ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

42 / 173

原作よりも情報交換がスムーズです、
ちょっとイージー過ぎかもしれませんが……。


北の山脈地帯へ

 

 

夜明けと共に、ハジメたち一行と愛子たち一行はロビーに集合すると、

フォスから握り飯を受け取り、ウィル及び清水の捜索へと出発する準備を整え始める。

これも昨晩、決めたことだ、ウィルの捜索のついでに清水も探すということを。

 

「ハジメ……いいの?連れてきて」

「清水の件が無いなら、連れていく気はなかったんだが……」

「けど、断る理由もないよね」

 

やや溜息交じりの声を漏らすが、それでもハジメの表情は明るい

愛子の行動力はハジメもジータも理解している。

生徒のためならばどこまでも、である、半端に同行を拒否すれば

単独でいまや危険地帯と化しつつある、北の山脈地帯へと足を踏み入れかねない。

何よりこの変わり果てた身体と心を晒してなお、

自分のことを生徒だと思ってくれていることを、ハジメは正直に嬉しいと思っていた。

 

「どこまでも"教師"ということか」

「生徒思いなんですね」

 

シルヴァとシアも感心したように愛子を見る。特にシアは昨日のデビッドへの一喝もあり、

愛子を見つめる視線は、感謝と尊敬の気持ちが多分に含まれていた。

 

わざわざ見送りに出てくれたフォスやデビッドたちに手を振ると、

まだ朝靄煙るウルの街の北門へと彼らは向かう。

そこから北の山脈地帯に続く街道が伸びており、距離は馬で丸一日くらいだそうだから、

魔力駆動四輪で飛ばせば三、四時間くらいで着く筈だ。

 

「晴れて良かったな」

「うん、絶好の捜索日和だね」

 

ウィル達パーティが、北の山脈地帯に調査に入り消息を絶ってから既に五日

普通に考えれば生存は絶望的だろう。

それでも万一という可能性はある、それに生きて帰せば

イルワのハジメ達に対する心象や評価も限りなく高くなるだろうから

出来るだけ急いで捜索するつもりだ。

 

「と、いうわけであくまでも仕事を最優先にさせて下さい」

「構いませんよ、無理を言っているのはこちらですから……その

ウィルさんでしたっけ?の消息が掴め次第、こちらは構わずにお仕事の報告に

向かって下さい」

 

申し訳なさげに愛子へと頭を下げるジータ、愛子はそんな彼女に微笑みつつ応じる。

生徒のためという名目で強引にハジメたちを自身の目的のために協力させる

つもりなど、元より愛子の中にはないのだから。

 

「ところで清水君のこと、ハジメちゃん知ってる?」

「いや……あんまり知らないな」

 

ハジメは教室での清水の様子を思い出す。

 

「なんか俺嫌われている、というより、避けられているって感じだったな

なんでかは知らないけど」

 

などと話している間に、朝靄の中に北門が見えてくる。

 

「馬の手配は……?」

 

訝し気に周囲を見渡す愛子、北の山脈地帯までは街道沿いに進んでも

馬で丸一日かかると聞いている。

 

ハジメとジータはそんな愛子の疑問に、むしろ我が意を得たりとばかりに頷きあうと、

パチンと宙に伸ばした指を鳴らす。

すると空から大型の四輪駆動車が出現し、愛子たちの度肝を抜く。

 

「ほう……武器だけじゃなく、移動手段も開発済みか、やるな」

 

もっともカリオストロだけは不敵な笑みを浮かべてはいたが……。

早速、興味津々といった風で四輪駆動車のあちこちを調べて回るカリオストロ。

 

「しかし、コイツの動力機関は地上でしか使えないな、空や宇宙に行くには、

また別の方法や装置が必要か……」

「カリオストロさんの世界には車とか無かったんですか?」

「ああ、オレ様たちの世界は空から空、だからな、地上限定の交通や動力機関は

それほど発展しちゃいない、させる必要が無かったというところかな」

 

「なぁ……バイクとかもあるのか?」

 

興奮気味に声を上げる昇、そういえば相川君バイク好きだったっけと思いだすジータ。

 

「後で見せてやるよ、とりあえず乗れない奴は荷台な」

 

一方のハジメは昇の驚きには殆ど興味を示さずに、ぶっきらぼうに告げると

そのまま運転席へと乗り込んでいく。

だが、愛子や優花たちの羨望交じりの視線を受けるハジメの心が

それなりに弾んでいることを、ジータは確かに感じ取っていた。

 

(ホントは凄いって思われるのって気持ちいいよね)

 

 

前方に山脈地帯を見据えて真っ直ぐに伸びた道を魔力駆動四輪が爆走する。

街道とは名ばかりの酷い道ではあったが、サスペンションと整地機能によって

その道中には特に不自由さを感じる者はいないようだった。

 

「しかし、ミレディ・ライセンか、会ってみてぇな」

 

