ありふれた錬成師と空の少女で世界最強【完結】   作:傘ンドラ

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清水編クライマックス!

ところでバブさんですが、ルシよりは持ち物検査緩そうで一安心


愛ちゃん護衛隊in古戦場

すでに平原は血のように赤い光に覆われていた、そしてその源には

幾百……いや、幾千もの魔物たちの屍が歪に組み合わされた

新たなる巨大な魔物と、それに応戦するハジメたちの姿があった。

 

「オラァァッ!」

 

裂帛の気合いと共にガンカタスタイルで魔物へと挑みかかるハジメ、

しかしどこかその攻撃は空回り気味だ、いつもの冷静さを失っている

その蜘蛛と蛇を合わせたかのような魔物の本体に弾丸は一切届いておらず

粉砕されていくのは周囲の触手ばかり、しかもその触手は周囲の屍を取り込み

次々と再生していくのだ……きりがない、にもかかわらず。

 

ここでジータはユエの姿がない事に気が付く。

 

(まさか……)

 

ユエの身に何かあったのか?ならばあのハジメの荒ぶりも理解は出来る。

ジータの胸もまさかの事態を想像し、キリキリと痛みだすが

前方ばかりに気を取られ、側面背後が御留守のハジメの姿が目に入ると

考えるより先にバイクを駆っていた。

 

『ホースマンズデューティ』

 

バイクのエンジンが唸りを上げ、その耳障りな轟音に怯んだか

触手が一瞬動きを止め、その隙にジータはハジメの襟首を引っ掴んで

半ば強引に後部座席へと座らせる―――その数瞬後ハジメの立っていた場所を

無数の触手が切り裂いていた。

 

「……」

 

あり得たかもしれない自分の最期が脳裏に走ったか、ようやく落ち着きを取り戻すハジメ

 

「落ち着いて!ユエちゃんに何があったの!」

「……消えたって、赤い光が出現したと同時に、先生たちと一緒に……」

 

悔し気に呟くハジメ、ギリッと歯軋りの音も同時に聞こえる。

それでもまだ消え去る場面を直接見ていないだけマシだったとハジメは思う

もしもその時、傍にいて、それで何も出来なかった、届かなかった時は

きっと自分は……。

 

「……お笑いだよ、撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだって勝手に思って、

いざ、自分が奪われる側に回ると……な」

 

力を得て、武器を得て、仲間を得て、きっと心のどこかで万能感に酔っていた。

自分がまだありふれたオタク少年だった時のことを、

心の片隅に追いやろうとしていた……日常に戻ると口では言っておきながら。

 

そこへ念話石からシルヴァの声が届く。

 

「あの魔物は複数の核を持っているようだ、私が一つずつ壊していくので

援護を頼む」

 

見るとシアやティオもシルヴァの指示に従い、本体から触手を遠ざけるかのような

行動をすでに開始している。

彼女らに遅れじとジータがバイクのエンジンを勢いよくふかす。

 

「だから帰ろう、みんなで私たちの世界へ、こんなことが起きない世界へ」

「ああ、その前にあのデカブツを何とかしないとな」

 

 

そしてその頃忽然とウルの平原から消えた優花たちは、空の一点を心配げに眺めていた

そこには巨大な斑色の蜘蛛蛇と戦うハジメらの姿が映っていた。

 

「また私たち、だれかに召喚されちゃったの?」

 

やや興奮気味ではあるが、不安げに呟く妙子にカリオストロが応じる。

 

「いや、こいつは巻き込まれた貰い事故だな、試しに自分の手を見てみろ」

 

優花たちは各人、己の掌をじっと見る、その形は映りの悪いモニターのように少しブレていた。

 

「今のテメェたちはこの世界の異分子、召喚が不完全な証拠だ、このまま暫く待ってるか、

ハジメがあの蛇を倒すかすりゃ自然と戻れるだろうぜ……しかし幽世の徒が、

あの世界にいやがるとはな」

「幽世の徒?そういえばカリオストロさんの身体はブレてない」

「ああ、ここがオレ様たちの世界だからな」

 

オレ様たちの世界、という言葉に目を見開く一同。

世界を渡った瞬き幾つか程度の時間……それでも彼らは様々な物を目にした。

 

何処までも続く果て無き蒼穹の空に浮かぶ島々……島といっても一つ一つが

大陸の如き大きさをしているのだが……そしてその島々を行き交う、

大小様々な空駆ける巨大船、騎空艇。

最新科学とファンタジーが融合したかのような都市の数々。

 

