で光輝は愛子へ、

そしてイシュタルへと訴えかける。

 

「俺たちがやらないといけないことは、この世界を救い日本に帰ること、

もうこれ以上誰一人欠くことなく……それがきっと南雲の望んでいることに、

違いありません」

「流石は勇者様だ、その決意、その慈悲、必ずやエヒト様の御許に届くであろう!」

 

おおと賛同する声が、周囲の貴族や騎士、神官らから次々と発せられる。

勝負あった……その時のイシュタルの顔を生涯愛子は忘れることはないだろう。

そして無力感と敗北感を抱え……スゴスゴと部屋に戻って来た後、

カリオストロに大目玉を食らったのも言うまでもない。

 

「ですが…もしも生きて檜山君に出会えたなら、せめて理由は聞いて下さい

自分が何故殺されそうになったのか、それは知って置く必要がある筈ですよ」

 

恐らく取るに足らない理由だろうというのは、愛子でも想像がつく。

この二人を止められないのならば、言い方は悪いが、殺す価値もない、

殺しても仕方がないと。瑕疵を背負うだけ損だと、諦めさせる他ないと考えたのだ。

 

しかし彼女は思い違いをしていた……確かに殺す価値を感じることはないかもしれないが、

だからといって生かしておく価値も感じることもないだろうということを。

そして、生かす価値の無い命を"必要"とあらば摘み取れる程に、

目の前の彼らは変わってしまっていたということにも……。

 

ちなみにどういう経路でそうなってしまったのかは不明だが、

愛子先生が自分を死刑にしろと言ったと、何故か真実とは反対の話が、

檜山には伝わっていた。

そのためか愛子自身も時間が取れれば、何度となく檜山の姿を探し、

事あるごとに部屋を尋ねたが、姿を見かけても避けられ、

部屋の扉をノックしても返事は無かったということを追記しておく。

 

 

 

 

ハジメたちと愛子たちが再会を果たした、数日前、北の山脈地帯では。

 

「なぁ……もういいだろ?」

「誰にも言わねぇから、俺を解放してくれよ」

 

「あ?お前俺のこと嫌いか?、なぁ、俺のこと嫌いか?あぁ?」

 

黒フード姿の少年、彼こそ件の清水幸利くんなのだが、に

問いかける仮面姿の男、その言葉尻には生来の底意地の悪さが籠っている。

 

「むしろ俺に感謝したほうがいいぜ、愛子もあの忌々しいクソガキも、

園部も玉井も相川もみんなもうすぐ死ぬんだからなあ」

 

そこで仮面の男はポンと何かを思い出したように手を叩く。

 

「ああ、殺すのは俺じゃないな、お前が操った魔物で殺すんだよな」

 

殺すという言葉に清水は怯えた目を向ける。

 

「人殺しなんて悪い奴だなあ、お前はよ、だから俺がオシオキしてやるぜ」

 

仮面の男は嘲りながら少年の頬を殴りつける。

 

「……」

「あ?なんだ?ハッキリと言えや、コラ、お前も南雲と同じか?」

 

南雲と同じ、という仮面の男の言葉で、清水は僅かに肩を震わせる。

そう、必死で隠蔽してはいたが、清水幸利は真性のオタクである、

それも異世界召喚に憧れを抱く……。

 

そんな彼であるから、異世界召喚の事実を理解したときの気分は、

推して知るべしだろう、その後の挫折もまた推して知るべしで、

"勇者"の役目は例によって天之河光輝に奪われ、そしてアイツよりはマシだ、と

内心見下していた南雲ハジメが周囲の助力により、

メキメキと力を着けて行った矢先に、出る杭は打たれるの例え通り、

邪な妬みによって奈落の底に落とされる始末。

 

こうして、何処にいようと結局ままならない己の境遇を呪いながら

彼は異世界であっても引き籠るようになる。

半端者がやる気になるからこうなるんだ、ざまあみろという気持ちと、

やっぱりどうせ俺なんかという気持ちに苛まれながら。

 

……しかし。

 

『頼りにしてるね、ゆっきー』

 

清水が真に"狂"を抱えていれば、誰の言葉にも耳を貸すことはなかっだろう

だが清水の"狂"はそこまでではない。

 

だから、一人の少女?の他愛ない一言が清水の心を捉えてしまった。

それが、ありきたりの優しさに過ぎないと自分でも分かっていながら。

 

もしも清水が孤独を闇を抱えたままの男であったならば、

目の前の仮面の男をも凌駕する闇を以って、逆に彼を支配していたかもしれない。

だが彼は、清水幸利はもう一人では……孤独ではなかった。

 

 

『もしドラゴンとか見つけてゆっきーの力で味方に出来たら皆きっと驚くよっ!