どっかとシートに腰を下ろすカリオストロ。

いくら何でも"反逆者"が未だに健在で迷宮の奥に潜んでいるかもしれないとは

デビッドたちの前で口にするわけにいかなかった。

もしかすると彼らが快く街に残ることを承知してくれたのは、

自分たちに気を遣ってくれたからかもしれない。

 

「こちらでの依頼が終わり次第、フューレンに戻りますので、そこから

ライセンに立ち寄ることも出来ますけど」

 

なんか会わせちゃいけない気もするのだが……。

 

「いや、今のオレ様の役目はアイツらの御守だ」

 

チラと背後を見やるカリオストロ、その視界には荷台で警戒に当たっている、

シルヴァが昇や明人たちの質問攻めにあっている姿がある。

どの表情も明るい、子供のあしらい方には慣れているというのは本当のようだ。

 

「解放者については一先ずお前らに任せるぜ」

 

それからジータはミレディから預かっていた指輪をカリオストロに渡す。

 

「最深部までは自力で辿り着いてってことなので……あと魔法使えないので

誰か前衛を用意してそれから挑んでください」

「それからこれも見ておいて貰った方がいいかなと」

 

ハジメは神水をカリオストロへと手渡す。

 

「こいつが噂の温泉水ってヤツだな……ほう?」

 

カリオストロの眼が細まり、表情が研究者のそれへと変わる。

 

「複製とか……出来ますか?」

「いや、オレ様でも時の流れにゃ逆らえねぇよ……天然のエリクシールか

どえらい幸運だったな」

 

試験管の中の液体を揺らしながら、ハジメに答えるカリオストロ。

 

「ま、それなりの研究施設さえあれば、ちょいと似たような物ならなんとかな」

「あ、一応心当たりならありますよ、きっと満足して貰える筈です」

 

オルクスの工房にもいずれ案内しないといけないなと、ハジメが思ったところで

愛子の声が耳に届く。

 

「それで……南雲君たちは"神"をどうするつもりなのですか?」

 

これもデビッドらの前では話すわけにはいかないことの一つだった。

 

「それは昨日話した通りです、あくまでも私たちは地球に帰るのが目的」

 

一旦、言葉を切るジータ。

 

「神についての対処は二の次です」

「ま、間違いなく邪魔は入れてくるだろうがな……ククク」

 

カリオストロは王宮で己を監視していた何者かの視線を思い出し、

含み笑いを漏らす……それはまるで未来を予測しているかのように。

 

「そしたら殺すしかないだろう……ただその為には俺たちには力がまだまだ足りない

だから大迷宮を攻略する必要があるってわけだ」

 

「大迷宮……あのさ」

「ダメだよ、オルクスの表層ですら怖気づいてこんな所にいる優花ちゃんたちじゃ

真の大迷宮の攻略なんてムリだよ……それに」

 

何かを言いだしそうになった優花をジータが制する、あえて厳しめの言葉で。

 

「……今のハジメちゃんを見て、それでもそういう事が言えるの?」

 

あ、と、隻腕白髪のハジメの姿をまじまじと背後から眺める優花。

自分たちの想像を絶する何かの果てにハジメが変わってしまったのは、

頭では理解できる、だが、やはりまだ教室でのハジメの姿が重なるのだろう。

だから、もしかして自分でも……と、思ってしまうのは無理もないことなのかもしれない。

 

北の山脈地帯は魔物が多いと聞く、ハジメとジータが愛子たちの同行を許したのは、

ここで自分たちの実力を見せつけて置けば、

今後、半端に首を突っ込むこともないだろうという判断もあった。

 

(先生もだけど、優花ちゃんも言い出したら聞かないところあるもんね)

 

「ねぇ、ところでぇ~そろそろぉ、皆に改めてこの子について教えて貰えるかなぁ~」

「!!」

 

いきなりのカリオストロの猫なで声に思わず飛びのくユエ。

そんなユエの反応を楽しみながらも、カリオストロはユエの身体に腕を絡めていく。

むずがるユエだが、吸血族の膂力を以ってしても、何故か振り払うことが出来ないようだ。

 

「昨日はコイツのコトについちゃロクなコト聞いてねぇからな、どうせデビッドたちには

聞かせたくない素性があんだろ?」

 

「だからぁ~ユエちゃんの自己紹介、カリオストロ聞きたいなっ♪」

「……」

カリオストロの擬態を醒めた目で見つめるユエ、そのまま問いかけるようにハジメへと

視線を移す。

 

「いいぞ、前に話したろ、その人は俺たちの恩人、師匠だからな」

 

頷くとユエは自分の素性をカリオストロや愛子へと語っていった。

裏切られ地の底に封印されたこと、

ハジメたちに救い出されるまで孤独の時を過ごしていたことも。

 

「南雲君や蒼野さんに見つけて貰えなかったら、ずっとひとりぼっちだったんですね」

「……かわいそうだよ、ユエちゃん」

 

愛子や優花のすすり泣く声が聞こえる。

しかしカリオストロだけは怪訝な顔をしている。

 

「……いや、ユエ、オマエ殺しきれないって理由で封印されたって言ったな

実際何かされたのか?」

「……ううん、叔父さんは私が不死身ってこと知ってたから、無駄な事は

しなかっただけだと……」

「……」

 

(ホントにそうか?)