「これが……ここが、カリオストロさんやシルヴァさんのいた世界、空の世界」

「凄かったよな、船が空飛んでて……ジ〇リアニメみたいで」

「ラピ〇タはホントにあったのね」

 

口々に呟く愛子たち、ユエも例外ではないらしくハジメらを気遣いつつも

未知の世界に感慨深げな表情を見せている。

 

「……で、ここは正確にはどこ?」

「古戦場だ、妙なトコに出ちまったな」

 

古戦場、かつて星の民と空の民が激突した覇空戦争における激戦地の一つだ。

戦いのステージが変わり、戦略的に全く意味を為さなくなって尚、

彼らはこの小さな島を巡り数百年にも渡り死闘を繰り広げた。

そして戦いが終結した後も、周期的にこの島に眠る幾億の星晶獣が目覚め

蠢動を始めるのだという。

 

「ちょ……そんなの危ないじゃない!」

 

怯えたような叫びを上げて、周囲をキョロキョロと見回す優花に、

カリオストロは説明を補足する。

 

「人間ってのは罪深いぜ、今じゃ討伐数を競わせる一大イベントになっててな

その時期になると、島を挙げてのお祭り騒ぎ、以前はブックメーカーもあって

色々稼げたりもしてな……」

 

「じゃあ」

「ああ、今は休眠期だ」

 

ひとまず胸を撫でおろす優花……ちなみに触れてはいないが、

彼らは決して清水の事を忘れているのではない。

事実、ここに降り立って以来、異質な気配が常に彼らの周囲を包んでいるのだ。

その証拠に彼らは円陣を組み、警戒を怠ってはいない。

 

(あの蛇どもは死や絶望、邪悪な欲望を好む……だとすれば)

 

今のアイツはおそらく……と、険し気な表情のカリオストロ、そこへ。

 

「おいでなすったな」

 

彼らの眼前に、とぐろを巻く斑色の蛇に取り込まれつつある清水が、

その無残な姿を現した。

 

(チッ!やっぱりか……)

 

「オオオ…絶望、破壊……挫折…オマエラ…」

 

清水の身体を取り込んだ蛇の呟くような呪詛と共に、休眠期の筈の島に

アーフラー、シアエガ、ティモルフォドン、ヨグ・ソトース……。

邪神たちの名を冠せられた、星晶獣……生体兵器たちの亡霊が彷徨い出でる、

一見すると、どれも巨大な目玉の化け物に見えるのだが、よく見るとそれぞれに

差異がしっかりと存在しており、それが却って優花には不気味に思えた。

 

「ここはな!空の民と星の民がその意地と誇りを賭けて戦った神聖な戦場だ

テメェら、薄汚い蛇どもが土足で踏み込んでいい場所じゃねぇ!」

 

叫びつつも策を練るカリオストロ。

 

(幸利を殺さずに蛇だけを何とかする手は…)

 

「ユエ……サポート頼めるか?」

 

(あのベルゼバブを封じた術式を応用すれば……)

 

カリオストロは記憶を頼りに即興で魔法術式を組み上げ、傍らのユエへと提示する。

僅かの時間で組まれたとは思えぬほどのその精緻さに、

ユエは感嘆の声を漏らさずにはいられない。

 

「凄く複雑……でも、大丈夫」

「愛子、オマエもだ、オマエさんの内包している上質な魔力がどうしても必要だ」

 

矢継ぎ早に指示を飛ばすカリオストロ。

 

「オイ、優花……暫くオレ様たちは手が離せねぇ、だからお前らが

オレ様たちを、幸利を守れ」

「あんなの……」

 

絶句する優花、魔物というよりあれは生き物の姿をした兵器だ、

それ故にあのベヒモスよりも遙かに悍ましく思えてならない。

 

「テメェら護衛隊だろ!……ダチの一人も守れなくって何が護衛隊だ!」

「んっ……ここで、彼を見捨てたら、きっと皆、一生後悔する」

 

もしもの時は自らが恨まれても、清水を殺す決断をユエは下していた。

それでも……ハジメ同様、ユエにとっても、清水はどうしても"敵"には思えなかった。

 

「いいか、お前ら絶対にくたばるなよ!お前らが死ぬってことはなぁ」

「……彼を人殺しにしちゃだめ」

 