あの天之河のガキより、テメェの方がずっと使えるってなぁ……ククク』

 

 

しかし、自身の中でカリオストロの存在が大きくなればなるほど、

言葉を交わせば交わすほどに、彼は、恐怖を覚えるようになった。

何故なら、大切にされたことがないから、大切な仲間だと言われても

頼りにしてると言われても彼にとってそれは実感も信用も出来ないのだ。

ましてや中学時代引き籠っていたこともあり、

家族からも彼は邪険に扱われていたのだ。

 

だから、彼は逃げた。

自身が裏切られる恐怖から、そして自身が裏切る恐怖からも。

 

この人も滅多に分け入らぬという山脈の奥地で、

魔物を使役し鵜飼いのようなことをして、ほとぼりが冷めるまで日々の糧を得ていけばいい。

そうすれば、誰にも迷惑を掛けずに済む。

自分の中にあるドス黒いモノから目を背けて生きていける。

 

 

はず、だったのに。

 

 

「おい、清水ぅ俺の名を言ってみろ…さっさとホラ言えよ、オラ!」

 

仮面の男は清水の襟首を軽々と掴み持ち上げる、

黒い鎧を纏ったその膂力は"勇者"天之河光輝を凌駕しているように思えた。

 

「ひ…ひや」

「良く聞こえなかったな……まさかお前俺のこと檜山だと思ってるんじゃないだろうな

ちゃんと教えた通り言えや」

 

男の指が清水のこめかみに食い込み、ミシミシと頭蓋が軋む音がする。

 

「な……ぐも、南雲っ…ハジメ」

 

喉の奥から絞り出すような声で応じるしかない清水。

その苦悶の声を耳にし、仮面の男は満足気に叫ぶ。

 

「ひゃはは、そうさ俺の名前は南雲ハジメ!復讐の為に魔人族と手を結んだ、

人類の裏切り者南雲ハジメだぁ、ハハハ」

 

ああ、何ということだろうか、我らが主人公南雲ハジメは連載四十一話でもって

魔人族に寝返ったのか?ジータはどうした?ユエは?シアは?

 

いやいやそれは無いのであります。

 

(南雲ォ、助かった祝いといっちゃ何だが、俺が先に歓迎の準備を整えておいてやるぜ

お前の居場所を奪ってやる、お前が俺にしたように)

 

そう狡猾にもこの男、檜山大介は自らの手を汚すことなく、

ハジメを始末する策を実行に移そうとしていた。

自らがハジメに成りすまし、悪事を行うことで、

ハジメを人類の裏切り者に仕立てあげるという……。

先の迷宮での失敗を生かしたか、誰かの入れ知恵なのかは知らないが。

 

(お前が終われば次は近藤どもの番だ、いや、逆にお前を最後に回して

蒼野と白崎を目の前で犯してやるのもいいかもしれねぇな)

 

「なんたって今の俺にはフリードさんが付いているんだからな、

だから天之河も坂上も八重樫もあのガキも怖かねぇぜ」

 

魔人族の誰かの名を口にする檜山、自分の手でとは言わないのが、

この男の限界か。

 

檜山があの事件以降、近藤らかつての悪友たちを中心とした何人かから、

凄惨なリンチを受け続けていたのを、清水は知っている、

逃走を図り、行方不明と聞いた時には、魔人族に寝返ったのかもと、

一行の間でそういう話題になったこともある。

 

しかし、いくら何でも早すぎないか?

王都から魔人領までの距離にしても、この山脈地帯にしても、

いかにチートであっても、土地カンも何もないよそ者一人に踏破できる距離ではない。

しかも、もうすでに魔人族のトップらと顔合わせも済んでいるような口ぶりだ。

 

(まさか……裏切り者がいるのかよ、だったら)

 

「働いて貰うぜ清水、俺の為にな、同じクラスメイトじゃないか、会えて嬉しかったんだぜぇ」

 

檜山は馴れ馴れしく左手で清水の肩を組む、空いた右手でその脇腹を痛めつけるのは忘れない。

口ぶりこそ余裕だが、その仕草からは内心の焦りが伝わってくる。

もう自分に後がない事など檜山とて理解している、

だからこそ己の価値を示さねばならない、魔人族に、フリードに。

 

「あ、それからあの竜は俺が貰うからな」

 

 

 




今回は判断が吉と出たハジメたち

それから檜山君のメンタリティってジャギのそれに近いと思うんですよ
で、こうなりました、ハジメ生存を早い段階で掴んでれば
やっぱり抹殺に動くでしょうし。
でもそのお陰で清水君に一度はムリかなと思われた生存の目が出て来たんですよね。

ともかく檜山君については最終的には尸良レベルまで持っていけたらと
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。