 

車窓から流れる景色を見ながらカリオストロは考える、

ユエの身体は確かに限りなく不死身に近いのかもしれない、

しかし……精神や魂魄は必ずしもそうではないとしたら。

 

(オレ様が、その叔父さんなら身体はダメでも心を殺す方法を考えるだろうな

単に王位が欲しいならデクノボーにしちまう方がまだ楽だろうに……)

 

 

「ここが北の山脈地帯か」

「なんか凄い景色だね」

 

車を収納し、目の前に広がる風景に何とも言えない感想を漏らすハジメとジータの二人。

 

生えてる木々もバラバラなら、紅葉に彩られた山があるかと思えば

枯れ木に覆われた山があったりと、季節感もバラバラで、

さらに山の標高も千メートルから八千メートルとデコボコで

様々なバラエティに富んでいる。

 

「この季節感の無さが、四季ないまぜの風景こそ、ウルの街の恵みの理由の一つなのですね

そしてこの山脈の端に"神山"があるそうです、ここから……約千六百キロほど離れている

らしいですね」

 

こちらは社会科の教師らしい感想の愛子、なんだか捜索というより、

野外学習の雰囲気が漂いだす。

ちなみに彼女の実家は果樹園らしいと聞いたこともある。

 

ハジメとジータは小さな指輪を取り出し、自らの指に嵌めると

さらに鳥型の模型を四機ずつ、合計八機を宝物庫から取り出して、

飛び立たせる。

 

機械の鳥が旋回しながら八方向に散っていくのを、各自それぞれに眺めながら

あれは何だとカリオストロが口にする。

 

「無人偵察機」

「なかなか面白いモノ作るな、オマエは」

「ちょうど参考に出来るモノがあったんでね」

 

ハジメが参考にしたのは、ライセン大迷宮での騎士ゴーレムたちだ。

実際はその真価を発揮することなく、一方的に屠られてしまった彼らではあるが。

後からミレディに聞いてみると、遠透石といういわばカメラのレンズの

役割を果たす鉱物をゴーレムたちの頭部に仕込んでおり、それでもって

ハジメたちの細かい位置を把握する作戦だったそうだ。

 

『視覚を全部闇で閉ざされた時には焦ったよ…』

 

そう、しみじみと敗戦の弁を語っていたミレディを思い出す二人。

 

「「しかも脳波コントロール出来る!」」

「ん、だよね」

「急に叫ぶな」

 

とはいえ、人間の脳の処理能力の問題で、

単純に飛ばすだけでも同時に動かせるのは四機までだが

"瞬光"を使えば時間制限つきではあるが、七機まで同時・精密操作することが可能だ。

 

「まぁ今回はそこまでする必要はないだろ"瞬光"は疲れるからな」

「私のと合わせて合計八機あれば空からの探査は十分だと思うしね

……映像はそっちに送るね、っと」

 

そこまで話すと、くるりと身を翻すジータ。

 

「今のうちにジョブチェンジしとくね」

 

ジョブチェンジと聞いて、思わずジータへと視線を集中させる男子トリオ。

ジータの身体が光に包まれて数分……。

 

一瞬、アッティカ式の兜とマント……そしてビキニアーマーを纏ったジータが

光の中から姿を現したかと思うと、また再び光に包まれ、

そしてようやく完全に光が晴れたその跡には。

 

「わぁ!浴衣」

「棚田を見てたら日本が懐かしくなっちゃってね」

「わかるわかる」

 

桃色を基調とした花柄の浴衣を身に纏ったジータに、

歓声をあげる女性陣、一瞬ビキニアーマーに目を奪われた男子トリオも、

和装に合わせてアップ気味に結い上げられた後ろ髪から覗く

そのうなじに、これはこれでと視線が釘付けだ。

ただしその腰には大剣の鞘がしっかりと挿されているあたり、

決して浮かれているわけではないのがわかる。

 

ちなみに今回ジータが選択したジョブは、かつてメインに使用していた

フォートレスの上位ジョブである、"スパルタ"である。

フォートレス以上に防御に優れ、かつ攻撃遅延能力までも併せ持つ、

まさに古のスパルタ歩兵の如く、粘り強く戦い抜くことが可能なジョブだ。

 

ただし、基本コスチュームがアッティカ兜とマントに加え、ビキニアーマーと、

露出がやや高いのが悩みどころではあったが。

 

「ええと、魔物の目撃証言って六合目くらいだったっけ?」

「じゃあまずは、そこを目指すぞ」

 

 





連休明けまでにティオ戦をお届けできればと考えてます。 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。