カリオストロとユエの激に応じる様に優花、奈々、妙子、淳史の四人が、

目玉たちを迎え撃つべく、それぞれの武器を取る。

 

「相川と仁科は愛ちゃんたちについてて!」

 

戦闘力がやや前衛四人に比べて落ちる二人が直接カリオストロらの護衛に回る。

カリオストロらの企みに気が付いたか、蛇に促されるかのように、

目玉らが彼女らに迫るが。

優花のナイフと淳史の曲刀でその殆どが切り裂かれ。

遠距離からの火球や石礫は奈々の作り出した氷塊と、

妙子の鞭の先端から放たれる旋風によって相殺される。

 

「大丈夫、こいつら」

「俺たちでもいける」

 

しかし切り裂かれ霧散した筈の目玉どもはその都度蘇り、続々と数を増やしていく。

しかも倒され霧となる度に、また瘴気が少しづつ満ちていく。

 

それを息を呑んで見守ることしか出来ない愛子、動こうにもその片手は、

カリオストロが固く握って離さない。

自分の身体を流れる力がカリオストロへと、そして彼女が構築しつつある魔法陣へと

流れていくのを愛子は感じていた。

 

ユエもまた優花たちの奮戦を横目でチラチラと眺めることしか出来ない、

いかに数が多くとも指先一つで一掃できる程度の相手、しかし

彼女は術式のサポートで手一杯だ、

相殺しきれない火球が礫が雹が少しずつ増えていき、

自分たちの直援役の昇と明人も肩で息を始めている。

 

そんな時……全身を斑に染めた清水の口が初めて開いた。

 

「もう……いいだろ!……もう俺を放っておいてくれよ、もう俺には何もないんだよ!」

 

悲痛な叫びが慟哭がその口から洩れる。

 

「死なせて……くれよ」

 

嘘だ、生きたい……でも死にたい、どっちなのか叫ぶ清水にも、

もう分かっていない。

 

「ホントは俺だって死にたくねぇよ!でもそれ以上に死にてぇんだよ!

かっこよく生きるのがムリなら……せめてかっこよく死ぬしかないだろ!

オレのどうしようもないこれまでも……どうせロクなことにならないこれからも

全部チャラにしてぇんだよ!」

 

建国などという無謀な夢に縋ったのも、その途上でならば死んでもいいと思えたから、

強烈な英雄願望の裏側にあったのは、強烈な破滅願望だった。

しかしそれは決して認めたくない、認めるわけにはいかない願いだった。

もう自分には本当に何もない、何も出来なかったということを、

自ら認めてしまうことになるのだから。

 

「こんな……何やっても半端で……誰からも顧みられない、こんな俺でも……

死んだらだれかが悲しんでくれるだろう!南雲みたいによぉ」

 

ああ……と、愛子は思う、この子はただ、話を聞いて欲しかっただけなのだ。

分からなかった……それはあまりにも、当たり前でささやかな……そんな願いだったから……。

 

声を震わせる愛子、その震えは、目の前の小さな叫びを聞き逃した、自分への怒りか哀しみか、

もしかすると両方かもしれないが。

 

「……ごめんなさい、私はずっと、清水君の叫びを聞き逃していました、教室でもここでも

今更、謝って済む話ではないかもしれません……それでも、今からでも間に合うのならば

清水君の言いたいことをちゃんと聞かせてください」

 

ここで愛子は、一度言葉を切る。

 

「皆で生き残った後で」

「生き残……ううう」

「こんな蛇に身体を乗っ取られるのが……それが清水君の考えるかっこいい死に方……

だとは、とても先生には思えませんから」

「しょうがねぇだろう!わかってんのか俺に構ってたら園部とか死ぬだろうが!」

 

「るせぇよ!」

 

曲刀を両の手に振いながら淳史は叫ぶ。

 

「確かにあの時の南雲は凄かったよ!だから死んだと思った時は

俺たちのためにごめんな、ありがとうって思ったよ!悪かったと思ったよ、けどなぁ」

「生きてて戻ってきてくれた時の方がずっと嬉しかったんだよ!」

「そうだぜ、しかもあんなハーレムまで作っちまってよ!」

 

昇と明人も叫ぶ。

 

すでに視界を埋め尽くさんとばかりに増殖した目玉たちを、

ナイフでひたすら貫き続けながら優花もまた清水へと叫ぶ。

 

「清水が死にたいなら後で好きにすりゃいい、でもね私たちはアンタを助ける

助けたいから助ける!余計なお世話でも助ける!確かにアンタが死ねば

丸く収まるのかもしれない、けど……自分の命も大切に出来ないヤツに……」

 

泣きながら優花は叫ぶ。

 

「助けられたって嬉しくなんかないわよ!」

 

さらに言葉を続けようとした優花だったが、明らかに目玉どもとは違う何かの気配に、

顔色を変えて言葉を飲み込む。

 

(チィ!あと少しだってのに)

 

カリオストロの眉が歪み、その顔色が変わっていく。

目玉だけなら何匹いようが優花たちでも何とか対処できる、

その確信があったからこそ、彼女たちに守りを任せたのだ……しかし。

 

目玉たちを踏みつぶし、その瘴気を吸収するかのように

あのベヒモスを思い出させる四つ足の巨獣が次々と姿を現してゆく。

そして奇しくもその星晶獣の名は……やはりベヒモスと言った。

もっともこの空の世界では犬という隠語で呼ばれることが多いが。

 

「あ……あ」

 

力なく立ち尽くす優花、奈々も妙子も淳史も同じような顔をして、ただ為すすべもなく、

その巨体を呆然と眺める、カランと誰かの武器が地に落ち、音を立てる。

 

その音に呼応するかのような咆哮と共に、ベヒモスの角が輝きを増していく、

あの時と同じだと誰もが思った…。

しかしここには道を切り開いた勇者も、最後まで殿を務めてくれた錬成師もいない。

いるのは……。

 

「!!」

 

心が掻き毟られるようなプレッシャーが突如周囲を包み、跪く優花たち。

ベヒモスたちの咆哮の調子が変わり、その足取りがふらつき出す。

 

「へっ……こんなデカイだけの犬ごとき、俺にかかっちゃーな」

 

放たれるプレッシャーの中心には清水がいた、そう、彼は囚われの身であるにも、

関わらず強引に闇術を使ったのだ。

一晩がかりだったとはいえ竜人をも従え、そして五万の大軍団を造り上げた

その力は伊達ではない、感覚を狂わされた犬どもはそのまま同士討ちを始める。

 

しかし只でさえ肉体を、そして精神をも侵食された状態なのだ、

そんな身体で闇術など行使しようものなら……。

強烈な苦痛が清水の全身を蝕む、心が砕ける、魂が軋む、制止の言葉が耳に届く。

しかしそれでも彼は術の行使を止めはしない。

 

「ハハ……助けてみやがれ……見捨てて……殺してくれねぇ、俺……」

 

どうでもいい……筈なのに、なんで俺……。

何を……。

 

 

「おはよう清水」

「よ、ゆっきー」

 

教室の扉をくぐった清水へとクラスメイトらが声を掛ける。

それはいつもの朝の風景。

 

「ああ、皆おはよう」

 

それだけを口にし、清水はいつも通り自分の席へ向かう。

右隣の席のあいつが話しかけてくる。

 

「なぁ、昨日のアニメ見たか」

「ああ、見た見た」

「それから、こないだ貸してくれたあれ、秋にアニメやるらしいな」

 

そこで後の席の女子が話に加わる。

 

「清水君もアレ見てるの?私も見てるんだ」

 

そこで始業のチャイムが鳴り、担任の先生が入って来、

また休憩時間にねと、背中に声がかかる。

 

それは、本当にどこにでもある普通の、ごくありふれた教室の朝の風景に

過ぎなかった。

 

そしてそれは狂おしいまでに勇者に、英雄になることを特別になることを求めた男が

本当に、最後に求めた物だった。

 

 

喪失感と敗北感……そして何故か不思議なことに充実感に抱かれ。

清水は束の間の夢から覚醒する。

 

(へっ、こんなありふれた当たり前の何かが欲しくって……

ここまでやらないといけなかったなんてな)

 

不器用だ、あまりに不器用すぎる。

 

痛みも何ももう感じない、自分はもうすぐ死ぬのだと清水は自覚していた。

あれほど死にたいと願っていたのに、何故か今はこう思える。

 

(たく……ねぇ、やっぱり……俺……)

 

「……」

 

誰かが自分を呼ぶ声が聞こえる、微かに遠くに、

何か言わないと、だったら、今自分が本当に願っていることを言おう。

 

「生きたい…………今度こそ自分らしく」

 

その唇に暖かく柔らかい感触と、喉を流れる水の感触を覚えながら、

清水幸利は意識を手放した。

 

 

 

最後の核が撃ち抜かれ蜘蛛蛇はハジメらの前で自壊を始めていく。

 

「タネが分ると簡単だったね」

「ああ」

 

ジータに応じつつもハジメの表情は険しい、これで果たしてユエたちは……

蜘蛛蛇が消えていくに従い、赤い光が霧散していき、そして血の赤とは違う

夕暮れの赤が平原を包んでいく。

そして血の光が消えた跡には、清水を抱えたカリオストロらが何事もなく……

いや、絶対何事かはあったのだろうと思わせる姿で立っていた。

 

まずボロボロの優花たちの姿に驚き、それからユエの無事な姿があることに

胸を撫で下ろすハジメたち。

ユエはユエでそんなことくらいでと言わんばかりに、偉そうに胸を張っているのが、

なんだか微笑ましい。

 

「清水!」

「生きているの?」

 

カリオストロと愛子に抱えられ、ぐったりとした清水へと視線を移す二人。

 

「あの温泉水のおかげだ、でもな身体はともかくこのままじゃ精神が持たねぇ、

ヘタすりゃ一生眠りの王子様だ」

 

(神水飲んでもハジメちゃんグレちゃったしねぇ)

 

この緊迫した状況の中で、また妙にズレたことを考えてしまうジータ

そんな彼女にまた声が聞こえる、例によって直接脳内に。

 

『呼びなさい!私を!』

 

ああ、そういえばコレを皆の前でちゃんと披露しとくの忘れてたなと。

アイコンタクトでジータはハジメに召喚の合図を送る。

もう必要なくなった動作ではあるが、二人はあえてあの時と同じように

互いの右手を繋ぎ合わせ左手を宙に翳す。

青く清浄な光が彼らを中心に満ちてゆき、愛子たちのみならず、

おおとデビッドらからも声が上がり、そしてピンク髪の女神が天から舞い降りる。

……ナース服を身に着けて。

 

「来てくれたか!ガブリエル」

 

ガブリエルはカリオストロの呼びかけに、笑顔で頷くと、

そのままテキパキと二人で処置を始めていく、旧知の仲というのは本当のようだ。

もちろん見守る一同の不安を打ち消すことも忘れない。

 

「大丈夫、試練を越えた者を決して見放したりはしないわ!慈愛の天司の名にかけて!」

 

 

 

 

 

 

カリオストロや愛子たちが何とかトータスへひとまずの帰還を果たす、数分前。

 

カリオストロの封印の術式により、清水から切り離されユエの手で討たれた筈の"蛇"

しかししぶとくも討ち漏らされた一体が、彼らからやや離れた繁みの中で、

うねうねと身体をくねらせのたうっている、

それは帰還を祝う歓喜の舞か、あるいは地の底の本隊を呼んでいるのかもしれない……しかし。

 

「この神聖な島をアンタたち薄汚い蛇どもに荒らされるわけにはいかないのよ」

 

声の主は上半身は黄金の鎧で覆い、下半身をピッタリとしたボディースーツに身を包んだ、

小柄な少女だ、ちなみにそういう少女の紫がかった銀髪も蛇のようにうねうねと動いており、

しかも……よく見るとこの少女、尻尾が生えている。

 

「!」

 

振り向く間も無く蛇は石と化し、粉々に砕け散る。

 

「べっ……別にこの島に住んでる人間たちの為じゃないんだからね!

勘違いしないでよね!サテュロスやナタクがうるさいからよ」

 

誰も聞いていないにも関わらず、言い訳じみた言葉を口にする少女

そんな彼女の目に、光に包まれつつあるカリオストロや愛子ら一行の姿が映る。

 

「ふーん♪」

 

少女はいかにも面白そうなものを見つけた、という感じの

悪戯っぽい笑みを浮かべるのであった。




清水君って原作だとハジメの非情さを強調するための舞台装置として、
殺された感もあるんですよね……。
(ただし、自分がハジメの立場でもやっぱり捨て置くことが出来なったとは思います)

だからなんとかしてあげたいな、と思ったのも
本作を書く動機の一つだったりもします。
そして彼を何とかするのは彼自身であり、やっぱり愛ちゃんとその面々でなければならないとも。

というわけで、次回はエピローグです。
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